「a bittersweet life 」 序曲 第3話
「あんたは俺の何を知っているんだ。」
天井を見つめてタバコをくゆらせながらソヌはユナに尋ねた。
「貴方には愛のかけらもないということ」
ユナはソヌの分厚い胸に頭を預けたまま言った。
ソヌのタバコの煙が少し乱れた。
「こんな仕事をしてるといろいろな男に会うわ。決して貴方みたいな人が珍しいわけじゃない。もしかしたら私が貴方と寝たいと思ったのも貴方に愛がないのがわかっていて安心だからかもしれないわ。私も愛なんて信じていないから。貴方と似ているのかもしれない。」
ソヌはその言葉を聞くとしばらく黙っていた。
そして起き上がってタバコの火をねじり消した。
「やっぱり、あんたは俺の事が何もわかっていない。俺は愛を信じてないんじゃなくていらないんだよ。」彼はそういい捨てると一糸纏わぬ姿でシャワールームに向かった。
それから二年の月日が流れた。ソヌは理事に昇進していた。
前にも増して大きな仕事を任され、ソヌは多くのものを手に入れていた。
金・地位・名声・女・・・。
彼は表面的には満たされているかに見えた。彼本人もそう思いかけていた。
しかし、何かが足りない。彼は時折夜の窓に映る自分の顔を見つめながらそう思った。
何故、満たされないのか・・何が足りないのか。彼にもわからない。
ただ、日々完璧な仕事をし無駄のない日常を送る。
彼の頭で描いた生活がそこにはあった。
しかし・・・・・。彼の心が感じていることを彼の頭は理解できなかった。
そんなときに事件は起こった。
彼が勤めだしてから10年近く。
彼の勤める会社は彼が就職した頃よりもずっと成長し、今では政財界との関係も密になるほどの大会社となっていた。
多少汚い仕事でも法律すれすれの状態で解決する会社は政財界にとってはとても都合のいい存在。
それだけに他社との競争も激しくなっていた。
ある日、ソヌは見知らぬ男たちに拉致された。
袋叩きに遭い酷いリンチを受けた。
血だらけで大きな暗い倉庫に天井から吊るされた状態のソヌは
「俺になんの恨みがあるんだ」振り絞った声でそう尋ねた。
明らかに裏組織の匂いのする男は一枚の写真をソヌに見せた。
そしてこう言った。
「この写真の件について詳しく話せば命は助けてやる。」
その写真にはソヌと大物政治家の秘書が賄賂らしき紙袋を受け渡す瞬間が映し出されている。
「どういうことだ。」
「ある会社にお前の会社を潰すよう画策するように依頼された。
いろいろネタを調べていたらこの写真が向こうからころがって来た。
お前味方の中に敵をいっぱい作っているようだな。
まあ、ねたまれるほど仕事が出来るということか。頼もしいな。まだ若いのに。」
彼はそういうとニヤッと笑った。
ソヌは男の話を聞きながらあらゆる可能性について計算していた。
人を信じることを知らない男にとってこの成り行きを想像するのは容易なことではなかった。
話したら社長を裏切ることになる。万が一社長が来た時裏切ったことがばれたら今までの10年間をすべて失うことになる。
しかし、もし、社長が俺を見捨てて助けに来なかったら俺はここで死ぬのか。
いや、話すまではこいつらは俺を殺すまい。するとこのまま助けを待つべきか。
いろいろな選択肢を考えソヌはひとつの結論を見出していた。
「このまま拷問を受け助けを待つこと。」それが彼の答えだった。
「裏切るのはまだ早い」彼はそう思っていた。
いたぶられながら数日間が過ぎた。助けは来なかった。
「いい加減、話す気になったか」
そう男に問いかけられてもソヌは返事をしなかった。
「そろそろお遊びは終わりだ。」
男はそういうと今までに増して激しい拷問を加えた。
ソヌは自分の意識が遠のいていくのを感じた。
気がつくと先ほどの男がソヌの目の前に立っていた。
「気がついたか。度胸のいいお兄さん。今回はあんたのねばり勝ちだ。」
そういうと彼は新聞の一面を差し出した。
そこには贈収賄の容疑で逮捕された社長と政治家の写真が大きく取り上げられていた。
「降ろしてやれ」彼がそう声をかけると手下がソヌの縄を解いた。
「どういうことだ。」きつく縛られて皮の剥けた手首をさすりながらソヌは尋ねた。
「つまり、お前以外の人間が証言してそっちから足がついたってことだ。お前の会社はもうおしまいらしい。そうとうあくどいことをやってたのも明るみに出ているからな。」
「で、俺をどうする。」ソヌは覚悟を決めて尋ねた。
彼らにはソヌはもう必要のない人間だったから殺されるかもしれない。
「殺してもいいんだが・・・その度胸、殺すには惜しい。どうだ、俺の下で働く気はないか。」
男は思いもよらない提案をしてきた。
どうせ、元の生活には戻れない。いっそ裏の世界の方が自分の性に合っている気がした。
こうしてソヌはカンと出会った。
そして、犬のように彼に仕える新しい生活が始まった。
「あんたは俺の何を知っているんだ。」
天井を見つめてタバコをくゆらせながらソヌはユナに尋ねた。
「貴方には愛のかけらもないということ」
ユナはソヌの分厚い胸に頭を預けたまま言った。
ソヌのタバコの煙が少し乱れた。
「こんな仕事をしてるといろいろな男に会うわ。決して貴方みたいな人が珍しいわけじゃない。もしかしたら私が貴方と寝たいと思ったのも貴方に愛がないのがわかっていて安心だからかもしれないわ。私も愛なんて信じていないから。貴方と似ているのかもしれない。」
