韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(52)
ピルトはフィソンを抱き、クムスンのパーマかけを興味深そうに眺めている。
テワンが訊ねた。
「何だ、何やってるの」
「見たら分かるでしょ。パーマをかけてるの」
「大事な髪をまかせて大丈夫か、母さん?」
「うるさいヤツだ」ピルトが言った。
「お義兄さんも、次どうです?」
「いや、俺はけっこうだ。お気持ちだけで十分です」
「残念だわ。シャンピーテストも1度で合格して上手なのに」
とたんにジョンシムが悲鳴をあげた。
「クムスン、痛いわよ」
「ごめんなさい、お義母さま。ほかは大丈夫ですか?」
「どうなるか不安で仕方がないわ」
「・・・」
どうにかこうにかでジョンシムの髪は仕上がった。
ピルトとテワンに仕上がり振りを見せに戻ってくる。
ジョンシムは鏡の前で髪に巻かれたタオルを取った。
「ジャーン。どうですか。お義母さん」
髪が今のヤンキーみたいにふくれあがり、ジョンシムは判断に苦しんでいる。
「どうですか?」とクムスン。「今は濡れてて強くかかってるようですが、思ったよりも自然でいい出来ですよ」
クムスンびいきのピルトも相槌を打つ。
「そうだよ。なかなかいいぞ。長く持ちそうだ」
「・・・」
テワンは笑って言った。
「まるでブッシュウーマンだ」
ジョンシムはテワンを見る。
「それは何?」
「ブッシュマンの妻さ」
「違いますよ」クムスンはあわてて否定する。「今は濡れているからです。乾いたら適度によくなるはずです」
「私にもわかるわよ」ジョンシムはクムスンを見た。「乾いたらどうなるか、あなたにはわからないの?」
クムスンの顔から笑みが引っ込んだ。
どうやらジョンシムの目には思ってた以上、出来はよくないと映ったようだ。
「そんなに気に入りませんか?」
「当たり前でしょ。これがいいと言うなら、すぐに美容師をやめなさい」
「・・・」
「これでやっていけるとほんとに思ってるの?」
「そんなに――変ですか?」
テワンを見た。
「変ですか?」
「当然だろ。ちぢれすぎの不規則なカールだ。デザインどころか、ダサさの極みだぞ」
テワンの言葉ににジョンシムは髪をさわりだす。
「ほんとに心配だな。これで美容師になれると?」
ピルトが助け舟を出す。
「そうかな・・・? 俺はけっこういいと思うがな。長持ちしてよさそうじゃないか」
「悪いけどもとに戻してよ」
クムスンは申し訳なさそうに答える。
「今すぐは、できないんです・・・髪が痛んでるから数日待たないと」
「明日、ソンランが来るのにどうするのよ。困ったわ・・・」
クムスンはショボンとなった。
ソンランはシワンに電話を入れた。
明日の挨拶の話だった。
自分について正直に話すのにためらいがある。二人で決めたこととはいえ、行くべきなのか行かないべきなのかで彼女は迷っていた。後のことに不安を覚えていた。
シワンは家のそばで電話を受けた。
「今から話すつもりだよ。話を聞いたら、すぐには会おうとしないかもな。ああ、また電話する。・・・メールでも何でも・・・ともかく連絡するよ。・・・ああ、わかったよ」
電話を切ったシワンは自宅の前で息を整えた。
パーマの出来が芳しくなさそうなのに気付いて、クムスンはすっかり落ち込んでいる。落ち込みすぎて、ジョンシムの顔をまともに見られない状態だ。
テワンが言った。
「母さん・・・こうなったら諦めるしかないよ。どうにもならないんだから」
「何でだ? 個性があっていいのに」
ピルトがクムスンを擁護する。
ジョンシムは、あなたにそんな目があるの、と言わんばかりにピルトを見る。
「そんなににらむなよ」
「お義母さん、おこげ湯でも?」
「いらないわ」と答えたジョンシムはいきなりヒスを起こした。「だから、”やらない”って言ったじゃない。突然パーマなんて言い出すから悪いのよ」
