神戸を舞台に,妹尾肇こと少年Hの目線で語られる
昭和10年代から20年代の,太平洋戦争前後の記録.
洋服仕立職人の父と熱心なキリスト教徒の母と妹の4人
という当時珍しい家族で育った少年H.
日本中が「天皇陛下のために」
「神国日本を守るために」
「国体を守るために」と一丸となって
戦争を続けていった時代にあって
「なんで新聞はちゃんと書かへんのか」
「太平洋戦争は勝てるのか」
「天皇陛下をずっと神様と信じていたか」
と,軍国主義の教育下にあってご法度であるはずの
戦争の意義・意味についての疑問を抱く.
時に冷静に,時にあつくそしてたくましく
時代を生き抜いた絵描き少年の記録に
戦争とは一体どういう物事なのかが
つまっていると思う.
私の父より恐らく1歳若い著者.
2中と3中の違いもあり,住んでいる場所も
それなりに違うとは言え,同じ神戸の出来事.
私には,父から聞いた話と昔見た記録と今の神戸の状況が絡み合って
何とも形容のしがたい強い印象を与えた書物である.
少年H(上・下)
妹尾河童
講談社
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