ある日の気づき

「「陰謀論」という陰謀論」という陰謀?

節へのリンク
1. 本記事で扱う「「陰謀論」という陰謀論」の意味
2.「陰謀論」という言葉が小馬鹿にするような意味合いで使われていく経緯
3. 陰謀論と呼ばれるもの
4. モッキンバード作戦
更新履歴 ←別記事へのリンク

はじめに^

本当は気にしなければならないことの指摘に「細かいことが気になってしまう。僕の悪い癖。」
という枕ことばを使う某ドラマの主人公がいるが、今回は「「思考の経済」の観点からは本当に
気にしない方がいいこと」と承知の上で、全くの興味本位で「「陰謀論」という言葉が現在よく
使われるような意味合いで使われるようになった経緯」について分かったことを書いてみる。
# 2023-08-26: この問題の考察に際して重要な3つの観点/論点を、下記から抜粋+要約しておく。
# & 「陰謀論」とは何か - 体制の主張に異を唱える者は「陰謀論者」と呼ばれる
# 「本当の「フェイクニュース」は、主流のプロパガンダ・メディアから発信されている」
# 「雇用状態にある人はすべて、公式の物語に従わないと、仕事を失う危険性がある」
#「体制側が、体制側にとって「不都合な」人々、すなわち実際に何が起こっているのかを
# 一般の人々に知らせようとしている人々をバッシングするのに、陰謀論やフェイクニュース
# という用語は、簡単にすぐに手の届くところにある使い回しやすい言葉」
# 上記の論点を「3. 陰謀論と呼ばれるもの」で敷衍しておく。
# なお、WikiPedia も一部主題については「主流のプロパガンダ・メディア」に含まれる。
# & CIA がウィキペディアを管理 – 元編集者の告発
# 2023-01-15: 耕助のブログの↓2023-01-08 の記事は*より深く*同じ問題を分析している。
# K> no-1669-ciaはいかにして-陰謀論-を発明したのか?
# 2023-05-29: 本記事の主題については、下記論説も参考になる。↓
A> アメリカの例外性:帝国とディープ・ステート 中の「三位一体の国家を取り込む」の末尾
「文書化された、あるいは疑われた介入には、次のようなものがある:ケネディ大統領の暗殺、
... マルコムXの暗殺、マーティン・ルーサー・キングの暗殺、ロバート・ケネディの暗殺;
1980年の「オクトーバー・サプライズ」、イラン・コントラ事件、001年9月11日のテロ事件、
... 多くの国家犯罪に通じる犯罪の顕著なパターンとして、情報機関と国際的な麻薬取引の
結びつきが挙げられる。これらの疑惑や文書化されたSCADの証拠能力はそれぞれ異なるが、
それぞれ真面目で評判の良い支持者がいる」
# 2023-11-12: 下記のような皮肉を元ロシア大統領が Telegram チャンネルで述べた。
# R> アメリカがいなくなると瞬時に麻薬もなくなる/ドミトリー・メドベージェフ
# Q> メドベージェフ談話 TG410 ヘロイン拡散の元凶は...
# 「国連薬物犯罪事務所によると、アフガニスタンの麻薬生産量は2022年末から現在までに
# 95%減少している。」
# 「これはケシの栽培面積の減少(233ヘクタールから11千ヘクタール)とアヘン自体の
# 生産量(6.2千トンから333トン)の両方に関するものである。」
# 「タリバン(わが国ではテロ組織としてバンされている)は、どのように扱われようとも、
# この国でテロと戦っているはずのアメリカ率いる NATO の非力な連合軍が20年かけても
# できなかったことを、1年足らずの間にやってのけたのである。」
# 「ヘロインをロシアや他の国々に輸出することに本当に関心を持っていた人物が、この
# 地域から離れるとこうなるのだ。」
# +「麻薬 CIA」検索 on: 虹子マスコミに載らない海外記事櫻井ジャーナルどこでも
「しかし、一般的な言説はこのような疑惑を「陰謀論」-この用語は不真面目さを意味するように
なり、批判的理論を先験的に拒否して国家が承認した物語を受け入れるように適用されている --
として却下する。DeHaven-Smith(2013)はこの問題を検討し、ジョン・ケネディ暗殺の直後まで、
「陰謀論」という用語が公の場で使われることはほとんどなかったことを発見した。彼は、CIAが
メディア関係者に配布した文書で、「陰謀論者」を信頼できない、不合理な、あるいは悪徳な
存在として排除し、疎外するよう協力を要請したことを指摘している。このように、国家主体が
市民社会に介入し、高度な犯罪に対する合理的な疑いが私たちの感覚形成機関によって反射的に
退けられ、汚名を着せられるような一般的な常識を作り出すのを助ける ...「陰謀論の陰謀」が
存在してきた」
近年よく使われる用法で小馬鹿にするような意味合いの「陰謀論」という言葉を使った
議論に対する健全かつ合理的な態度は、例えば、下記ブログ記事のようなものであろう。
https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12733980149.html
「古谷氏は「アゾフ大隊がナチスの紋章類を使用したのは、独ソ戦でドイツがソ連に侵攻した
ために、親露派をソ連に見立てたものが理由ではないかと思われる。…いずれも事実を立証
できないものばかりだ…」と述べている。
どうやらアゾフ大隊らネオナチ系部隊を過小評価しているようだが、それは間違っているので
認識を改めた方がよい。「陰謀論」を小バカにして悦に入りたくなる気持ちもわかるが、よく
調べもせずに主流メディアの受け売りの文言をコピペしてるだけに感じる。
陰謀論というのはある種の仮説である。
もし、2012年に「CIAが俺たちを盗聴している!」などと言ったら狂人として扱われた
だろうが、元NSA・CIAのスノーデンの告発があった2013年以降は常識となった。
反証可能性が潰されていけば、陰謀論や仮説は、理論・定理・法則となるだけで、それは
ただの科学である。
古谷氏が「事実が立証できない」と否定する、彼らネオナチは、ただナチスの「紋章」を
使用していただけでもなく、反共とか反ソ連、もしくは反ロシアという文脈だけでなく、
しっかりとナチズムやファシズム、超国家主義を後継していることが明らかになっている。」
注)「反証可能性が潰されていけば、陰謀論や仮説は、理論・定理・法則となる」あたりで
シャーロック・ホームズの決めゼリフ↓(3バージョンある模様)を連想する人も多いだろう。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14167888134
"Once you eliminate the impossible, whatever remains,
no matter how improbable, must be the truth."
"When you have eliminated all which is impossible, then whatever remains,
however improbable, must be the truth."
"when you have excluded the impossible, whatever remains,
however improbable, must be the truth."

