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米中はいま、1970年代に和解して以来、最悪といってよいほど反目している。両大国の関係については昨年ごろから、一部で新冷戦というフレーズがはやるようになった。だが、筆者はそのような表現は正しくないと考えていた。
40年超にわたり冷戦で対峙した米ソと異なり、米中には対決を防ぐ2つの歯止めがあるからだ。
第1に中国はソ連とちがって、共産主義を世界に広めようとしているわけではない。対立は経済や軍事の領域にとどまり、イデオロギーの対立にはならない。
第2に貿易や投資がわずかだった米ソとは対照的に米中の経済は深く結びつき、切っても切れない関係にある。(中略)
とりわけ気がかりなのが、米中の角逐がイデオロギー対立の色を帯びてきたことだ。コロナにより、米国では死者がベトナム戦争を超えた。その怒りは中国共産党の体質に向けられつつある。
中国で当初、感染が隠蔽されたせいで数万人もの米国人の命が失われた。元凶は言論の自由を制限し、強権を敷く共産党体制そのものにある――。米政権・議会の一部では、こうした共産党性悪論ともいえる見方が出ている。人間でいえば相手の行いだけでなく、人格も悪いといっているようなもので、イデオロギーの闘いに近い。
その急先鋒(せんぽう)がウイルス発生源をめぐり、中国を激しく追及するポンペオ国務長官だ。彼は「共産党体制は信用できないという確信に近い疑念を抱いている」(トランプ政権の元高官)。ホワイトハウスの高官たちにも、似たような考えの持ち主がいる。複数の米政府筋によると、共産党性悪論は今のところ、米政権・議会の主流にはなっていないが、燃え広がりかねない。中国側もイデオロギー対立に油を注ぐような挙に出ているからだ。中国は早く感染を抑えたが、米欧はまだ苦戦している。米欧の民主主義システムより、共産党体制が優れている証しだ……。最近、中国は官製メディアなどを通じ、しきりにこんな趣旨の言説を流す。共産党内からは「香港デモやコロナ危機を利用し、米国は中国を弱体化するつもりだ」という陰謀説も聞かれる。(*日経 記事より)
その他ニュース(05/12_朝) | ||||||||