カミュの小説が読みたくなって、
Kindle で探したら「ペスト」があったので読んだ。
神は既に無く、悲惨な大戦争を経て、
人間の生の不条理性に直面した時代に、
「人はなぜ、なんのために生きるのか?」を、
ペストに見舞われて閉ざされた町という極限的な舞台設定の中、
「治療し記録する者」である医師リウーを中心として、
タルー、グラン、ランベール、コタール、パルヌー
といった立場や思想信条の異なる多様な人々を登場させて、
緻密に描き切る超力作。
いつものように筋を追うことに忙しくて、
ディテールが読めていないのだが、
印象に残ったフレーズはいろいろあった。
リウーとランベールの対話
「幸福のほうを択ぶのになにも恥じるところはない」
「しかし、自分一人が幸福になるということは、
恥ずべきことかもしれないんです」
タルーの
「人は神によらずして聖者になりうるか?」
タルーがほとんど神の視点に立ち
「それでいいのだ」と死んでゆくのに対して
医師リウーは、あくまでも、
人、実務家の立場で、自分のできることを、
自分たちの力の及ぶことだけを尽くして
あがき続ける。
黒澤明さんの「生きる」や、
宮崎駿さんの「生きろ!」も連想されるが、
全てを統べる絶対神を持たない日本人とは
問題のシリアスさというか肌触りがかなり違う。
日本人にとっては「天皇」
はそれだったのかもしれないが、
それを喪失した後に、
思想家たちはどうしたのだろう?
震災を経てなお、例えば「シン・ゴジラ」という
パロディー作品を生み出す(それしか生み出せない?)、
というのが日本、ということなのだろうか・・・
などなど、すごく久しぶりに
「実存」とか「近代的自我」
について考えていた頃を思い出した。
しかし、「ペスト」しか Kindle 化
されていないというのはちょっと衝撃的で、
他の作品も是非 Kindle で読めるように
なって欲しい。
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