ウェルカム・ホーム！

中高生になった頃にこの作家が好きだと意識した
最初の作家さんが，鷺沢　萠さんやったと記憶している．

彼女の描く物語は，すっと心の中に入ってきて
そして，染み渡るような感覚を当時の僕にあたえた．

駆ける少年，少年たちの終わらない夜，大統領のクリスマスツリー．
読んだ物語の全てがお気に入りとなった．

エッセイも読んだ．なんて素敵なんやろうと思っていた．

でも，7年前の2004年4月，彼女はこの世を去った．
なぜ，彼女は自分の意思で去ることを決めたのか．
彼女にとっての帰りたい場所はどこだったのだろうか…

彼女の作品で，なぜか読んでいなかったこの物語を
今回読んでみて，そんなことを強く思った．

この物語は，帰る場所，帰るべき場所とは何かを考えさせてくれる．
血縁や制度や常識に基づくのではなく
人間同士が，互いの心によってのみ結ばれる場所．
この物語を読むと，「おかえりなさい」と告げる
強く優しい声が聞こえる気がする．

鷺沢　萠さんの御霊の安らかならんことを願ってやまない．

ウェルカム・ホーム！
鷺沢　萠
新潮文庫