流れないと 淀みますか
流さないと 朽ちますか
微動だにしない湖に なれませんか
広い広い湖底にある
小さな 小さな穴ぼこから
ショロショロと湧き出でる
密かに 静かな息をして
冬は 薄氷に雪をのせ
春は 花弁で 着飾って
夏は 瞬く星を映し
秋は 紅葉と月あかり
怖いくらい静かで
欠伸が出るほど平らに
そんなふうに時を越えて行きたいのです
名前もなく 地図にも載らない
そんな湖に 私はなりたいのです
受付けの 番号札を持たされて
ソファーに座る土曜日は
壊れた予定が 匂ってくる
週末を 密かに夢みて 無理もした
ウィークデーに 叱られる
処方箋を 渡されて待つ 土曜日は
テレビと一緒に流れていく
馬鹿馬鹿しいほど のんびりと
足を止めずに着々と
知らないどこかへ
消えていく
稲刈り途中の田んぼの横を通りました
金色の稲穂は こんにちはと頭を下げ
真っ直ぐ整列しています
順番が来たら
それでは さようならと
行儀良く 刈られていくのでしょう
四角い田んぼの 角では
稲と同じ色の作業服を着たおじいさんが
ひとりでお昼を食べていました
眼鏡をかけたおじいさんの背中は
少し丸くなっていました
上向きで 余りにも大きな口で頬張っていましたので
ほろっとほぐれて
美味しい塩加減のおむすびを食べているのかなと思いました
私も あの場所で あのおむすびを食べてみたくなりました