日々の寝言~Daily Nonsense~

サム・アルトマン氏が OpenAI に復帰:OpenAI 事変、たぶんこうだったんじゃないか劇場

OpenAI の事案について、
いろいろな情報が流れたが、
結局、サム・アルトマン氏が復帰して、
取締役メンバが刷新されるということで
落ち着くようだ。

OpenAI に投資している人にとっては、
従業員がみんなマイクロソフトに
移ってしまうというようなことは
到底容認できないだろうから、
妥当な決着なのだろう。

今回の騒動の顛末について、
いろいろな情報をつなぎあわせて
大胆に推測してみた。

あくまでも推測で、
根拠はほとんどないので
ご注意ください。


今年の春頃から
技術担当のサツケヴァー氏らと
経営担当のアルトマン氏の間に
溝が深まっていったという。

AGI に至る開発に必要な資金を
獲得するためにサービスを拡大し
いろいろなステークホルダと連携
しようとするアルトマン氏に対して、
サツケヴァー氏らは、
OpenAI のそもそもの設立原則から乖離する
特定の資本に対する依存やサービスの独占や、
悪意あるユーザによるサービスの悪用などに
対する危機意識を持ったようだ。

また、サツケヴァー氏の恩師である
ジェフリー・ヒントン先生は、
既に、AI の悪用のリスクを
訴えるためという理由で Google を辞職していた。
こうした方面からの影響も
あったかもしれない。

11/6
OpenAI の Developer Conference
が開催されて、多くの新機能、サービスが
アルトマン氏によって発表された。

その中には、サツケヴァー氏らにも
知らされていない内容があったようで、
サツケヴァー氏らの懸念が限界を超えた。

11/16?
取締役会で、懸念について激論になり、
意見の一致は得られなかった。

11/17
イリヤ・サツケヴァー氏は電話で
サム・アルトマン氏に解任を告げた。
グレッグ・ブロックマン氏の降格も
連絡されて、ブロックマン氏は OpenAI を辞職
暫定 CEO に、ミラ・ムラティ氏が就任。

11/17 午後:
OpenAI の全従業員を対象にした
緊急の会議で、サツケヴァー氏は
「OpenAIが全人類に利益をもたらす汎用人工知能(AGI)
の構築を確実なものにするという非営利組織の使命に対し、
取締役会がその義務を果たしたものだ」と説明したという。

しかし、従業員は納得せず、
全取締役の辞任とサム・アルトマン氏の
復帰を取締役会に求める書簡を提出。

サツケヴァー氏らにとって最大の誤算は
ここにあったと思われる。
自分たちが守ろうとしている
OpenAI の非営利かつオープンという理念を
支持する人がもっといるはずだと思っていた
のではないだろうか?

しかし、社員にしてみれば、
サム・アルトマン氏が抜けて、
OpenAI の資金調達がとん挫して、
企業価値が暴落すれば、
大損することになるのだから、
賛成するわけにはゆかなかっただろう。

11/19 ?
アルトマン氏の OpenAI 復帰に関する
交渉が行われたが不調に終わる。

11/19 の夜
マイクロソフトのサティア・ナデラ CEO が
アルトマン氏とブロックマン氏の
マイクロソフト入社をツイート

OpenAI は、ミラ・ムルティ氏に代えて
エメット・シア氏を暫定 CEO に任命

11/22
OpenAI が、サム・アルトマン氏の
CEO復帰と取締役会の刷新をツイート

うーん・・・

大山鳴動して・・・という感じだが、
東洋経済オンラインに本田雅一さんが書かれているように、
今回の事変の背景には、これから生まれるであろう
AGI 的な超知能を、社会の中でどう管理してゆくのか
という大きな問題があると思う。

OpenAI の独特な会社形態は
投資家に支配されないことを担保するための
ものだったが、それだけでは十分ではなく、
今後さらに議論を尽くしてゆく必要があるだろう。

これを機会に、そうした議論が
より具体化して深まってゆけば、
サツケヴァー氏らの思いも
少しは通ったということになるのかもしれないが、
逆に、アルトマン氏の従来路線が
承認されたという形になってしまう
可能性もあると思う。

資本主義が社会主義に勝った理由のひとつは、
自由市場による並列分散計算が、
中央集権的な生産計画に勝ったことだと思われる。

ソ連や毛沢東時代の中国の
無謀な生産計画による
大量の犠牲者はそれを象徴している。

しかし、AGI があれば、
中央集権的な生産計画が
不安定で格差を拡大する自由市場に
勝る可能性もあるかもしれない。

AGI のいる世界の未来は、
まだ見えていない。

また、研究開発面でのリーダだった
イリヤ・サツケヴァー氏は
OpenAI を去るのだろうか?
彼の今後の去就も気になるところだ。

追記:
元 MIT メディアラボの伊藤穣一さんが
自分の YouTube チャンネルで
復帰前までの情勢について詳しく解説されている。

AI Safety, 現在のOpenAIのドラマについて話します。


さらに追記:
解任劇の直截的なきっかけになったのは、
サツケヴァー氏ではなく、同じく取締役だった
ヘレン・トナー氏が 10月に公開した
論文だという報道もある。

たとえば GIGAZINE の記事。

元の論文はこれらしい。
かなり長いので、まだ読めていない。
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