Waterfalls Blog

The Blog of "Waterfalls: Taka's Hemisphere"

ザ・ローリング・ストーンズ / ア・ビガー・バン

2006-02-01 | Disc Review
ザ・ローリング・ストーンズ(=以下ストーンズ)の約8年振りのニュー・アルバムが、この『ア・ビガー・バン』です。でも、実は、出ると知っても当初は全く関心ありませんでした。別にストーンズのファンという訳でもありませんし、今までも、1989年の復活作『スティール・ホイールズ』と、1992年のオリジナル・メンバーのビル・ワイマンの脱退後、ダリル・ジョーンズというベーシストを迎えての初の新生ストーンズ作品である1994年の『ブードゥー・ラウンジ』は、話題性も手伝って即買いしましたが、それ以降は、オアシス等の90年代UKロック(ってストーンズもUKロックの大御所ですが)にハマッていたこともあり、1997年の『ブリッジズ・トゥ・バビロン』が出ても、試聴すらしませんでした。ましてや、ライヴ盤に至っては、完全に興味無し状態でした。また、2002年にリリースされた、40周年記念となるベスト盤の『フォーティー・リックス』収録の新曲4曲も、試聴では全然印象に残らなかったこともあり、『フォーティー・リックス・ツアー』こそオール・タイム・ベスト的な内容であろうということから、興味を持って初のストーンズ・ライブに臨みましたが、ライブで聴いても新曲に感動することはありませんでした。

そんなこんなで、もうストーンズの新作には、初めから期待すらしておりませんでした。そこに更に追い討ちとして、日本盤はセキュアCDなる新たなCCCDで発売されたことから、試聴では予想以上に好感触ではありましたが、結局、買い控えすることにしました。

しかし、ストーンズ好きの会社の先輩が、輸入盤CCCDをCD-Rに焼けたといって、その焼いたCD-Rをくれたので、改めてこの『ア・ビガー・バン』をじっくりと聴いてみました。すると、あまりのかっこよさにビックリ!正直、あんなにかっこいい、小気味いいロックンロールを、アルバム全編通して聴かせてくれるとは、予想だにしませんでした。ほんと、平均年齢60歳を越えるバンドが演奏しているとは、とても思えない程、元気はつらつとした勢いがあり、聴いてても楽しく元気が出てきます。まさか、聴いててこんなに胸が躍るような曲が、こんな楽しいアルバムが、ベスト盤の次に出てくるとは!さすがはストーンズ...恐るべし! ということで、皆さんも是非お聴き逃しなく!

因みに、私は、やはり気に入ったものはちゃんとCDで欲しいので、結局ちゃんと買いました。勿論、セキュアCDなる新たなCCCDで発売された日本盤ではなく、米国盤非CCCDで!。(実は、CCCDに関しては、音飛びしやすいという傾向と、私自身CDデッキを壊されかけた経験があることから、それ以来、余程でない限り購入を避けています。もっとも、ここではこれ以上のCCCD論議は控えますが。)

ポール・マッカートニー / ケイオス・アンド・クリエイション・イン・ザ・バックヤード

2006-01-12 | Disc Review
実は、私の一番好きなアーティストと言いますか、別格扱いで不動の方がポール・マッカートニーでして、本当なら9月にこの新作『ケイオス・アンド・クリエイション・イン・ザ・バックヤード』が発売になった時点で取り上げたかったのですが、日本盤の発売が変則的(日本盤のみのボーナス・トラック入り通常盤が先行発売、CD+DVD初回生産限定スペシャル・パッケージ日本盤がその約2週間後に発売)で且つセキュアCDなる新たなCCCDで発売されたことから、どちらの仕様のアルバムを米国盤非CCCDで購入するか等、購入方法や選択に悩んだこともあり、そうこうしているうちに、公私の多忙等も加わり、書く機を逸してしまっていました。(CCCDに関しては、音飛びしやすいという傾向と、私自身CDデッキを壊されかけた経験があり、それ以来、余程でない限り購入を避けています。もっとも、ここではこれ以上のCCCD論議は控えますが。)

