韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(123)
ジェヒは言った。
「待つと言っただろ――こんばんは」
テワンは無愛想に挨拶を返した。
「クムスンさんと話があります」
「・・・」
「行こう」
テワンはクムスンを見た。
「クムスン。この人と話すことがあるか?」
「いいえ、ありません」
「こっちはないそうだ」
「俺はあります」
「・・・」
「話があるんだ」
テワンはジェヒに敵意を覗かせながらクムスンに訊く。
「あるのか?」
「ないわ」
「俺はある。俺は話がある」
「おい。前に忠告したはずだ。義妹には”言葉に気をつけろ”と」
「タメ口を使う仲です」
「何だと」
クムスンは困惑の表情をジェヒに向ける。ジェヒの気持ちを否定するわけではないが、二者択一で彼女は院長との約束(ジェヒとは会わない)を取った。
言葉を失っていると、ジェヒは歩み寄ってクムスンの手を取った。
「行こう」
「何するのよ。離してよ」
「離せ」とテワン。
「行くんだ」
「手を離してよ」
クムスンが拒むのを見てテワンは叫んだ。
「離せ」
次の瞬間、テワンの拳が飛び、ジェヒの身体は地面に転げている。
クムスンは悲鳴をあげ、ジェヒは起き上がった。テワンを殴りつけた。テワンはジェヒのパンチを受けた後、すかさず殴り返す。ジェヒは再び地面に転げた。
さらに攻撃を加えようとするテワンをクムスンは必死で止めた。
「ダメ、ダメよお義兄さん、もうやめて」
泣きそうな顔で懇願するクムスンにテワンは驚く。
「もうやめて。行きましょう。早く行きましょう」
「・・・」
テワンが行こうとするとジェヒが叫ぶ。
「待て、どこへ行く」
「こいつ!」
再び殴りかかろうとするテワンをクムスンが止める。
「お願い、やめて」
クムスンは泣きながらいう。
「行けばいいじゃない。お願い、行って」
怒りを抑えてテワンは歩き出す。クムスンはテワンの腕を取ってついていく。
「ダメだ。どこへ行くんだ」
ジェヒは起き上がって叫んだ。
「行くな。おい、白菜」
しかし、クムスンはテワンの腕を取ったままジェヒを振り向かない。
「ナ・クムスン」
テワンは再び怒りに駆られ立ち止まった。ジェヒに突進してゆこうとする。クムスンは必死に制した。
「このまま、行ってください」
「・・・」
「お願いですから」
「ナ・クムスン!」
「お願い、行きましょう」
ジェヒから離れ去った後、テワンはクムスンを連れ公園に立ち寄った。
「どういうこと?」
「・・・」
「お前・・・恋愛を?」
クムスンは返事に詰まる。
「クムスンさん、恋愛してるんですか?」
「違うわ――もう違うの」
「じゃあ、今まではしてたんですか?」
「・・・」
「だけど・・・これはあんまりです。まだ、うちで住んでる。ジョンワンの家なのに、男が家の前まで来るのは――いくら何でもひどいですよね?」
「違うんです。もう本当に違うんです、お義兄さん」
「・・・」
「お義兄さん」
「だから――ずっと会ってたんだろ」
「・・・」
「俺がずっと目撃しても素知らぬ顔をしてた。こんな風に」
「・・・」
「分かりました。違うなら――そう信じます」
テワンは先に公園を出て行った。
クムスンは落ち込んだ。胸を押さえ、その場にしゃがみ込んだ。
ジョムスンは”フィソンに会いたかった”名目でノ家を訪問していた。
ジョンシムとフィソンが留守番をしていた。
梅ジュースを出して雑談した後、ジョムスンは切り出した。
「テレビは見ました?」
「えっ?」
「こちらの次男とうちのクマのことです・・・」
「ああ・・・」
ジョムスンはノ家のことを持ち上げながら、ジョンシムがどう思っているのかを聞き出そうとする。
結局、何かあったかなかったかの話になる。
クムスンは時間をつぶして帰ってきた。
するとテワンは門のところで座り込んでいる。
クムスンが帰って来たのを見てテワンは立ち上がった。
「鍵がないので門を開けてください」
と敬語を使う。
「お義兄さん・・・」
テワンは黙っている。
クムスンは門の錠を開ける。
門が開くとテワンはさっさと入っていく。クムスンが呼びかけても振り返らなかった。
部屋に入ってきたテワンを見てジョンシムは言った。
「テワン、ここに座りなさい」
テワンは黙って二階へ上がろうとする。
「ここに来なさい」
「何だよ。あとじゃダメなの?」
「親が”来い”と言ってるの。早く来なさい」
テワンは渋々ジョンシムのそばに来て座った。
「何?」
「正直に話して。クマと何かあったの?」
「ああ、またか」
「正直に答えなさい」
「何度言わせるんだよ。わかった。好きなように考えて。何度否定しても信じないんだろ。そうさ。そうだ、あったよ。これでいい?」
