雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「朱蒙」第35話(1)



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 帯素は戻っていく足で陛下の部屋へ向った。それを聞かされて周囲の者らは狼狽するが、ユファ夫人は冷静沈着を保った。ユファ夫人の強気が帯素の意気をくじいた。
 最中もヨミウルの治療は続いた。その甲斐あって金蛙王は意識を取り戻すが、それはほんのわずかでまた昏睡に沈んだ。
「一瞬、気を取り戻されたけど、また沈んでしまいました」
「・・・ヨミウル様の神通力でも無理でしょうか」
「今、陛下は死と戦っておられます。その結果がどうなるかは私も予測がつきません」
「・・・病気中の陛下をさしおき、テソ王子と王妃が権力を握っています。陛下側の忠臣を無残に殺し、ヒョント郡の太守ヤンジョンの娘と婚姻するそうです。テソ王子が権力を掌握したら、陛下が回復されたとしても陛下に何をするか知れません」
「ユファ様」ヨミウルは言った。「心配しているだけで解決はできません。天地神明の意を待っていてください」
「・・・」
「朱蒙王子の死に深く悲しまれたとお察しします」
「・・・誰も朱蒙の死を見た者がいません。私は朱蒙の死を信じません」
 ユファ夫人の言葉に、ヨミウルはソリョンの言葉を思い浮かべた。
「ピョリハの目には三足烏が見えないそうです」
 気丈なユファ夫人の姿を痛ましいと思うしかなかった。

 帯素は母親の言葉を思い浮かべていた。
「私を見捨ててユファをそばに置いたが、死ぬ瞬間まで私は・・・」
 帯素は護衛総官のナロを呼んだ。
「陛下のところへ行く」
 帯素が金蛙王の部屋に来た時、ヨミウルは姿を消していた。
 何も知らない帯素はユファに言った。
「この部屋を出ていってください」
「何をいうのです。陛下は私が看病します」
「黙れ! あなたのせいで母上はずっと傷ついてきた。陛下を看病できるのは母上だ。
ナロよ」
「はい」
「夫人を引っ張り出して部屋に軟禁しろ」
「さあ、夫人を外へ引っ張り出せ」
「何するのです」
 抵抗するユファ夫人を帯素の配下がむりやり連れ出していった。
(第34話ラストより)

 ユファ夫人を部屋に軟禁してナロは言った。
「一切外出禁止です。もし、逃げ出すようなことをされたら、その時は容赦なく対処させていただくのでご注意ください」
 ナロたちが出て行った後、泣きべそをかくムドクをユファ夫人はたしなめた。
「私の前で泣くな。この恥辱と憤怒が涙に覆われるのは我慢ならない。いいから、下がりない」
 ムドクを部屋から出した後、ユファ夫人はこみ上げる憤りを必死でこらえた。

 王妃は帯素に訊ねた。
「ユファを軟禁したって? 諸臣下の目もあるのにどうしてそのような事をしたの?」
「私は母上の恨みを晴らしてあげたかったのです。これ以上、ユファ夫人のせいで苦しまなくてもいいように」
「気持ちはありがたいが、諸臣下と民の間に陛下の病気を利用して王室を分裂させるという噂が立つのではないかと心配になる」
 帯素は得意げに言った。
「誰が何と言ってもかまいません。母上の恨みを知らないくせにあれこれ言う者は、私が断じて許しません」

 ナロ指揮下でユファ夫人への厳しい監視と軟禁は続いた。
 これを見て、オイ、マリ、ヒョッポの三人は地団太踏んだ。
「俺たちはこのまま見ているしかないのか」オイは言った。「何もできないなら、宮に残っている必要もない」
 ヒョッポも同調した。
「そうだ。あいつらの首を斬って、ユファ様と宮を出よう。陛下が回復されたらその時戻ればいい」
「そう、あわてるな」マリは二人に言った。「テソ王子は名分さえあれば、今すぐにでもユファ様を殺めるだろう。その口実を与えてはいけないんじゃないか」
「ちくしょう」
 ヒョッポは歯軋りした。

