竜王戦決勝トーナメント増田六段VS藤井七段戦から

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負けても強かった藤井七段


　後手番を持った藤井七段が負ける時はこのような終盤戦になるのだろうか。
　序盤は互いに相手の出方を窺う将棋だった。
　しかし、うまく攻撃形を築いたのは増田六段だった。飛車角桂馬を使って右辺の守りを凝り形に追い込んでポイントを稼いだのは、増田六段の手柄だった。
　２三の銀と飛車をいつでも刺し違える形にしておいて、反撃に動こうとする後手の飛車を目標に左辺から攻め味を作っていったのが次の手柄だった。後手は先手の攻めに対し左辺の守りに忙殺され、攻め役の右銀はまだ玉のそばに留まっている状態。足の速い飛車角桂馬で反撃に出ようとするが、居玉で玉が露出状態となっているのが弱味となっている。
　右辺を硬直状態にしておいて相手の攻め駒を責める増田六段の構想は見事に功を奏した。
　９五に角を飛び出し、後手攻め駒の大将である飛車を機能不全に追い込んでおいてからの先手の攻めは厳しかった。攻めの流れでその飛車まで幸便に捕獲できるのだから、先手にとって願ったり叶ったりの展開となった。
　
　この後、先手の攻めに対し、後手は玉が逃げ回る展開となった。
　先手陣の玉はまだ安泰な状態。ただ逃げるだけでなく、そこへの反撃含みで逃げていかなきゃいけないから、後手の藤井七段は苦しい。
ぽっきり折れないで居玉状態から反撃の味を作り出しつつ、あわや敵方の右辺に入玉か、まで粘った藤井七段は「負けても強かった」印象だけが残った。

　今期”竜王”の夢は絶たれたが、藤井七段には来期を期待したい。




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