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ケセランパサラン読書記 ーそして私の日々ー

◆『ゲイルズバーグの春を愛す』 ジャック・フィニィ 著 福島正実 訳  早川書房

              

 フィニィのこの本に収録されている短編『愛の手紙』は、秀逸。
 珠玉の短編といえる作品。
 多分、今も、ファンが結構、いるにちがい。

 物語の舞台は1961年。語り手の“ぼく”は、古道具屋で買った年代物の机の隠し引き出しから、80年前に書かれた手紙を見つける。それは、ヘレンという女性が空想上の思い人に宛てたラブレターだった。その文面に魅了された“ぼく”は衝動的に返信をしたため、古い郵便局のポストに投函する。1週間後、もうひとつの引き出しを開けると、あろうことか、そこにはヘレンからの返事が届いていた。

 筋書きの予想がつくにもかかわらず、心を打たれる。
 人って、まだまだ捨てたものじゃない、なんて思ってしまう。

 究極のロマンチックな恋愛ものだが、ただ、それだけではないのは、ジャック・フィニィの素晴らしい表現力だろう。このわずか15分ほどで読める短編で、描かれる人、そして地の文の確かさが、読み手の気持ちをしっかりとつかみとる。原題は 『love letter』
 日本での出版は1980年。
 
 
 この作品発表以降、“時を超える文通”という魅惑的なモチーフは、多くのロマンスファンタジー作品に(当時はSFロマンスと言った)に影響を与えた。
 
 岩井俊二監督の映画、『love letter』も、このフィニィの『love letter』に影響を受けていると言われている。この映画も名作であり、多分、出世作。岩井俊二の世界観が、とっても感じられるたものだったが、それにしても、岩井俊二って、変わらないななぁ。


                 


 時空を越えて出会う児童文学の最高峰は『トムは真夜中の庭で』(アン・フリッパ・ピアス 著 高杉一朗 訳 岩波少年文庫)だろう。
 これには、正直、ここんとこ最近のジブリには、手を出してもらいたくないなぁ。
 『思い出のマーニー』のように、いじり倒されちゃ、たまんない。
 

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