市川在住

読んだ本の紹介に加えて,市川での暮らしで何気なく目に留まったものごとを綴ります.ご飯屋さん,街並,風景など.

少年H 上・下巻 妹尾河童

2009-08-23 18:03:18 | 趣味(本・映画・音楽etc.)



神戸を舞台に,妹尾肇こと少年Hの目線で語られる
昭和10年代から20年代の,太平洋戦争前後の記録.

洋服仕立職人の父と熱心なキリスト教徒の母と妹の4人
という当時珍しい家族で育った少年H.
日本中が「天皇陛下のために」
「神国日本を守るために」
「国体を守るために」と一丸となって
戦争を続けていった時代にあって
「なんで新聞はちゃんと書かへんのか」
「太平洋戦争は勝てるのか」
「天皇陛下をずっと神様と信じていたか」
と,軍国主義の教育下にあってご法度であるはずの
戦争の意義・意味についての疑問を抱く.

時に冷静に,時にあつくそしてたくましく
時代を生き抜いた絵描き少年の記録に
戦争とは一体どういう物事なのかが
つまっていると思う.

私の父より恐らく1歳若い著者.
2中と3中の違いもあり,住んでいる場所も
それなりに違うとは言え,同じ神戸の出来事.

私には,父から聞いた話と昔見た記録と今の神戸の状況が絡み合って
何とも形容のしがたい強い印象を与えた書物である.

少年H(上・下)
妹尾河童
講談社


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