今回の新作は、プロデューサーにナイジェル・ゴドリッチを迎えていたこともあり、前評判がとても良く、アルバム自体に対する期待はかなり高いものとなっていました。しかし、先行シングル「ファイン・ライン」を初めてインターネットで聴いた時は、正直、少々期待はずれでした。1997年発売のアルバム『フレイミング・パイ』のタイトル・トラックのようで新鮮味がなく、アルバム収録曲として入っている分には申し分ないけど、先行シングル向きとは思えなかったからです。というか、個人的には、1989年発売のアルバム『フラワーズ・イン・ザ・ダート』からの先行シングル「マイ・ブレイブ・フェイス」や第2弾シングル「ディス・ワン」のような、キャッチーで万人受けしそうな曲でのシングル・チャートでの久々の成功を期待していたので、聴いた瞬間、期待していた久々の全米・全英シングル・チャートNo.1獲得はおろかTop10入りもまたおあずけだな、と感じました。ただ、アルバムとしては、今回の新作『ケイオス・アンド・クリエイション・イン・ザ・バックヤード』は、とてもポールらしくて、個人的には『フレイミング・パイ』以来に好きなアルバムです。(聴いた当初は越えるかとも思いましたが、『フレイミング・パイ』は色々個人的に思い入れのあるアルバムということもあり、結果的には、超えませんでした。)とはいえ、内容の充実度は『フレイミング・パイ』と互角に近い、という印象は今でも抱いています。もっとも、一般的には、ポールがドラム、ギター、ベース、キーボードからブロック・フルート、ハーモニウム、フリューゲルホルンまで、ほとんど全ての楽器を一人で演奏していることから、1970年発売のアルバム『マッカートニー』や1980年発売のアルバム『マッカートニーⅡ』を引き合いに出して語られている場合が多いですけど。とにかく、手作り感あふれる雰囲気がとても素晴らしいアルバムで、しかも、ナイジェル・ゴドリッチによって随所に程よくスパイスのように音の隠し味が散りばめられているので、聴き込むほどに味の出てくる飽きの来ない一枚です。(因みに、ビルボード誌の全米アルバム・チャートでは最高位6位、全英アルバム・チャートでは最高位10位という結果でした。)

因みに、このアルバムで特に好きな収録曲を強いてあげるなら、このアルバムからの第2弾シングルであり、ポールが「「ブラックバード」(アルバム『ザ・ビートルズ』収録)の娘」と称する佳曲「ジェニー・レン」と、ビートルズのアルバム『リボルバー』収録のポール作の佳曲「フォー・ノー・ワン」を彷彿とさせる「イングリッシュ・ティー」です。とにかく、ポールの音楽が好きなファンなら、手放しで喜びを感じるであろう、ビートルズっぽくもありポールのソロっぽくもある、ポールの”世紀のメロディ・メイカー”としての魅力がかなり集約されたアルバムであることは確かです。ただし、このアルバムに、新たなポール・ファンを獲得するような万人受けする魅力があるかというと、正直難しいと言わざるを得ません。そういう意味では、どちらかというと、ビートルズやポールの音楽のファン向けのアルバムと言えると思いますが、じっくりと腰を落ち着けて音楽を聴きたいという方には最適な一枚とも思います。

