雨の記号(rain symbol)

URAKARA10話(3)







URAKARA10話(3)
URAKARA episode 10 (3)




 疑わんばかりの問いかけにニコルはジヨンに近づいた。彼女の肩に腕を回して大きな声で答えた。
「そんなことは、し・ま・せ・ん!」
 そこへ関西のぞみが飛び込んできた。
「何してんの! はよせな、遅れるで!」
「は~い!」
 メンバーは言い争うのをやめ、出かける支度にかかった。
 ニコルはジヨンに答えたとおり、「(悪魔のミッション)なんてやりたくないわよ」の姿勢だったのだが、彼の映像を見たとたん急に様子が変わってきて・・・!

 テレビの収録に入る前、五代玲央がKARAの面々に挨拶にやってきた。
「初めまして、五代玲央です」
 彼の姿を見たとたん、ジヨン、ギュリ、ハラ、スンヨンの四人は、それぞれその気十分だ。憧れの宇宙飛行士に会えて嬉しそうなジヨン。姉御肌のギュリは舌なめずりを見せる。女豹のように挑発ポーズを取るハラ。スンヨンは彼のイケメンぶりにうっとりだ。しかし、ニコルは違うはず・・・、と思ったら、彼女もまた関心ありありになってしまっている。ここへやってくるまでに、彼女の中で(何が起こった?)のか。
 自分に絶対の自信を持っているらしい彼はさわやかな笑みをみなに振りまいた。
「よろしくお願いします」






 五代玲央とKARAの出演によるトーク番組が始まった。
「それでは、今をときめく五代玲央さんとトークをしていただくみなさんを紹介しましょう。KARAのみなさんです」
「こんにちは。KARAで~す」
 KARAのメンバーは視聴者に手を振って挨拶した。
「宇宙の疑問。まずはギュリさんから質問をお願いします」
 ギュリは照れ臭そうに切り出した。
「あ、あの・・・地球って、やっぱり・・・青かったですか?」
「ええ。青かったですよ」
「ああーっ」
 やっぱりそうだったんだ・・・メンバーは顔を見合わせ、オーバーに感激しあった。
「あ、ありがとうございました」
 ステージの袖で見つめている関西のぞみは嘆いた。
「あかん。緊張し過ぎやで!」
 次にスンヨンが質問した。
「五代さんは、どんな女性が・・・タイプですか?」
「う~ん・・・」しばらく考え、顔を上げて彼は答えた。「優しい人が好きですね」
「ああーっ」
 メンバーは再び手を叩き、感激しあった。
 次はハラ。
「あの・・・五代さんは・・・恋人、いますか?」
 彼は笑顔になり、答えた。
「今は宇宙が恋人です」
「ああーっ」
 やっぱり同じ乗りのリアクション。
 関西のぞみは落胆した。
「あの子ら、緊張し過ぎておかしなってるやないの」
 ジヨンは質問を我慢している。大人の男女の話で、流れが流れだけに質問を入れられない。
「では、ニコルさんから何か質問ありますか?」
 ニコルは飄々とした調子でとっぴな質問を行った。
「宇宙人は、テレパシー使いますか?」
 五代玲央はその質問に「おやっ?」という顔になった。
「と、いうと・・・?」
「え~っと、私・・・いつも星を眺めながら、宇宙人にテレパシー送ってるんです。でも・・・答えが返ってこなくて・・・えーっ・・・」
 ニコルの面白い話題に司会者が関心を示した。
「宇宙人にはどんなメッセージを送ってるんですか?」
「教えてください」
 五代玲央も興味深そうにした。
「それは・・・ん~・・・恥ずかしいから、ヒミツで~す。キャッ! あっはは!」
 ニコルは笑顔で唇の前に人差し指を立てた。手を重ね、胸に引き寄せた。
 他のメンバーたちは手を叩きながらおかしそうにした。しかし、その気持ちの中は・・・?
 関西のぞみは嘆きをこえて呆れた。
「完全におかしなってるやん・・・!」
 スタジオではメンバーたちの笑い声が響き続けている。
 五代玲央はニコルを見つめながら、愉快な人だ、という表情をした。

 楽屋に引き上げる時、KARAの面々は落胆していた。
「ああーあ、緊張してぜんぜん話せなかったなぁ」とスンヨン。
「私もボーっとして何にも覚えてないよ」とハラ。
「これはミッションよ。頑張らなきゃ」とギュリ。
 頭を叩くハラ。
「でも、どうすればいいの?」とギュリ。
 そんな話をやりとりしながら通路を曲がると彼女らを待っている者がいる。五代玲央だった。メンバーは立ち止まった。嬉しそうにした。
 彼は彼女らに近づいてきた。
 五人は彼を待ちながら自分の出番に胸をおどらせた。
 彼はメンバーの前までやってきた。
「みなさん、お疲れ様でした」
 礼儀正しく頭を下げる。
 メンバーは自分を精一杯主張しながら言葉を返した。
「お疲れ様でした」
「じつは・・・」彼は切り出した。「ニコルさん」
 後ろにいたニコルは人形のように角ばった動きで顔をあげた。そのまま社長2号のように動いて五代玲央の前に出た。
 ハラはブスッとした顔をニコルの背中に向けた。
 彼の前に立ってニコルは返事した。
「はいっ?」