要するに、「陰謀論」という言葉を、議論への「レッテル貼り」や「固定観念による決めつけ」
に使っている議論は、「誤った推論/詭弁」のパターンに陥っているということだ。
当てはまっている可能性が高い主なパターンを Wikipedia から引用しておこう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/詭弁
「...
4.4 早まった一般化 (hasty generalization)
...
4.10 誤った二分法 (false dilemma)
...
4.12 論点のすりかえ (Ignoratio elenchi)
4.13 ストローマン (Strawman)
...
4.20 伝統に訴える論証 (Appeal to tradition)
4.21 新しさに訴える論証 (Appeal to novelty)
4.22 権威論証 (ad verecundiam)
4.23 論点回避 (Begging the question)
4.24 論点先取 (petitio principii)
4.25 循環論証 (circular reasoning)
4.26 含みのある言葉 (loaded language)
...
4.28 多数論証 (ad populum)」

下記の記事も一見の価値があるかも。
https://blog.goo.ne.jp/batchmongara/e/3e137cf4ca0e4273fb062b17572f3afe
pigeonhole(筆者注)当然だが、label もレッテル貼りの意味で使える)。
https://seikatsu-hyakka.com/archives/28208
レッテルを貼るのが良くない理由と、何でもゼロベースの視点を持つ方法
https://piano.animatomusica.com/relationship/3793/
【悲報】レッテルを貼りたがる人の脳は認知機能が低下している!?

