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韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(135)
母を見てクムスンは照れくさそうにする。
「それじゃあ」
はにかみ笑いで頭を下げる。
「ええ」
ヨンオクも声援の笑顔を返す。
クムスンは病室に入っていった。
中に入ってクムスンはびっくりする。
「あら、着替えたの?」
「出かけよう」
クムスンを振り返るなりジェヒは言った。
「何です? 不真面目な患者だわ」
「患者じゃあるもんか。俺は医師だ」
ジェヒはクムスンの手を握った。
「早く行こう」
「ダメよ」
クムスンは拒む。
「悪化したらどうするの」
「大丈夫だって。お前、俺の言う通りにするんだろう?」
「・・・」
クムスンはジェヒに手を引かれて街に出た。
ジェヒはクムスンと手を握って歩くのが心地よさそうだった。
クムスンも晴れやかな気分だった。誰かの目を気にする様子もない。
二人は街を行く恋人たちに染まりきっていた。
「あっ、これいくらですか?」
「最近、人気ですよ」
ジェヒはクムスンが手にしたシャツを元に戻す。
「イケてない」
別の店で腰にしめたベルトも「大き過ぎるだろ」でオジャン。
「これはどう?」
クムスンが手にするどれもジェヒは気に入らない。
「お前は見る目がないよ」
「どうして? かわいいのに」
「そうですよ、おじさん」と店の売り子。
ジェヒは気分を害し、クムスンの手にした物を取り上げ売り子に突き返す。
「それで商売やってるの?」
ジェヒの手を引いて立ち去る。
クムスンは笑いが止まらない。
今度はクムスンがジェヒの見立てをやる。
帽子をかぶせて「すごく似合ってるわ」とゴキゲンだ。
しかし、ジェヒはやっぱり気に入らない。
「俺の好みじゃない」
要するに二人のおしゃれ感覚はぜんぜん違うのだ。
「まったく・・・変な性格よね」
クムスンは帽子を返す。
「おじさん、待って」
ついにはクムスンのアフロヘアー、ジェヒの女装ヘアーまで登場する。
クムスンは女装のジェヒに向かって叫ぶ。
「ジェスナー!」
「何だよ」
ジェヒは気持ち悪そうにクムスンの手をふりほどく。
「俺だよ」
そして最後は二人でアイスクリームだ。
ジェヒは恨めしそうにクムスンを見つめる。
「食べないの? せっかく買ったんだから食べないと」
「いくら何でもこれは恥ずかしいだろ」
ジェヒは携帯に付けられたペア人形のストラップを咎める。
「かわいいわよ。ダメだと思わず、愛情を持って見てみてよ」
「・・・」
「ほら、かわいいじゃない」
「・・・」
「外さないでよ」
「分かった。だけど、これは好みじゃなくてセンスの問題だよ」
「愛情を持てばかわいくなるんですってば、愛情を」
クムスンは口を大きく開けクリームをなめた。
「おっ、あれは何だ?」
ジェヒは突然後ろを指差す。クムスンが後ろを見、向き直った瞬間、ジェヒはアイスクリームを顔に押し付ける。顔と鼻がアイスクリームにまみれる。
それを見てジェヒはけたたましく笑い、周囲の客も笑いだす。
クムスンは恥ずかしくなり声をあげて泣き出す・・・笑っていたジェヒはそれが気になりだす。
「おい、クムスン」携帯を手にする。「これは俺の好みだ」といってクムスンをなだめはじめる。
「おい、クムスン」
心配そうにするジェヒ、ひたすら泣きしきるクムスン――と思いきや、クムスンはいきなり顔をあげる。油断したジェヒの顔にアイスクリームを押し付ける。ジェヒの顔にもべっとりアイスクリームが・・・
周囲からまたもや笑い声が起きる。
クムスンたちにとって二人の時間はそれほどに楽しかった。
シワンはソンランに言った。
「何も考えず、正直に答えてどうする?」
「・・・」
「違うと言わないと・・・両親が反対すれば諦めると言うべきだろ。まずはそう話すべきだ」
「私がお二人と喧嘩でもしたいと? 違うと言ってご両親が決めてしまえば従うしかないわ」
「・・・」
「その時はどうするの? 現実的に誰もウジュを見れないのよ」
「なら、俺が反対した時は? 嫌だと言ったら?」
「・・・」
「いいさ。お前も正直に話したし、俺も正直に言うよ。俺は・・・息子のウジュを育てることにとても戸惑ってる」
「・・・」
「最初から知っていたら、ここまで戸惑わなかった。昨日も言ったが一度も俺に話したこともない」
ソンランは辛そうに横を向く。
「ましてや9歳の子供なんだ。ある日突然、9歳の子の父親になるのが、簡単なことだと思うか?」
ソンランはシワンに強い目を向けた。
「親になったことはないが、漠然にも親というのは――子供のすべてに責任を取るものだろ」
「・・・」
「しかし俺は――まだ準備が出来ていない」
ソンランは頷く。
「十分、理解するわ」
「だから、今回は諦めてくれ。1年だけ預かるんだろう。お前も不穏な空気は嫌だろう?」
