韓国ドラマ「ただひとつの愛」第5話(エピソード5)
〇主な登場人物
イ・ヨンソ(シン・ヘソン)
キム・ダン(エル)
チ・ガンウ(イ・ドンゴン)
クム・ニナ(キム・ボミ)
チョン・ユミ(ウ・ヒジン)
フ(キム・イングォン)
チェ・ヨンジャ(ト・ジウォン)
クム・ルナ(キル・ウネ)
パク・グァンイル(イ・ファリョン)
キ・ジュンス(イ・ジェヨン)
他
第5話(エピソード5)
ガンウに向けて”アカンベー”の顔をダンが向けると、その腕をヨンソはビシッと叩いた。
「あなたも目障りよ」
そう言って歩き去る。
ダンはガンウを見た。
「出口はあっちです」
「分かってます」
ガンウはめんどくさそうに答え、ヨンソに目をやった。そそくさ邸を出ていった。
部屋に戻ったヨンソはベッドに倒れこんだ。大きく息をついた。目をつぶった。
「何を恐れてる?」
ガンウの言葉が耳の奥で響き返る。
瞼の裏にはシャンデリアが砕け落ちて来るさっきの場面がいつかの悪夢のように蘇ってきた。
悪夢のような現実の記憶に晒された後、ヨンソは目を開けた。
ダンは床に散らばったシャンデリアの破片の中を自分を抱いて歩いた。破片で足をケガし、血を流しながら。
「大丈夫?
そう言いながら自分を気遣ってもいた。
そんな行為にもヨンソは恩を売られている気分で反発を覚えていた。
ヨンソは握りこぶしで一点を睨んだ。
「ふん、インチキ宗教め。あれも恩を売ったつもりでしょ。でしょ。バカで変態のダン…」
自室に戻ったダンはケガした足の裏を膝にかけて見た。ガラスの破片を抜く。
「いたっ!」
今まで味わったことのない痛みが身体を走る。
しかし、破片に目をやった後、足の裏に目を戻すと血も傷口も痛みもみるみる消えだす。足の裏は数秒で元に戻ってしまった。
ダンは軽く頷いた。
ヨンソは身体を起こした。
起こしてから苦い表情を見せる。
ダンのケガがずっと心配でならなかったからだ。
そんな自分が”らしくない”と思いつつ頭から離れなかったのだった。
ヨンソはベッドをおりた。小物の入った引き出しを開けた。
薬箱を握って部屋のドアを引いた。
するとドアの外にダンが立っている。
ヨンソは一瞬うろたえ、思い直す。
「何か用?」
クールな声で訊ねる。
「き、君こそ」
ダンはうろたえた声で訊き返す。
その後、2人は黙りあう。そっぽを向き合う。
しばし空隙の後、ダンは左手に握ったお盆を差し出す。
「カモミール茶だ」
マグカップの上で香りが立ち昇っている。
ヨンソは黙ってダンを見つめた。