Waterfalls Blog

The Blog of "Waterfalls: Taka's Hemisphere"

ザ・ボサノヴァ・ホテル / ムーン・アイランド

2009-12-08 | Disc Review
今回は、12月13日(日)、15日(火)、17日(木)に東京丸の内の「コットン・クラブ」で行なわれる、元シカゴピーター・セテラ初ソロ来日公演のギタリストとして来日も目前に迫った、マドンナの「ラ・イスラ・ボニータ」の作者でもあるブルース・ガイチが、奥方でもあるジェイニー・クルーワーマイケル・センベロと共に結成した極上ボサノヴァ・カヴァー・ユニット、ザ・ボサノヴァ・ホテルのアルバム『ムーン・アイランド』を取り上げたいと思います。

このアルバムは、アース・ウィンド&ファイアーの「アフター・ザ・ラヴ・イズ・ゴーン」やミニー・リパートンの「ラヴィン・ユー」、ブルース・ガイチも共作者として名を連ねているマドンナの「ラ・イスラ・ボニータ」やボビー・コールドウェルの「風のシルエット」等の黄金の名曲の数々を、ボサノヴァやサンバなどブラジリアン・ミュージック風にカヴァーしたアルバムなのですが、単なるカヴァー物と思うなかれ。 実に完成度の高い作品となっておりまして、巷に溢れるカヴァー・アルバムとはひと味違う仕上がりになっています。

実際、ライナーノーツにも書かれている通り、アメリカのポップ、アダルト・コンテンポラリー・シーンで素晴しい活躍を見せてきた才能が三位一体となって繰り広げる音世界は、文字通り唯一無二の輝きを放ち、大衆性と芸術性、その両方を痛快な程に極めており、しかもボッサをベースにした心地よい聴き易さを提供するというハイセンスさで、その完成度たるや脱帽ものです。

ということで、12月3日には第16回日本プロ音楽録音賞のポップス/歌謡曲部門において最優秀賞までも受賞したこのザ・ボサノヴァ・ホテルのアルバム『ムーン・アイランド』、まだ聴いたことがないという方が居られましたら、まずはこのアルバムにもボーナス・トラックとして収録されている曲で、マイケル・センベロリチャード・ルドルフKIDS EARTH FUNDの為に書いた曲である「スルー・ア・チャイルズ・アイズ」のビデオクリップを、こちら又は下記画像をクリックするとフルでご覧になれますので、良かったら是非とも試聴してみてください。



コルネイユ / ザ・バース・オブ・コーネリアス

2007-09-21 | Disc Review
今回は、FOX CHANNELにて好評放送中のドラマ『Dr.HOUSE』シーズン2のエンディングテーマとして流れている「トゥー・マッチ・オブ・エヴリシング」でお馴染みのコルネイユの英語デビュー・アルバム『ザ・バース・オブ・コーネリアス』を取り上げたいと思います。

実際、FOX CHANNELにおいては、ドラマ『Dr.HOUSE』シーズン2のスポンサーにもなっていることもあり、とりわけ「トゥー・マッチ・オブ・エヴリシング」については、スポットCMを中心にヘビーローテーションとなっていることもあり、頻繁に耳にする機会が多いのですが、何度も耳にするうちに気に入って、購入に至りました。

とにかく、「トゥー・マッチ・オブ・エヴリシング」に代表されるように、このアルバム『ザ・バース・オブ・コーネリアス』に収められている楽曲は、どれも暖かみのある優しいオーガニックなサウンドと優しげでやや陰りのある温かい歌声が印象的で、派手さはないものの聴き手の心に入り込んでくるものがあります。

また、歌詞も(祖国ルワンダでの経験についての1曲を除いて)愛に満ち溢れており、コルネイユの人柄が伝わってくるようなのですが、実は、コルネイユは、少年時にルワンダ大虐殺を経験し、両親、兄2人、妹の家族すべてを、それも自宅で、目の前で失う、という愛別離苦の悲劇を経験しており、コルネイユだけが奇跡的にソファの下に身を隠して生きながらえ、歩いて当時のザイールに逃げた後、亡き両親の旧友を頼ってドイツに渡り、その後、パリでも生活した後、カナダ・モントリオールに移住して道が開けた、という人一倍の艱難辛苦を体験し、乗り越えて成功を掴んだという経歴の持ち主なのです。(実際、本作でも「I'll Never Call You Home Again」という曲では、祖国ルワンダでの経験について素直に歌っていますし、「A Man Of This World」では、祖国を後にしてからの人種差別経験について素直に歌っています。)

