わくわく!バンジージャンプするっ!

好きなものや気になることについていろいろ語ってみようと思います。

気分はすっかりノアールな女。

2006-02-19 22:01:47 | 創作文 甘い人生
「インファナル・アフェアⅡ」を観てですね。
すっかり仁侠映画を観終わって「高倉健」になりきって映画館から出てくるオヤジのような気分になった私。
ダリチン君をしばきたくなったのもそのせいかしら。
あの後ダリチン君K式で尻尾引っ張られ、
耳引っ張られ、
首根っこ摑まれて・・・大変だったみたいですよ。
皆さん必死ですから。
彼、もう一回登場してきちんと皆さんにいろいろ説明してましたよ~。
お仕事とはいえ大変ですよね。可哀想に。
やっぱりさぁ~。
ほ~ら、言っておしまいっ!楽になれるから・・・ひひひ。

ああ、妄想の話でしたね。
あ~ノアールなものを書いてみたい・・・
・・・と思って選んだのはやっぱ我らが「ソヌ」でございました。
前から気になっていたんですよ。
ソヌの語られぬ過去が。
「インファナル・・・Ⅱ」に刺激を受けたこともあり「序曲」として妄想してみました。
基本的にハッピーエンドが大好きな私ですが今回ばかりは映画に忠実な結末です。
あそこに至るまでのソヌの歩いた道を少しでも辿れたら嬉しいと。
背中の傷、食べ物を口にする仕草、思い出すだけでワクワクします。
皆さんのソヌのイメージが壊れないといいのですが。
テンプレートまでノアールモード。
では、イビョンホン演じるソヌ25歳がいよいよ登場します。


「a bittersweet life」 序曲 第二話

父が亡くなった後、ソヌはひとりだけの身内である父の妹の家に身を寄せた。
そこは彼にとって決して居心地のいい場所ではなかった。
叔母は彼に向かって事あるごとにこう言う。
「ろくでもないお前の母親のような女につかまらなければ兄さんだってあんな風にはならなかったのに。全くお前には疫病神の血が流れているに違いない。」
ソヌの記憶の中にはいつも酒びたりで暴力を振るう父しかいなかったが、叔母の話によるとソヌが生まれるまで父は腕のいい調律師だったらしい。
調律師だった父は楽器店で働く母と出会い、恋に落ち、結婚をして子供を儲けた。
その幸せの日々は長く続くことなく、まもなく母は出産が元で身体を壊し寝たきりになった。
病気の治療代に事欠き父は調律師の仕事をやめ、歩合のいい日雇いの仕事を始めた。それでも足りずに高利貸しに借金まですることになった。
乳飲み子を抱え日雇いの仕事をしながら懸命に看病したが母は回復することなくこの世を去った。
残されたのは莫大な借金と母の命と引き換えにこの世に生を受けたソヌ。
父はソヌを母の代わりに愛してはくれなかった。むしろ愛おしい妻を奪った仇として恨み続けた。
彼の妻への愛は息子への憎悪に形を変えていた。それが何故なのかはソヌにはわからなかった。
ただ、彼には父に愛された記憶も母に抱かれた記憶もない。
叔母の話を聞くたびに思った。
「俺にはあの父の血が流れているのだ・・・。女への愛で身を滅ぼした父の血が。」
そして彼が選んだのは心を持たずに日々を送ること。
生きていく力を養うためにひたすら勉強し、高校の学費も免除された。
成績が良ければ叔母の機嫌も良く住みやすかった。
暴力を振るわれることなく、逃げることもなく、三度の食事をきちんと食べられる。
ソヌにとって以前の荒んだ生活と比べればある意味天国のような生活だったのかもしれない。
しかし、ソヌはここに長くいるつもりは端からなかった。
独りで生きていこうと決めていた。
彼は自分しか信じていなかったから。
「俺は父さんのような愚かな生き方はしない」彼は心に誓った。

高校を卒業すると勧められた大学進学の話を断って彼は新興の不動産会社で働く道を選んだ。
不動産会社とは表向きで実際は法律すれすれの不動産関係の案件を処理するこの会社
彼がここを選んだのにはいくつかの理由があった。
ひとつは社長の方針で学歴と昇進が無関係だったこと。
学歴がないソヌにとって実力さえあればトップまで駆け上がることの出来る社風は魅力的だった。
それにこの会社が業界で急成長を遂げていたことも大きな要因だった。
ソヌは綺麗な仕事だけをするつもりはなかった。多少胡散臭い仕事であろうとも多くの何かが手に入ればそれで良かった。
金。地位。名声。それが何かはわからない。
ただ、ソヌに必要だったのは達成感だった。何かを手にしたかった。
それには多少強引な方法も許される環境が必要だった。
急成長している会社というのはそのような類の会社なのが常であることをソヌは知っていた。
そして彼の判断は正しかった。この会社はまさにそんな会社だった。
この会社には家族の写真を机に飾っているものは一人もいない。
社長に会った感じも彼は30歳後半ぐらいで身なりのきちんとした紳士だったが、生活感が全くない男だった。
そして天涯孤独であるソヌの履歴書を見てとても気に入ったといい、その場で採用の決定を下した。
身寄りのない干渉されることが嫌いなソヌにとってこの職場ほど居心地のいいところはなかった。
事務処理能力、管理能力に優れたソヌはすぐに仕事を覚え重要な仕事を徐々に任されるようになった。
ソヌは小さい頃から苦労して育ったせいか何事が起こってもとても落ち着いて理路整然と対処する。彼は自分より年上の人間をも簡単に説き伏せてしまう能力を持っていた。
時にその能力は彼に多くの敵を作ることになったが彼は動じなかった。
仕事で実績を上げると必ずそれは報酬として反映され、5年も勤めるとソヌの給与は一流企業に勤める大卒の会社員のゆうに三倍の額になっていた。
高級なスーツに身を包み、高級外車に乗る。
仕事では手腕を認められ、弱冠25歳にして役職に就く勢いだった。

