「宮沢賢治の食卓」を
Kindle で買って読んだ。
「食卓」とあるが、
食べ物についての記述が
主というわけではなく、
賢治の生涯と作品を追いながら、
その人となりを示すエピソードの中で
食べたであろう物が紹介されるという形。
これまで、いくつか宮沢賢治についての
本を読んでいたが、やはり漫画、
絵の力は大きく、改めて気づいたことや
感じたこともいろいろあった。
たとえば、教師時代の宮沢賢治が、
その教え子に、とても親身になって
対応する様子が描かれている。
動物や風景の言葉が聞こえたことが
象徴しているように、やはり
とても「共感力」が強い人だったのだろう。
それがまた、実生活において
賢治が失敗を繰り返した理由
でもあったかもしれない。
死後に、作家として
高く評価されるようになるが、
生前の生活は、教師になり、
農夫になり、石灰会社の営業になり、と
いろいろなことに挑戦したが、
成功とはほとんど無縁で、
金持ちだった実家を嫌いながらも、
そこに頼って生きていた。
実家の人からすれば
かなり困った長男、
だったのではないだろうか。
死後、弟の清六さんを通じて、
高村光太郎が評価する
ということがなかったら、
作品はほとんど世に出ずに
散逸してしまったかもしれない。
賢治の作品に触れることが
できた幸せを改めて感じるとともに、
その短い生涯の苦楽、
忸怩たる思いに、
改めて思いを馳せた。
「雨ニモマケズ」の詩も、
単なる理想を描いたものではなく、
世界を変えたいという望みは高くとも、
現実にはほとんど何もできずに病を得てしまった
という状況の中での、賢治の心の底からの
「強さ」への願いだったのだろう。
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