そういう意味では、真の悲しみを経験した人だけが持つ優しさが、素直に曲に現れているからこそ、聴く者の心に優しく染み渡っていくのでしょうし、人一倍、愛に対しても素直に向き合えるからこそ、その発せられるメッセージは聴き手の心にリアルに響くのでしょう。

とにかく、全曲、コルネイユの手による作品で、プロデュースもコルネイユ自身が手がけたまさにセルフプロデュース作品でもありますので、まだ聴いたことがないという方が居られましたら、まずは下記オトフレームより、是非とも試聴してみてください。今のように殺伐とした世の中だからこそ、一人でも多くの方に、命の尊さと失うことの悲しさ、本当の悲しみと優しさを知るコルネイユによるこれら普遍の愛の歌の全てに耳を傾けて頂きたいと思います。



フレイ / ハウ・トゥ・セイヴ・ア・ライフ~こころの処方箋

2007-02-26 | Disc Review
今回は、前回のジャックス・マネキンのデビュー・アルバム『エヴリシング・イン・トランジット』のレビュー内でも触れていた、アメリカはデンバー出身の4人組、フレイのデビュー・アルバム『ハウ・トゥ・セイヴ・ア・ライフ~こころの処方箋』を取り上げたいと思います。

所謂ピアノ・エモ系のバンドとして紹介された感のあるフレイですが、個人的には、そのサウンドはどちらかというとエルトン・ジョンビリー・ジョエルベン・フォールズといった、正統派ピアノ・ロックの部類に入るかと思っています。とにかくオーソドックス叙情的なメロディは、コールドプレイトラヴィスなどの叙情的サウンドを連想させますし、心に染みます。

因みに、フレイが本国アメリカでこのデビュー・アルバム『ハウ・トゥ・セイヴ・ア・ライフ~こころの処方箋』でデビューしたのは2005年9月とのことなのですが、全米で80万枚のスマッシュヒットを記録しただけでなく、最高位14位も記録、更に1年以上に渡り全米トップ40内にランキングされているという事実からも、いかにこのアルバムが聴く者を惹きつけて止まないかがわかるかと思います。(しかも、米音楽界最高の栄誉である第49回グラミー賞にも、このアルバム『ハウ・トゥ・セイヴ・ア・ライフ~こころの処方箋』からのファースト・シングル「オーヴァー・マイ・ヘッド~想いのすべてを歌にして」でベスト・ポップ・パフォーマンスに、セカンド・シングル「ハウ・トゥ・セイヴ・ア・ライフ~こころの処方箋」でベスト・ロック・パフォーマンスに、それぞれノミネートも受けました。)

とにかく、シングルカットされた楽曲だけでなく、その他のアルバム収録曲も全て、いずれもオーソドックス叙情的な美メロが印象的な、秀曲揃いのアルバムということで、この『ハウ・トゥ・セイヴ・ア・ライフ~こころの処方箋』はまさに聴けば聴くほど味わい深くなる、飽きの来ないメロディアスな正統派ロックの名盤と呼ぶに相応しいアルバムと言えると思いますので、ピアノ・ロックが好きな方は勿論のこと、良質な音楽に飢えている人は是非とも聴いてみてください。

ところで、フレイは、このアルバム『ハウ・トゥ・セイヴ・ア・ライフ~こころの処方箋』日本盤の発売に合わせてプロモーションで初来日した際、2006年9月11日(月)にタワーレコード渋谷店B1FのSTAGE ONEにてインストアライブを行ったのですが、アコースティックライブということで、実際に観てもがっかりするどころか、そのシンプルさがかえって美メロを際立たせてくれ、とても心に響きました。でも他方で、改めて通常のライヴでのパフォーマンスも観てみたいとも強く思いました。ということで、次は、初の単独でのジャパン・ツアーの実現を期待して待ちたいと思いますが、それまでの間に、一人でも多くの方にこのアルバムに耳を傾けて頂けたらと思います。