テワンは立ち上がった。ジョンシムが制するのも聞かず、二階へ上がってしまった。
ジョンシムは声を張り上げた。
「怒鳴らなくても、違うなら違うと答えればいいじゃない。最近、この家の男だもはどうかしてるわ。昨日は父さんで今日は・・・」
ジョンシムは息を切らした。
「ねえ、水をちょうだい」
ウンジュは言った。
「何なの? 話して」
「クムスンのことだ」
「・・・」
「この話は――お前が俺の娘でも口に出すのも情けない。当時は切実だったし、どんな方法でもママを助ける一念だった。世間から非難されてもそれしか方法がなかった。だが――とても恥ずかしく・・・彼女に罪悪感を感じている」
「どういうこと?」
「クムスンさんは生母が死んだと思っていた。そんな彼女を俺が捜して腎臓移植を頼んだ」
「・・・」
「当時、彼女の叔父が1億の示談金が必要で俺が出すという条件でだ」
「何ですって・・・?」
「そうだ。俺が彼女に罪を犯したんだ。母親の生存だけで驚愕してるのに、金を持って現れ、腎臓を差し出させた。それなのに・・・クムスンさんは手術に同意してくれた。誰よりもショックでつらかっただろうに」
「・・・」
「渡す金も拒絶し、手術台に上がった。後日、ママが事実を知り――手術を拒絶するママを説得して、結局、腎臓を提供し、ママを助けた」
「・・・」
「そうだ。パパがしたことだ。だから余計にお前に話せなかった。俺の恥部を暴露するんだ」
「・・・」
「ウンジュ。すまない。お前に迷惑かけてばかりだ。これが最後だと思って、俺のために――ジェヒを完全に忘れてくれないか?」
「・・・」
「ジェヒは・・・彼女を愛している」
「・・・」
「ウンジュ。本当にすまない。ジェヒを――もう忘れるんだ」
ウンジュは目を潤ませた。
現場事務所のドアが叩かれた。
ピルトが返事すると入ってきたのはシワンとソンランだった。
ピルトは二人をジロリと睨みつけた。
「なぜ、また来た? 俺が指示を出すまで――現れるなと言ったはずだ」
「・・・」
「行け。早く行け。顔も見たくない」
二人は床に膝をついた。
「何の真似だ? なぜ、ひざまずく」
「父さん・・・」
「申し訳ありません」
「分かればいい。出て行け――聞こえないのか」
「父さん」
「煩わしいんだ。出て行け。土下座すればすむことなのか? 行かないか!」
「お義父さま・・・私がどうすればいいか教えてください。言うとおりにします」
「何だと?」
「本当に面目もないことです。言葉で表せないほど申し訳ありません。私も警察でお義父さまと――前義父が一緒にいて悲痛な思いでした。お義父さまの心情は余計に・・・」
「それを知ってて・・・出て行けと言っても座っているのか?」
「お義父さま、私は・・・失望され、期待を裏切ったと思いますが――私はお義父さまを騙していません」
「何? 何だと?」
ピルトは椅子から身体を起こした。
「私も結婚し、数日前に事実を知りました。とても驚き、困惑して、シワンさんに腹を立てました」
「そうか.
なら、なぜ俺たちにその話をしなかった? 常識があり、優秀なお前がなぜ言わない?」
ソンランはうつむいた。
「お前はたちが悪いんだな。だから、このすべての罪は――シワンのせいで自分は悪くない、とでも?」
「そんな意味ではなく、もし結婚前に知っていたら、結婚しませんでした
シワンは言った。
「もうやめろ」
「それで?」とピルト。「いまさら、どうなるというんだ」
「はい。何も変わりません。申し訳ありません。私を憎む気持ちも分かっています。ですから、お義母さんにもお話ください。お義母さんも知るべきです。お義母さんも知った上で、お二人が相談して決めたなら――どんな決定にでも従います」
「何? 何だと? 決定? 何の決定だ? 何をだ!」
「私を許せないなら」
「ソンラン、黙れよ」
シワンは立ち上がった。
ピルトは天井を見て大きくため息をついた。
シワンはソンランの手を取った。引っ張って部屋を出ていった。
シワンはソンランを連れて通りに出てきた。
「どうかしてるぞ。お前、正気か?」
「正気よ。私にどうしろと?」
「ソンラン」
「”顔もみたくない””謝るな”ならどうしろと?」
「俺の大きな過ちをすぐに許すとでも?」
「なぜ”俺たち”なの? あなた1人よ」
「何だと?」
「薄情かも知れないけど、”あなた”よ。離婚を責められる理由もないわ」
「・・・」
「私の離婚は――子供や私の両親に対する自責の念であって、責められる理由はない」
「・・・」
「私が騙して結婚したなら許されない罪だけど――私は騙してない。今さらだけど――私は騙してないわ」
「・・・」
「おかしくなりそうよ。何でこんなことに・・・シワン――あなたが憎らしい」