クムスンはうなだれている。
「あなたには前から驚かされるけど、まさか私の髪にまでそれが及ぼうとは・・・」
「すみません。お義母さんに喜んでもらいたくて・・・」
「望んでないわ。今のままで十分なのよ。いつもどおりにしてればいいの」
ピルトは呆れた声を出した。
「だって女にとって、髪はほんとに大事なものなの。いいわ。あなたももういいから食事しなさい」
「ただいま」
シワンが帰ってきた。
「お食事は?」とクムスン。
「食べてきました。続けて」
「ちょっといいか」
ピルトはシワンに切り出した。
「お前が客観的に見て、母さんの髪はどうだ?」
「あなたってば、もうっ!」とジョンシム。
母親を見てシワンは苦笑いした。
「ほら、何も言えないじゃないの」
「そんなことない」とシワン。「母さん、いいじゃないですか。少し、かかりすぎたみたいだけど、悪くないですよ」
それを聞いてクムスンは嬉しそうにした。
「あなたも父さんと同じね」とジョンシム。「私の味方はテワンだけよ」
ここぞとテワンは言った。
「見る目がないからあんな女に・・・」
「何だ?」
「いや、冗談さ、冗談。弟嫁の作品なんだよ」
シワンはあらためてジョンシムの髪を見た。
「母さん・・・いいですよ。そんなに悪くない・・・クムスンさん、短い間で立派な出来ですよ」
「そうね、立派よ」とジョンシム。「そういうことしましょう」
シワンは笑った。
「ちょっと着替えてきますから」
クムスンに代わりシワンは両親の部屋にお茶を運ぶのを引き受けた。
部屋に入ってきてシワンは言った。
「母さん、その髪そんなに悪くないですよ」
「もういいわ。言っても仕方ない」
「父さ・・・」
シワンが話を切り出そうとした時、ジョンシムも何か話しかけた。
「先に話して」とジョンシム。
「いえ、母さんから」
「ソンランは何時ごろに?」
「おそらく、明日の夕方ごろでしょう」
「この髪だし・・・帽子をかぶろうかしら」
「もう言うなと言いながら、何だかんだと・・・まったく」
「だってデザイナーなのよ。きっと目も高いだろうし・・・」
ジョンシムはシワンの方を見た。
「父さんは結婚して1年間は――同居を望んでるけど、あなたはどう?」
「まだその話はしてないんだけど・・・」
ジョンシムはピルトを見た。
「シワンは分家するつもりみたいよ」
「違いますよ。そうではなくて・・・」
「いいのよ。私もそれがいい」
「一生じゃなくたったの1年だけだ」とピルト。
「1年でも・・・」
「家族になるんだ。一緒に暮らすのも必要さ。クムスンが結婚してソウルに来る時――俺が原則だと言い切ったのに、ここで長男を分家させると?」
「・・・」
「ジョンワンがあんなことになって、むしろ一緒に住ませてたらとどんなに胸が痛かったか」
話が微妙にそれたため、シワンは大事な話をするタイミングを逃がしてしまった。
クムスンはテワンの帰りを待った。テワンが帰ってくると先日押しかけていったことを謝りに行こうと切り出した。
テワンはクムスンを難しい顔で見た。
「だって、明日顔を合わせたら気まずいでしょ。思いません?」
「だからってわざわざ謝罪に行くのか? それに俺は謝る気などない。その気がないのに謝ってどうするんだ」
「あれは明らかに私たちが悪かったわ」
「・・・最近、髪をほどいてるな」
「これ?」
クムスンは髪に手をやる。
「髪を洗ったからよ」
「うっとうしいから、ちゃんと結んでおけよ」
テワンは背を返し、家に入っていった。
キジョンがヨンオクの病室にきた。
キジョンはヨンオクが突然倒れ、透析を突然拒んだりしたのは、何かあったからだろうと考えていた。
「何かあったんだろ? 何があったか話してくれ」
ヨンオクは顔をしかめた。
目をつぶり、捨てた娘の話を始めた。
「私の子・・・元気に育ったかな?」
「・・・」
