雨の記号(rain symbol)

藤井聡太二冠 VS 三浦九段(1回戦)から



藤井聡太二冠 VS 三浦九段(1回戦)から


(第80期B級1組順位戦 主催 毎日新聞)




 A級入りを目前にしたB級1組の順位戦が始まった。藤井二冠1回戦の相手は戦略家で知られる三浦九段だった。タイトル保持の実績もあり、のっけから大変な相手だ、と心配していたらその通りになった。


 横歩取りの戦いになった。
 藤井二冠の7五に飛車を構える新青野流の陣形に対し、後手の三浦九段は8三に金を繰り出し、飛車の動きをけん制しながら巧みに戦いを進めてくる。
 この戦型は確か松尾八段が採用し、強豪相手(渡辺名人だったか?)に”あわや”の場面を作り出し善戦していたのを思い起こした。


 飛車角の大駒が派手に行き交う横歩取りの戦いは、一手のミスが敗勢につながりかねない。
 両者、相手の出方を窺いながら慎重に戦いを押し進めていく。
 飛車角に加え、小駒の活用と折衝で三浦九段が少しずつポイントを稼いでいく。
 
 最近、藤井二冠の将棋は前半から着実な手を積み重ね、少しずつ優位を築きながら勝ちに結びつけていく将棋が多い。
 それらの対局をAIの評価値として折れ線グラフで見ていくと、少しずつ右肩上がり(先手番➡後手番は逆)となっていくケースが多い。
 どの棋士にとってもそれが理想だろう。だが藤井二冠のように上昇一途で勝ってしまう棋士は少ないようだ(多分)。負けていく棋士なら珍しくもなさそうだが…。


 しかし、この日の対局は前半から少しずつ三浦九段にポイントを稼がれる意外な展開となったのである。
 先日の深浦九段戦とはまた違う。あの対局では従来通り、少しずつポイントを稼ぐ戦いを続け、ここぞの強い攻めを凌がれて逆転負けを喫してしまった。


 今回、藤井二冠は互角の形勢からリードする局面を見ないまま、じわじわと劣勢に追いやられたのである。
 いわゆる作戦負けの戦いなので、局面を打開するため藤井二冠が強引な攻めに出てしまうのでは(?)と心配しながら見ていた。
 しかし、局面はなかなか改善に向かわない。大駒を捌きあう横歩取りの戦いは、駒台に乗った大駒を活躍させないため、自陣を金銀で広く守ってしまうことになる。
 比較的金銀を集結させて玉を守っている三浦陣に比べ、藤井陣は金銀が左右に分散してまとめにくくなっている。


 三浦九段の戦略が藤井二冠の読みに優っていたのだろうか?
 三浦九段の角金桂馬に活躍され、苦境に立たされた藤井二冠は、このままではじり貧とばかり、8五飛と浮いて決戦に出る。
「来るならどうぞ。こちらも引きません」
 の手で、三浦九段の攻め駒を盤上からいったんは全てなくしてしまおうとの狙いである。
 この賭けが三浦九段の些細なミスを誘発し、藤井二冠は劣勢を少し取り戻した。
 この辺りから三浦九段の攻めはリズムを失いだす。すでに戦略は通用せず読みの戦いへと突入していたのだ。
 藤井二冠は敵の攻めを誘発しながら的確な対応を見せて、三浦九段に決定打を与えない。三浦九段の3七飛打ちは勝ちを急ぐあまりの失着となったようだ。
 この辺りから三浦九段の攻めは勢いを失い、萎んでしまった。
 最後、三浦九段が3四に打った銀は詰めろの銀打ちだが、玉の逃げに一縷の望みを託した手だ、と藤井二冠の師匠である杉本八段の解説があった。
 つまり、3四銀打ちは三浦九段が負けを覚悟して打った手だったのである。
 この後、三浦九段は斜め上方を見やる特有のしぐさを見せた。
「どこで間違えたのか?」
 そんな風なことを考えているように見えた。
 ここから藤井二冠は寄せに出た。三浦九段の3四に打った銀が守りで働くことはなかった。




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