そうは言っても、文字通りに「何でもゼロベースの視点」で考えていては、日常生活に支障を
来しかねない。ある程度の「認知バイアス」は、「思考の経済」の観点から許容されてよいと
考える。重要なことは、それまでの認識と整合しないように思われる意見や事態に接したとき、
「簡単に「認知的不協和」に陥って、むやみに攻撃的な反応をする」醜態をさらさない程度に
精神の柔軟性あるいは頑健性を保持しておくことであろう。

さて、これでもう、「「陰謀論」という言葉が小馬鹿にするような意味合いで使われるように
なった経緯」は、単なる歴史への好奇心だけの問題になったので、以下は気楽に書き進める。

1. 本記事で扱う「「陰謀論」という陰謀論」の意味^

具体的には、下記の議論を指す。2番目の記事は、記事の表題に反して、最初の記事と同じ
論旨(そもそも、 元ネタが同じ英文記事)の 5ch への投稿記事のまとめである。
海外記事より】CIAが「陰謀論」という言葉を発明したという陰謀論がある
https://kazzhirock.hatenablog.jp/entry/20210221/1613898000
https://himitsu-ch.com/47595/
【速報】「陰謀論」という単語、CIAが広めたことがバレる
上記記事の原文の一部分に言及する都合上、筆者の論旨に関わる部分を引用しておくことに
する。しかし、御手数だが、上で言及した2つの記事のうち、上の方のリンク先は直接見て頂く
必要も出てくるので、予めお断りしておく。

「陰謀論は長い歴史を持っていますが、実際に「陰謀論」という言葉が出てきたのはもっと
最近のことです。
この言葉が今日のような軽蔑的な意味合いを持つようになったのは数十年前のことで、誰かを
陰謀論者と呼ぶことは侮辱の意味合いを持つようになりました。
だから、このラベルの起源についての陰謀論があっても不思議ではないかもしれません。この
陰謀論は、ジョン・F・ケネディ暗殺の公式見解に疑問を持ち、彼を殺したリー・ハーヴェイ・
オズワルドが単独犯であったことを疑う人々を失脚させるために、CIAが1967年にこの用語を
考案したと主張している。
この陰謀論には2つのバージョンがあります。より極端なバージョンでは、「陰謀」と「理論」
という言葉を組み合わせて以前に使用されたことがなかったという意味で、CIAが文字通りこの
用語を発明したと主張しています。より穏健なバージョンでは、この用語が以前から存在して
いたことは認めるが、CIAが意図的に否定的な意味合いを持たせたために、このレッテルを
政治的プロパガンダの道具に変えてしまったと主張している。
ある陰謀論によると、陰謀論という名称は、ジョン・F・ケネディ暗殺の公式見解を疑う者
たちの評判を貶めるために、1967年にCIAによって考案されたのだという。 
...
この用語の起源と発展については、両者の主張は異なっているが、どちらのバージョンの
支持者も、必ず「ウォーレン報告書の批判について」というCIAの公式文書を決定的な証拠
として挙げている。この文書は、ニューヨーク・タイムズ紙が情報自由法に基づいて要求
した後、1976年に公開された。
...
世論に影響を与えようとするCIAの試みに問題があると考える人もいるかもしれない。しかし、
この文書には、CIAが批判を排除するために「陰謀論」という言葉を導入することはおろか
兵器化を意図していたことを示す一文もありません。実際、単数形の "陰謀論 "という言葉は
文書の中では一度も使われていない。複数形の「陰謀論」が使われているのは、第三段落で
一度だけである
『陰謀論は頻繁に我々の組織に疑惑を投げかけてきた。例えば「リー・ハーヴェイ・
オズワルドが我々のために働いていたと」虚偽の主張をすることによって。』
この文書の著者は、この用語を非常にカジュアルな方法で展開しており、明らかにこの用語を
「定義する必要性」を感じていない。このことは、この用語が新しい用語ではなく、当時すでに
代替的な説明を説明するために広く使われていたことを示している。著者らは、ケネディ暗殺の
代替的な説明を汚名を着せるために「陰謀論」というレッテルを使うことを推奨していない。
このことは、この用語が今日のような否定的なレベルにまでは至っていなかったことを示唆して
いる
...       
私にとってはるかに興味深い問題は、なぜこの陰謀論が生まれ、なぜ多くの人がそれを信じ
ているのかということだ。この陰謀論がどのようにして生まれたのかを完全に把握している
学者はいないので、正確にいつ生まれたのかを特定するのは難しい。しかし、ざっと調べた
限りでは、1980年代か1990年代であると考えてよいでしょう。」
主流から社会の端境期への移行の副作用の一つは、陰謀論が主に社会的・政治的エリートを
対象とし始めたことである。彼らはもはや国家に対する疑惑のある陰謀ではなく、国家に
よって組織された陰謀に関心を持つようになった。
...
この新しいスティグマのもう一つの副作用は、陰謀論者や理論家というレッテルが蔑称として
使われるようになったことである。ケネディ暗殺事件は、陰謀論者が国家が密かに悪事を企てて
いると非難し、それに代わる証言を提供した最初の大きな例であり、1967年のCIA文書のように
陰謀論と呼ばれるようになった。したがって、悪人の意図的な行動によって出来事を非難する
陰謀論者たちが、ケネディ暗殺の公式見解を支持しようとする意図的な試みとして、この用語の
出現を回顧的に見ることは、驚くに値しないことである。」