 柳花夫人軟禁の話はヨンタバル商団でも話の俎上に上っていた。
「いったい、誰の仕業ですか」
「テソ王子だそうです」
 ヨミウルはヨンタバルに答えた。ヨミウルは続けた。
「柳花夫人をそうしたのは、クムワ王の周囲の人物もみな始末するつもりなのでしょう。テソ王子の横暴はどんどんひどくなり、その影響はここまで及んでくるでしょう」
 ヨンタバルは召西奴を見て言った。
「お前はゲルに戻った方がいいな」
 召西奴は考えて答えた。
「私がゲルに戻ったら、テソ王子をもっと刺激することになります」
 ヨミウルは同調した。
「前の漢との戦で商団は夫余に協力し、漢を敵に回しました。テソ王子がヤンジョンの娘と婚礼を挙げれば、商団とゲルは夫余と漢の敵となってくるでしょう」
「ピリュのソンヤンがゲルを狙っている今、私が追われるようにゲルに戻れば、他の部族の首長たちまでゲルを侮ってくるに決まっています。今は夫余で、商団とゲルの将来について考えようと思います」
 ヨンタバルはため息をついた。
「クムワ王の回復の見込みはありませんか」
「傷が深すぎて容易ではありません。もういちど私が宮に入って治療したいのですが・・・ユファ夫人まで軟禁されて・・・」
「私が何とかします」召西奴は言った。「今、テソ王子の横暴を止められるのはクムワ王の回復しかありません」

 クムワ王の回復を願って祈祷に入っているマウリョン神女は突然胸を押さえて苦しみ出した。
「マウリョン様、どうされました。大丈夫ですか」
「何か得体のしれない気運が胸を押さえつけてくるのです」
 そば仕えの神女も同調した。
「私も儀式中ずっと胸が重苦しかったです」
 神女たちは部屋で話し合った。
「マウリョン様や私たちの胸が重苦しいということは、私たちより強い気運が夫余に留まっているということでしょう」
「それほど強い気運とは何ですか」
 マウリョン神女は不安そうに答えた。
「・・・ヨミウル様が夫余に戻ったようです」
 
 ヨミウルが夫余の戻ったとの報告はすぐ王妃のもとにもたらされた。
「それは本当なのか?」
 マウリョン神女は答えた。
「確実ではありませんが、可能性は高いです」
 王妃はそば仕えのチョンゴを呼んだ。
「今すぐ、ヨンポを呼んできなさい」
 王妃はヨンポに言った。
「夫余を離れたヨミウルがゲルにいるというのは確かか?」
「私もそう聞きました」
「ヨミウルが夫余に戻っている可能性が高いそうよ」
「・・・」
「ヨミウルが夫余に来たなら陛下に会うために違いない」
「ヨミウルを追い出したのは陛下です」ヨンポは言った。「それなのに陛下に会うために危険を冒してわざわざやってくるでしょうか」
「それはお前がヨミウルと陛下の関係を知らないからそう言うのだ。陛下が危篤だと知ったら、ヨミウルは神通力で陛下を治そうとするだろう」
「私にどうしろというのです?」
「ヨミウルが本当に夫余に戻ったなら始末しなさい。ヨミウルは夫余にとって害になる人物。テソは国事で忙しいから、お前が騒ぎにならないように始末しなさい」
 ヨンポは決意を漲らせた。
「はい、母上」

 五日のうちに鋼鉄剣を作れと帯素に言われたモパルモだが、彼に作る気はなかった。ムソンが剣をつくれと言っても首を縦に振らなかった。
「わしは死ぬことなんか怖くない。お前は長生きしろ」
「五日以内に鋼鉄剣が作れなければ殺すと言われたでしょうが。早く作った方がいい」 
「いいんだ。私は五日後に死ぬからそう思え」
「何を言ってるんだ。意地張ってないで作ればいいだろう。命を粗末にしたら駄目じゃないか」
 モパルモの配下も同調した。
「そうです。作った方がいいですよ」
「いや。テソに鋼鉄剣を渡すくらいなら死んだ方がましだ」

 トチに手はずを整えさせ、ヨンポは部下を連れてやってきた。ヨンポを迎えたトチは言った。
「ヨンタバル商団を見張っていますが、まだ何の動きも見えません」
 ハンダンはヨンポにうかがいを立てた。
「商団にいるのが確かなら、攻め入ったらどうですか」
「大騒ぎはしたくないのだ。待って商団の外に出たら始末しろ」
「わかりました」
 ヨンポは部下を促して引き揚げて行った。

