ある朝のことです。
その日の予約を確認するために、往診先へ電話をかけますが、応答がありません。
(まだお休み中か?、ゴミ出しに出たか、トイレ中か・・・。)
時間をおいてかけなおしても、やはり出ません。今までになかったことで、何となく嫌な予感がします。
(天気が良いから早めに買い物にでも出かけたか、いや、急に妹さんにでも呼び出されたのか?)
連絡が取れないまま、やがて約束の時間が近づき、仕方がないのでお宅を訪ねました。
鶴岡の古い住宅地にあるこの家では、昭和ヒトケタ生まれのご婦人が、しゃっきりと一人暮らしをなさっているのです。城下町の名残の細い曲がった路地や、かぎのてに通りにくい道が今だに残っているあたりです。
玄関のチャイムを鳴らしても気配がなく、鍵がかかっています。家の周りを覗いても在宅かどうかもわかりません。
(留守かな…?それとも、やばい?もしかして昨日から中で倒れているのかも・・・。)
最悪の事態を想像しかけ、
(そうだ、お隣とは行き来があると言っていたっけ…。)
と、思い出して隣家に声をかけました。