さて、上記の引用ないしリンク先記事を一読された印象は、どうだろう?「もっともらしい」と
感じた方もおられるかも知れない。しかし、筆者は(後で言及する別の記事を先に見ていた事の
影響もあって)「「胡散臭い」というか、ある意味、この記事自体が陰謀では?」という印象を
最初から禁じ得なかった。まず、違和感を持ったのは、最初の方にある下記の箇所についてだ。
「この陰謀論には2つのバージョンがあります。より極端なバージョンでは、「陰謀」と「理論」
という言葉を組み合わせて以前に使用されたことがなかったという意味で、CIAが文字通りこの
用語を発明したと主張しています。」

本当に「「陰謀」と「理論」という言葉を組み合わせて使用されたことが以前になかったという
意味で、CIAが文字通りこの用語を発明した」という「極端な主張」をしている人が、わざわざ
言及する必要があるほど、目立った形で存在するのだろうか?という疑問がすぐ浮かぶ。さて、
そこで、上の引用箇所を含むパラグラフの下の方を見ると、あたかも、その「極端な主張」の例
であるかのように、下記の記事が表題部分の画像付きでリンクされているわけだ。
CIA Coined and Weaponized The Label "Conspiracy Theory" - coreysdigs.com
ここでの Coin が「造語する」という意味の動詞なのは明らかで*リンク先の記事を読まずに*
通り過ぎれば、「確かに「極端な主張」をする人も実在するのだな」と思い込んでも仕方ない。
ところが、リンク先の記事を読めば、その印象は、あっさり反転する。何のことはない、実は
リンク先の記事の著者は、「「陰謀」と「理論」という言葉の組み合わせは、1800年代終リ頃、
多くの政治関連書籍に現れている事」を、自ら調べている。下記のパラグラフ参照。
"There are some disputes out there as to whether the C.I.A. was the first to use 
the term because it has been printed in a handful of political books from the late 
1800’s. The inception of the C.I.A. was in 1947 and this “psych” dispatch went 
out in 1967. It is from that point on that the term “conspiracy theory” and 
“conspiracy theorist” have been shoved down our throats.
 It was weaponized, just as so many other labels have been used to distract, 
manipulate and change the narrative to suit their agenda."
上のパラグラフは、単に、「軽蔑的意味合いで「陰謀論」や「陰謀論者」という言葉が使用
される契機になったのは、下記 CIA 文書での使用と考えられる」と主張しているに過ぎない。
一般に、「誰が発明者であるか」という議論の際、「過去に発明されてはいたが、広く使用
されるには至らなかった」何かを再発明した、あるいは実際は発明したわけではなくても、
ともかく広く使用されるきっかけを作った人」を指す事は別に珍しくも何ともない(例えば、
数学での事例参照)。上のパラグラフは、まさにそういう意味で表題に Coin という語を使った
ことを示している。にも関わらず、あたかも「Google Books で検索してオレサマが調べた」
みたいな、わざとらしいパラグラフを続けて、リンク先記事の内容を完全に歪曲している。
非常に悪質な印象操作と言わざるを得ない。
さて、こうして「「陰謀論」という陰謀論」であるという主張が一気に胡散臭くなって見ると
次の2点も気になってくる。
- そもそも、問題設定がおかしい。自然な興味は「「陰謀論」という言葉が現在よく使われる
 ような意味合いで使われるようになった経緯を知りたい。」という形をとるのではないか?
- 「「陰謀論」という(用語が軽蔑的に使用されるようになったのは CIA の陰謀だという説は
  事実無根だ」と証明できてなどいない。そもそも「(近年での)軽蔑的な意味で最初に使用
  した例」は、1976年まで非公開だった文書であり、CIA が「陰謀論」という言葉が軽蔑的な
  意味で使用されるような情報操作を実行したとすれば、当然、そのたった1つの文書以外の
  さまざまな方法で行われたに決まっている。「陰謀論者」と決めつけられた記事の著者達も、
  この自明な論点は承知しているだろう。にも関わらず、「公開された CIA 文書」の内容への
  おざなりな言及だけで「陰謀論」と決めつけた議論を継続しているのは、「藁人形論法」の
  典型。これもまた、極めて悪質な印象操作だ。
- さらに、「文書の公開自体が情報操作の一環」である可能性も排除できないように思われる。
 理由は次の節で述べる。

2.「陰謀論」という言葉が小馬鹿にするような意味合いで使われていく経緯^

前述した「誤魔化しに満ちたプロパガンダ記事」で歪曲して引用されている英文記事でも議論
されているが、せっかく↓日本語の分かりやすい記事があるので、引用させて頂く。
https://biz-journal.jp/2018/02/post_22223.html
「CIAが「陰謀論」を世界に広めた? ケネディ暗殺、壮大な世論誘導工作を実行」
ポイントは↓2ページ目に書かれている。
https://biz-journal.jp/2018/02/post_22223_2.html
「CIA文書の本文では、ウォーレン委員会の調査結果を批判する書籍や記事が相次ぎ、
ジョンソン大統領の関与をほのめかす見方まで出ていることに懸念を示す。そのうえで
文書の狙いを次のように記す。
「陰謀論はしばしば我々の組織<=CIA>に疑いを投げかけてきた。たとえば、
<ケネディ狙撃犯とされる>リー・ハーヴェイ・オズワルドが我々のために働いたという
虚偽の主張によってである。本文書の目的は、陰謀論者の主張に反撃し、その信用を貶める
素材を提供し、そのような主張が他国に広まるのを阻止することである」
 それまで日常会話で使われることのなかった「陰謀論」「陰謀論者」という言葉が登場
している。「その信用を貶める」という語から、CIAがこれらの言葉に最初から悪いイメージを
植えつけようとしたことがわかる。
 CIA文書は続けて、具体的なプロパガンダ手法を指南する。「CIAに親しい人々に相手の
主張を攻撃させる」「目撃者の証言は信用できないと主張する」「憶測は無責任だと主張する」
「金銭的利益から陰謀論を広めていると非難する」などである。
 CIAと一部ジャーナリストの癒着を物語る、次のような生々しい記述もある。「広報問題に
ついて、<判読不明>や親しいエリート接触者(とくに政治家と編集者)と協議すること」
「プロパガンダ人脈を活用し、批判者の攻撃<を無効とし>反論すること。書評と特集記事は
この目的にとくにふさわしい」
 陰謀論を貶めるCIAの秘密工作は米国内だけでなく、海外の人々もターゲットにしていた。
もちろんそこから同盟国である日本を除外して考える理由はない。」
#ここまでは「「陰謀論」という陰謀論」的な雰囲気がないでもないが、次が重要な箇所。
ケネディ暗殺とプロパガンダ作戦
 ここで、陰謀論という言葉がいつからメディアに頻繁に登場するようになったのかをみて
みよう。ウォーレン委員会が報告書を公表した1964年、ニューヨーク・タイムズ紙は
「陰謀論」という言葉を含む記事を5本掲載した。その後、記事数は急増し、最近は年間
140本を超す。一方、タイム誌でも1965年に初めてこの言葉を含む記事が載って以降、
じわじわと増加している。これらの動きがCIAの工作と無縁とは思えない。
 ちなみにタイム誌に初めて載った記事というのは、ケネディ大統領の側近だった歴史家
アーサー・シュレシンジャーに関するカバーストーリーで、シュレシンジャーは陰謀論に
否定的だと伝えている。第一号の記事からして陰謀論は否定の対象とされていたわけである。
 CIAが陰謀論で主張されるようにケネディ暗殺そのものに関与したかどうかは、わからない。
しかし陰謀論に対抗したプロパガンダ作戦が行われたことは事実であり、一定の効果をもた
らしたことは間違いないだろう。
 今日、陰謀論というだけでそれを嘲りの的にする人は、一度よく考えてみたほうがよい。
陰謀論に対するそうした感情的な反応は、情報機関の巧みな工作に影響されたものかも
しれない。
(文=筈井利人/経済ジャーナリスト)」

補足すべき論点は特にないようにも思えるが、念のため、つけ加えておこう。多くの人が、
新しい政治用語ないし用語の使用方法を知るのは、どこからだろうか?マスメディアでの
使用方法からに他ならない。そして、CIA がアメリカの有力メディアに対して影響力を持って
いるのは明らかだ。前節で、「1976年の文書公開自体が情報操作の一環」である可能性も排除
できないとした理由は、「情報公開法により、誰かが請求すれば公開せざるを得ない文書なの
だから、公開方法を可能な限り情報操作に有利な形にする」ため、ニューヨーク・タイムズに
*しかるべき解説記事付きで*公開させた、と考える余地はあるからだ。
# 2022-10-20: CIA とニューヨーク・タイムズの関係については、下記が参考になる。
# alzhacker.com: なぜ社会には「陰謀論」と「陰謀論者」が必要なのか (記事分野: 陰謀論)
# 「...
# アメリカの調査報道ジャーナリストで作家のカール・バーンスタイン(ボブ・ウッドワードと
# ともにウォーターゲート事件で活躍したことで有名)は、「CIA AND THE MEDIA」と題する
# かなり広範な(25000語の)暴露記事を書いている。この記事は、悪名高いCIA通信が発行
# されてからちょうど10年後の1977年10月20日、ローリングストーン誌に掲載された。...
# CIAは、広く読まれているこれらのコラムニストを、潜入任務を遂行するために頼りになる
# 「既知の資産」として特に言及している。彼らはまた、ニューヨークタイムズの幹部と「署名
# された秘密保持契約」を結んでいる ...」
# この件↑は、櫻井ジャーナルの記事↓でも言及されている。
# https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202311020000/
# 「...「CIAとメディア」という記事 .....」
# 「1977年までの20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上」
# 「1950年から66年にかけてニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の
# 肩書きを提供」
# ↓昨今の NYT 報道の実例とオルタナ・メディアからの評価例
# https://mekong.hatenablog.com/entry/2024/02/07/140725
# ポール・クレイグ・ロバーツ「『ニューヨーク・タイムズの最新ファンタジー』
# ドイツはロシアとの軍事的対決を準備中」
# 「何年だったか忘れたが、ニューヨーク・タイムズ紙は新聞であることをやめ、
# 軍事/安全保障複合体の手先となった」
# 「ドイツは1945年以来アメリカの傀儡国家であり、ロシア向けとされながらドイツを
# 直撃しているアメリカの制裁によって産業が衰退している。ドイツがロシアと軍事的に
# 対峙できるという考えはおかしい。」
# 念のため+バランス上、同程度に有名なワシントン・ポストについても触れておく。
# https://note.com/spiderman886/n/n648b3d49ea59
# 「ビッグテック・アマゾンが所有するワシントン・ポスト紙が事実上、中央情報局(CIA)の
# 広報機関であることは、米国政界の関係者なら誰でも知っている。この基本的な真実を理解
# していない者は、ワシントンDCの環状道路内部にはいない。」
# cf. イギリスのマスコミ(BBC など)は、一応イギリスの諜報組織 MI6 等の管轄と思われる。
# ↓BBC の場合
# https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202402080001/
# 「アメリカのジョージ・W・ブッシュ政権 … イラクが大量破壊兵器を保有 … という話を
# 作り上げた … イギリスのトニー・ブレア政権はこのでっち上げに協力」
# 「ブレア政権は「イラク大量破壊兵器、イギリス政府の評価」という … 報告書(9月文書)を
# 作成、メディアにリークして人びとを脅しているのだが、これが嘘」
# 「事実を2003年5月29日にBBCのアンドリュー・ギリガン記者がラジオで取り上げ、粉飾
# されていると語った」
# 「事実を伝えたBBCはブレア政権から激しく攻撃され、ギリガンはBBCを追い出される」
# 「それだけでなく放送局の執行役員会会長とBBC会長は辞任に追い込まれた。この後BBCは
# 単なるプロパガンダ機関になった。」
# 「ギリガンの情報源 … 変死」
# 参考: BBCによるプロパガンダの実例