ソヌはその言葉を聞くとしばらく黙っていた。
そして起き上がってタバコの火をねじり消した。
「やっぱり、あんたは俺の事が何もわかっていない。俺は愛を信じてないんじゃなくていらないんだよ。」彼はそういい捨てると一糸纏わぬ姿でシャワールームに向かった。
それから二年の月日が流れた。ソヌは理事に昇進していた。
前にも増して大きな仕事を任され、ソヌは多くのものを手に入れていた。
金・地位・名声・女・・・。
彼は表面的には満たされているかに見えた。彼本人もそう思いかけていた。
しかし、何かが足りない。彼は時折夜の窓に映る自分の顔を見つめながらそう思った。
何故、満たされないのか・・何が足りないのか。彼にもわからない。
ただ、日々完璧な仕事をし無駄のない日常を送る。
彼の頭で描いた生活がそこにはあった。
しかし・・・・・。彼の心が感じていることを彼の頭は理解できなかった。
そんなときに事件は起こった。
彼が勤めだしてから10年近く。
彼の勤める会社は彼が就職した頃よりもずっと成長し、今では政財界との関係も密になるほどの大会社となっていた。
多少汚い仕事でも法律すれすれの状態で解決する会社は政財界にとってはとても都合のいい存在。
それだけに他社との競争も激しくなっていた。
ある日、ソヌは見知らぬ男たちに拉致された。
袋叩きに遭い酷いリンチを受けた。
血だらけで大きな暗い倉庫に天井から吊るされた状態のソヌは
「俺になんの恨みがあるんだ」振り絞った声でそう尋ねた。
明らかに裏組織の匂いのする男は一枚の写真をソヌに見せた。
そしてこう言った。
「この写真の件について詳しく話せば命は助けてやる。」
その写真にはソヌと大物政治家の秘書が賄賂らしき紙袋を受け渡す瞬間が映し出されている。
「どういうことだ。」
「ある会社にお前の会社を潰すよう画策するように依頼された。
いろいろネタを調べていたらこの写真が向こうからころがって来た。
お前味方の中に敵をいっぱい作っているようだな。
まあ、ねたまれるほど仕事が出来るということか。頼もしいな。まだ若いのに。」
彼はそういうとニヤッと笑った。
ソヌは男の話を聞きながらあらゆる可能性について計算していた。
人を信じることを知らない男にとってこの成り行きを想像するのは容易なことではなかった。
話したら社長を裏切ることになる。万が一社長が来た時裏切ったことがばれたら今までの10年間をすべて失うことになる。
しかし、もし、社長が俺を見捨てて助けに来なかったら俺はここで死ぬのか。
いや、話すまではこいつらは俺を殺すまい。するとこのまま助けを待つべきか。
いろいろな選択肢を考えソヌはひとつの結論を見出していた。
「このまま拷問を受け助けを待つこと。」それが彼の答えだった。
「裏切るのはまだ早い」彼はそう思っていた。
いたぶられながら数日間が過ぎた。助けは来なかった。
「いい加減、話す気になったか」
そう男に問いかけられてもソヌは返事をしなかった。
「そろそろお遊びは終わりだ。」
男はそういうと今までに増して激しい拷問を加えた。
ソヌは自分の意識が遠のいていくのを感じた。
気がつくと先ほどの男がソヌの目の前に立っていた。
「気がついたか。度胸のいいお兄さん。今回はあんたのねばり勝ちだ。」
そういうと彼は新聞の一面を差し出した。
そこには贈収賄の容疑で逮捕された社長と政治家の写真が大きく取り上げられていた。
「降ろしてやれ」彼がそう声をかけると手下がソヌの縄を解いた。
「どういうことだ。」きつく縛られて皮の剥けた手首をさすりながらソヌは尋ねた。
「つまり、お前以外の人間が証言してそっちから足がついたってことだ。お前の会社はもうおしまいらしい。そうとうあくどいことをやってたのも明るみに出ているからな。」
「で、俺をどうする。」ソヌは覚悟を決めて尋ねた。
彼らにはソヌはもう必要のない人間だったから殺されるかもしれない。
「殺してもいいんだが・・・その度胸、殺すには惜しい。どうだ、俺の下で働く気はないか。」
男は思いもよらない提案をしてきた。
どうせ、元の生活には戻れない。いっそ裏の世界の方が自分の性に合っている気がした。
こうしてソヌはカンと出会った。
そして、犬のように彼に仕える新しい生活が始まった。
>俺は愛を信じてないんじゃなくていらないんだよ。
これ、参りましたねぇ~。辛い・・・
カン社長とどういう風に出会ったのか、いつも想像していました。
うん、ありえる、納得です!
ソヌに逢わせてくれて有難うございました。
次回が待ち遠しいです。
今更、書き込むのはと思い、ここへ!
Happy Togrther読ませて頂きました。
涙でいっぱいになりました。
素敵でした・・・
感想ありがとうございます。
私も気になっていたんです。
カン社長と知り合った理由。
背中の傷はどうしてできたのか。
何故あんなに寂しい眼差しなのか・・・。
この後最終話UPします。
やっぱりソヌの最後は悲しい。
「Happy・・・」も読んでいただいたのですね。
ありがとうございます。
いやぁ~涙でいっぱいになったなんて嬉しいです。
実はうさるなさんのコメントを読んで自分で読み返して来ました。恥ずかしいけど・・・私もあの作品はとても気に入っています。
また、妄想読みにいらしてくださいね~