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雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「朱蒙」第9話

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 朱蒙はしばらくここに身を潜めることになった。朱蒙を人目にさらさないようにするため、ムソンはヘモスの閉じ込められている奥の牢を部屋として使わせることにした。
 ヘモスに親しみと関心を持っていた朱蒙は少しずつ彼とうちとけあった。

「どうして剣をならっている」
「護身用です」

「そんな教本などはすてろ。私が剣を教えよう」
「目がつかえなくて、剣が使えるのですか」
「この目を失ったかわりに心の目が開いた」

 マリたちから酒と肉の差し入れがあった日、朱蒙は自分のことを語り、ヘモスにタムル軍のことを聞いた。
「どうしてハンナラの侵略に抗して戦ったタムル軍が今の人たちに忘れ去られてしまったのですか?」
「それはみんな自分のせいなのだ」
 ヘモスは答えた。
「自分がおろかであったためにタムル軍は壊滅の憂き目に遭ってしまった」

 朱蒙の前でヘモスは剣を握った。鬼気迫るようなヘモスの剣さばきに朱蒙は目を見張った。息を呑んだ。
(第8話より)


 ヘモスの剣さばきは朱蒙の首もと近くへの一突きで終了した。
「しばらく剣に触れていないから、だいぶ腕が落ちた。思うように動けなかった」
「はっは、ご冗談を。とんでもないです。こんなにすごい剣を使う人を今まで見たことがありません」
 朱蒙はすっかりヘモスの剣に魅せられていた。
「どうしたらあなたのようになれるのでしょう。一年、いや十年かかってもいいからあなたのようになりたいです」
「ここへ来てすわりなさい」
 ヘモスの言葉に朱蒙は素直に従った。その姿に感服した朱蒙の心の様子が見てとれる。
 ヘモスは朱蒙の顔にふれ、腕にふれ、身体を後ろ向きにさせた。つぶやいた。
「背骨が貧弱だな」
 そう言って、背中のつぼ(たぶん)に両手をあてがった。ぐっと押した。
「うっ!」
 朱蒙は苦しげな声を発した。
「息を止めなさい」
 ヘモスの両手は背中のつぼに深く入ってきた。朱蒙はひと声発して気を失ってしまった。
 驚いているムソンの前で意識を取り戻した朱蒙にヘモスは言った。
「詰まっていた任脈と督脈を解放した。修練をつめば、自分の身くらいは守れるようになるだろう」

 その頃、帯素とヨンポは牢獄を襲撃して朱蒙を殺す策略を練っていた。
 そこへ報告が入った。
「監獄を守っているのは十数名の者たちです」
 帯素は言った。
「俺が先頭に立って出向く。腕利きを集めろ」

 一方、ヨミウルは大使者プドウクブルに会い、陛下とヘモスを会わせてください、と申し出ていた。
 彼女によると、ヘモスの気運は消滅したはずです、というのだった(彼女の中でヘモスの存在が影を薄くしたのは朱蒙の登場によるものと思われる)。
「ヘモスが生きている限り、陛下とヘモスは出会う運命にあるのです」 
 しかしプドウクブルは最後まで首を縦に振らなかった。不承不承聞き入れたという感じだった。

 ご機嫌うかがいでやってきたオイ、マリ、ヒョッポに会った朱蒙だったが、マリとヒョッポに比べ、オイはプヨンのことで不満タラタラである。
 トチの様子を聞いた朱蒙にオイは皮肉たっぷりで受け答えた。
「おかげでプヨンは毎日たいへんな思いをしていますよ。なのにプヨンを放っておいてあんただけ一人こんなところへ隠れていていいのか」
 よせ、とマリたちはオイの無礼をとがめるが、いいんだ、すべて私のせいだ、と朱蒙は認める。
「どうしたら怒りがとける? お前のいう通りにする」
「だったら身分を捨てて、俺と戦え」
 マリとヒョッポは、何をいう、ととがめるが、ムソンは同調した。
「いや、この際、やってみた方がいい。お互いの成長のためだ」

 腕の上達ぶりに感心しきりのムソンに朱蒙は握りこぶしを作って言った。
「いやー、ともかく身体が軽いんだ。身体の中から力が湧き出てくるみたいなんだ」

 ユファ夫人は憂いに沈んでいた。
「母はお前を何ひとつ助けてやることができない・・・」
 自分が朱蒙に言った言葉にもどかしさと空しさを覚えるからだった。
 そんなユファ夫人の姿を見て、クムワは彼女を呼んで言った。
「私はふいに恐ろしさに見舞われることがある」
「陛下に恐いものなどあるのですか」
「私は長い間、戦場にあった。幾度も負傷に見舞われたりした。だが、怪我を恐れたことは一度もなかった」
「・・・」
「剣や槍などに何の恐れも抱かぬ私だが、夫人の沈んだ顔を見るととたんに恐れが私をさいなんでくるのだ」