Mr.Children / アイ・ラブ・ユー

2006-01-10 | Disc Review
2006年最初に取り上げるのは、日本を代表するロック・バンドであるMr.Children(=以下ミスチル)が昨年9月に発表した最新作『I ♥ U (アイ・ラブ・ユー)』です。基本的には洋楽好きの私ですが、ミスチルに関しては、大学時代にシングル「CROSS ROAD」や第36回日本レコード大賞受賞曲である「innnocent world」、名バラード「Tomorrow never knows」等をよく耳にしましたし、実際、「CROSS ROAD」や「Tomorrow never knows」は結構気に入っていました。とはいえ、当時のミスチルは流行り過ぎていて、キャッチーで流行りモノの音に飛びつくみたいなのが嫌で、正直、ちょっと敬遠していました。そんな自分が初めてミスチルを見直したのがシングル「花 -Memento-Mori-」でした。枯れた曲調に印象に残るメロディライン、そして素晴らしい歌詞と、ほんとに感動しました。そしてアルバム『深海』に至っては、そのダークでハードな音世界にプログレッシブな展開と、トータル・コンセプト・アルバムとしての完成度はとても素晴らしく、正直、日本のロックもここまできたかと驚きました。しかしながら、それ以降のミスチルのアルバムや曲については、悪くないとは思いながらも購買意欲をそそるものではなく、買って愛聴することはありませんでした。

そんな自分にとって、久々にミスチルの曲で心に響いたのが、日清カップヌードル「NO BORDER」CMテーマソングとして2005年に流れていた「and I love you」でした。また、ポカリスエットCMソングの「未来」も良くて、久々に購買意欲をそそられました。そんな中「四次元 Four Dimensions」が出たので、早速、買おうとしたのですが、またキャッチーで流行りモノの音に飛びつくみたいな嫌悪感が出てきて、購入を躊躇してしまいました。(苦笑)で、そうこうしているうちに、このアルバム『I ♥ U (アイ・ラブ・ユー)』が出ました。でも、アルバムも、当初は流行りモノの音に飛びつくみたいな嫌悪感のせいで購入を躊躇。(爆)そんな中、MR.CHILDREN DOME TOUR 2005‘I ♥ U’追加公演の先行発売情報を目にして、どうせ抽選で当たらないだろうと思いながらも興味本位で申し込んだところ当選し、漸くこのアルバム『I ♥ U (アイ・ラブ・ユー)』を予習も兼ねて購入。結果、レコード店店頭の試聴では気付かなかった奥深さと素晴らしさに、アルバム『深海』の時のように聴けば聴くほどハマっていきました。そして、更に、届いたチケットが、過去のドームでのライブ歴の中でも最高のアリーナど真ん中の前から数列という超プレミア席だったこともあって、気分も高揚して初の邦楽アーティストのライブとしてミスチル・ライブに臨みました。そのライブでは「Door」を除く『I ♥ U』収録曲を全て(最後の最後には、スペシャル・ゲストとしてミスチルのプロデューサーの小林武史氏も登場して、第46回日本レコード大賞受賞曲「Sign」を一緒に)演奏したこともあり、更に、このアルバム『I ♥ U』は特別なものとなりましたし、全ての収録曲が更に好きになりました。

ということで、非常に前置きが長くなりましたが、このアルバム『I ♥ U』は、2005年に購入した全アルバムの中でも一番のヘビーローテーションとなっています。実際、1曲目の「Worlds end」から躍動感溢れる楽曲で、その後続くどの曲も最初から最後まで一気に聴かせてしまう超強力な内容で、捨て曲もまったくなく、その完成度たるや脱帽ものです。そんな中でも、アルバムを買って初めて知って且つ好きになった収録曲を強いてあげるなら、「僕らの音」(なんと日清カップヌードル「NO BORDER」2006年CMテーマソングとして選ばれました!)「靴ひも」「CANDY」です。とにかく、アルバム・タイトルの"U"が、"YOU"と"Universe"のダブルミーニングであり、また"♥"が衝動的なニュアンスを込めて潰れたトマトという記号で表示されているらしいことからもわかるとおり、どの楽曲も「LOVE」の言葉だけでは括れないさまざまな世界観が綴られており、そのスケール感は圧巻です。ということで、私のように(笑)流行りモノの音に飛びつくみたいな嫌悪感のせいでこのアルバム『I ♥ U』の購入を躊躇していたり敬遠している方が居ましたら、是非とも購入に踏み切って下さい。やはり、良い物は良い訳で、聴かず嫌いにしておくにはもったいな過ぎる名作アルバムなので。