ということで、まだ聴いたことがないという方が居られましたら、まずは下記オトフレームより、是非とも試聴してみてください。



ジャックス・マネキン / エヴリシング・イン・トランジット

2007-01-30 | Disc Review
今回は、先日の初来日公演も記憶に新しい、サムシング・コーポレイトの中心人物でもあるアンドリュー・マクマホンのソロ・プロジェクトであるジャックス・マネキンのデビュー・アルバム『エヴリシング・イン・トランジット』を取り上げたいと思います。

昨年は、ジェイムス・ブラントダニエル・パウター等、所謂男性シンガー・ソングライター達の作品が脚光を浴びた年でしたが、特に、ダニエル・パウターの大ブレイクのお陰か、所謂ピアノ・エモ系のアルバムもCDショップの試聴機で、SSW系と並んでよく見かけました。そんな中でも、ピアノがリードするメロディックなポップ・ロックのバンドのアルバムとして、ザ・フレイの『HOW TO SAVE A LIFE~こころの処方箋』と並んで個人的にヘビーローテーションとなっていたのが、このジャックス・マネキンのデビュー・アルバム『エヴリシング・イン・トランジット』でした。

実は、サムシング・コーポレイトというバンド名こそ、所謂ピアノ・エモ系のバンドの紹介文の中で頻繁に目にしていたこともあり、以前から気にはなっていたものの、実際に聴いたことはなかったということもあり、偶々、サムシング・コーポレイトの中心人物によるソロ・プロジェクト作品という宣伝文句が目に留まり、試聴機で聴いてみることにした訳ですが、正直、聴いた瞬間にその音楽性、美しいピアノの音色に魅了されまして、即購入に至ることとなりました。

実際、アンドリュー・マクマホンがカリフォルニア州オレンジ・カウンティーの出身ということも影響しているのか、ジャックス・マネキンのサウンドは、ビーチ・ボーイズ直系のカリフォルニアらしい快活さと開放的な雰囲気にあふれたポップなメロディと清涼感溢れるハーモニーが印象的ですし、その疾走感溢れるピアノの美旋律は、聴く者の耳に心地よく、エモーショナルに響きます。また、アルバム収録曲も、全て最初から最後まで一気に聴かせてしまう超強力な内容で、その疾走感は圧巻ですし、捨て曲もまったくなく、その完成度たるや脱帽ものです。

とにかく、ベン・フォールズ・ファイヴビリー・ジョエル、70年代のエルトン・ジョンといった、アンドリュー・マクマホン自身が大好きだと言うアーティストが好きな方は勿論のこと、ドライヴの効いたピアノがリードするメロディックなポップ・ロックが好きな方には是非是非聴いていただきたいです。キャッチーなメロディーと若さ溢れるサウンドの疾走感がたまらなく気持ちいい、所謂ピアノ・エモ系の作品に仕上がってますので。

平原綾香 / 4つのL

2006-09-06 | Disc Review
基本的には洋楽好きの私ですが、最近は、邦楽の中にもお気に入りが増えてきました。邦楽のレベルが相対的に上がったということもありますし、最近の洋楽のメインストリームが、多感な時期に慣れ親しんだ80's(エイティーズ)の洋楽のような音からR&B/ヒップホップ系に取って代わり、今一馴染めないっていうのもあります。(こういうこと書くと、年取った証拠と言われるかもしれませんし、それを全否定するつもりもありませんが、最近の洋楽のメインストリームに限って言えば、正直概して面白くないのも事実です。)

そんな折、2005年1月~3月放送された連続ドラマ『優しい時間』をきっかけに知った平原綾香の歌う主題歌『明日』には、本当にグッときましたし、その深みのあるヴォーカルから平原綾香というアーティストにも興味が惹かれ、気付いたら洋楽好きの私にしては珍しく邦楽アーティストに嵌ることとなりました。実際、シングル『明日』の発売が待ちきれず、先に1st Album『ODYSSEY』を買い、とても気に入ったことから、2nd Album『The Voice』も買い、と立て続けに購入してしまったくらいでした。

ただ、その後出たカヴァー・アルバムである3rd Album『From To』だけは、あまり興味が惹かれず、購入は日本武道館公演当日まで躊躇することとなりましたが、この4th Album『4つのL』だけは、平原綾香のファンになってから初めてのオリジナルの新作ということもあり、迷わず即購入しました。

