韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(112)
電話で冷たく断られたクムスンだが、ベンチに座りジェヒが来るのを信じて待ち続けた。
何度も立ちあがり、ジェヒのやってくる方角に目をやったが一向に現れない。
それでもクムスンは辛抱強く待った。携帯を見つめ涙が出てくるほど待った。
携帯を見つめ、涙を流しながらジェヒの言葉を思い返した。
サンダルを履かしてくれた日。
――昔から悪いだろ。だから”悪い白菜”なんだよ。でもよくやった。そのぐらいしないと。
――そうよ。そうでしょ? 悪くないよね。
車で美容院から連れ出された日。
――手術はダメだ。俺がさせない。ダメだと言え。ダメだと断れ。
自分のことを一生懸命思ってくれたジェヒ。
悲しさをこらえきれないように顔を上げた時、視野にジェヒの姿が入ってきた。
クムスンは涙をぬぐって立ち上がった。ジェヒに対し、嬉しさを表わした。
ジェヒはむっつりした顔でクムスンの前に立った。
「何の用だ?」
「手術の話――先に話すつもりだった」
「・・・」
「本当よ。私からいうつもりだったの」
ジェヒは黙ってクムスンを睨みつけている。
「ごめんなさい。仕方がなかったの。知らんぷり出来なかった。だけど私を生んでくれたから」
「・・・」
「ごめんなさい。先生の言うことをきかなくて」
「それを言うために来たのか? そのために1時間も待ってたのか?」
「・・・」
「そうなのか?」
「・・・」
「ところで、なぜ謝る? 謝られる覚えはない。俺たちに何の関係がある。関係などない。手術するのはお前だ。俺に何の資格がある? 俺には関係ない。もういいだろ? 行くぞ」
ジェヒは背を返そうとする。
「先生!」
クムスンは叫んだ。ジェヒは足を止めた。
「関係あるわ。あなたが――ダメだと言ったら・・・許可してください」
「・・・」
「許可してください、先生」
「どうしてだ?」
ジェヒは振り返る。
「なぜ? なぜ俺の許可がいる? 答えろ! お前の答えが必要だ」
「・・・」
「なぜ俺の許可がいる?」
「・・・」
ジェヒはクムスンに歩み寄った。
ふたりは間近で見つめ合った。
ジェヒはクムスンの両頬に手をあてた。クムスンにそっとキスした。クムスンは目をつぶり受け入れた。
ジェヒの口が離れる。クムスンは目を開けた。その口にジェヒはもう一度キスをした。それから強くクムスンを抱きしめた。
「許可をしたって? 父さん、どうかしてるよ」
テワンは声を荒げた。
「こいつは親に向かって大声なんかあげて」
「興奮するのも当然だろ。"絶対ダメだ”と泣くほど叱るべきだ。それを許可だなんて」
「大丈夫だからだ。もう決ったことだ。お前の出る幕じゃない」
「そうよ。そのくらいにしなさい。好きで許可などしてないわ」
「呆れるな。母さん、嫁だと思って簡単に決めたんだろ? 自分の娘なら許可したと思うの?」
「この子は――私も腹立たしいわよ」
「腹を立ててどうする。何としても止めないと」
ピルトは黙ってテワンを睨みつけた。
クムスンとジェヒは歩いて車のところへやってきた。
ジェヒが助手席を開けるとクムスンは黙って車に乗った。ドアを閉めてジェヒは運転席に回りこむ。乗り込んで訊ねる。
「家に帰るだろ」
「・・・はい」
「夕食は?」
「まだです」
「食べてないのか?」
「・・・はい」
「食べずに何をしてた?」
「あなたが怒るから」
「・・・」
「お腹が空いたわ。食べさせて」
ジェヒは笑った。
「分かった。何がいい?」
「手術するんだから肉を食べないと」
「よし、そうするか」
二人は焼肉を食べに入った。
「たくさん食べろ」
クムスンの食欲は旺盛だった。
「この通り食べてます。先生は食べないんですか?」
「俺はもうすませたんだ」
口を動かしながらクムスンはジェヒを見る。
「もう決心したんだろ?」
クムスンは口を動かしながら頷く。
「きっとうまくいくさ」
ジェヒの口調はサバサバしていた。
「もちろんです」クムスンは話を変えた。「肉がおいしいです。高級点は違いますね」
「あのな・・・この前は脅かすつもりで不安になる話をしたけど、本当は――」
クムスンはジェヒを見る。
「腎臓は1つでも問題はない」
「・・・」
「通常、腎臓は1つになるともう片方の機能を80パーセント以上果たす。80パーセントなら日常生活も問題はないし、腎不全も決して・・・」
「遺伝ではないと? 知ってますよ」
「・・・」
「私がそれも知らずに手術をすると? 肉をもっと焼いて」
「ああ、そうだな・・・」
「にんにくものせて。ほら、ちゃんと見てて。肉は続けて食べないとどんどん味が落ちるんですよ」
「分かったよ。のせてるよ」
「サンチュは? サンチュも注文して――あとネギの細切りも」
ジェヒはそれらを注文し、クムスンに訊ねる。
「肉も追加するか?」
「食べてからね。ほんとにおいしい」
元気の出たクムスンを見ているうち、ジェヒは思った。いろいろ悩んだようだが、これで何もかも吹っ切れたんだな、と。
「たくさん食べろ。ほろ、これだ」
クムスンは顔をあげて言った。
「ちゃんと焼いてよ」
「分かった・・・」
「これ食べて」
クムスンは唐辛子をジェヒの口もとにのばす。言われるままにジェヒはかじる。