ペネベイカー / ペネベイカー

2005-11-14 | Disc Review
レコード店頭の試聴コーナーにて「ベン・フォールズmeetsバカラック」という宣伝文句に惹かれて聴いてみたところ、その音楽性、美しい音色に魅了され、即購入に至ったのが、2003年12月に日本で世界初リリースされたペネベイカーのデビューアルバム『ニュー・スカイライン』でした。そして、この6月、『ニュー・スカイライン』以来の待望の2ndアルバムが、その名もずばり『ペネベイカー』とバンド名を冠して、これまた日本で世界初リリースされました。今作もレコード店頭の試聴コーナーにて発売されているのに気付き、購入に先立ち先ず試聴してみましたが、前作同様、美しく親しみやすいメロディーを身上とした、王道のポップを展開していて、その変わらぬポップ・マエストロぶりに感動し、即購入に至りました。

ペネベイカーは、プロデューサーとしてもその名を知られているビヨン・オクヴィスト(ピアノ/ヴォーカル)とダニエル・ベンツォン(ベース/ギター)を中心とする、ピアノをフィーチャーした王道のポップ・ミュージック・サウンドを展開するスウェーデンのトリオ・ユニットで、ソング・ライティングもビヨン・オクヴィストとダニエル・ベンツォンがほぼ全てを手掛けています。因みに、ペネベイカーというバンド名は名優マーロン・ブランドの母親の名前に因んで命名されたそうです。

とにかく、デビューアルバム『ニュー・スカイライン』同様、今作『ペネベイカー』もエバーグリーンなメロディー満載の極上のパワーポップ・アルバムに仕上がっていますので、とりわけポップ・ミュージックのファンには、是非とも聴いて貰いたい一枚です。

ラウル・ミドン / ステイト・オブ・マインド

2005-11-13 | Disc Review
漸く先月、日本盤も東芝EMIより発売となったラウル・ミドンのEMIマンハッタン・レコードからのデビュー・アルバム『ステイト・オブ・マインド』ですが、私がその存在を知ったのは6月のことで、レコード店頭の試聴コーナーにて輸入盤を何気なく聴いてからでした。あのスティーヴィー・ワンダーも参加しているという宣伝文句から、本当に何気なく聴き始めたのですが、1曲目からフラメンコ&ジャズ風味の超絶アコギ・プレイとソウルフルなボーカルに即魅了されてしまいました。しかも、他のアルバム収録曲もまたそれぞれタイプが異なるのですが、そのいずれもクオリティは非常に高く、独特のグルーヴを持ち合わせた、非常に心地良いメロディアスな楽曲となっているので、即購入に至りました。

実際、盲目であるが故の感受性・工夫・あらゆる音に対する飽くなき探求の成果がこのアルバムなのでしょう。ソウル、R&B、ポップ、フォーク、ジャズ、ラテンが見事に融合したアコースティック・サウンドは、独特の超絶アコギ・プレイとソウルフルなボーカルと相俟って物凄く良い感じに仕上っており、聴く者の心を掴んでしまう魅力があります。ということで、まだラウル・ミドンを聴いたことがないという方が居られましたら、是非ともチェックしてみてください。

