旅の3日目、ホテルで朝を迎える。1階のレストランで、ビュッフェ形式の朝ごはん。厚切りのベーコンにスクランブルエッグ、パスタなどどれもおいしそうで、食べきれないくらいお皿にとってしまう。ついつい入口近くにあるお料理だけでお皿をいっぱいにしてしまって、奥の方にもおいしそうなのが並んでいるのに気づいて、あ、こんなに取らなきゃよかった、という感じになるのも詮方なし。牛乳がうんと甘くておいしかったのと、地味だが加賀豆腐というのがとりわけ美味であった。ただこの日は結構早い時間の列車で奥能登行きを予定していたので、そうそうゆっくりもしていられない。またホテルも海外からの団体客などで満室近い盛況で、私たちが食べている間もテーブルが空くのを待っている方が大勢並んでいて、大急ぎで食べれるだけ食べて、出発。
金沢駅を8時11分に出発、七尾という駅でのと鉄道というのに乗り替えて、10時30分穴水駅に到る。のと鉄道の運転士さんは親切で、私に駅長さんの帽子とタスキを貸して下さり、列車の前で記念撮影。走っている間も運転席のすぐ横に張りついて、いかにも里山という言葉のふさわしい景色が流れるのを飽かず眺めていた。木々も、山も、人家も、谷川も、すべて穏やかで柔らかな色彩に包まれていて、都会にいるのとは全く違う安らぎを感じさせてくれる景色である。穴水からはバスで、輪島へ。昔は鉄道の駅があったというバスターミナルから10分ほども歩けば、もうそこは日本海に突き出た能登半島の端っこ、輪島港で、青く澄んだ、静かな海が目の前に開けている。朝市通りというレンガ敷きの通りを歩く。もうお昼近いので、名高いいわゆる朝市の店々は多くがもう店じまいしていたが、それでもいかにも捕りたて!という感じのお魚を並べたお店などいくつもやっていて、雰囲気を味わうには十分だった。お店の人はみんな人懐っこくて、通る私たちに色々と話しかけてくる。ことさら、猫のチャペルを抱えたりリードで引っ張ったりして連れているので、「猫連れてくる人は珍しいね!」と笑いながら頭をなでてくださったりした。中浦屋さんという柚餅子のお店では、色々な種類のを味見させていただいて、丸柚餅子という柚餅子の王様のようなのをお土産に買った。長い伝統で洗練を極めたような、味わいの深いお菓子だった。さらに輪島塗のお店などのぞいた後、お蕎麦屋さんに入って昼食。とにかくお水を飲んでもおいしいところだから、お蕎麦もおつゆもまろやかで素晴らしく香り高く、また大根おろしが口に甘くておいしかった。
またバスに乗って、穴水からまたのと鉄道で、和倉温泉に降りる。駅から少し歩いたところの、温泉街のとっかかりのところに、湯っ足りパークという足湯のある公園があって、ここで海を眺めながらのんびり過ごす。私たちが足湯に足をひたしてくつろぐかたわら、チャペルも日向で体を伸ばして、恐らく初めて間近で目にする海を興味深そうに見ていた。帰りの電車の時間を見計らって駅に戻り、金沢の街に帰る。ほんとうは、もっとゆっくり、能登半島のあちこちを見たり泊まったりしたかったが、時間が許さないのが残念。
金沢では、今宵も近江町市場で夕食。この日選んだのは、近江町食堂というメニュー豊富でくつろげる雰囲気の料理屋さん。父殿は近江町定食という、お刺身や茶碗蒸しや煮物や盛り沢山な定食、私はマグロとカニとイクラの三宝盛り、母殿は昨日すっかり味をしめたノドグロの焼き魚を注文して、私の食べているカニがおいしいと言ってメニューにはないが別にお皿に盛っていただいて食べ、父殿はご飯をおかわりして食べ、三人三様大いに満足して夜を過ごす。これだけ贅沢をした感じでも、お値段は東京で食べることを思えば実に安いしその上、うまいのである。
29日、短い滞在で心残りだが金沢を後にする。朝は前日と同様ホテルのビュッフェで、時間には余裕があるので今度はしっかり選んで、ヨーグルトにたっぷりハチミツをかけてみたりコーンフレークをとってみたりしながら、ゆっくり堪能して食べた。9時ころにチェックアウトして、金沢駅でお土産ものなど覗いてから北陸線に乗車、東京にまっすぐ帰るのも大変なので、群馬のばあばの家に向かう。富山で駅弁を買って車内で食べ、直江津でもまた買い足して、さてここから長岡回りだと青春18きっぷユーザーとしては一番お得なのだが時間がかかり過ぎるので、ほくほく線に乗り換えてショートカットさせていただくことにする。雪深い山間を行く、ずいぶんとトンネルの多い路線だった。六日町でJR上越線に乗り換え、群馬に6時過ぎには着けるはずだったが、乗り替えてすぐチャペルのケージをほくほく線車内に忘れてきたのに気づく。(今回の旅ではケージは持ってきたもののほとんど用いず、ずっとキャリーバッグに入れて父殿がお腹に抱えて移動していた。)途中の駅で降りて駅員さんに六日町まで連絡してもらい、幸い駅で保管されているとのことで次の列車で折り返して、無事手元に戻った。「中に猫入ってたらどうしようかと思った。」と駅の係の人も苦笑い。幸いさほど遅くなることなく次の上りに乗車でき、水上で乗り替えて、7時半頃には新前橋に到着、祖母殿に迎えられてゆっくり憩う。
30日は一日ゆっくりすることにして、赤城山麓の温泉天地の湯につかったり、水沢のはちみつうどんを食べたり。31日、いよいよ東京に帰る前に、以前から父殿が行きたがっていた超大盛りで有名なパンプキンさんという洋食堂でお昼をいただく。私はSSサイズのミートソース(SSといっても一般的な一人前より多いくらい)、父殿はSサイズのグラタンスパゲティ、母殿はイタリアンハンバーグランチというのを注文。やはり聞きしに勝る見事なまでのボリュームで、奮闘したがやや食べ残してしまったのは申し訳ない限り。自分が食べるより、周囲の常連さんのようなお客さんの食べっぷりを眺めていると、どなたも実に端倪すべからざるものがあり、なかなかおもしろい体験であった。
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