実際、新作とは言っても、タイアップ曲が多く、また発売に先駆けてオンエアされていたNHKトリノ五輪放送テーマソング「誓い」や映画『四日間の奇蹟』主題歌「Eternally」等、メロディの美しい壮大なバラードは圧巻で、それだけでも十分に購買意欲をそそるものでしたが、その他の収録曲も、これまでに平原綾香がやったことのないような雰囲気の楽曲を含むバラエティに富む内容で、しかも100曲を超える中から厳選したというだけに捨て曲もまったくなく、超強力な内容となっております。その上、Love、Life、Luck、Liveという4つのLをキーワードとしたコンセプト・アルバムということで、しかも複数のプロデューサー陣が曲ごとに起用されているということもあり、ややもすれば散漫になりがちな内容を、4つのLのinterludeを挿入する事で、4つのテーマに沿った楽曲群を上手く纏め上げており、結果的には、アルバム全体に統一感が生まれており、ヴォーカリストとしての平原綾香の実力と多彩な魅力を存分に楽しめる作品に仕上がっております。

ということで、クラシカル・クロスオーヴァーというジャンルに属する音楽が好きな方は勿論の事、平原綾香といえばデビュー曲「Jupiter」というようなイメージしか持ってない方に、是非とも聴いて貰いたいアルバムです。因みに、公式サイト内のこの『平原綾香「4つのL」発売記念特設サイト』では、全曲試聴可能となっておりますので、興味のある方は、是非ともそちらもチェックしてみて下さい。

ダニエル・パウター / ダニエル・パウター

2006-08-19 | Disc Review
今回は、先日の日本で初めてとなる東京での一夜限りの単独公演も記憶に新しい、カナダ出身の今年35歳になる遅咲きの新人シンガー・ソングライター、ダニエル・パウターのデビュー・アルバム『ダニエル・パウター』を取り上げたいと思います。

初めてダニエル・パウターを知ったのは、昨年末、ジェイムス・ブラントのデビュー・アルバム『バック・トゥ・ベッドラム』日本盤が発売になった時で、アルバム『Daniel Powter』輸入盤が同じ試聴機に入っていたことから、ついでに聴いたのですが、その時はそんなに惹かれなかったので、購入にまでは至りませんでした。しかし、今年春頃から街中やレコード店内で頻繁に「バッド・デイ~ついてない日の応援歌」を耳にするようになり、しかも耳にすればするほど心に沁みこんできたので、アルバム『ダニエル・パウター』日本盤の発売を機に試聴機で再度じっくり聴いてみたところ、全曲聴いていて心地よかったので、購入に至りました。

それにしても、まさかその後、米国でも同時期にシングル「Bad Day」がビルボード総合シングル・チャートで2006年4月8日から5週連続全米No.1を獲得し、このアルバム『ダニエル・パウター』も2006年4月29日付ビルボード総合アルバム・チャートで初登場で最高位9位を獲得する程の大ヒットになるとは、正直予想だにしていなかっただけに、大変驚きました。(尤も、アメリカの超人気オーディション番組『アメリカン・アイドル』で、エンディング・テーマとして、落選者の映像と共に毎回フィーチャーされていたという背景を知ってからは、納得しましたけど。)

実際、(『アメリカン・アイドル』という大ヒットした背景があるアメリカと異なり)ヨーロッパ各国、オーストラリア、本国カナダでは、ラジオで評判を呼んだことから昨年、先に大ヒットしており、そのまま勢いは日本にも波及、日本でもヘビー・ローテーションやパワープレイが続々と決定したことからラジオで評判を呼び、洋楽の新人アーティストとしては異例の大ヒットを今年記録した訳ですが、このアルバム『ダニエル・パウター』の内容自体はいたってシンプルでオーソドックス、それ故にポップでキャッチーなメロディーとファルセットを多用したブルー・アイド・ソウルなヴォーカルの美しさが際だった美しい作品となっていると言えます。