オアシス / ドント・ビリーヴ・ザ・トゥルース

2005-08-22 | Disc Review
オアシス待望の約3年振りとなる通算6枚目のニュー・アルバム『ドント・ビリーヴ・ザ・トゥルース』がついに発売となりました。今回は、本作に先行して発売された先行シングル「ライラ」が、オリコンで12位を獲得して、オアシスのオリコンでのシングル最高位を獲得するという話題も先行しましたが、それ以上に、本作が初動売上9.5万枚を記録し、オリコンでの初登場首位を獲得したことが話題になりました。何せオアシスがオリコンでシングル、アルバム通じて首位を獲得したのは、意外にも94年のデビュー以来今回が初めて(97年8月発売の『ビィ・ヒア・ナウ』と02年6月発売の『ヒーザン・ケミストリー』の3位がこれまでのオアシスのアルバムでのオリコン最高位)とのことで、更に、洋楽男性アーティストのオリジナル・アルバムによるオリコン初登場首位獲得に至っては、96年2月5日付のMR.BIG『HEY MAN』以来、9年4ヵ月振り、UKバンドのオリジナル・アルバムによるオリコン初登場首位獲得に至っては、何と77年7月25日付のベイ・シティ・ローラーズ『恋のゲーム』以来、実に27年10ヵ月振り、史上2組目の達成となるということですので、まさにこれは大変な快挙と言えます。

そんな偉業をここ日本で成し遂げた作品でもあるこのアルバム『ドント・ビリーヴ・ザ・トゥルース』ですが、実際に聴いてみての第一印象は、シンプルなUKギター・ロック・アルバム、という感じでした。何というか、これまでの作品にあった重厚感が薄まり、どこか懐かしい肌触りのある普遍性をもったメロディがより全面に押し出されたタイトなバンド・サウンド・アルバムという感じで、これまでのオアシスの作品には無かった質感のサウンドが展開されています。本作では、ノエル5曲、リアム3曲(うち1曲はゲムとの共作)、アンディ2曲、ゲム1曲と、前作以上にノエル以外の作品の収録が増えているので、それも要因として考えられますし、2004年1月にオアシスを脱退した2代目ドラマー、アラン・ホワイトに代わるサポートメンバーとして、今回のアルバム制作には、リンゴ・スターの息子でありザ・フーのキース・ムーンからも手ほどきを受けたことがあるザック・スターキーが「マッキー・フィンガーズ」を除く全曲でゲスト参加したことも要因として考えられますが、それ以上に、バンドとしての一体感が格段に向上したことが、一番の要因ではないかと思ってます。

とにかく、ノエル自身「最高の曲だけが詰まった久々のアルバムだ。多分『モーニング・グローリー』以来だな」と語る程、この『ドント・ビリーヴ・ザ・トゥルース』は、非常に聴き応えのある、聴けば聴くほど味わい深くなる、飽きの来ないアルバムに仕上がっているので、往年のファンは勿論のこと、UKギター・ロックが好きな方は是非とも聴いてみてください。特に、アルバムの最後(ボーナス・トラックを除く)を飾る「レット・ゼア・ビー・ラヴ」は、「アクイース」以来のリアム&ノエルの兄弟デュエット・ソングなのですが、ジョン・レノン風のピアノのイントロがせつなく響く、美しく心に残る必殺の名曲ですので、ファンならずとも必聴のナンバーです!まずは下記オトフレームより、是非とも試聴してみてください。是非、お聴き逃しなく!



ベン・フォールズ / ソングス・フォー・シルヴァーマン

2005-07-20 | Disc Review
ベン・フォールズ待望のソロ・アルバム第2弾『ソングス・フォー・シルヴァーマン』が、『ロッキン・ザ・サバーブズ』以来4年振りに発売となりました。とは言っても、その間に、キャリア初となるライブ・アルバム『ベン・フォールズ・ライヴ』や5曲入りの書き下ろしEP3部作(「スピード・グラフィック」、「サニー・シックスティーン」、「スーパーD」)等が出ていたので、そんなに経った様には思えませんが。

とにかく、このアルバムの第一印象は、地味でシンプルというものでした。実際、ベン・フォールズ・ファイブの頃からのはじけた雰囲気はなりを潜め、どちらかというと吟遊詩人的な作風で、落ち着いた大人な雰囲気の一枚に仕上がっています。また、今作は、ピアノ、ベース、ドラムスのトリオ編成に立ち返っての制作という点では、原点回帰的なアプローチも感じ取れます。