すると、
「食べかけよ」
とクムスン。
潔癖症のジェヒは歯を剥きだしで怒る。
クムスンはそれがおかしくてならない。
何気にバッグを覗いて、ソンランは覚えのない封筒を見つけた。中からはシワンの手紙が出てきた。
――方法が思いつかずに、俺には両親を説得させる知恵も時間も――当時はなかった。何日も悩んだ末に出した結論が、こんなやり方になってしまった。全部、俺のせいでお前が怒るのも当然だ。正面突破――お前ならそうしただろう。俺の限界だよ。克服するため努力中だ。それなのに昨日は帰ってくれて本当にありがとう。本当に悪かった。本当に愛してる。こんな俺を許してくれ。 シワン
ソンランはシワンをカフェラウンジに呼び出した。
「座って」
シワンは腰をおろした。
「手紙読んだ」
「そうか。じゃあ、許してくれるの?」
「私は許せばいいけど、あなたのご両親は私たちを許してくれる?」
「話そうと?」
「どうするつもりでいる? 一生、隠すの?」
「できることなら・・・できればな。最後まで知らなければいいと思っていた」
「軽はずみな人ね」
「・・・」
「私も正直――すぐにお二人に話す勇気はないわ。だから腹が立つ」
「・・・」
「もう堂々と対応できないわ。私はもう毅然として意見を言えないと思う。結局、ご両親を騙して詐欺結婚した女でしかない」
「君は騙してない」
「離婚して子供がいるのも私よ。それにお二人が――あなたに責任があるという?」
「・・・」
「結婚前なら許可が必要だけど、今は許しを請う問題よ。謝罪をするの」
「・・・」
「なぜ私が? 私が何をしたというの? 離婚が罪なの? それが一番腹が立つわ。誰だって簡単に受け入れないわ。私ができることはただ謝り続けるだけよ。罪を犯せば謝る問題だけど」
「本当にごめん。すまない。本当に」
「いいわ。いまさら仕方ないわね。受け入れないと」
ほっとするシワン。
「他に隠し事は?」
「ないよ」
「・・・」
「本当にないって」
「早く言いなさい。私は遺伝的に忍耐力がないから、どうせ殴られるジャブより、強いストレート一発がいいの」
「ないよ。本当にないよ」
「他にもあったらただじゃ置かないわ」
クムスンを送ってきてジェヒの車は止まった。
「健康診断は?」
「前に1度したけど――念のためもう一度するそうです。でも、とても健康です」
「HLA検査は?」
「何です、それ」
「いいや。そういえば貧血があるんだよな」
「はい。だからチャン先生が鉄分剤をくれました。手術に備えて飲めと」
「先生が――すでに鉄分剤を渡したと?」
「・・・」
「そうだな。飲まないとな。しっかり飲んでる?」
クムスンは頷く。
「入院は一週間くらいで――退院して1ヶ月で回復する」
「・・・」
「最高の医療陣がつくから心配はいらない。風邪を引いたらいけないから、エアコンを付けて寝ないように。夜更かしもダメだし、よく寝ないとな。いいな?」
「はい。椅子をお願い」
クムスンは車をおりた。ジェヒもおりた。
「病院には何時に?」
「美容室が終わったあとに」
「そうか。なら、来たら電話して」
クムスンの見送りを受けてジェヒの車は走り去った。
クムスンから電話で手術日が決まったと知らされたジョムスンは部屋に入ってひとりでオイオイ泣いた。
クムスンと別れたその足でジェヒはキジョンの部屋を訪ねた。
「聞いたのか? 移植が決った」
「聞きました。来週の月曜ですね」
「今朝、主治医から聞いた」
「すでにHLA検査を?」
「すんでる」
「・・・結果は?」
「とてもいい。6項目で4つ合ってる」
「手術チームの構成は?」
キジョンは机上から書類を手にする。
「オ・ミノが手術をする」
ジェヒに見せた。それを見たジェヒは黙ってテーブルに置く。
「俺も特別に気を遣っている。心配ない」
ジェヒは改まって切り出す。
「断念させることが――できませんでした。とてもかわいそうでやめさせたかった。孤独な彼女の隣で守りたかったのに・・・奥様のことはかんがえませんでした。奥様を思えば――結論が出なかったからです。ですが、移植が決定した以上、受け入れます。彼女が決めたから――心から・・・手術の成功だけを願っています。どうかよろしくお願いします」
「俺は担当しないが――分かった。出来る限りのことはする」
「はい。これで失礼します」
出ていく時、キジョンはジェヒを呼び止める。
「ありがとう」
病院にやってきたクムスンはヨンオクの病室の前まできたが、入るのをついためらった。検査があって、時間にゆとりがあるわけでもないし、結局とりやめた。
戻っていく時、別のエレベーターでウンジュとミジャが降り立った。
「この際だし、休業して内部修理でもする?」
「ユン室長の研修で?」
「ヨンオクさんの手術であなたも休むし・・・ユン室長は研修だし、クムスンまで腰の手術を受けるわ。1ヶ月休むそうなの」
「クムスンが?」
ウンジュは驚きを見せた。自分はぜんぜん聞いていなかったからだ。
クムスンが検査を終えて出てくるとキジョンが外で待っていた。
「終わったら立ち寄ろうと思ってました。お話があるんです」
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