近年小売業を中心に普及している販売戦略の一つに「オムニチャネル」がありますが、戦略を完全に理解できている自信ない方や、導入を検討しているがどのような効果があるのかわからないという声は少なくありません。そこでオムニチャネルの意味と定義、注目される背景などを正しく理解することが導入をする上で重要になってきます。
オムニチャネルとは、販売戦略の一つであり企業が持っているユーザーとのタッチポイントや販売経路を全て統合させることにより、ユーザーにアプローチする施策です。2011年にアメリカの全米小売業協会によって言及されてから、大手百貨店が導入したことをきっかけに世界中で普及しており、ユーザーと企業の接点をオンラインとオフライン問わずに結合させることでユーザー側に購入経路を意識させない販売戦略となっています。
例えばアパレル店にユーザーが洋服を購入しに来店した時に欲しい洋服の在庫がなかったという場合、ECサイトを通じて希望の商品を購入したり、商品の受取を実店舗で行うなどユーザーが求める商品を好きな場所・好きな時間に受け取ることが出来るようにする戦略がオムニチャネルです。
近年デジタルマーケティングにおいて注目を浴びているこの戦略ですが、実際に市場規模や今後の成長予測はどうなっているかというと、2020年はコロナ禍によって旅行や外食、理美容といったサービス業全体が打撃を受けたことにより成長の停滞が見られます。しかし今後の消費行動のオンライン化を後押しすると予測され、2026年には80.9兆円の成長が見込まれています。
そしてこの販売戦略が注目されることになった理由には、テクノロジーの発展と消費者行動が変化したことの2つがあげられます。まず前者は技術が進歩しユーザーの行動を昔に比べて正確に測定することが可能になったことで、マーケティングの活用が広がるようになりました。チャネル間で情報共有を行うことで、ユーザーごとに最適化された情報を届けることが求められています。オムニチャネルは複数の角度から集められ統合された情報が手に入るため、情報のパーソナライズが重要視されているデジタルマーケティングにおいて企業側にとっても大きな価値があります。
後者はスマートフォンが大きく普及したことによって、人々の情報収集はインターネットが主流となっています。実際に店舗で商品を見てもその場で購入するのではなく、価格や利用者の口コミなどをチェックした上で購入するユーザーも増えており、1人の消費者が商品を購入するにあたり複数のチャネルに目を通すという変化が起こっています。こういった消費者の変化を受け入れ、企業側はニーズに即した販売戦略が導入することで顧客満足度向上につなげることが可能です。
オムニチャンネルにはそれぞれメリット・デメリットがあるとされ、メリットは顧客の行動が個人に紐づいて管理されるためチャネルを超え、一貫性を持ったアプローチが行えるようになっていることです。こういった一貫性は顧客の購買意欲を高め、チャネルが分断されて起こるストレスを減らすことにも繋がるため、結果として顧客満足度が向上することになります。他にも顧客情報や在庫情報を一元化することができるので、管理が従来よりも効率的になるメリットがあります。
特に複数のインターネットショップを運営している場合や、複数のECサイトへの出店には、一元的な管理を行うことで販売機会損失の防止であったり、廃棄削減によるコスト削減にもつながります。受注といった業務に関しても一元的に行うことで工数削減が行えるなど、業務効率化に大きく役立つことがわかっています。
デメリットは実店舗とオンラインの競合化にあり、この販売戦略は両者をシームレスに連携させることを目的としていますが、従来実店舗で購入していたユーザーがオンラインに流れてしまうことで、実店舗ショールーム化が進む可能性が高いです。そのためこの戦略を導入する場合、オンライン上のチャネルのみに力を入れるのではなく実店舗の役割や関係、各チャネルとユーザーがどう接しているのかなど多角的な施策を取り入れることが求められています。
またデメリットは他にも顧客認知の難しさがあげられます。ECサイトは競合化しており非常に過酷な環境であるため、導入時には実店舗のユーザーに対しオンラインチャネルの認知をしっかり進めるためにも、オンライン上での広告であったりSEO施策を行うことが有効だといわれています。
実際にオムニチャネルを導入するにあたり成功のポイントはというと、会社全体の意識統一をしっかり行うことが重要だとされます。この戦略は新しく行うことが非常に多く、領域も広いためスムーズなオムニチャネル化を進めるためにも変化後のビジョンを社全体で共有し、進めることが大切になります。そしてテクノロジーの発展に伴い変化が激しいデジタルマーケティング上で、最も重要だとされるPDCAサイクルを回していくことで、生産管理や品質管理などの管理業務を継続的に改善していき常に時代に即したシステムを作り続けることが求められます。
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