因みに、このアルバムのプロデュースを手がけたのは、エルヴィス・コステロ、スザンヌ・ヴェガ、クラウデッド・ハウス、ザ・コアーズなど、多くのアーティストを手がけてきたミッチェル・フルーム。ということで、この等身大で自然体な雰囲気は、決してオーバー・プロデュースしない、アーティストの実力や魅力を素直に引き出すことに長けた超売れっ子プロデューサー、ミッチェル・フルームならではのサウンド・メイキングとも言えるかと思います。

それにしても、シングル「バッド・デイ~ついてない日の応援歌」がそうであったように、このアルバム『ダニエル・パウター』のその他の収録曲も全て、5年かけて書いた歌ということで、5年分の経験が凝縮されているからなのか、耳にすればするほど歌詞と共に心に響いてくるので、聴けば聴くほど聴く者を惹きつけて止まないのでしょう。フランスでブレイクした後、ヨーロッパ各国で大ヒットを記録、結果的には日本や全米も制覇したという事実が、そのことを証明していると言えます。

ということで、まだダニエル・パウターを聴いたことがないという方は勿論のこと、流行りモノの音に飛びつくみたいな嫌悪感のせいでこのアルバム『ダニエル・パウター』の購入を躊躇していたり敬遠している方が居ましたら、是非とも購入に踏み切って下さい。やはり、良い物は良い訳で、聴けば聴くほど、このアルバムが聴かず嫌いにしておくにはもったいな過ぎる程素晴らしい、どこか懐かしくも新鮮でキャッチーなポップ・チューン満載の正直でリアルな作品だ、ということがわかると思います。因みに、歌詞や試聴は公式サイトにありますし、また、今年秋には初の単独でのジャパン・ツアーも決定し、11月28日大阪国際会議場 メインホール、11月29日東京国際フォーラム ホールA、12月1日愛知県芸術劇場 大ホールで行われますので、興味のある方は、是非ともライブもチェックしてみてください。

ロジャー・ジョセフ・マニング・Jr. / ソリッド・ステイト・ウォリアー

2006-07-23 | Disc Review
今でもポップ・ミュージック・ファンの間では人気の衰えないジェリーフィッシュ。 90年発表のデビュー・アルバム『ベリーバトゥン』を初めて聴いた時は、ビートルズポール・マッカートニービーチ・ボーイズ直系のポップなナンバー満載で、痛く感動したものでしたし、93年発表のセカンド・アルバム『こぼれたミルクに泣かないで』に至っては、ビートルズが発表したロック・ミュージックの金字塔と称されるアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』やビーチ・ボーイズの史上最高のアルバムと評価される『ペット・サウンズ』、クイーンを想起させる、まさに凝りに凝った万華鏡ポップ・ワールドが展開されていて、正直、度肝を抜かされたものでした。しかし、案の定、ビートルズが『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』で音楽的に頂点を極めた後、解散へと向かっていったように、ジェリーフィッシュも『こぼれたミルクに泣かないで』で音楽的に頂点を極めてしまった為か、そのセカンド・アルバムが最後の作品となってしまいました。

解散後、中心メンバーだった元メンバーのうち、アンディ・スターマーはもっばら、ジェリーフィッシュのファンだった奥田民生PUFFYとのコラボレーション以外さほど目立った動きはなく、未だに自身が表に立った活動はしておりませんし、ロジャー・ジョセフ・マニング・Jr.インペリアル・ドラッグムーグ・クックブックなどの活動はしていましたが、正直、関心を惹くに至りませんでした。(ジェイソン・フォークナーも、元メンバーの一人ですが、デビュー・アルバム『ベリーバトゥン』リリース後に脱退しています。)しかし、2005年3月よりネット先行配信が開始され、ジェリーフィッシュを感じさせるサウンドと評判になっていた初のソロ名義アルバムであるこの『ソリッド・ステイト・ウォリアー』は、2006年2月に遂に日本でCDアルバムとして発売になったのを機に、早速、購入した訳ですが、正に評判通りの「ひとりジェリーフィッシュ」の世界が展開されていて、超感動モノでした。

とにかく、キャッチーでメロディアスな楽曲満載のこの『ソリッド・ステイト・ウォリアー』、ジェリーフィッシュのファンの期待は決して裏切られることはない、ポップの魔術師ことロジャー・ジョセフ・マニング・Jr.渾身の傑作ですので、かつてジェリーフィッシュを聴いて惹かれた方は勿論のこと、知らない世代の方にも、とりわけポップ・ミュージックのファンには、是非とも聴いて貰いたい一枚です。また、この『ソリッド・ステイト・ウォリアー』がきっかけで、ジェリーフィッシュに興味を抱いた方には、2枚のオリジナル・アルバム『ベリーバトゥン』『こぼれたミルクに泣かないで』のほか、2002年に発表されたCD4枚組のボックス・セット『FAN CLUB』などからも選曲された全20曲収録のベスト・アルバム『Best!』が、2006年5月8日に英国でリリースされ、輸入盤で既に発売中ですので、そちらもお薦めです。また、今年はフジ・ロックと共に遂に単独のソロ公演も決定し、10月30日Shibuya CLUB QUATTRO、11月1日Shinsaibashi CLUB QUATTROで行われますので、興味のある方は、是非とも久々のライブもチェックしてみてください。

ジェイムス・ブラント / バック・トゥ・ベッドラム

2006-06-01 | Disc Review
今回は、先日の初来日公演も記憶に新しい、去年から大注目のイギリスの新人、ジェイムス・ブラントのデビュー・アルバム『バック・トゥ・ベッドラム』を取り上げたいと思います。

元々、2005年7月に本国英国でこのデビュー・アルバム『バック・トゥ・ベッドラム』とシングル「ユア・ビューティフル」を、全英アルバム&シングル・チャートで同時No.1に送り込むという快挙を成し遂げてから、私もジェイムス・ブラントには注目していましたが、加えてポール・マッカートニーもジェイムス・ブラントの歌唱力と作詞作曲の能力を評価していると知ってから、更に注目するようになりました。ですので、2005年12月7日に日本盤が発売になると、即購入しましたし、初来日公演が決定した時も、即チケットをゲットした訳ですが、まさかその後、米国でも2006年3月11日付ビルボード総合シングル・チャートで「ユア・ビューティフル」が全米No.1(因みに、イギリス人アーティストとしてのビルボード総合シングル・チャート1位獲得は、1997年のエルトン・ジョンの「キャンドル・イン・ザ・ウィンド 1997」以来の快挙)を獲得し、このアルバム『バック・トゥ・ベッドラム』も2006年3月25日付ビルボード総合アルバム・チャートで最高位2位まで上昇する程の大ヒットになるとは、正直予想だにしていなかっただけに、大変驚きました。(日本では、フジテレビ系ドラマ「小早川伸木の恋」挿入歌としても話題になっていたので、その影響で日本国内で大ブレイクする可能性は予想していましたけどね。)

ということで、既に全世界で750万枚以上(うちイギリスだけでも290万枚以上)の売り上げを記録し、ここ日本でも2006年5月8日時点で累積売上枚数19万枚を記録し、オリコン・総合アルバムチャートでも最高位7位を獲得するなどの大ヒットを記録している、このデビュー・アルバム『バック・トゥ・ベッドラム』は、名実共に名盤と言えますが、内容自体はいたってシンプルで、それ故にメロディーとヴォーカルの美しさが際だった美しい作品となっていると言えます。また、内省的な歌詞も美しいメロディーとヴォーカルと相俟って心を打つという点からも、聴く者を惹きつけて止まないのでしょう。本国イギリスを中心にヨーロッパ全土でジワジワとヒットしロング・セラーを記録、結果的には全米制覇も実現し、全世界で750万枚以上のセールスにまで達したという事実が、そのことを証明していると言えます。

とにかく、あのエルトン・ジョンまでも、自身の名曲「Your Song」(日本語タイトル「僕の歌は君の歌」)を受け継ぐ秀作だと評する程の名曲であり全英・全米No.1獲得曲でもある全世界的大ヒット・シングル「ユア・ビューティフル」を含む、このデビュー・アルバム『バック・トゥ・ベッドラム』は、正にジェイムス・ブラントの純粋な気持ちが生みだした珠玉の名曲集であり、キャロル・キングのポップス史上に燦然と輝く超名盤『つづれおり』と並ぶ、永遠のベストセラーとなり得る金字塔アルバムと言っても過言ではないと思います。ということで、まだジェイムス・ブラントを聴いたことがないという方は勿論のこと、流行りモノの音に飛びつくみたいな嫌悪感のせいでこのアルバム『バック・トゥ・ベッドラム』の購入を躊躇していたり敬遠している方が居ましたら、是非とも購入に踏み切って下さい。やはり、良い物は良い訳で、聴かず嫌いにしておくにはもったいな過ぎる程素晴らしい、純粋な気持ちが生みだした自然体の名作なので。

CAFE BOSSA

2006-05-03 | Disc Review
今回は、スターバックス コーヒー ジャパン(=以下スタバ)の期間限定のオリジナルのコンピレーション・アルバムである『CAFÉ BOSSA』をご紹介したいと思います。

Starbucksは、Starbucksの店舗用BGMプログラムの作成と共に、Starbucksの店頭で販売するコンピレーション・アルバムの制作等も行なってきており、そのCDの一部は日本のスタバ店舗でも輸入販売されておりますが、いずれもアダルト・テイストとはいえなかなかの渋い選曲センスで編集されており、全てとは言わないまでも結構好きで買ってきています。そんな中、とりわけ気に入っている永遠のマスターピースが、(米Starbucksではなく)スターバックス コーヒー ジャパンSynに委託して初めて独自に2002年に限定制作したバレンタインデーのプレゼント用オリジナルCD『FROM THE HEART~a collection of songs about love~』でして、初めてこのコンピレーション・アルバムを聴いた時は、お洒落でセンスの光る渋い選曲に痛く感動しました。と同時に、今後も日本だけのオリジナルCDの制作の際には、スターバックス コーヒー ジャパンにはSynに委託してもらいたいとまで思ったものでしたが、翌2003年にも同CDをバレンタインデーのプレゼント用オリジナルCDとして再発売して以降は、暫く日本だけのオリジナルCDを見かけることはありませんでした。

しかしながら、昨年12月、スタバはクリスマス用に久し振りに日本だけのオリジナルCDも出してきました。しかもその数なんと4種類もありびっくりしたのですが、うち2種類はSynが手がけたコンピレーション・アルバムだったので、迷わず即購入。そのうちの一枚がこの『CAFÉ BOSSA』なのですが、今回もセンス抜群のラウンジ感覚あふれるお洒落な選曲に痛く感動しました。

因みに、『FROM THE HEART~a collection of songs about love~』も『CAFÉ BOSSA』もコンパイルを手がけたのは、日本のCMや映画の音楽も数多く手がけてきているSynの設立者の一人であり且つCEOでもある、Nick Woodが中心のようなのですが、他に手がけたAlain Mikli(アランミクリ)創立25周年記念コンピレーション・アルバム『Me'li-Me'lo』なんかもセンス抜群のお洒落な選曲でクールなコンピに仕上げたりしてきていますので、現在はもう残念ながら、スタバ店頭で『FROM THE HEART~a collection of songs about love~』も『CAFÉ BOSSA』も見かけることはないと思いますが、もし今後スタバで再発されたりあるいは『Me'li-Me'lo』のように一般発売されることがあれば、是非ともチェックしてみてください。 また、今後、新作を含めSynが手がけたコンピレーション・アルバムを見かけた際は、是非とも(可能なら聴いてみてから)買ってみてください。特に、センス抜群のお洒落な選曲を好む方は、まず気に入ると思います。

最後に、『CAFÉ BOSSA』の収録曲目を下記にご紹介致します:

1. Winter - Bebel Gilberto
2. Samba No Pé - Silvio Anastacio
3. O Preguiçoso - Intuit
4. One Note Samba/Mas Que Nada - Coldfeet w/Nick Wood
5. Neguinho - Banda Favela
6. A Go Go - Trüby Trio
7. Vamos pra la - LTJ Xperience
8. Garota Brasilera - De Souza
9. The Sun - Minus 8
10. Bossanova Feelin' - Minus 8
11. Save A Prayer - Silvio Anastacio & Simon Le Bon
12. Bob (Edu K Remix) - Otto Feat. Bebel Gilberto

