雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「朱蒙」第36話



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 ナロに召西奴が婚姻したと聞き、帯素は頭に血を上らせた。いそいで召西奴のもとに駆けつけた。
 帯素に恭しく挨拶して召西奴は訊ねた。
「何の御用ですか?」
「本当に婚礼を挙げたのか」
「はい。王子様も婚礼を挙げたのに私はしてはいけませんか」
「私を避けるために浅知恵を使ったな」
「軽々しく言わないでください。今まで私が頼ってきた方なので婚礼を挙げたのです」
「黙れ! 私の提案を断わったらどうなるか警告したはずだ。どんなに愚かなことをしたのかまだわからないのか」
「王子様の気持ちは受け入れられないと、きちんと申し上げたはずですが」
 帯素は目を充血させて言った。
「私を侮辱したらどんな目に遭うか。必ず思い知らせてやる」
 帯素は召西奴を睨みつけて引き揚げて行った。
「お嬢様・・・」
 ウテは心配そうにした。
「心配しなくていいわ。帯素王子は諸臣下の目や民心に気持ちを配らねばなりません。
何の名分もなく私たちを殺めたりはできません」

 クムワ王の意識は相変わらず回復しない。ユファ夫人は不安は募るばかりのようであった。

 ソルランは帯素の気持ちが晴れないのを微妙に感じ取っていた。それが誰のせいであるかもわかっているようでもある。

 意識の戻らないクムワ王の前でユファ夫人は祈りに似た思いをぶつけた。
「陛下、早く元気を取り戻してください」
 そうして手を握った。
 するとその手を感じたようにクムワ王は目を開けた。
 ユファ夫人の顔に喜色が走った。

 その報が王妃らのもとにもたらされると、ヨンポは喜んだが彼女は気の抜けたような顔になった。そんな母をヨンポは意外そうに見つめた。

 その頃、ピョリハは三足鳥が空に飛び上がる姿を見た。それを伝えてヨミウルの胸で気を失った。
(第35話より)

 クムワ王が回復したと聞いて、王妃は帯素と相談しあった。
 帯素は言った。
「こんなに早く回復するとは思いませんでした」
「どうするのです? 恐ろしいの?」
「・・・忠臣を取り除いた上にユファ夫人を軟禁し、ヒョント城のソルランを嫁にもらったとあっては、父上は私を許さないでしょう」
「もう川を渡ってしまいました。覚悟の上で行なったことでしょう。腹をくくりなさい」

 王妃は息子二人を伴って金蛙王を見舞った。
 金蛙王にはユファ夫人が付き添っている。王妃はちらとユファ夫人をにらみつけた。

 ユファ夫人は医官を呼び金蛙王の脈を見させた。
 夫人の質問に医官は答えた。
「はい、脈は正常にもどりました。しかし、峠を越えただけで、気力は衰えていて動くことはできないでしょう」
 医官が引き下がった後、ユファ夫人は金蛙王に話しかけた。
「陛下。私のことがわかりますか?」
「ユファ・・・」
「陛下」
「どうなっていたのだ」
「戦場で負傷され、長い間、意識がもどってこられませんでした」
「戦の結果は? 朱蒙を呼んでくれ」
 ユファ夫人は金蛙王の求めに応えられなかった。涙ぐみかけていると、王妃と帯素が姿を見せた。
 ユファ夫人は二人に頭を下げた。王妃は黙ってユファ夫人を睨み返した。
「父上、帯素です。私が誰だかわかりますか?」
 帯素は金蛙王に呼びかけた。
「帯素・・・」
「心配でたまりませんでした」
「父上、ヨンポです。天が父上を見放したら、私は父上の後を追うつもりでした」
 最後に王妃も声をかけた。
「私を起こしてくれ」
 金蛙王は言った。
 帯素が腕を取って王の身体を起こすのを手伝った。
「朱蒙はどこにいる」
 王のその言葉に帯素は落胆を見せる。王妃もため息まじりの表情をする。驚きはユファ夫人は驚きとともに悲しみの表情をした。
「朱蒙を連れてこい」
「父上。朱蒙は戦のさなかに行方不明になり、いまだ生死が確認できないでいます」
 それを聞いて王に身体の苦しみが戻り、咳き込んだ。
「父上!」 
 帯素、ヨンポが心配そうにした。
「行方不明? 生死が確認できないとはどういうことだ? 詳しく話せ」
「戦で真蕃と臨屯の兵を撃退後、逃げる臨屯太守を追いかけて首を斬り、引き揚げる途中に鉄騎軍の奇襲を受け、その後どうなったのか、兵を捜索に差し向けましたが、結局、見つかりませんでした」
 ヨンポも続いて言った。
「戦には勝ちましたが、陛下は負傷して危篤に陥って護衛総官は行方不明になり、ヨドン軍が反撃に出てくる直前だったので、夫余に撤退しました」
 それを聞いて金蛙王は失意を見せた。
 
