仕事の休憩・空き時間が
2時間ほどの出来たので、
九州国立博物館で開催中の特別展
「よみがえる国宝:守り伝える日本の美」展
に行ってきました。

観覧できた実時間は1時間余りでしたが、
いい展示だと思いました。
ある意味で画期的な展示内容です。
今回の展示内容は、
文化財の保存修理に関する展覧会。
ところで…
近代化に過程における
世俗化の進行 と 産業化の進展が
博物館を生み出します。
文化的な財を広く展示し陳列・観覧することによって
国民意識や民族的アイデンティティの形成を推進する装置。
これが博物館です。
それは、近代化・都市化に過程で
さかんに開催された博覧会と酷似しています。
博覧会は、近代文明の製品や技術を展示し産業の発展に役立てる装置でした。
両者に共通しているものは、その「みせもの」性です。
観客はお宝を見るために博物館に足を運び、
見世物としてそれらをたのしむ。
(そこには文化的な行為という知的な充実感も生じる)
阿修羅展にしても、ゴッホ展にしても…、
従来の博物館の役割はそれが中心だったし、
観客もそれを求めていたことは確かです。
しかし、今回の九州国立博物館の企画は違っていました。
博物館のもう一つの役割―それは、
資料の保存管理・修理修復という
展示する前の、展示するための前段階に関わること。
これが、今回のテーマでした。
とてもとても興味深く観覧できました。
展示は、大きく4つのサブテーマで構成されています。
1.保存:宝をまもる営み
“曝涼”という蔵の収蔵品を虫干しにする
日本での伝統的な行事に光を当てた展示は、
新鮮で興味深いものでした。
2.修理:つくろい・なおす技とこころ
曝涼に合わせて、文物は遺すものと捨てる
ものとに選別される。
この選別という評価の過程で、修理され保
存され伝えられていくものが“文化財”と
なる、という視点は、文化財が文化財とし
て存立していく基盤に歴史を越えた幾多の
人々の審美眼の存在があったというのは、
一つの発見でもありました。
また、修理という積極的な行為は、美術的
文化的な価値よりも、むしろ宗教的な価値
にその原動力がある場合も多かったことも
今の「みせもの」的な博物館消費を考える
上で、重要な視点のひとつだと思いました。
そして、現代の修理修復の作業においても、
その現品制作者の技とこころを継ぐ作業に
他ならないこともよくわかる展示でした。
3.模写・模造:こころと技を継ぐ
文化財の模写・模造についても、単なるコ
ピーをつくるのではなく、その制作を通し
て伝統技術そのものを伝承するために行わ
れるものであり、現品作者と同等以上の技
量と精神力を持ちつつ自己の創造力を律す
る高い精神性が要求されるといことが、現
状模写、復元模写・模造の優品の展示によ
って感じることができる展示でした。
4.文化財保護のはじまり
「文化財」という概念の成立と、その保護
という思想の形成が、今日の博物館存立の
バックボーンをとしてあること、またそれ
はきわめて近代的な思想であり、その延長
線上に博物館の活動もあるということを、
知ることができました。
博物館の活動のバックヤードというべき事柄を展示するという
今回の特別展の企画は、
博物館の“自己言及”展ともいうべき画期的な展覧会じゃないかと、
その視点に驚嘆しつつ、楽しく観覧することができました。
「パリに咲いた古伊万里の華」展 以来、
久々の秀逸な展示に出会えたと思っています。
今回は、空き時間を利用しての駆け足の観覧だったので、
8月28日までの会期中に、もう一度
じっくりと観に行ければいいな と思っているのですが…。
写真は、九州国立博物館のミネルヴァ

【関連記事】(九州国立博物館関連)
・Van Gogh: The adventure of becoming an artist[2011-01-17 19]
・九博の龍[2010-05-10 19]
・九博のフクロウ[2010-05-09 17]
・九博の文化交流展示室(評)[2010-05-08 19]
・古伊万里の華[2010-04-13]
・二つの梵鐘[2010-02-24]
・お別れのご挨拶、そして 踏みつけられ続けて…[2009-09-26]
・阿修羅に会いに[2009-07-14]
2時間ほどの出来たので、
九州国立博物館で開催中の特別展
「よみがえる国宝:守り伝える日本の美」展
に行ってきました。