 ヨミウルや大使者を伴い、金蛙王がヘモスに会うため出発した頃、帯素は手下を率いて朱蒙のいる洞窟牢を襲撃していた。牢獄にいる者を次々殺しながら、朱蒙たちの場所に迫った。
 朱蒙の前に立つと、帯素とヨンポはわざわざ覆面をとって顔を見せた。
「ここでお前との悪縁を絶つ」
 ヘモスは朱蒙の助太刀のために立ち上がった。二人は帯素らの襲撃に耐えながら、牢獄を抜け出して逃亡を図った。
 しかし、帯素らの追撃はやまず、朱蒙を助けようとしたヘモスとそこをついた帯素は互いの剣に深い傷を負う。帯素の負傷のため、朱蒙とヘモスは彼らの追撃を逃れた。

 朱蒙らの戦いが収束した頃、金蛙王の一行は洞窟にたどり着いていた。
 斥候が戻ってきて洞窟の様子を伝えた。フクチ将軍がそれを伝えた。
「陛下。洞窟の前に死体が散らばっています」
 周囲が止めるのも聞かず、金蛙王らが中に入ってみると、そこは目を覆わんばかりの惨状が広がっていた。
「陛下。囚人も兵士もみな死んでいます。生きている者はいません」
 ヨミウルは言った。
「陛下、見るに耐えません。大将軍にまかせてここを引き上げましょう」
 金蛙王は言った。
「大将軍は詳しく調べて疑惑を報告しろ」

 その頃、宮に引き揚げて帯素は負った傷がもとで危篤の状態に陥っていた。王妃は帯素の前で泣きじゃくった。
「兄上が自ら出向くと言ったのです。止められなかった私のせいです」

 逃げて山小屋に身を潜めた朱蒙たちだったが、ヘモスもまた瀕死の重傷を負っていた。朱蒙はプヨンの手を借りるため、市内に顔を出した。マリたちに会って相談した。
「どうしてもプヨンを連れていかなければならない」
「プヨンを救い出すのだったらあの時に・・・」
「いや、そうじゃない。治療していただきたい人がいるのだ。治療がすんだらまた元に戻ってもらう」

 回復の兆しを見せない帯素のため、ヨミウルが治療に赴いた。ヨミウルの念で帯素は意識を取り戻す。
 帯素の部屋から出てきたヨミウルは大使者プドウクブルと会った。
「帯素のケガは野獣に襲われたものとうかがいましたが、それは本当ですか」
「そう聞いておりますが、何か・・・」
「あの傷は野獣に襲われたものとは思われません」
 二人はヨンポを呼び、問いつめた。
「その傷は剣で切られたものです。正直に答えてください」
「じつは・・・スミ山の秘密の牢獄に行きました」
「どうして行ったのです?」
「そこに朱蒙がいたからです。朱蒙を殺すために出向いていきました」
 朱蒙がその牢獄にいた・・・ヘモスのいた場所に・・・?
 初耳の二人はショックに見舞われた様子だった。
 
 ヨンタバル商団の邸内で召西奴は取引に立ち会っていた。そこで彼女は相手のペースにはまり、損害をこうむりそうになる。
 取引が成立しそうになった時、ヨンタバルが間に入ってきた。
「その取引は中止だ。誰かそいつの手をきってしまえ」
 イカサマをやった相手の小細工をヨンタバルは見破っていたのだ。
 父親にたしなめられ、サヨンに笑われた召西奴だったが、ウテが朱蒙の消息を伝えにきたので気持ちは切り替わったことだろう。
 召西奴はすぐ行動を起こし、朱蒙らの潜む山小屋にやってきた。トチに追われていることは知っている、トチの追跡から逃れるため、うちの商団にくればいい、と誘った。
「お誘いいただいたのはありがたいが、事情が変わってしまった。今はその立場にない。お引取りを」
 そこへヘモスの治療でプヨンがやってくる。召西奴を見てプヨンは、あの人、誰だろう、という表情をした。

 朱蒙が一人で思案に耽っていると、ヘモスがやってきた。
「起きて歩いていいのですか」
「大丈夫だ」
 二人は並んで腰をおろした。
「野花の香りがいいな」ヘモスは言った。「昔、私が守れなかった女性もこのような香りがした」
「私にもそのような人がいます」
「恋い慕う人か」
「私の母です。・・・私も危機に直面している母をお守りすることができないようです。自分の身も守れない情けない人間です」
「あなたを殺そうとする腹違いの兄弟のせいか」
「母も殺そうとするでしょう」
「それが事実なら夫余の法に訴えたらどうだ」
「夫余の法もおよびません」
「いったい誰だ。そんなに偉い者か」
「王子です。私は夫余の三番目の王子、朱蒙です」
「何・・・お前はクムワの息子だというのか・・・?」
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