いつもながら面白い話題が紹介されているのだが、
今回は、紹介の仕方にはちょっと疑問を感じたのでメモ。
まず、Edge誌の今年の質問の訳。
「何があなたの考えを変えた?」となっているが、
原文は"WHAT HAVE YOU CHANGED YOUR MIND ABOUT? WHY?"
という、ややもってまわった言い回しになっている。
素直に訳せば、
「あなたは何についての考えを変えたか?それはなぜか?」
ということになると思う。
たくさんの回答から3つを選んで要約して紹介している。
一つ目の Freeman Dyson さん(宇宙物理学者)の回答について、
日本が降伏を決めたのは、8月9日にソ連が参戦した直後に召集された
御前会議である。<<長崎への原爆投下のニュースが入ったのは、
その決定後だった。>>
とあるが、原文は
3. On the morning of August 9, Soviet troops invaded Manchuria. Six hours after hearing this news, the Supreme Council was in session. News of the Nagasaki bombing, which happened the same morning, only reached the Council after the session started.
なので、素直に訳すと、
長崎への原爆投下のニュースが入ったのは会議の開始後だった。
(それが理由で会議が召集されたわけではなかった)
となるだろう。
二人目の"The Black Swan" の著者
Nassim Taleb さんの回答については、
地球温暖化の確率なるものは、もっとあやふやな占いみたいなものだが、
<<地球は今のままにしておくべきだ。>>
とある。
もともとは、もっと「アンチ地球温暖化」的に、
<<地球はほっておくべきだ>>のように書かれていたが、
コメント欄で指摘されて、ややマイルドに修正された。
ここの原文は、
Now, even if I agreed that it were shoddy science; even if I agreed with the statement that the climate folks were most probably wrong, I would still opt for the most ecologically conservative stance — leave planet earth the way we found it. Consider the consequences of the very remote possibility that they may be right, or, worse, the even more remote possibility that they may be extremely right.
なので、素直に訳せば、
たとえ(地球温暖化の議論が)はったりの科学だということに同意するとしても、
たとえ地球温暖化論者がほとんど確実に間違っているという命題に同意するとしても、なお、私は生態学的には最も保守的な立場を選択するだろう-地球を我々が発見したときのままにしておくべきだ。彼らが正しいかもしれないという非常にわずかな可能性、あるいはさらに悪いことに、彼らが完璧に正しいかもしれないというさらに小さい可能性の結果(の損失の莫大さ)について考えるべきだ。
となると思う。最後の一文は、著者の意図を理解するのに
わりと重要だと思うのだが、そこを紹介していないのはちょっと・・・
三人目の Daniel Kahneman さん(心理学者、行動経済学者)の回答
については、長い回答のごく一部を訳しているだけで、
回答全体の趣旨が伝わっているとは言えない。
どれも、完全に間違い、というわけではないのだが、
紹介としてはちょっと粗っぽいように思う。
もちろん、こういう細かいことは気にしないで、
スピード重視で大胆に言い切るのが、
池田さんのブログの魅力だし、
それがなければ、私はそもそも
Edge のページに到達していなかったわけなので、
超ハイスピードで情報を狩猟する人と、
その後からついていって、獲物を解体する人と、
分業する時代になったということなのだと思う。
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