「もう23歳になるわ。一番きれいな年頃なのに・・・何をしてるかしら? 学生かしら? もう卒業かしら? 父親も、母親も・・・死んだと思ってる」
「・・・」
「だけど・・・あの子を大切に思う――おばあさんがいるから、大丈夫ですよね」
「・・・」
「こんなことなら・・・もっと前に、1度会うべきだったわ。こんなことなら・・・再発する前に1度でも、顔だけでも見ておけば・・・1度だけ顔だけでも・・・」
「ヨンオク。それなら今からでも・・・」
「ダメよ。もうダメよ。もう絶対ダメなのよ」
「・・・」
「あなたも分かるでしょ? 両方の腎臓が悪い今になって、娘を捜したら、結局、腎臓目当てだと思われるに決ってる。わかるでしょ?」
「・・・」
「どうせ・・・私は死んだと思ってるわ。これでいいのよ。このまま永遠に私は――あの子にとって死んだ人でいた方がいいの」
ヨンオクは涙を流し、泣き続ける。
「どんなにかわいいかしら・・・赤ちゃんの時もかわいかった子よ。目も大きくて、鼻筋も通ってて――私はどうして・・・生まれたばかりの子を捨てて逃げ出したのかしら」
クマのやりたいようにさせてやりなさい、とジョムスンはスンジャに言った。しかし、スンジャは折れる様子を見せない。
ジョムスンは一方でクマを慰め、励ますのだった。
ウンジュは失恋の痛みを味わっていた。涙のほかに彼女の悲しさを癒すものはないようである。
部下に指示を出しているソンランの目にクムスンの姿が飛び込んでくる。
目が合うとクムスンはペコンと頭を下げた。自分の非はすぐ行動で示す娘だった。
「私に会いに?」
「はい。お元気でしたか?」
「あなたも?」
二人は飲食店に落ち着いた。
「不在の時も多いのに、連絡もなくいらっしゃるとは・・・」
「電話しようと思ったけど、お義兄さまに番号を聞けなくて・・・だけど私と下の義兄が失礼してしまったのを話さないと」
ソンランは笑みをたたえている。
「あの日のことをお詫びしたくて。すみませんでした」
ソンランは笑みで頷く。
「私たちが誤解しちゃって・・・驚かれたでしょう?」
「そうね。でも、理解はできるわ。家族だから――自分のことは我慢しても家族のことはね」
「そうなんです。自分のことならしなかった。だけど、大好きな義兄が苦しんでいたから」
「・・・」
「でも悪い行動でした」
「かわいかったわ、クムスンさん」
クムスンははにかむ。
「ありがとうございます、ソンランさん。ここに来るまで心配だったんです。許してもらえるか心配で」
「・・・」
「それと・・・下の義兄も来るつもりでしたけど、急用が出来てしまって・・・」
「嘘が下手ね」笑ってソンラン。「動機が純粋だし、気にしてないわ。大丈夫よ」
「お義母さんの言う通りですね。お義姉さんに会ったあとに”すごくクールでいい”と・・・。本当にクールでいい人ですね。義兄と結婚するなんてすごく嬉しいです」
「好評価はうれしいけど、点数を付けすぎだわ。人はすぐにはわからない。
「・・・」
「食べて」
クムスンは美容室に駆け込んだ。
「来たわね」とユン室長。「早く着替えて」
そばで二人のやりとりを聞いていたヘミは訊ねた。
「先生。なぜ何度も外出の許可を?」
「特別扱いはしてないけど。私の規則の範囲内よ」
「私は1度も外出してません」
「代わりに休暇をとるでしょ? 彼女は休暇じゃなく、わけて使ってるだけ。まだ不満?」
「・・・」
ヘミはロッカーへやってきた。着替えてるクムスンに言った。
「どこに行ってた?」
「いちいち先輩に報告しないとダメなの? 用事があったからです」
行こうとするクムスンにヘミは言った。
「そんな風に言っていいの?」
クムスンは呆れた。
「フィソンのママ」
クムスンは固まった。ヘミを振り返った。
「フィソンは何歳なの?」
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