 金蛙王の意識が戻ったと聞きつけて、プドウクブルをはじめ、諸臣下らが見舞いに姿を見せた。臣下らの前で帯素は言った。
「安静にしておかなければならない状態だ。お前たちの訪問はまだ無理だ。皆、戻ってくれ」
「・・・」
 プドウクブルらはかしこまってそれを受け入れた。帯素はプドウクブルと目を見交わした。

 ソンジュはマリらに王の意識の回復を伝えた。
「それは本当ですか」
 マリらは喜びを表した。
「お前たちのおかげだ」
 オイは言った。
「陛下が宮中の現状を知ったら、お怒りになるのではありませんか。帯素王子さまを許すはずがありません」
「・・・当面は様子を見るしかない。陛下が完全に回復するまで警戒を緩めてはならない。
「はい」
 三人は声をそろえた。 

 オイはさっそくヨンタバル商団を訪ねた。
「お嬢様、護衛武官がやってこられました」
 応接したのはヨンタバルの妹チョリョンだった。彼女は朱蒙に忠誠を誓うオイらを常々苦々しく思っていた。
「いったい、今度は何だっていうのよ・・・」
 姿を見せたオイはチョリョンに一礼した。
「どうしたのですか」
「召西奴お嬢様はいらっしゃいますか」
「お嬢様ですって?」チョリョンは不快そうにした。「召西奴は婚姻した身ですよ。何の用だというのです」
「申し訳ありません」
「召西奴と朱蒙王子様との縁は昔のことよ。召西奴に会えば、彼女に過去の痛みを思い起こさせるだけです。もう、ここへは来ないでいただきたいわ」
 オイが困っていると、そこへ召西奴が現れた。
「どうしたというのです」
 オイは召西奴に頭を下げた。
「陛下が意識を取り戻されました」
「・・・」
「普通の身体に戻るには、もう少し時間がかかるでしょうが」
 オイはそれだけ伝えて引き揚げて行った。
 召西奴はチョリョンを見て訊ねた。
「あの方に何と言ったのです?」
 チョリョンは不快そうに答えた。
「二度と来るなと言った。朱蒙王子に関わる者はお前のためにならない」


 ヨンタバルたちは集まり、話し合いを持った。
「クムワ王が意識を取り戻されたので、これで我が商団もひと安心です。はっははは」
 ケピルの楽観的な言葉にヨンタバルは深刻に反応した。
「夫余宮で血なまぐさい争いが起きることになるかもしれない」
「首長のおっしゃるとおりです」サヨンも同調した。「このまますますには、あまりにも多くの人が帯素王子に殺されました」
「でしたら、我が商団は急いでゲルに戻った方がいいのではありませんか?」
「そうです」ウテに父親のケピルも同調した。「とばっちりを受ける前に戻った方がいいと思います」
「召西奴とウテはゲルに戻った方がいいだろう」
 ヨンタバルの言葉に召西奴は応えた。
「私はゲルに残ります」

 外に出て二人きりになったところでウテは言った。
「どうして意地を張るのです。私はあなたの身を案じています」
「・・・ゲルに戻ってもよくなる事はありません。権力を握った帯素王子が戦を起こしたらゲルはもっと危なくなります」
「朱蒙総官と帯素王子の悪縁のせいで、あなたが苦しむ姿はもう見たくない」
 ウテはそう言って召西奴のそばを離れた。

 モパルモは仕事に身が入らず、相変わらず鉄器工房で酒を飲んでいる。
「また酒を飲んでいるのか」
 工房にやってきてムソンは言った。
「妙な夢を見てな」
「どんな夢なんです」
「朱蒙王子が現れたんだ。余りにも生々しくて死んだなんて信じられない」
「いつまで朱蒙王子のこと思ってたら気がすむんです。あきれて人だまったく・・・」
 ムソンがモパルモのそばを離れようとしていたら、そこへ神女が姿を見せてモパルモに言った。
「ヨミウル様がお呼びです」

