雨の記号(rain symbol)

藤井聡太二冠 VS 広瀬章人八段




藤井聡太二冠 VS 広瀬章人八段


Abema本戦トーナメント第三局 <相雁木>の戦い



 フィッシャー・ルールは懐かしい縁台将棋を彷彿とさせる。
 昔、工場勤めしていた頃、昼休みに将棋が大流行した。常務が将棋を大好きで常務主導で将棋大会もあったりしたから昼休みに大流行したのだ。
 昼になったらご飯を食べるのももどかしく、分光分析室に数人の従業員が集まって将棋を指した。
 15分くらいで決着のつく早指し将棋である。ピンチになって考え込むと相手や順番待ちの者から「早く指せ」と声が飛ぶ。なので互いに感覚で指すほかなかった場面が多かった。
 そういう中でも妙手は飛び出してきたし、凄い差し回しで相手を追い込む者もいた。
 ひとり将棋が好きで道場に通っている若者がいた。故真部一男八段(当時四段)に指導将棋を受けたこともあり(指し手が10手ばかり進んだところで「駒が上ずっている。定跡をしっかり頭に叩き込んだ方がいい」、と言われ、そこで対局は終了したと聞いた。
 そんな彼は攻めと受けが器用でなかなか負けなかった。時にはこの日の藤井二冠みたいな強引(実は精度の高い?)な攻めで勝って周囲を唸らせた。一枚の角打ちで自陣のピンチをしのぎ、相手に詰めろをかけることも再々あった。


 もちろん当時の彼が藤井二冠みたいに強いはずはなかった。ただこの日の藤井二冠の将棋には胸のすく思いがして当時の彼を思い起こさせた。
 持ち時間の長い将棋で妙手をひねり出して勝つ藤井二冠にはいつも感心させられているが、この日の将棋には感心よりも唸らされてしまった。同時に感激もさせられた。 
 
 感激が過ぎて仕事の疲れがどっと押し寄せ、トーナメントの番組を流しっぱなしで眠りこけてしまったほどである。つまり、藤井二冠の凄い将棋を見て、「後はもういい」と心身が充足してしまったらしいのだ。


 0時頃目を覚まし、Abema本戦トーナメントの速報動画を見た。藤井二冠のチームは5勝1敗(?)
で広瀬八段のチームに勝利したらしい。藤井二冠は広瀬八段と一度対局しただけのようだ。
 対局後のコメントで
「藤井二冠は雁木の序盤にも精通していた―精一杯指したが及ばなかった」
 と広瀬八段を嘆かせていた。
 フィッシャールールの早指し戦で、広瀬八段が藤井二冠を「序盤に精通していた」とコメントするのには実感が伴っているだろうからいいのである。


 しかし…速報動画を見ていて、誰も彼もがAI片手にこの将棋を語っているらしいのに少々興ざめした。
 一手を数秒から数十秒で指す将棋をAIに弾き出させた手順で解説して何の意味があるのだろうか? 当人はそんな風に指す自信があるとでもいうのだろうか?
解説する本人は気持ちいいだろうが、フィッシャールールでそんな風に指せるわけではあるまい。
 将棋に精通してるのは認めるので、縁台将棋に近いフィッシャールールの解説を将棋ファンが楽しく聞けるような解説をお願いしたいものである。
 AIに弾き出させて、この局面ではこういう手があった、と言われても、当代トップの棋士が指さなかった以上、誰も指せなかったであろうから…。
 
 渡辺明名人も棋聖戦の対藤井二冠との局面解説で、こう指せば勝てたかもしれない手を秒読みに追われた中では思いつくことはできなかった。30分あっても無理だったかもしれないと語っていた。
 名人戦のような持ち時間の長い将棋についてなら、AIから導きだした手順に同感を覚えたり、”なるほど”と唸らされたりもするが、フィッシャールールの将棋でそれやってるのを聞くと、時にオウムが喋ってるように感じられてきたりする。
 
 この日の藤井聡太二冠 対 広瀬章人八段戦は、ライブの中にこそ昔懐かしい縁台将棋の”醍醐味”を感じることができたと言える。速報動画見てたらそれが冷めていくのを覚えた次第だ。




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