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新型コロナウイルスの猛威に世界は持てる力を総動員して立ち向かう。だが、日本の対応はもたつき、ぎこちない。バブル崩壊、リーマン危機、東日本大震災。いくつもの危機を経ても変わらなかった縦割りの論理、既得権益にしがみつく姿が今回もあらわになった。このひずみをたださなければ、日本は新たな危機に立ち向かえない。日本でコロナ対応が始まったのは1月。官邸では「しっかりやります」と繰り返した厚生労働省の動きは一貫して鈍かった。「どうしてできないんだ」。とりわけ安倍晋三首相をいらだたせたのが自ら打ち出した1日2万件の目標に一向に届かないPCR検査だった。
その背景にあったのが感染症法15条に基づく「積極的疫学調査」だ。病気の特徴や感染の広がりを調べるのが疫学調査。「積極的」とは患者が病院に来るのを待たず、保健所を使い感染経路やクラスター(感染者集団)を追うとの意味がある。厚労省傘下の国立感染症研究所が今年1月17日に出した新型コロナの「積極的疫学調査実施要領」では「患者(確定例)」と「濃厚接触者」のみが検査対象とされた。検査体制への不満が広がると、2月6日に出した要領の改訂版で初めて対象者に「疑似症患者」が加わった。とはいえ「確定例となる蓋然性が高い場合には積極的疫学調査の対象としてもよい」の限定付き。その姿勢は5月29日の最新版の要領でも変わらない。厚労省が実質的に所管する各地の保健所などもこの要領に従い、濃厚接触者に検査の重点を置いた。(中略)
変わらない行動の背景には内向きな組織の姿が浮かぶ。厚労省で対策を仕切るのは結核感染症課だ。結核やはしか、エイズなどを所管する。新たな病原体には感染研や保健所などと対応し、患者の隔離や差別・偏見といった難問に向き合う。課を支えるのは理系出身で医師資格を持つ医系技官。その仕事ぶりは政策を調整する官僚より研究者に近い。専門家集団だけに組織を守る意識が先行する。(*日経 記事より、図表も)
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