 ヨミウルの話を聞いたモパルモは飛び上がらんばかりに驚いた。
「本当に朱蒙王子様が生きているんですか?」
「確信はできないが、神女の目にその兆しが見えたので無視はできない」
「ではどうすればいいのです」
「翼が折れて飛べないので見つけて救い出さなければなりません」
 ピョリハはそう答えた。
「どこへ行けばいいのですか」
 喜びに打ち震え興奮してモパルモは言った。
「どこに行けば、朱蒙王子様を救えますか」
 
 モパルモはゲルの留守を預かるヤンタクに外出を申し出た。
「外出ですって! 私は首長に房長を隠密に保護しろとの命を受けています。どこへ行くというのです?」
「行く先は言えない」モパルモは答えた。「心配しないで馬を出してほしい」
「ならば、私も一緒に行こう」
 ヤンタクはモパルモの申し出た。
 モパルモは渋ったが、ムソンになだめられて頷いた。
「いいでしょう。私たちは朱蒙王子を探しに行きます」
 モパルモたちはいずこへともなく馬を走らせた。

 朱蒙はとある部族地区で捕らわれの身となっていた。
 暗い洞窟に閉じ込められている朱蒙のところにへ若い娘が走り寄ってくる。しかし娘は朱蒙のもとにたどり着くものの追ってきた兵士たちにつかまる。逆らったものの及ばず連れていかれてしまう。その娘は後に朱蒙の正室となるイエソヤである。
 彼女は虫の息だった自分を寝ずに介護し続けてくれた娘だ。彼女を助けようにもどうすることも出来ずにただ苦しむ朱蒙であった。
 捕らわれて自由もきかない朱蒙はこれまでの時間の経過を静かに振り返った。
 時間はかなり遡る。
 勝ち戦に乗じ、旧タムル軍の兵を率い、臨屯太守を追いかけて首を討ち取った朱蒙だったが、自軍に引き返す途中、ハンナラ鉄騎軍の襲撃を受ける。帯素がナロをヤンジョンのもとへ走らせ、朱蒙らが太守を追撃したのを報告した。それを受けてヤンジョンは鉄騎軍を編成させて差し向けたからだった。
 鉄騎軍の襲撃を受けた朱蒙一隊は全滅した。最後まで戦った朱蒙は虫の息となって川に流された。朱蒙が川に浮いているところを見つけて助けたのが、商団を率い遠行の帰路途中にあったハンベク族の族長イェチョンだった。
 イェチョンの指示で宿所に運んで配下が朱蒙を助けようと試みるが、助かる見込みを得られず彼はサジを投げた。
「手当てのしようがありません」
 配下の報告にイェチョンは朱蒙のもとへやってきた。朱蒙を見つめるイェチョンに配下の者は言った。
「旅程はまだ長いのでこのまま連れて行けません。どうせ死ぬだけなら、このまま捨て置いた方がいいのではありませんか」
「いったい、誰であろうな・・・」
「・・・」
「着ていた鎧から見て、どこかの国の大将に違いない。死んでしまうなら仕方がないが、もし生き返ったら我が部族にとって益となるかもしれない。連れて行くとしよう」

 朱蒙を本営に連れ帰ったイェチョンは、すぐに医師を呼び、朱蒙を診療させた。
「どうだ?」
「息をしているだけで生きているとは言えません」
「生かす方法はないのか」
「手をつくしてみますが、見込みはつきません」
「そうか・・・」
 イェチョンは、やっぱりダメか、という顔をした。

 父に婿を連れてきたと冗談を飛ばされたイエソヤは、その相手に興味を覚え、朱蒙の様子を見にやってきた。
「すごく男前ですね」
 そば仕えの娘が言った。
「生き返ったら婿にしてもいいのじゃありませんか」
 イエソヤは満更でもない表情をそば仕えに向けた。眠っている朱蒙の顔をシゲシゲと見つめた。
 
 族長イェチョンが遠行で長期間留守にしている間、ハンベク族本営では問題が発生していた。
 側近がそのことをイェチョンに報告した。
「族長の留守中にソルタク番頭が漢と取引をしたようです」
「何をだ?」
「馬二百頭をヒョント城に売ったそうです」
「何だと! 今すぐ、ソルタクを連れてこい」
 イェチョンはソルタクを呼びつけ、事の仔細を質した。
「漢のヒョント城に馬二百頭を売ったというのは本当か?」
「はい」
 悪びれないソルタクにイェチョンは刀を抜いて詰め寄った。
「漢とは取引するなと言ったはずではないか。どうして取引した?」
「・・・」
「早く答えてみろ」
「族長の留守中に漢は夫余と戦をしました。ヒョント城から使いが来て、馬の取引を求めてきたので受け入れました。その対価として、数年分の食料を得ました。この条件なら悪くないはずです」
「馬鹿者が! 漢と取引しなければ我が部族が飢え死にするわけではないだろう。漢は敵国ではないか。お前の両親も漢軍に殺されてしまったんだぞ。なのに、どうして取引したのだ」
「いったいいつまで過去にこだわるつもりですか。我が部族のように小部族が生き残るには漢との関係を強めていくしかないではありませんか」
「・・・」
「族長、部族の将来のために過去のことは忘れるべきです」
「うるさい! こいつめが! お前の職位をすべて取り上げる。今すぐ出て行け」
 ソンタクは黙ってその場を退いた。