 召西奴はヨミウルのところへやってきた。
「準備ができましたか」
「今、動くのは無理のようです」
 ヨミウルは落胆した。
「商団は監視されています」

 ハンダンが商団の動きを察知してトチのところへやってきた。
「房主。商団から出てきました」
「そうか。行くぞ」
 トチたちは物陰に潜み、ヨミウルを乗せていると思われる駕籠の一行の待ち伏せにかかった。かがり火を炊いて護衛の先頭に立っているのはウテだ。
 ヨミウルを乗せていると確信したトチは攻撃命令を出した。ハンダンたちは駕籠に向って突進した。
 激しい斬りあいの中、ハンダンは駕籠まで迫るが、中にいたのはサヨンだった。ハンダンはサヨンに足蹴りを食らい、商団に一杯食ったことを知る。
 この騒動の間に召西奴らに守られたヨミウルは宮中にたどり着く。金蛙王の忠臣、ソンジュが待っていた。ヨミウルを案内して金蛙王のもとへ案内していった。
 ヨミウルらを見送った後、マリはモパルモが命の危機にあることを召西奴に伝える。
「鋼鉄剣より優れた剣が五日以内に作れなければ、鉄器工房の房長を殺すとテソ王子は言っています」
 オイも続けた。
「最近の行動から見てただの脅しではなさそうです」
「房長を救わないといけません、お嬢様」
 ヒョッポも言った。
 召西奴は沈痛な表情になった。

 金蛙王の前でヨミウルは念をこめて治療を始めた。

「どうでしたか?」
 部屋を出てきたヨミウルにソンジュは訊ねた。
 ヨミウルは黙って首を振った。
 ソンジュは残念そうにするが、すぐ現実に戻った。
「それでは早くここを出ましょう」
 誘導を始めたところへヨンポが部下を従えて現れる。ヨミウルに剣を突きつける。
 ヨンポは不敵な笑みを浮かべた。
「ひさしぶりだな」 
「・・・」
「一時はお前のその目が怖かった時さえあった。しかし今は、お前の運命も私の手の中にある」
「私の運命は天地神明にしか決められない」
「はっは、天地神明だと・・・? はっははは。天地神明とさえ言えば怖がるとでも思っているのか。もう、昔の私ではないのだ」
「変わったところなど少しも見えないが・・・愚かで情けないだけの人間だ」
「ムムッ・・・」
 ヨンポは剣を抜いた。
「私を殺したらあなたの運命は生涯暗雲に覆われたままだろう。それでもいいなら、殺しなさい」
 ヨンポは一瞬ひるんだ。口元を震わせた。
「女狐が! そんな脅しに私が引き下がるとでも思っているのか。お前はもう夫余の神女ではない。恐れる理由など一つもないわ」
 ヨンポは雄たけびをあげてヨミウルを斬ろうとした。
 その時、背後で大きな声がした。
「剣をおさめろ」
 やってきたのは帯素だった。
「兄上」
「何をしようとしているのだ」
「そ、それは・・・」
 帯素はヨミウルを見た。
「夫余宮に何のようだ」
「陛下が危篤だと聞き、治療でやってきました」
 帯素はヨンポを引き下がらせようとする。
「この者は夫余の敵です。即刻殺すべきです」
 ヨンポは抵抗したが、帯素は受け入れない。
「いいから、下がれ」
 帯素はソンジュも引き下がらせた。

 二人になったところで帯素は言った。
「追い出された身だというのに、夫余へ治療で駆けつけてもらえるとは陛下もありがたいことだ」
「・・・」
「ヨミウル神女の心中がわかっていたなら、私から正式に頼んでいたことだが・・・陛下の様子はどうだ? 回復の見込みはありそうか? 御殿医もマウリョン神女もお手上げの状態なのだ」
「・・・容態が重くて何とも言えません」
「・・・宮内に場所を準備するので陛下の看病を頼みたい」
「私に出来ることはすべて行いました。後は天に任せるだけです。私は戻ります」
 帯素はヨミウルを見て言った。
「昔、ヘモスの剣に刺されて危篤だった時、私を助けてくれたのはヨミウル神女だった。これであの時の借りは返したぞ」

 ヨンポは悔しさいっぱいで、帯素が無事にヨミウルを帰してしまったことを王妃に報告した。
「では、ヨミウルが陛下を治療したの?」
「治療はしたが、陛下は回復しなかったそうです」
「そう・・・さすが帯素だ」
「どういう意味です」
「ヨミウルを殺さずに帰したことで、陛下にやるべきことはやったことになるではないか。世間は帯素の孝心に感心することだろう」
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