観覧できた実時間は1時間余りでしたが、
いい展示だと思いました。
ある意味で画期的な展示内容です。
今回の展示内容は、
文化財の保存修理に関する展覧会。
ところで…
近代化に過程における
世俗化の進行 と 産業化の進展が
博物館を生み出します。
文化的な財を広く展示し陳列・観覧することによって
国民意識や民族的アイデンティティの形成を推進する装置。
これが博物館です。
それは、近代化・都市化に過程で
さかんに開催された博覧会と酷似しています。
博覧会は、近代文明の製品や技術を展示し産業の発展に役立てる装置でした。
両者に共通しているものは、その「みせもの」性です。
観客はお宝を見るために博物館に足を運び、
見世物としてそれらをたのしむ。
(そこには文化的な行為という知的な充実感も生じる)
阿修羅展にしても、ゴッホ展にしても…、
従来の博物館の役割はそれが中心だったし、
観客もそれを求めていたことは確かです。
しかし、今回の九州国立博物館の企画は違っていました。
博物館のもう一つの役割―それは、
資料の保存管理・修理修復という
展示する前の、展示するための前段階に関わること。
これが、今回のテーマでした。
とてもとても興味深く観覧できました。
展示は、大きく4つのサブテーマで構成されています。
1.保存:宝をまもる営み
“曝涼”という蔵の収蔵品を虫干しにする
日本での伝統的な行事に光を当てた展示は、
新鮮で興味深いものでした。
2.修理:つくろい・なおす技とこころ
曝涼に合わせて、文物は遺すものと捨てる
ものとに選別される。
この選別という評価の過程で、修理され保
存され伝えられていくものが“文化財”と
なる、という視点は、文化財が文化財とし
て存立していく基盤に歴史を越えた幾多の
人々の審美眼の存在があったというのは、
一つの発見でもありました。
また、修理という積極的な行為は、美術的
文化的な価値よりも、むしろ宗教的な価値
にその原動力がある場合も多かったことも
今の「みせもの」的な博物館消費を考える
上で、重要な視点のひとつだと思いました。
そして、現代の修理修復の作業においても、
その現品制作者の技とこころを継ぐ作業に
他ならないこともよくわかる展示でした。
3.模写・模造:こころと技を継ぐ
文化財の模写・模造についても、単なるコ
ピーをつくるのではなく、その制作を通し
て伝統技術そのものを伝承するために行わ
れるものであり、現品作者と同等以上の技
量と精神力を持ちつつ自己の創造力を律す
る高い精神性が要求されるといことが、現
状模写、復元模写・模造の優品の展示によ
って感じることができる展示でした。
4.文化財保護のはじまり
「文化財」という概念の成立と、その保護
という思想の形成が、今日の博物館存立の
バックボーンをとしてあること、またそれ
はきわめて近代的な思想であり、その延長
線上に博物館の活動もあるということを、
知ることができました。
博物館の活動のバックヤードというべき事柄を展示するという
今回の特別展の企画は、
博物館の“自己言及”展ともいうべき画期的な展覧会じゃないかと、
その視点に驚嘆しつつ、楽しく観覧することができました。
「パリに咲いた古伊万里の華」展 以来、
久々の秀逸な展示に出会えたと思っています。
今回は、空き時間を利用しての駆け足の観覧だったので、
8月28日までの会期中に、もう一度
じっくりと観に行ければいいな と思っているのですが…。
写真は、九州国立博物館のミネルヴァ

【関連記事】(九州国立博物館関連)
・Van Gogh: The adventure of becoming an artist[2011-01-17 19]
・九博の龍[2010-05-10 19]
・九博のフクロウ[2010-05-09 17]
・九博の文化交流展示室(評)[2010-05-08 19]
・古伊万里の華[2010-04-13]
・二つの梵鐘[2010-02-24]
・お別れのご挨拶、そして 踏みつけられ続けて…[2009-09-26]
・阿修羅に会いに[2009-07-14]

※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます