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はじめに
1. 「動物農場」という作品
2. 「動物農場」の新(?)解釈:国際関係との対応付け
3. {アメリカ、NATO、西側}例外主義
更新履歴←別記事に分離
はじめに^
下記は https://libya360.wordpress.com/ というオルタナメディアWebサイトの記事。
(記事の一番下の方にある「機械翻訳をオンにするスイッチ」を使って日本語に訳すことができる)。
Dan Kovalik:
U.S.-NATO Blitzkrieg Against Serbia in 1999 Led to Today’s War in Ukraine
"The U.S. has claimed that it is more equal than others, and it has acted
on this claim to the detriment of millions around the world."
ダン・コヴァリク:
1999年のセルビアに対するUS-NATO電撃戦はウクライナでの今日の戦争につながった
「米国は自らが他の国より平等であると主張し、この主張に基づいて世界中の何百万もの
人々に損害を与える行動をとった。」
ここで、「他の国より平等」という奇妙な表現は、(お分かりの方も多いかも知れないが)後で
説明する「動物農場」という ジョージ=オーウェルの小説の一節 "more equal than others"
を踏まえている。ここでの実際の意味は、いわゆる「アメリカ例外主義」になる。この記事の
文脈では「米国」は「NATO」や「(集団的)西側(諸国)="The Collective West"」などとも
置き換え可能。「アメリカ例外主義」という言葉についても後で改めて説明するが、元記事を
読めば、この言葉が初見だとしても、なんとなく意味は分かるだろう。
記事の要旨は下記2点(元記事参照:機械翻訳の日本語でも十分意味がとれる)。
- ロシアのウクライナでの特殊軍事作戦は、NATOの旧ユーゴスラビアへの「人道的介入」と
比較すると、さまざまな観点で、より「人道的」かつ「合法性が高い」と言える。
- ロシアのウクライナでの特殊軍事作戦と、NATOの旧ユーゴスラビアへの「人道的介入」の
最も明確な共通点は、どちらにおいても、アメリカが戦争を望んだために発生した武力紛争
であることだ。
1. 「動物農場」という作品^
ジョージ=オーウェル作品としては「1984年」の次に有名と思われる。なお、「1984年」と違い
寓話風で、「重苦しさ」は全くなく、ずっと短いし、とても読みやすい。
英語原文は、著作権切れのため、下記などから無料で入手できる。
https://george-orwell.org/Animal_Farm/0.html
https://www.openrightslibrary.com/animal-farm-ebook/
https://files.libcom.org/files/animal_farm.pdf
https://arvindguptatoys.com/arvindgupta/orwellanimalfarm.pdf
下記に Creative Commons License の和訳がある。
https://open-shelf.appspot.com/AnimalFarm/index.html
動物農場
映画やマンガ(作者が違う複数の版)もあるようだ。
https://www.ghibli-museum.jp/animal/neppu/miyazaki/
https://bananakayo.jp/content_8324/
ついでに、「1984年」の無料版和訳も調べて見た。
https://open-shelf.appspot.com/1984/index.html
http://blog.livedoor.jp/blackcode/archives/1700656.html
https://www.genpaku.org/1984/1984.pdf
下記には無料英語版テキスト、オーディオブックへのリンクもある。
http://englishaudiobooks.net/1984-by-george-orwell/
なお、青空文庫に、他のジョージ=オーウェル作品の著作権切れによる無料版和訳がある。
https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person2035.html
内容をサクッと知りたい場合は、下記などを見ればよいかと。
https://ja.wikipedia.org/wiki/動物農場
https://matsunamiblog.com/doubutsunoujou/
「【動物農場】人間の愚かさと傲慢さと浅はかさが凝縮された世界
...
いやー、恐ろしい!!
...
これは、まさに人間社会を描いています。
....」
https://shakuryukou.com/2022/01/09/dostoyevsky588/
「いや、今私たちを取り巻いている環境もまさしくこれと同じなのかもしれません。」
最初にリンクした libya360 の記事が踏まえている一節は、作品の最終章に出てくる。
https://en.wikiquote.org/wiki/Animal_Farm
Chapter 2
The Seven Commandments:
Whatever goes upon two legs is an enemy.
Whatever goes upon four legs, or has wings, is a friend.
No animal shall wear clothes.
No animal shall sleep in a bed.
No animal shall drink alcohol.
No animal shall kill any other animal.
All animals are equal.
# 序盤で上の7つのルール/理念が掲げられていたが、最終章では下記だけに。
Chapter 10
ALL ANIMALS ARE EQUAL, BUT SOME ANIMALS ARE MORE EQUAL THAN OTHERS.
2. 「動物農場」の新(?)解釈:国際関係との対応付け^
この作品の「標準的な解釈」は「スターリン時代のソ連を風刺している」というものだが、
「情報操作による独裁の成立過程」という観点からは、ある種の普遍性があるため、先に
引用した2つのブログの感想と同様なことを考える人は昔からいた。例えば、筆者が以前
読んだ版の後書きでは、ナチスに対応させた場合の解釈が紹介されていた(確かボクサーと
ロンメルを対応させていたのが印象に残っている。ナポレオンは当然ヒットラーのはずだが、
スノーボールを誰に対応させていたかは記憶にない。エルンスト=レームあたりか??)。
さて、ここまで長々と「動物農場」の紹介をして来たのは(お察しの方もおられるかと思うが)
最初の Libya360 の記事に触発された「現在の国際関係との対応付け」を提示するためである。
ジョーンズ:(元祖/本家)ナチス
ナポレオン:アメリカ
スノーボール:ロシア
スクィーラー+羊たち:CIA+西側メディア、西側プロパガンダを盲信/再生産する人々
他の豚+犬たち:NATO/EU諸国、国際金融機関、OSCE、国際刑事裁判所、ウクライナ
ボクサー、クローバー、雌鶏たち:西側諸国の一般民衆
ベンジャミン:「中立の立場」の人々
いかがだろうか。少なくとも、ロシアには、賛成してくれそうな人が多そうな気はしている。
ちなみに、下記によれば、オーウェル作品は、ロシアでも広く知られているそうだ。
https://jp.rbth.com/arts/82940-george-orwell-roshia-setten-5
とは言え、筆者としては、客観的な(=ベンジャミン視点)記述だと信じているわけで、上の
対応付けの基本部分は、とっくの昔に誰かが提示していそうな気がして仕方がない。
3. {アメリカ、NATO、西側}例外主義^
本節表題の「例外主義」は、ショービニズム (chauvinism) の一種である。
# マイケル・ハドソンが「アメリカ例外主義」を簡潔に要約しているので引用しておこう。
https://qrude.hateblo.jp/entry/2023/04/27/051500
「ウェストファリア体制は、いかなる国も他国の政策に干渉してはいけないというものでした。
1945年に米国がこう言うまで、基本的にすべての国際関係を支配する法律でした。
「我々は他のすべての国に干渉することができるが、どの国も我々に対していかなる権限も
持たない」
そして、アメリカが国連やIMF、世界銀行で持っているような拒否権のない組織には、決して
属さないことにしました」
R> 国連海洋法条約に参加しないアメリカ/Harvard International Review
「国連海洋法条約(UNCLOS)は「海洋の憲法」と言われている。
1982年に最終決定されたUNCLOSの320条と9つの附属書は、歴史上最も包括的な国際法の成文化」
「この条約には157カ国が署名し、沿岸主権、保全と海洋資源管理、公海の自由など多岐に
わたる条項に合意」。
「この条約にはアメリカ合衆国の署名が欠けている」
「米国はロシアや中国に対して、自国が締結していない条約に違反していると主張することは
できない」
「レーガン政権は深海底採掘に関する意見の相違から加盟を拒否」
「1994年に条約が改定されたにもかかわらず、上院は公聴会の開催を拒否」
「米国がUNCLOSに参加しなかったことは、一国的な利益のために多国間の関与を拒否する広範な
外交政策の傾向を代表するものである」
# ↑例えば、国連海洋法条約の第38条1項の最後の文は米軍の「台湾海峡(自称)無害通航」を禁止
# Q> MoA/米国、対ロシア・対中国戦の敗北を認める
# 「中国にとって次のステップは、台湾海峡での米軍艦船や航空機による挑発的な「無害通航」を
# 止めることである。そのためには、国連海洋法条約を適用すればよい」
本ブログでは「国際法上の合法性」という観点から分析することで、事態を客観的に記述する
試みを続けてきた。しかし、下記の記事で述べているように、現在の国際情勢下では国際法が
国際機関により*公正に*執行されるとは信じられない。この「例外主義」の蔓延のためだ。
(a) 国際司法制度の問題点
(b) ドンバス紛争の開始契機と民間人犠牲者数について
(c) 国連総会でのロシア非難決議の違法性
なぜなら、一連の記事で述べているように、過去の西側諸国の数多い国際法違反事例について、
西側諸国の言論空間では、ほとんど/全く取り上げられない一方で、*存在が確認されていない
西側以外の国の国際法違反が、あたかも確認済の事実であるかのように、頻繁に*論じられる
からだ。多くの「国際機関」で、「西側諸国」が強い影響力(というより事実上の支配権)を
保持している客観的事実(例えば、国際司法機関所在地の多くがオランダとか、上記 (c))は
否定しても仕方がない。
すると、「ウクライナ紛争関連の言説に多く見られる認知バイアスへの対応策」でも言及した
「内集団バイアス」が(当然)作用する上に、意図的不正すら疑われる事例もある件を (b) で
述べた。
(1) 国際法観点からのウクライナ紛争関連政策提案
(2) 歴史的観点からウクライナ情勢を考える
(3) ウクライナ紛争関連の事実確認
(4) ウクライナ紛争関連記事の論点を「投書形式」で整理して見る
(5) ウクライナと西側諸国の犯罪(2)
(6) 「衡平の原則」に基づいて考慮すべきウクライナ情勢関連の国際法
(7) ウクライナと西側諸国の犯罪
(8) 必然性の観点からプーチン演説中の国際法への言及を見る
(9) ドンバスの2つの人民共和国
(10) プーチン演説中の国際法への言及について補足
(11) ウクライナでの武力紛争に関連する国際法
なお、前記「西側諸国の言論空間」は、マスメディアだけではなく*西側諸国の国際法学会*
まで含んでいる。不明確なままの「事実」については*どれだけ疑わしいものであろうとも*
公式発表を鵜呑みにして、ひたすら「西側諸国の明らかな国際法違反を言い繕う新たな屁理屈
および概念」(例えば、下記)を発明する (invent : デッチ上げる)事に血道を上げる人が
多過ぎる(ネット検索すると、こういう概念に関連する論文がゾロゾロ出てくる)。
- 「人道的介入」+「違法だが正当」(セルビア空爆。上記 (a)、(9)、(10)、(11) で言及)。
- 「保護する責任」(リビア空爆。上記 (6) で言及)
これらの概念が「アメリカ/NATO/西側諸国専用」である事は、本稿の冒頭にリンクしている
libya360 の記事にもあるように、より*無理なく*当てはまりそうな今次ウクライナ紛争での
ロシアの行動に対して当てはめる議論を、西側言論空間では見かけない事から明らか。
「歴史的観点から憲法と国際法を考える」でも触れたように、「ウェストフェリア条約」以来の
国際法の基本原則は "All nations are equal." であり、国連憲章第2条4項により武力不行使
原則 "No nation shall attack any other nation (except self-defense)." も確立されている
はずなのだが、少なくとも西側言論空間では、↓たった一つの下記原則に置き換わったようだ。
ALL NATIONS ARE EQUAL, BUT SOME NATIONS ARE MORE EQUAL THAN OTHERS. (W)
# で始まる行のスキップ
# 国家間の不平等性自体は、国連憲章に内在する問題↓という側面も、ないとは言えない。
# https://manhaslanded.blogspot.com/2022/10/part-1.html
# 「国連憲章はパラドックスである。第2条7項では、国連が国民国家の主権を侵害することは、
# 国連の「強制措置」による場合を除き、「この憲章のいかなる規定も」許さないと断言する。
# この憲章は、一見何の理由もなく、すべての国民国家は「平等」であると述べる。しかし、
# ある国民国家は、この憲章によって、他の国家よりもはるかに平等であるとする権限を与え
# られる」
# しかし、国連憲章上の不平等性は「安全保障理事会の常任理事国と他の国」にしかない。
# 西欧諸国とアメリカは、西欧諸国と他の国、アメリカと他の国の間に、国連憲章にない
# 不平等を、国際法上の根拠がないにも関わらず、勝手に「ルール」だと言い張る。
# プーチンは、下に引用する2つの演説で問題点を理路整然と述べている。
# https://ohinanikki.hatenablog.com/entry/2022/03/07/161114 :「クリミア演説」
# 「クリミア最高議会は独立を宣言し住民投票を発表するにあたり、民族自決権を謳った
# 国連憲章を根拠としました。... ウクライナもソビエト連邦脱退を宣言するにあたり、
# 同じこと、ほぼ文字通りに同じことをしたのです。... ウクライナではこの権利を行使
# したのに、クリミアには拒否しています。なぜでしょうか?また、クリミア政府は有名な
# コソボの先例にも立脚しました。その先例は西側のパートナーたちが自ら、いわば自らの
# 手で作り出したものであり、クリミアと全く同じ状況で、セルビアからのコソボ分離を
# 合法と認め、一方的な独立宣言には中央政府の許可は一切必要ないことを皆に知らしめた
# ... 国際司法裁判所は国連憲章第1条第2項に基づきこれに同意し、2010年7月22日付の
# 決定に次のように記しました。「安全保障理事会の慣例からは一方的独立宣言に対する
# いかなる一般的禁止も推論されない。」そして、さらに「一般国際法は独立宣言について
# 適用可能な禁止事項を含まない。」すべてきわめて明瞭です。...」
# 「... ロシアのクリミア介入だとか、侵略だとか言われていますが、これを聞くと奇妙な
# 感じがします。歴史を見ても、ただの一発も発砲せず、一人の犠牲者も出さずに行われた
# 軍事介入など、私は思い出すことができません。」
# https://ohinanikki.hatenablog.com/entry/2022/03/23/174926 : 「ヴァルダイ演説」
# 「...
# 国際法は、法的ニヒリズムの猛威によって、何度も後退を余儀なくされています。客観性
# と正義は、政治的便宜の祭壇の上、犠牲にされてきました。恣意的な解釈と偏った評価が
# 法規範に取って代わったのです。同時に、世界のマスメディアを完全に支配することで、
# 望めば白を黒・黒を白と表現することが可能となりました。...」
# 「...服従を拒否する者に対して取られる措置はよく知られており、何度も企てられ試されて
# きました。武力行使・経済的/宣伝的圧力・内政干渉、そして、紛争への不法介入や不都合な
# 政権の転覆を正当化する必要がある場合における一種の「超法規的」正当性=への訴求などが
# あります。最近では、多くの指導者たちに対して明らかな恐喝が行われたという証拠も
# 増えています。....」
なお、「アメリカ/NATO/西側諸国専用」なのは、本稿の冒頭にリンクしている記事の論点や
以下の libya360 の記事でのロシア武力行使合法論が西側マスメディアや国際法関連の論文に
登場しない事からの帰納的推論(私見では、論理的/演繹的には導出不可能)。そう言えば、
(W) の語感には、"illegal but legitimate"=と(裏返して)対になる響きもある。
# 本ブログの別記事でも言及した下記を参照。
- ロシアのウクライナ介入が国際法上、合法である理由
* 手動和訳版: http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-895.html
- 戦争の合法性
などと書いていて、とあるマンガの「心に棚を作れ」という迷言/迷場面を思いだした(笑)。
ところで、日本の現政権は「憲法9条を持つ日本も「存立危機事態」における自衛権の発動と
して武力行使が可能」との立場を「新三要件」として公言した。ロシアの「存立危機事態」に
おける自衛権の発動としての武力行使を非難する根拠は何だろうか。単にリリンの「心の壁」
(Absolute Terror (AT) フィールド)ならぬ「心の棚」か?(笑)
- https://ja.wikipedia.org/wiki/武力の行使の「新三要件」
- https://kotobank.jp/word/武力行使の新三要件-1721632
- https://toyokeizai.net/articles/-/216714
- https://seiji-keizai.com/2046.html
- https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/193/touh/t193116.htm
一方、「アメリカ/NATO/西側諸国」の無法行為が何回積み重なったところで、正当性など
生まれるはずがないことは、「事実を積み重ねても当為命題は導かれない」という、哲学の
初歩を持ち出すまでもなく、自明だと分からないか、気づかないフリをすることにしている
国際法学者が多過ぎる ....