ここは夜のホテル最上階のラウンジ。
大口のクライアントの接待を終え、客を見送ったソヌは珍しくラウンジに戻ってきて一人マティーニを口にしていた。
「あら、珍しい。シン社長のところの出世頭さんが一人でお酒を飲んでるなんて。」
声をかけたのは何度か社用で社長と行ったことのあるクラブのマダム ユナだった。
マダムと言っても歳はソヌより少し上くらいだろうか。
その若さで彼女はソウル市内の高級クラブを一軒切り盛りしていた。彼女の歳に似合わない気風のよさと野心家なところが気に入って社長はその店を贔屓にしていた。
「マダムこそ一人なんて珍しいんじゃないのか」
ソヌは関心がなさそうな無表情のままそう言った。
「今日はお客さんに急用が出来て振られちゃったの。ご一緒していいかしら。」
ユナはそういうとソヌが返事をする前に彼の隣に腰掛けた。
「まだ、いいなんて言ってない。」顔色を変えることもなく視線も合わせずにソヌ。
「まあ、いいじゃない。満更知らない仲でもないんだから。」
ユナはそういうとソヌの膝に手を置いた。
「あんたが俺の何を知ってるのか聞いてみたいね。」ソヌは薄ら笑いを浮かべながらそう言った。
「じゃあ、今夜一晩中貴方について知っていることを話してあげるわ。」ユナはそういって彼の膝を叩いた。
ソヌは何も言わずに立ち上がるとチェックをして店を出た。
ユナが少し後からついてくる。
「貴方の家に行ってみたいわ」とユナがソヌの腕に絡みつきながら言った。
「俺は仕事を家に持ち帰らない主義なんだ。」ソヌはエレベーターのボタンを押しながら言った。視線は階数を示す光をじっと見つめている。
「女と寝るのも仕事なの?」とユナ。
「似たようなものだ。嫌なら帰れよ」ソヌは声の調子さえ変えることなく冷たく言った。
ユナは何も言わず彼の腕をぎゅっとつかんだ。
それでもソヌの心は微動だにしなかった。
ソヌはユナを一度抱いたことがある。
ちょっとした成り行きだった。別に彼女が好きだったわけでもない。
ソヌにとって女を抱く行為はただ自分の欲求を満たし、達成感を得るためだけのものに他ならなかった。その時彼は女を支配していると感じた。
彼には心がなかった。ただ本能の赴くままに行きずりの女を抱いただけ。
それは愛などとは全く無縁な行為だった。
抱かれたユナはそれに気がついていたのだろうか。
ソヌはエレベーターの明かりを見つめながら漠然とそんなことを思っていた。
(そんなことどうでもいいことだ。)ソヌの感情はそこになかった。

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4 Comments

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ソヌですね。 (うさるな)
2006-02-19 23:01:53
haru様、こんばんは。

ソヌがいました・・・

25歳のソヌ、見事に存在しています!!

凄く嬉しいっ。

これから、ソヌに逢えると思うと、幸せ・・・

でも、エンディングは変わらないのですね(哀)。

次回のUPをお待ちしております。

有難うございました。
返信する
感じていただけましたか。 (haru)
2006-02-19 23:51:12
うるさなさん、読んでくださってありがとうございます。

そして、ソヌを感じていただけたようで良かったです。

そうなんです。エンディングは変わらないし、おまけに私の妄想は短いのですよ・・。

もうちょっとしかありませんが、読んでいただけると嬉しいです。
返信する
本気 noir だ・・・ (lotusruby)
2006-02-20 20:07:32
haru さん、こんばんは。



フランシスが、haru さんの妄想スイッチをONにしたとは… 

フランシスよ、よくやった



ソヌがどうやってあそこまで来たのか、みんな知りたかったのよね。

人を愛したことがないなんて、哀しすぎる…

でも、やっぱり血は争えないから、身を滅ぼすことに??

noir だもんね…仕方ないか…
返信する
noirっぽい? (haru)
2006-02-21 00:21:27
lotusrubyさん、こんばんは~

書きながら、ノアールって悲しすぎるわっ!なんて思ってしまいました。

ソヌの過去を見たかったのだけど

思っていたより悲しい。。。

でも、それでこそあの悲しい瞳のソヌなんだと。

自分に言い聞かせてます。
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