ボン・ジョヴィ / ハヴ・ア・ナイス・デイ~スペシャル・エディション

2006-03-25 | Disc Review
今回は、本国である米国の2005年10月8日付ビルボード総合アルバム・チャートでは初登場2位、英国の2005年9月25日付総合アルバム・チャートでは、1988年の4thアルバム『NEW JERSEY』以降、連続でのUKアルバム・チャートでのTOP5入りとなる初登場2位を獲得し、ここ日本では、初動売上12.3万枚を記録し、1994年のベスト盤『クロス・ロード』、1995年の6thアルバム『ジーズ・デイズ』に続き自身3作目、ベイ・シティ・ローラーズ、ビートルズに並ぶ、洋楽バンド史上最多タイとなるオリコンでの首位獲得を10年3ヵ月振りに果たした、ボン・ジョヴィの3年振りとなる、9作目のオリジナル・アルバム『ハヴ・ア・ナイス・デイ』を取り上げたいと思います。

実は、本作に先行して発売されたシングル「ハヴ・ア・ナイス・デイ」がオリコンで10位に初登場した際、自身の「イッツ・マイ・ライフ」でのシングル最高位21位の更新だけでなく、洋楽のシングルとしては、2002年7月15日付のヴァンゲリスによる「アンセム~2002FIFA WORLD CUP(TM)公式アンセム」での最高位5位以来3年振りに、洋楽バンドのシングルとしては、1982年9月6日付のサバイバーによる映画『ロッキー3』テーマ曲「アイ・オブ・ザ・タイガー」での最高位10位以来実に23年振りに、オリコン総合シングル・チャートでシングルTOP10入りした、ということが話題になりました。もっとも、その要因としては、ワンコインで買える500円シングルでの発売、という戦略が功を奏したということが挙げられます。しかし、いくら価格が手頃でも楽曲が今一であれば売れるはずもない訳で、そういう意味では、楽曲の良さと販売戦略の相乗効果の賜物だと言えるでしょう。斯く言う私も御多分に洩れず、シングル「ハヴ・ア・ナイス・デイ」には痛く感動しましたし、大いに惹かれまして、その曲こそがこのアルバムを買う一番の動機となった一人です。

とにかく、自身が中高生時代に巷で流行っていた、80年代後半の頃の路線を踏襲した2000年の7thアルバム『クラッシュ』と、名曲「リヴィン・オン・ア・プレイヤー」の現代版であったシングル「イッツ・マイ・ライフ」でもっての、典型的なボン・ジョヴィ・サウンドの現代版での復活に、約10年以上振りに購買意欲をそそられた時と同様に、このアルバム『ハヴ・ア・ナイス・デイ』は、1曲目の先行シングル「ハヴ・ア・ナイス・デイ」から、「自分の人生を生きる」という信念を綴ったメッセージ色の強い熱い歌詞に、「イッツ・マイ・ライフ」の流れを汲んだ曲調の疾走感溢れる楽曲が見事で、即購入に至りました。

実際、その他のアルバム収録曲も、全て最初から最後まで一気に聴かせてしまう超強力な内容で、その疾走感は圧巻ですし、何よりもアルバムの“ピース・マークの現代版”ともいえる含み笑いのキャラクター・ロゴからもわかるとおり、どの楽曲も皮肉っぽくもポジティヴで、そのドラマティックな曲展開は圧巻です。また、この初回限定盤付属のスペシャルDVD収録のライヴ映像やアルバムEPK(スペシャル・インタヴュー)も良いです。ということで、是非とも歌詞カードを見ながら全曲聴いてみてください。因みに、歌詞や試聴は公式サイトにありますし、丁度、3月22日には『ハヴ・ア・ナイス・デイ~JAPAN TOUR EDITION』というリパッケージ盤も新たにリリースされますので、そちらもお薦めです。ただし、『ハヴ・ア・ナイス・デイ~JAPAN TOUR EDITION』では、このスペシャルDVD付初回限定盤及び通常盤に収録されていた日本盤ボーナス・トラック3曲が、昨年12月のボストン公演時にレコーディングされたライヴ・トラック6曲に差し替えられていますので、ご注意下さい。

また、2006年4月には、3年振りとなる来日公演も決定しており、4月8日(土)&9日(日)東京ドーム、4月12日(水)ナゴヤドーム、4月14日(金)&15日(土)大阪ドーム、4月18日(火)札幌ドームで行われますので、ライヴ・キングの名に相応しい彼らのステージも興味のある方は、是非ともチェックしてみてください。