わたしはこの社会が気に入らない。
わたしは、わたしであり、社会である。
だから、わたしは、わたしが気に入らない。
「わたしは誰?」と尋ねても、
そこにあるのは灰色の空洞だ。
すべての声を吸い込む石炭袋。
すべての輝きを曇らせる
みがき砂が舞っている。
わたしが輝くと、社会が輝く、
そしてまた、どこかで難民が死んでゆく。
そしてまた、どこかで森が消えて、種が絶滅してゆく。
だから、わたしは輝かない。
「わたしは誰?」なんてちょっと気取った暇な遊びに
どうしてみんなかまけていられるのだろう。
わたしは、わたしであり、地球であるのに。
そして、わたしは死にかけているのに。
「関係ないよ」と言えたのは無邪気な時代だった。
「なんとかなるよ」と言えたのはしあわせな時代だった。
みんな必死で笑っている。
みんな必死で恐さを忘れている。
みんな必死で夢見ている。
恐さから目をそむけて、
古い古いおはなしの中へ逃げ込むのか?
「わたし」という古い古いおはなしの中へ?
そこにはもう、何もないのに。
そこにはもう、光ばかりで隠れる隙間もないのに。
わたしはわたしでありあなたである。
わたしはドードー鳥であり、にせうみがめである。
わたしは穴だらけの月であり、
飢えて死んだ子供にたかる蠅である。
だから、わたしは、わたしであることが好きではない。
王国の崩壊をもっとも早く感じ取り、怖れ、
そして最も遅く受容するのは、王である。
最新の画像もっと見る
最近の「雑感」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事