ソンランはシワンのそばを離れた。
暗がりの中でクムスンは頭を抱え込んでいる。ジェヒのことを思うと頭がどうにかなりそうな気分だった。
メールが入った。電源はオフにしていなかった。
ジェヒからだった。
――来い。さっきの場所で待ってる。30分待って来なければ家を訪ねる。
クムスンはため息をつく。両膝を抱え込み、額を膝の上に置いた。
やがて腰を上げた。テレビを見ているジョンシムに嘘で了承を得て出かけた。
サンドが買ってきた肉を家族三人でつついた。
「おいしい」
「そうか? 母さんは?」
「ああ、おいしい。でも、どうして豚足を?」
「有名な豚足店の前を通ったのでこいつの好物だし、はっははは」
「ありがとう」
「・・・」
「パパ。テワンさんはどうだった?」
「クマ」怖い目を向けるスンジャ。
「何よ、ママ。パパは彼を”よし”と認めたのよ。それに彼は立派な俳優になる。彼は感性も豊かだし、それに何よりイケメンだわ。彼は必ず有名になるわ」
「・・・」
「今、つかまえないと後ではむりよ」
「クマ!」
「だからって、そんなにイケメンじゃないぞ」とサンド。
「そんなことないわ。最近はハンサムだけじゃなくて、顔にも個性が必要なのよ」
電話が鳴った。サンドが出た。
「お義母さん。さっきナムルをどこへ?」
「それが・・・行くところがあって」
「ママ」
「うるさいわよ」
「クマ。まずは食べなさい。ママを刺激しても、豚足で叩かれるだけよ」
クマは夢の話を始めた。
大きな草原にブドウの木があって、たわわに実ったブドウが自分の上に落ちてきた。それを両腕でしっかり抱きとめたという話だった。
「何の夢かしら? 財運の夢みたいでしょ?」
この話を聞いてスンジャは不安を覚えた。
「おばあちゃん、どうしたの? 悪い夢なの?」
ジョムスンは言った。
「スンジャ――ねえ、どうしたらいい?」
「・・・」
「おばあちゃん、何の夢なのよ・・・?」
ジョムスンは答えずにお茶を飲んだ。
帰宅するとミジャはジェヒの部屋を覗いた。しかし、ジェヒは帰ってきた様子がない。
ジェヒはメールの返事を待った。
待ちくたびれた頃に前方からクムスンが現れた。
ジェヒは車をおりた。
「あっちに公園があるわ。そこで話を」
そう言ってクムスンは背を返した。
クムスンは訊ねた。
「何なのよ。どうしたいの?」
「お前こそ何なんだ。なぜ俺を避けようとする。それで俺が諦めるとでも?」
「・・・」
「死んだ旦那の話――つらいだろうに、感謝してる。ずっと聞きたかったが、お前から話すのを待ってた。待っててよかった。そう思った。だけど――なぜ、お前が悪いんだ? それは単なる事故だ。誰にでも起こる事故だ。うちの病院の救急室にも、多くの事故患者が運ばれ、多くの交通事故患者が死亡する。彼らも移動する途中で、誰かに会いに行く途中だ。それじゃ――残された人はみなお前のように――一生、自分のせいだと負い目を感じるべきか?
「・・・」
「ありえない話だ。それは単純に・・・」
「先生」
「・・・!」
「だから、どうしろと? 私と本気で結婚を?」
「ああ。誰がするの? 私は結婚する気がなくて、あなたと交際する気もないのに」
「・・・」
「結婚? 結婚が何か知ってる? 私には子供がいるわ。子供がいるのよ」
「知ってる。よく知ってる」
「それじゃ、うちの子の名前を? 年齢は?」
ジェヒは横を向いた。
「性別は知ってる? 息子の顔を1度でも見たことがある?」
「・・・」
「息子の名前を答えてみて。答えてよ」
「・・・」
「それなのに私と結婚を? 結婚をままごとだと?」
「・・・」
「私をほっといて。美容室をクビになったり、院長に責められたり、理由なく叩かれたくない」
「・・・」
「私は1日も早く――実力のある美容師になりたいの。でも、あなたのせいでそれも危ういのよ」
「・・・すまない」
「すまないなら、ほっといて。なぜ、あなたが私をこんなに苦しめるの?」
「すまない。ほんとうにすまない。だけど」
「”だけど”何よ? 院長が許すとでも? 私が院長でも許可しないわ」
「・・・」
「なのに、なぜ義兄の前に現れ、私を困らせ、義兄まで苦しめるの?」
「・・・」
「帰って。私は2度とあなたに会わない。今日みたいに家まで来てもムダよ。家の呼び鈴を押してもいい。義父母も知るだろうし、義父が美容室の送り迎えをしてくれる。私は大事にされてるの」
「・・・」
「冷静に考えてください。結婚が子供の遊びだと思ってる?」
「・・・」
「早く行って」
クムスンはジェヒの傍らをすり抜ける。
口を結んで家に向かう。
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