雨の記号(rain symbol)

ときわ荘のぼんくら談義⑥

2016-01-22 18:27:29

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　　KARAの解散⑥

　トースターであぶってきたスルメを齧りだしながらクラヤは話し出した。
「ニコルのソロ活動は正直言って苦戦が続いているよ。ミニアルバムの”'First Romance”だっけ？　あれとか、日本語デビュー版の”Something Special”を聴いた限りでは、架空で背後にKARAのメンバーを従え、その力を借りている雰囲気がある。何だろ？　ずばり言えば、KARA時分のイメージを引きずってる印象なんだ。1度聴いて、これじゃダメだな、と思ったよ。ソロっていうとAileeやBoAだ。やるなら彼女たちの背中追いかけてほしいよね。だけど、Aileeの”Dont' Touch Me”やBoAの”メリクリ”聴いた後、ニコルの”Something Special”聴いたら気が抜けてしまう。どこか物足りない。いや、物足りない以前にほんとに全力あげてデビューに備えてきたのかといぶかしく思った。たとえばGIRL'S DAYの”Something”で、ミナの歌声には思いの何かを感じることができるけど、ニコルの歌声からはそういう思いの何かがあまり伝わってこないんだ。単に楽曲がそんなによくないからなのか？　それとも日本語の理解にどこか問題があったのだろうか…庭みたいに日本で活躍してきたから、日本語をうまく喋れるようになってたと思うんだがなあ…」
　ビールをボンタのグラスに注ぎ、自分のグラスにも注いでクラヤは言った。
「アイドルやって抜け出したばかりで駆け出しのニコルをAileeやBoAみたいなトップシンガーと比べるのはどうだろう…歌唱が劣って感じられるのは仕方ないんじゃないかな」
「それは違うな」
　ボンタはグラスを置いた。
「駆け出しと言っても1年か2年アイドルやって抜けたわけじゃない。何年もキャリアを積み、KARAの中じゃエース的存在となっていたんだ。KARAファンの多くもそこは認めていた。だから期待したくなるじゃないか。出て行く以上は当人も自信があったんだろう、とね。しかしダメだった。ユーチューブの再生回数などから推測しても、彼女の歌は今やほとんど忘れ去られてる。ハラやスンヨンたちの脱退とともにニコルのインスタグラムも活気づき、カムバックの準備も囁かれているが、今度のカムバック曲が彼女の命運を握っているようだ」
　クラヤは冷蔵庫からマヨネーズを取り出してきた。
「要するにジヨンはまあまあの活躍を見せているが、ニコルはいまだ期待に応えられないでいるってわけか。KARA的イメージを引きずってソロ活動するなら、案外ジヨンの方がうまく行ったんじゃないかな。どうだい？」
　ボンタは頷いた。
「ダンスで行くよりひと頃のIUみたいにギター持たせてデビューさせたら、そこそこは行ったかもしれない。日本でならなおのことね。今だからいうが、ジヨンに音楽やらせたがっていた事務所の方が多かったかもしれないよ」
「いいよ、それは…終わったことだ。女優として頑張ってるジヨンを韓国サイドも認め始めてるって聞くしね。日本や韓国はもとより、広くアジアで認められる女優を目指すジヨンにとってはいい傾向だ」
「この解散で彼女らの夢が具体化に向かってほしいね。今日の締めはこれでいこう」
　ボンタはグビッとビールをあおった。

★関連記事

　KARAは2007年に本国ギュリ、スンヨン、ハラのほかニコル、ジヨンの5人でデビュー。日本では10年に「ミスター」がヒットし、翌11年にNHK『紅白歌合戦』に出場、13年1月には東京ドーム公演も成功させた。

　一方、解散やメンバー脱退の噂が何度も浮上しており、ついに14年1月にニコル、4月にはジヨンが脱退。3人体制を経て、同年7月にヨンジが加入して4人体制に。日本ツアーも開催したが、オリジナルメンバー3人の脱退により、今後KARAとしての活動を見ることは極めて困難になった。

　脱退したジヨンは名前を知英（ジヨン）に変更し、日本で女優として活動を開始。映画『暗殺教室』などに出演したほか、放送中の日本テレビ系ドラマ『ヒガンバナ～警視庁捜査七課～』（毎週水曜　10：00）に出演中。ニコルは米国でのトレーニング期間を経て、15年6月に日本でソロデビューを果たしている。