 彼は言った。
「今晩、お時間ありませんか? あなたともう少しお話がしたくて・・・!」




「私と? ほんと?」
 ニコルは後ろの仲間を振り返った。満足そうな笑みを彼に向けた。しかしその時、ギュリもハラもおもいっきり不快そうな表情を見せた。
「うふふ・・・!」
 ニコルも彼におもいっきり媚を売った。 

 食卓が映る。合宿所での夕食風景だが卓上は質素である。メンバーはみんな表情が暗い。箸を動かす手に力がない。お通夜の様相である。
 そしてそこにはニコルがいない。
 ハラが言った。
「ニコル、ちょっとずるくない?」
「あんなにミッション嫌がってたのにね」
 とスンヨン。
「大喜びでデートに行っちゃってさ!」
 箸を持つ手を止めてジヨンもつまんなさそうに言う。
 ギュリは大きなため息をついた。
「いいなあ~五代さんとデート・・・!」
 みんな天井を見て口を揃えた。
「いいなあ・・・!」

 その頃、ニコルと五代玲央はグラスを重ね、食事を楽しんでいた。
 ニコルは訊ねた。
「どうして私に?」
「どうしてだろう・・・直感っていうのかな・・・」
 ニコルは嬉しそうにした。
「ビビーッと来た?」
 五代玲央はニコルを見て笑った。
「・・・かもしれない」
 グラスを置いて窓の外へ目をやった。窓の外は都会の夜景が広がっている。
「宇宙へ行くとこんな星がたくさん見れるんです」
「ほんと?」
「街の明かりひとつひとつに家族が暮らしているのと同じように、輝く星にもそれぞれ宇宙人が暮らしているんです」
 それを聞いて、ニコルは嬉しそうにした。
「やっぱり、宇宙人、いるよね」
「もちろんです」
「ああ、私も宇宙に行って見たいな~」
 夢を馳せるようなニコルの表情をじっと見つめる五代玲央だった。

 朝になった。
 関西のぞみが元気よく合宿所に飛び込んできた。
「みんな、オハヨー! さあ、今日は久々のライブということで、気合入れて行くでーッ!」
 活を入れてメンバーを見ると、何やら様子がおかしい。メンバーは1対4に分裂し、ぬいぐるみなどの武器を手ににらみ合っている。




「何? このいやな空気は・・・?」
 関西のぞみは頭上にかかげた両腕をそっとおろした。
「ニコルのせいです」スンヨンが言った。
「私たちが五代さんに会おうとすると、邪魔するんです」
「だーって、五代さんはニコルがいいって言ってたもん」
 ジヨンが異論を唱えた。
「そんなの、ミッションが終わるまでわからないでしょう!」
 そう言ってぬいぐるみをニコルの足もとに投げつけた。
 ギュリも続いた。
「そうよ。みんなで会うぐらいいいでしょう!」
「ダメっ!」
 ニコルは叫んでメンバーに突進した。
 押し合いへし合いの騒ぎになった。
 関西のぞみがそこに割って入った。
「落ち着け落ち着け落ち着け! アイドルが男のことで喧嘩すんなって!」
 しかし、メンバーらは争うのをやめない。
「社長! この子らを何とかしてやってください!」
 関西のぞみはそう叫ぶが、社長2号は平然としたものである。
「心配することもないでしょう」
 お得意のポーズで人差し指を上に突き上げた。
「どうせ、日本にいるのもあと一週間ですし・・・!」
 それを聞いて、メンバーは争うのをやめた。
「えーっ!」
 ハラを先頭にみなは社長2号のそばに走り寄った。取り囲んだ。
 関西のぞみが訊ねた。
「一週間って・・・何が?」
「あれっ?」社長2号はとぼけた調子で切り出した。「言ってませんでしたっけ? 来月以降、スケジュールを入れていない理由・・・!」
「何でしたっけ?」
「じつは・・・アメリカを皮切りに、世界8カ国での同時デビューが決まったんです」
 メンバーは社長2号に顔をくっつけんばかりにして訊ねた。
「セカイ、デビュー!?」
「ジャジャーン!」
 社長2号はニューヨーク行きのチケットをみなの前に取り出した。




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