「わかったわ。考えてみる」
ジョンシムはソンランのことを考え続ける。
ソンランもシワンの言ったことを考え続けた。
そこに携帯が鳴った。ジョンシムからだった。少しためらい、電話に出る。
ソンランはいつもの料亭でジョンシムの話を聞いた。
「私が何を言いたいかあなたに分かる?」
「・・・」
「予想もつかない? もしも――息子とシワンの1つを選ぶというなら誰を選ぶ? 当然、息子でしょ」
「・・・」
ひと呼吸おいてジョンシムは言った。
「離婚しなさい」
「お義母さん・・・」
「別れなさい――初めからシワンと合意のことだったなら、私もこうは言えないわ。息子もまったく知らないことでしょ」
「はい・・・」
「なのに、どうしてあなたの息子を育てるの? 息子が何をしたと?」
「・・・」
「それに私は・・・あなたを許せないの。どうして、そんなに堂々としてるの?」
「・・・」
「私なら顔も上げられない。あなたはすべてにおいて、想像も出来ない言葉と行動をするの?」
「お義母さん・・・」
「離婚しなさい――最初から子持ちのバツイチと知ってたら、絶対に結婚を許さなかったわ」
「・・・」
「離婚率が高いだの、離婚する人が何パーセントでも他人事だと思ってたのに、私の家でこんなことが起きるとは」
「・・・」
「本当に・・・離婚を想像したこともないの。一度結婚したら・・・一生、一緒に暮らすものだと・・・」
「お義母さん――私もそうです」
「だから離婚できないと?」
「お義母さん・・・母親の気持ちをご存知ですよね? 一生じゃありません。1年だけなんです」
「いいことを言ったわ。母親になりたいんでしょ? 離婚して堂々と息子をそだてなさい」
「・・・」
「あなたは賢く能力もあるのに、婚家の機嫌を取りながら暮らすの? 離婚して息子と暮らしなさい」
ソンランはうつむいた。
「それに婚姻届けも出てないわね?」
「・・・」
「知らないと思ってたの? だから、荷物を持って出て行けばそれでいいの。そうよね」
「お義母さん・・・どうして、そんなことを言うんです?」
「息子を連れてくるあなたよりはマシでしょ――本当に意外だわ。離婚の話をすれば、わかりました、とクールに答えると思ったわ」
「お義母さん・・・シワンさんと相談してみます」
「そうしなさい」
「・・・」
ジョンシムに「離婚しなさい」と言われたソンランは途方に暮れた。
スンジャは思い切って薬局に入った。
「妊娠診断試薬を1つください。いくらです?」
「4千ウォンです」
スンジャが帰宅するとジョムスンは出かけていなかった。
スンジャはさっそく試薬を取り出す。
「こんな年になって・・・違うわ。絶対、違うはずよ」
と自分に言い聞かす。
そしてトイレに向かう。
そこにジョムスンが帰ってきた。
試薬の検査結果を診てスンジャは我が目を疑った。居間に戻り落胆しているとジョムスンから声がかかる。
スンジャはギョッとする。
知られまいとしてオドオドしているスンジャにジョムスンは言った。
「あの女の連絡先を知ってるかい?」
「えっ? 誰ですって?」
「あの女といえば決ってるだろ。クムスンの母親だ」
「知りませんけど、食堂で聞けば調べられます。調べましょうか?」
「・・・いいわ、聞かなかったことにして」
キジョンはウンジュを女性服売り場に連れてきた。
ヨンオクでなく自分の服を買ってくれるために連れてきたと聞いて、ウンジュは驚く。
「私はいいわ。最初から言ってよ。てっきりママのを選ぶと・・・」
「お前に買ってやりたいんだ。忙しいからと服を買ってやったこともない。
選んでみろ」
「急に何よ」
「そうか? 変か?」
「そうよ。行きましょう」
ウンジュは店員に言った。
「また来ます」
クムスンたちはバスに乗った。クムスンは言った。
「質問があるんです。どうして苗字がク氏なんですか?」
「叔父の苗字だ」
「それが気になった? 早く聞けばいいのに」
「他にはないの? 何でも聞け」
「あのね・・・私以外にも他の女性にもてたの?」
「当然さ」
「そうですか。そう思ってたわ。ハンサムだしね」
ジェヒは笑う。
「何人くらいと?」
「数えられない」
「まあハンサムだから――それじゃ、モテただけじゃなく付き合った人は?」
「・・・」
「いたでしょう?」
「・・・」
「最低1人は・・・」
「・・・」
「知っておくべきだと・・・」
「ああ・・・最近、1人いたんだけど、正式に付き合ったとも付き合ってないとも・・・曖昧な人が1人いる」
「・・・」
「昔からの知り合いで恋人に発展せず終わったよ。心ならずも辛い思いをさせ、傷つけてしまった」
「ええ・・・」
「事実どおりだ」
「ええ・・・ならいいの。ありがとう――先生、手の怪我のことを教えてくれたのは――副院長です」
「そうなの? 分かった。ありがとう」
「ええ。それに・・・院長と約束してたの。実は――フィソンの名前をかけて・・・2度と会わないと」
「・・・」
