ナントカ花札鑑賞会

世の中で販売されている独自デザインの新しい花札、「ナントカ花札」たちを紹介します。

7月の花札

2020年07月04日 | 花札の基本
激動の2020年もいよいよ後半へと突入ですね。
月替りの最初の記事ということで、従来の花札のデザインを紹介しましょう。


7月の札は「萩(はぎ)」になります。荻(おぎ)ではありませんよ。
左から「萩に猪」「萩に短冊」「萩のカス札」です。


10点札の「萩に猪」は、花札を代表する札のひとつと言えます。

花札で遊んだことがない人でも、役の名前「猪鹿蝶」はご存知ではないでしょうか。

「猪鹿蝶」は、「萩に猪」「紅葉に鹿」「牡丹に蝶」の3枚を揃えると完成する役です。
その3枚の札の中でも、一番インパクトのあるデザインなのが「萩に猪」だと思います。
オレンジ色の猪が目にも鮮やかですよね。


この「萩」と「猪」というのは、古来より和歌などで詠まれている定番の組み合わせだそうです。
猪が萩や萱などを倒してつくる寝床を「臥猪の床(ふすいのとこ)」といい、歌川広重の浮世絵にも描かれているモチーフです。

花札の猪は瞳がパチッと開いているので、萩の上で寝ていたところから目覚めた姿なのかもしれませんね。


もちろんナントカ花札では、この猪がさまざまなキャラクターに置き換えられてデザインされています。
どんな札が登場するのか次回より紹介していきますので、どうぞお楽しみに。


6月の花札

2020年06月05日 | 花札の基本
月の最初の記事は、いつものとおり従来の花札の図像を紹介していきます。


6月の札は「牡丹」です。
左から「牡丹に蝶」「牡丹に青短」「牡丹のカス札」です。 

並べられた札を見て、なにか違和感を覚えた人がいるかもしれませんね。


この「牡丹に蝶」の札を、上下逆さまに認識している人が意外と多いんです。
これが正しい見方になります。

たしかに反対に置いてみてもデザイン的になんだか座りが良い感じがします。

しかし、この札で赤く描かれている“もやもや”は、「雲」を表しているのです。

ですので、この赤い雲が描かれている方が上になる、というわけなのです。


実は、商品として製作されたナントカ花札の中にも、この上下を逆にとらえてデザインしてしまっているものがあったりします。

根本的な認識ミスなのでしょうが、気にしちゃいけません。ナントカ花札は自由でいいのです。
札の向きなんかものともしない大胆なデザインを期待したいですね。


なにはともあれ、この大ぶりで鮮やかな牡丹の花がどんな札にアレンジされるのか、次回以降の更新を楽しみにしてくださいね。


5月の花札

2020年05月06日 | 花札の基本
月が変わって5月になりました。
今月最初の投稿なので、従来の札のデザインを紹介します。



5月の札は「菖蒲(あやめ)」です。
「杜若(かきつばた)」とするところもあります。

左から「菖蒲に八ツ橋」「菖蒲に短冊」「菖蒲のカス札」です。


タネ札に描かれている八ツ橋は、『伊勢物語』に登場する「三河の国の八橋」に由来すると考えられています。

その地には杜若がきれいに咲いていて、それを見た主人公(在原業平)が、
「から衣 きつつなれにし つましあれば はるばる来ぬる たびをしぞ思ふ 」
と歌を詠んだとあります。

この和歌、学校で習った覚えがあるという方も多いかと思いますが、各句の頭の文字を取ると、「かきつはた(かきつばた)」となっているのですね。折句という技法が用いられた歌なのです。


さまざまなナントカ花札を鑑賞していると、この「菖蒲に八ツ橋」札が最もデザインしずらい札なのではないかと感じます。

モチーフが生物ではなく、その形も特殊なので、アレンジするのが難しいのではないでしょうか。

はたしてどんなデザインが登場するのか、次回からじっくり見ていきましょう。

4月の花札

2020年04月06日 | 花札の基本
ナントカ花札を鑑賞するうえで、やはり従来の花札のデザインを知っておくことが大切です。

そもそも花札というのは、1組48枚のかるたです。
その札は1月から12月まで12種類に分けられていて、月ごとに折々の植物が描かれています。
順にあげていくと、

 1月:松
 2月:梅
 3月:桜
 4月:藤
 5月:菖蒲
 6月:牡丹
 7月:萩
 8月:芒
 9月:菊
 10月:紅葉
 11月:柳
 12月:桐

となっています。
季節とマッチした組み合わせもあれば、時期とは関係ない植物になっている月もありますね。

今月のブログでは、4月の札・「藤」を取り上げて紹介していきます。
なので、早速藤の札4枚を見てみましょう。


一番左の札が「藤にほととぎす」です。バックには赤い三日月も描かれています。

その隣が「藤に短冊」札、そして右の2枚が「藤のカス」札になります。

これらの札の要素を活かしながら、どう独自にアレンジを加えていているかを鑑賞するのがナントカ花札の楽しみ方のひとつです。

次回から実際のナントカ花札を見ていきましょう。