ブログがあまり書けなかった。
そもそもネットにほとんど接していなくて、
ネタも無いので、少し前に見た映画のことを。
カズオ・イシグロ原作の映画。
映画化にあたって、
原作のストーリーをかなり自由に、
そして上手に整理して、
よりシンプルにしている。
原作にある重要なシーンやセリフで、
映画では大胆にカットされているものも多い。
その一方で、こんなセリフ、あるいはこんなシーン、
原作にあったっけ?というところもある。
(読み飛ばしたり、忘れているだけかもしれないが)
それでも、たぶん映画を先に見ると、
内容についてゆくのは、
ちょっと厳しいかもしれない。
あまりに特異な状況設定に驚き、
それについて考えるだけで
映画が終わってしまうのではないか?
なので、順番としては、
原作→映画で、原作にこだわらずに見る、
というのが良いのではないかと思う。
以下、激しくネタバレあり。
* * *
まず第一に、この映画の主題は
クローンによる臓器供給ではない。
それはもちろん重要なテーマなのだが、
そこにこだわると、なぜ主人公たちは運命に抵抗しないのか?
(アメリカ映画なら絶対そうしただろう)
などと考えてしまい、この映画の良いところを
見失ってしまうと思う。
原作者自身も、クローンの話は
あくまでも、短く、制約された人生を
運命づけられた人を描くための
舞台設定だと言っている。
(それにしてはすごい設定なのだが)
それでは、この映画の主題は何か?
一言で言えば、月並みだが、
「命みじかし、恋せよ乙女」
ということになるのだろう。
つまり、この小説-映画は「難病恋愛もの」
あるいは「戦争恋愛もの」に近い。
物語の設定は突飛だが、映画の中心にあるのは、
甘酸っぱくて、切なくて、激しく悲しい恋愛、
あるいは三角関係。
そしてその悲しさ、やるせなさは、
決して他人事ではない。
いつものように唐突な連想だが、
"Never let me go" というタイトルは、私の頭の中では、
銀河鉄道の夜の中で、ジョバンニがカンパネラに言う
「どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こう。」
に呼応する。
映画としての出来栄えは、
個人的には素晴らしいレベルだった。
淡々と、しかしテンポよく進むストーリー、
俳優たちの円熟した演技、
幻想的で美しい風景、映像、
ひっそりとした音楽、
そして、全体の構成のシンメトリー、
個人的にはかなりツボにはまっている。
同じイシグロ原作の「日の名残り」
(あれもまた、密やかな恋愛を軸に原作が編集されていた)
とあわせて、お勧めです。
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