 その後、ソンタクは朱蒙の看病を続けるイエソヤを訪ねてきた。訪問を聞かされ、イエソヤは迷いながらソンタクに会った。以前から、ソンタクに対して何の気持ちもなかったからだ。父とのやりとりの様子など見て、いやな思いの方が強まっていた。
「何の用でしょうか」
「すべてを失った俺に残ったのはお前しかいない」
「ソルタクさんが失ったものは時が経てば取り戻せるでしょう。お父さんのお怒りが収まるまでお待ちになっていてください」
「そうじゃない・・・お前の判断は間違っている。時が経っても何も解決できない。族長と俺の関係は遠くなる一方だ。解決策はお前が俺の女になるしかない」
 困惑するイエソヤにソンタクはいきなり抱きついた。キスされようとするのをふりほどいて、イエソヤはソンタクの頬をぶった。
「私はソルタクさんの女になりたいなんて思ったこともありません。二度とこんな無礼な真似はなさらないでください。今度は許しませんから」
 イエソヤは彼に背を向けて朱蒙の介護に戻った。

 イエソヤの手厚い介護が報われ、朱蒙は意識を取り戻した。
 朱蒙が意識を取り戻したと知って、イェチョンが挨拶にやってきた。
「私はハンベク族の族長、イェチョンと言います。遠行から引き返す途中に川であなたを救った。医員もさじを投げたのに生き返ったところを見ると、強い生命力を持った方のようだ。鎧を着ているところを見ると将軍のようだが、どこの部族か」
「夫余国の王子、朱蒙と申します」
「それは本当ですか」
「はい。漢との戦で鉄騎軍に攻撃されました。助けてくださってありがとうございます」
「お礼はこの子に言ってください。この子が徹夜して看病しました」
 イエソヤは朱蒙を見て挨拶した。
「イエソヤと申します」
 イェチョンも言い添えた。
「おっほほ、私の娘です」
 イエソヤに会釈してから朱蒙は切り出した。
「族長に無理なお願いをしてもいいでしょうか。私は今、ここに留まっていられません。夫余へ戻れるように手を貸してください」
「急いでいるのはわかるが、その身体で夫余まで行くのはとても無理だ。もう少し、身体が回復してから戻られた方がいいでしょう」
 それを聞いて朱蒙は無念そうにした。
 イエソヤは朱蒙の世話にかかりきりになった。食事の支度までそば仕えにやらせず、自分でやるほどだ。
 そば仕えがやってきて言った。
「お嬢様、私がやりますからいいです」
「大丈夫よ」
 そば仕えはクスクス笑った。
「どうして笑うの」
「この前は冗談で言ったけど、今度は本気ですよ。あのすてきな方が夫余の王子様だなんて、お嬢さんと婚姻できたらいいですね。お嬢様もそうなりたいでしょう?」
「もう、馬鹿なことは言わないで」
 そば仕えをそうたしなめながら満更でもないイエソヤであった。そこへ朱蒙が姿を見せた。
 驚いたイエソヤは言った。
「動くにはまだ早いです。横になっていてください」
「散歩でもしようと思いまして・・・お嬢さんに聞きたいことがあります」
 イエソヤは朱蒙をまじまじと見た。
「もしかして、夫余と漢の戦がどうなったか知っておられますか」
「ヨドン軍が加勢にやってきて、戦を止めたそうですが、どっちが勝ったかは知りません」
 そこへイェチョンのそば仕えが飛び込んできた。
「お嬢さん、逃げてください」
「どうしたのです」
「ソルタク番頭が反乱を起こしました」
 イエソヤは顔色を変えた。朱蒙も何事かという顔になった。
「お父さんは? お父さんはどうしたの?」
「反乱軍を防いでいますが、苦戦しています。お嬢さんを無事に逃がすようにと言われました」
「お父さんを残していけない」
 駆けつけようとするのをそば仕えは制した。
「早く逃げてください」
 
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