”藤井聡太二冠 vs 村山慈明七段”戦(横歩取り)
第79期 順位戦より
藤井二冠はトップクラスの棋士を相手に連敗が続いた上に、対局もしばらく途絶えた。
将棋対局に触れるのはずいぶん久しぶりとなった。
最近、藤井二冠は先手番を持った時、初手7六歩でスタートすることが多くなった。
2六歩と8四歩の一本やりだったデビュー時を思えば、棋風もだいぶ変容を見せてきた。自然体で多様性を身につけてきた(もあろうが)というより、一敗血に塗れた将棋とは徹底的に向き合わないと気のすまない、負けず嫌いの性格からも来ていると思うがどうだろうか。表情は穏やかでそう感じられないところは、大山永世名人や中原永世名人に通じるものがある。
”藤井二冠は将来どんな活躍を見せると思うか?”
の設問に対し、大活躍の期間は短いのでは(?)と見る向きも結構あるようだが、自分は多くの記録を更新し続けていく大器だと思っている。
上位棋士との最近の3連敗から”スランプ?”との見立ても出て来てるようだ。だが、藤井二冠にとって”課題”が”より鮮明に浮かびあがった”3連敗だった気がしている。絶対の自信を持っていた終盤の局地戦において、詰将棋のような一方の側から見る風景でなく、相手方にもまるで異なった終盤の風景があり、それらの綾(折衝)をうまく潜り抜けられなかったのがあの3連敗をもたらしたのでは…? 上位棋士は終盤において特有の勝負術を持つ魔術師と言ってよいだろう…。藤井二冠がその魔界に踏み込んで得たものは大きいと見たい。
この日も先手番7六歩スタートで、前回苦杯を喫した村山七段相手に横歩取りの戦いとなった。村山七段の得意とする戦型に7六歩であえて踏み込んだのだ。
前回、横歩取りで藤井二冠に完勝している村山七段にとってむろん望む戦いであったろう。
横歩取り将棋は藤井二冠にとって相性が悪い。他の戦型での勝率は軒並み8割を誇るのに、この戦型では確か6割前後の勝率だったかと思う。
例によってAIも動かせないへぼ将棋マニアの自分にこの将棋の解説はできない。
しかし、この日の藤井二冠は攻めと守りでバランスの取れた将棋を指した。
横歩取りの将棋は飛車と角に桂馬などの飛び道具が躍動し、一手間違えば敗勢に追いやられる物騒な将棋である。
飛車と角が持ち駒になりやすいことから、守りの金銀は集結して守りに付くことができない。敵の侵入を許さないようバランスよく守備を行うほかない。
なので派手な戦いにするのも地味な手作り将棋にするかは両者の呼吸で決まってくる。
この日は手作り将棋となった。村山七段は藤井二冠にぐいぐい来てほしかっただろうが、藤井二冠は石橋を叩く細かな戦いを目指した。最初こそ飛車は派手に動き回ったが、相手のすきを窺うより、飛車は自陣に引き、手を作り合う戦いに持っていった。双方、自陣に角を打ちあったのもその流れだ。
結果、前半は長く、中盤は短く、終盤はほとんどないに等しい将棋で藤井二冠が完勝してしまった。攻防共に見込みがなくなり、村山七段が投了を告げたからである。
中盤の折衝で優位を築き、どんどん駒を捨てて寄せる藤井二冠特有の終盤は見られない将棋となった。上位棋士相手にこんな将棋が見られるようになったら、藤井二冠黄金期の始まりとなるだろう。
藤井二冠はトップクラスの棋士を相手に連敗が続いた上に、対局もしばらく途絶えた。
将棋対局に触れるのはずいぶん久しぶりとなった。
最近、藤井二冠は先手番を持った時、初手7六歩でスタートすることが多くなった。
2六歩と8四歩の一本やりだったデビュー時を思えば、棋風もだいぶ変容を見せてきた。自然体で多様性を身につけてきた(もあろうが)というより、一敗血に塗れた将棋とは徹底的に向き合わないと気のすまない、負けず嫌いの性格からも来ていると思うがどうだろうか。表情は穏やかでそう感じられないところは、大山永世名人や中原永世名人に通じるものがある。
”藤井二冠は将来どんな活躍を見せると思うか?”
の設問に対し、大活躍の期間は短いのでは(?)と見る向きも結構あるようだが、自分は多くの記録を更新し続けていく大器だと思っている。
上位棋士との最近の3連敗から”スランプ?”との見立ても出て来てるようだ。だが、藤井二冠にとって”課題”が”より鮮明に浮かびあがった”3連敗だった気がしている。絶対の自信を持っていた終盤の局地戦において、詰将棋のような一方の側から見る風景でなく、相手方にもまるで異なった終盤の風景があり、それらの綾(折衝)をうまく潜り抜けられなかったのがあの3連敗をもたらしたのでは…? 上位棋士は終盤において特有の勝負術を持つ魔術師と言ってよいだろう…。藤井二冠がその魔界に踏み込んで得たものは大きいと見たい。
この日も先手番7六歩スタートで、前回苦杯を喫した村山七段相手に横歩取りの戦いとなった。村山七段の得意とする戦型に7六歩であえて踏み込んだのだ。
前回、横歩取りで藤井二冠に完勝している村山七段にとってむろん望む戦いであったろう。
横歩取り将棋は藤井二冠にとって相性が悪い。他の戦型での勝率は軒並み8割を誇るのに、この戦型では確か6割前後の勝率だったかと思う。
例によってAIも動かせないへぼ将棋マニアの自分にこの将棋の解説はできない。
しかし、この日の藤井二冠は攻めと守りでバランスの取れた将棋を指した。
横歩取りの将棋は飛車と角に桂馬などの飛び道具が躍動し、一手間違えば敗勢に追いやられる物騒な将棋である。
飛車と角が持ち駒になりやすいことから、守りの金銀は集結して守りに付くことができない。敵の侵入を許さないようバランスよく守備を行うほかない。
なので派手な戦いにするのも地味な手作り将棋にするかは両者の呼吸で決まってくる。
この日は手作り将棋となった。村山七段は藤井二冠にぐいぐい来てほしかっただろうが、藤井二冠は石橋を叩く細かな戦いを目指した。最初こそ飛車は派手に動き回ったが、相手のすきを窺うより、飛車は自陣に引き、手を作り合う戦いに持っていった。双方、自陣に角を打ちあったのもその流れだ。
結果、前半は長く、中盤は短く、終盤はほとんどないに等しい将棋で藤井二冠が完勝してしまった。攻防共に見込みがなくなり、村山七段が投了を告げたからである。
中盤の折衝で優位を築き、どんどん駒を捨てて寄せる藤井二冠特有の終盤は見られない将棋となった。上位棋士相手にこんな将棋が見られるようになったら、藤井二冠黄金期の始まりとなるだろう。