敢えて言うならば、エルトン・ジョンの1970年発表のアルバム『エルトン・ジョン3(Tumbleweed Connection)』や1971年発表のアルバム『マッドマン(Madman Across The Water)』、ビリー・ジョエルの1976年発表のアルバム『ニューヨーク物語(Turnstiles)』を彷彿とさせるような音とでも言いましょうか。時が経つにつれ、古いどころかますます聴きたくなるようなセピアな音色に、ベン・フォールズのシンガー・ソングライターとしての真骨頂を感じます。

(余談ですが、DualDisc盤『SONGS FOR SILVERMAN』のDVDのSpecial Bonus Trackであり公式サイトでの『SONGS FOR SILVERMAN』購入者特典無料ダウンロード等でも入手可能である「LANDED (STRINGS VERSION)」のオーケストラ・アレンジが、エルトン・ジョンの初期を支えたポール・バックマスターによってされているのですが、モロにアルバム『マッドマン』に入ってそうな初期エルトン・ジョンなオーケストラ・アレンジで、その大胆なオーケストレーションの導入は圧巻でした。機会があれば是非聴いてみてください。)

ベン・フォールズのシンガー・ソングライターとしての集大成な作品と言えるこのアルバム、まさに聴けば聴くほど味わい深くなる、飽きの来ない作品に仕上がっていますので、ピアノ・ロックが好きな方は勿論のこと、良質な音楽に飢えている人は、まずは下記オトフレームより試聴の上、是非ともお買い求めください。



ケイティ・メルア / コール・オフ・ザ・サーチ

2005-06-08 | Disc Review
2003年11月にイギリスにてリリースされた、ケイティ・メルアのファースト・アルバム『コール・オフ・ザ・サーチ』は、全英チャートで6週1位を獲得し、全英でのセールスだけでも180万枚を突破する大ヒットを記録、更に、ヨーロッパ各国でもプラチナ、ゴールド・ディスクを達成したとのことなのですが、私はその存在を知ったのは今年に入ってからでした。きっかけはケイティの大ヒット曲でありデビューシングルでもある「ザ・クローゼスト・シング・トゥ・クレイジー」をテレビスポットで聴いたことだったのですが、その後、レコード店頭の試聴コーナーにて他のアルバム収録曲も試聴する機会を得て、他の曲のクオリティも非常に高いことを知り、即購入に至りました。

1984年9月16日に旧ソ連のグルジアに生まれ、子供時代をグルジアとロシアのモスクワで過ごしたケイティ・メルアは、1993年に北アイルランドの都市ベルファスト、1997年にはイギリスのロンドンへと移り住み、16歳でロンドン郊外のブリット・スクール・フォー・パフォーミング・アーツに進学、在学中にプロデューサーであるマイク・バットに見出され、入念な準備を経てデビューに至ったということですが、実際、現在20歳という若さとは思えないような天使の歌声に、一瞬で耳を奪われました。

トラッド・フォークやジャズ、ブルースをベースにした優しげなアコースティック・サウンドに乗せて歌われるケイティの伸びやかで透明感溢れるピュアな歌声は、実際、ぬくもりと優しさに溢れ、穏やかに夢心地にさせてくれますし、ほのかな郷愁を伴い、聴く者の心を掴んでしまう魅力があります。それ故に、ノラ・ジョーンズなどとも比較されがちですが、実際、ノラ・ジョーンズが好きな方は、気に入ること請け合いですし、お薦めします。

因みに、ケイティは、去る6月5日に、東京渋谷のオーチャードホールにて、一夜限りのスペシャルコンサートを行ったのですが、実際に観てもがっかりするどころか、ますます彼女の歌声は勿論のこと堂々とした演奏にも魅了されました。今秋に世界同時リリース予定のセカンド・アルバムからの新曲も披露されましたが、それらもクオリティが高かったので、新作も期待できます。ということで、まだケイティ・メルアを聴いたことがないという方が居られましたら、是非ともチェックしてみてください。

