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 野月浩貴八段 VS 佐々木大地五段

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 野月浩貴八段 VS 佐々木大地五段


第71回NHK杯テレビ将棋トーナメント1回戦から


 相がかり戦となった。NHK杯テレビ将棋トーナメントは時間帯的に見過ごすことが多くなっている。土曜の夜更かしもその理由だ。
 朝寝して起きたら昼になってることが多い。
 今朝は途中から見ることが出来た。解説は増田六段だった。


 局面は最初からずっと野月八段が差しやすい流れだった。玉の位置は金銀に守られて安定してるし、攻撃態勢も整っているように感じられた。
 一方、後手の鈴木大地五段の玉は守りが散らばって薄い上に、どこから攻め味を作ればよいのか見定めにくい陣形である。
 解説の増田六段も「先手を持って指したい」と繰り返していた。
 勝ちづらくて守りづらい。素人目にも後手陣を持って指す気は起きなかった。先手に角を二枚持たれた時はじり貧負けしそうに思えた。
 ところがバラバラの陣形をまとめて佐々木大地五段の差し回しはここから光った。
 持ち時間の長い将棋なら佐々木陣はとても先手の攻めに耐えられそうにない。
 陣形の悪い佐々木陣は守りを重視した戦いを進めた。
 しかし、野月八段は局面優勢と見て攻めに徹した。
 AI評価はそれほど差を出していなかった。素人目には先手が有利に見えるのに、AI評価は差し手次第で微差ながら先手や後手に評価が動いた。バラバラ陣の後手が優位に立つのは幾度もあったのである。


 先手の攻撃から巧みに玉の距離を取り続けた後手が、守りは固いながらも局地戦の戦いに持ち込んで先手玉を寄せ切って勝利した。
 さながら、アウトボクシングのスタイルで先手の攻めを交わし続けた後手が、掴んだ一度のチャンスを線で結んで先手玉をコーナーに追い込んで勝った。


 しかし、後手が先手をコーナーに追い込んだ後も、詰めを誤り、先手に逆転のチャンスも生まれていたようだ。


 AI評価でいうとその逆転は一度や二度に留まらなかった。将棋の終盤はAIが登場するまではそれほど広く思えてなかったが、どうしてどうして、とてつもなく広く深い世界があるようである。
 それを改めて実感させられた今日の対局だった。

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