花が咲くとそば畑は優しい白で覆われる。心が落ち着くと言うか、なんだか優しい気持ちになる白なのである。
子供の頃に母が作ってくれた蕎麦の優しい味を思い出すからかもしれない。家族が食べる分だけのそば畑があった。丸い石臼でごりごりとそばの実をひいたそば粉100%の蕎麦なので、蕎麦といっても細く伸びた麵ではない。すいとんみたいなもので、蕎麦の小さな団子みたいなものである。ちょっと固めの食感と醬油ベースの汁が絶品だった。これは母にしか出せない味だった。
明日が地球最後の日だとしたら、最後に何が食べたい?なんて時々テレビ番組でやってたりするが、くだらねぇと思いながらも、母の作ってくれた蕎麦を思い出すのである。