「だから、約束を守れなかったし、明日、私から話します」
「いや、俺が先に言うよ。そうしたい。その方がいい」
「分かったわ」
「それじゃあ――美容室を辞める?」
「たぶん・・・でも、実力があるから大丈夫よ」
「・・・俺も話がある――フィソンが見たい」
「・・・」
「フィソンに会わせて――会いたい」
「ええ。そうするわ」
二人はジェヒの病室に戻ってきた。
クムスンは言った。
「夕食までいたいけど、フィソンを迎えに行かないと。今は婚家に面倒を頼めないの」
「そうか・・・わかった。先に言ってくれればここに来ないで送ったのに」
「あなたは患者で私は保護者ですよ」とクムスン。
そこへミジャが入ってきた。
二人は驚く。
「母さん」
ミジャはクムスンを睨みつける。
「ナ・クムスン。なぜ、ここに?」
とっさにジェヒは言った。
「俺が連絡して来てもらったんだ」
「私があんなに注意したのに」
「すみません」
「すまない?」
「謝ることはない」とジェヒ。「なぜ謝るんだ?」
ミジャはジェヒを見る。
「俺が呼んだんだ。どうしても我慢できなくて呼んだんだ」
ミジャはクムスンに言った。
「来なさい」
「はい」
ジェヒはクムスンをガードした。
「どこへ連れて行こうというんです? ここで話してください」
クムスンが言う。
「あの・・・出ますから」クムスンはジェヒを見る。「離してください。先生」
ミジャはジェヒを睨みつける。二人の間を通ってクムスンは外に出る。
ミジャはクムスンの後を追う。
クムスンはミジャについて歩く。ミジャは立ち止まる。
「あなた!」
クムスンは頭を下げる。
「すみません、院長。すみません」
「すみません? 何が? 何がよ! 息子の名にかけて誓ったはずよ。
ジェヒに会わないと。どうなの?」
「・・・」
「違うわよね? 私を裏切らないわね? あなたは今日、見舞いに来ただけよね? そうでしょ。そうよね? 考えてみて。あなたが人間なら――恩をあだで返すつもり? 私がしてあげたことを覚えてない? 三振アウトのあなたを再び受け入れたのも・・・田舎物のあなたを――今日までしっかり美容師に育てたのは誰?」
「・・・」
「答えて。誰だと思うの?」
「院長。先生が好きなんです」
「何?」
「・・・」
「気は確かなの? どうかしてるわ。何? あなたは母親なの。よく考えなさい」
「・・・」
「好きだからどうするの?」
「会うのを許してください」
「会って、その次はどうするの? ああ――恋愛をすると? いいわ、しなさい。だけど、あなたの息子に恥ずかしくない?」
「院長・・・」
「私は男がいなくて、1人だと思ってる? あきれるわ。だから頭の黒い動物は信じられない。どうしてこんな形で私を裏切るの?」
「院長。私が頑張ります」
「何を? 何を?」
「もちろん、私には満足されないと思いますが」
「何? クムスン、何を言うの? クムスン、ふざけないで――あなたは、ただの美容師だった私が、どうやってここまで登ってきたと? ばかにしてるの?」
「・・・」
ミジャは肩でクムスンの身体を押しのけて歩き去った。
クムスンはバス停にやってきた。携帯が鳴った。
ジェヒからだった。クムスンは元気が戻った。
「メールを送るところよ。時間ないからそのまま帰るところです。明日の朝に行きますから」
クムスンはフィソンを連れて帰宅した。
ジョンシムは夕食の支度をしている。
「お義母さん、具合はどうですか?」
「あなたこそ、救急病院に行ってきた?」
「私は大丈夫です。熱も下がりました」
「それも知らなくて・・・フィソンはどう?」
「フィソン。”ただいま”は言った?」
「ふふふ――それじゃ抱っこしようか」
「お義母さん、大丈夫ですか?」
「もちろん、大丈夫よ。早く着替えてきて。さあ、フィソンも一緒に行ってきなさい」
「できました――お義母さんお手製のおからチゲです」
円卓に夕食が並んだ。
「やあ、匂いからして違うな」とピルト。「料理をするなんてもう大丈夫か?」
テワンが降りてくる。
「母さん、久しぶりの笑顔だ。ずいぶん多いな」
「ほんとにご馳走だ」
「みんなお義母さんが作ったんです。特に魚の煮物が最高です」
「それはいいな。久々にお前の笑顔が見れて。俺の心も晴れやかだよ」
「どうせなら笑って暮らさないとね」とジョンシム。「さあ、食べましょう」
「いただきま~す」
「ああ、うまいな――美味い食事に・・・お前の笑顔でうれしいんだけど、急に雰囲気が変わりすぎるから――ちょっと怪しいな」
ピルトはジョンシムを見る。
「何かあったか?」
「あとで話すから、まず食べて」
「いいから早く聞かせてくれよ。何かあるんだろ?」
ソンランはあらたまった表情になる。
「昼間、ソンランに会ったの。離婚するよう話したわ」
クムスンはスプーンを握った手を止め、ジョンシムを見た。
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