日々の寝言~Daily Nonsense~

マーシャ・ガッセン「完全なる証明」

フランスの数学者アンリ・ポアンカレが
20世紀が始まったばかりの1904年に発表した
ポアンカレ予想。

「滑らかで単連結な三次元多様体は、
球面に微分同相である」

それ以来約100年に亘って、
多くの数学者が挑戦したが
証明されずにきた。

98年後の2002年11月にそれを証明したのが
当時36歳のロシア人数学者
グレゴリー・ペレルマン。

小さい頃からソビエト連邦の数学エリート教育を受けて育ち、
国際数学オリンピックでの優勝経験もある、
21世紀最強の数学者の一人と言われている。

数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞の受賞も決まり、
クレイ研究所は2000年にこの問題に懸けられた
賞金100万ドルの支払い手続きを進めていた。

しかし彼は、あらゆるポストとあらゆる名誉を捨て、
つまり、数学そのものを捨てて、隠遁してしまう。

この本は、その「数学的一大事件」の顛末について、
ペレルマンを良く知る人々へのインタビューを中心に
読みやすくまとめている。

ポアンカレ予想がどのようにして解決されたのか
についてはあまり書かれていないのだが、
数学者という不思議な人種をめぐる
人間ドラマとしては面白かった。

解決されてみると、
ペレルマンが取り掛かる以前に
かなり惜しいところまで来ていたようで、
最後の最後で抜かれてしまった数学者の
無念さも偲ばれる。

しかし、そうしたことは一切意に介さず振る舞い、
数学者にとって垂涎の的であるフィールズ賞も無視して、
やがて世間から離れてゆくペレルマン。

この世界は、120%ピュアな数学者が
生きるにはあまりにも俗だった
ということのようだ。

読みながら、知り合いの数学者のことを思い出した。

彼もまた、こういう種類の生き難さを、
程度の差はあれ、日常的に感じながら
生きてきたのだろうなぁ・・・
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