Tears For Fears / Everybody Loves A Happy Ending

2005-05-18 | Disc Review
2004年、Tears For Fearsはオリジナル・メンバーでの復活作『Everybody Loves A Happy Ending』をまず米国先行で発表しました。1991年、突如カート・スミスの脱退が発表されて以降は、ローランド・オーザバルの実質ソロ・プロジェクトとなっていたTears For Fearsでしたが、この度、ローランド・オーザバルとカート・スミスの二人からなるバンドとしてのTears For Fearsの作品としては、1989年発表の名作『シーズ・オブ・ラヴ』以来となるこのアルバム『Everybody Loves A Happy Ending』の発表でもって、見事にシーンにカムバックを果たしました。

さて、その待望の復活作『Everybody Loves A Happy Ending』ですが、第一印象は、1989年発表の名作『シーズ・オブ・ラヴ』に負けず劣らずの中期ビートルズを想起させるポップでゴージャスなサウンド、という感じでした。実際、その1989年発表の名作のタイトル・トラックでもある曲「シーズ・オブ・ラヴ」のような緻密且つ重厚な音世界が展開されていて、その完成度の高さはまさに息を呑むほどの美しさですので、往年のファンの期待は決して裏切られることはないでしょう。そう、まさにファンの“最高”という期待をも上回る程の、不足のない凄い“英国ロックの王道”的作品に仕上がってますので、かつてTears For Fearsを聴いて惹かれた方は勿論のこと、知らない世代の方にも、是非とも聴いてもらいたいアルバムです。

尚、2005年には本国イギリスを含むヨーロッパ各国でも発表されたこのアルバム『Everybody Loves A Happy Ending』ですが、なぜか日本盤の発売については、立ち消えとなってしまっており、現時点では、まだ未定となっております。ここ日本でも広く認知され日の目を見るべく、日本盤が発売されることを切に願ってやみません。

ブライアン・アダムス / ルーム・サービス

2005-05-08 | Disc Review
2004年秋、ブライアン・アダムスは、オリジナル・スタジオ盤としては1998年発表のアルバム『デイ・ライク・トゥデイ』以来となるまさに6年振りの新作『ルーム・サービス』を発表しました。90年代前半までは大ヒット曲を連発し、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだったブライアンですが、近年はとりわけ全米チャートにおいては久しくヒットチャートから遠ざかった感があります。でも、実際は、逆にヨーロッパ各国で人気が定着し、近年は、主にヨーロッパを中心にロード生活をしていたようです。そんなブライアンの久し振りのこの新作『ルーム・サービス』ですが、実際、収録曲のほぼ全曲が、過去2年間のヨーロッパ・ツアー中に書かれており、ボーカル録りとオーバーダブの作業に至っては、全て2002年以降のヨーロッパ・ツアーで訪れた各国のホテルの部屋で行われたそうで、アルバム・タイトル『ルーム・サービス』はそのことが反映されているそうです。

さて、その6年振りの新作『ルーム・サービス』ですが、正直言うと、第一印象はシンプルで地味、という感じでした。実際、期間限定特別価格盤が出てなければ、買ってなかったかもしれません。というのも、ヒット・ポテンシャルの高い「アイ・ドゥ・イット・フォー・ユー」や「ヘヴン」のようなキラー・バラードもなければ「ラン・トゥ・ユー」や「ハーツ・オン・ファイヤー」のようなシンプルでもキャッチーなロック・チューンもなく、ざっと一聴した限りでは殆ど耳に残らなかったからです。でも、この2005年4月の来日公演前に、予習を兼ねて再び聴いてみたところ、総じてミディアム・テンポなギターサウンド中心と言う感じで、非常に聴き易く味わい深く、聴けば聴く程味が出てきました。

ということで、往年のファンは勿論のこと、ギター・ロックが好きな方は是非とも聴いてみてください。