CIA によるマスコミでの言説の操作について警鐘を鳴らす記事は、例えば、下記のフレーズを
検索すれば、ケイトリン・ジョンストンによる一連の記事が、多数ヒットする
[site:eigokiji.cocolog-nifty.com 言説のマトリックス] ( Google | DuckDuckGo )
あるいは、いっそ、下記を検索してもよい。
[site:eigokiji.cocolog-nifty.com ケイトリン・ジョンストン] ( Google | DuckDuckGo )
下記の痛烈な皮肉を表題にした記事もある。
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2022/02/post-f1c728.html
提案:全ての欧米ニュース・メディアを直接CIA本部から運営させろ

そもそも、「ケネディ暗殺についての最初の「公式報告」が間違っている」事は、米国議会
でも公認されている点も、念には念を入れ、指摘しておく。下記記事を参照。
Comité Selecto de la Cámara sobre Asesinatos
暗殺に関するハウスセレクト委員会
https://wikijp.org/wiki/United_States_House_Select_Committee_on_Assassinations
暗殺に関する米国下院選択委員会
https://naotatsu-muramoto.info/amerikasi/kenedhiansatu/kenedhiansatu125.html
裁判まで③
下院の暗殺調査の特別委員会

3. 陰謀論と呼ばれるもの^

AlzHacker サイトにある下記の論説から抜粋。
- 陰謀論と呼ばれるもの パート1 イアン・デイビス
- 陰謀論と呼ばれるもの パート2 イアン・デイビス

「「陰謀論」という言葉は、さまざまなテーマについて議論を封じ、意見を検閲するために
作られたプロパガンダの構成要素にすぎない。...
とりわけ、国家やエスタブリッシュメント、つまり国家を支配し、国家から利益を得ている
公的・私的団体の発表や布告に異議を唱える者を疎外し、信用を失墜させるための蔑称として
使われている。」
「陰謀論」捏造の最も陰湿な側面のひとつは、この用語に関連するデマが人々の意識に
うまく植えつけられていること ... 多くの場合、宣伝者はターゲットとなる意見にこの
レッテルを貼るだけで、聴衆は即座にその見解を「狂気の陰謀論」として否定してしまう。」

「「陰謀論と主張されるものに関連する「科学的研究」はすべて、国家や体制、... 指定
された「認識論的権威」を疑うことは妄想であるという仮定から始まる。... 科学文献に
おける「陰謀論」の 実質的な定義は、「権力に疑問を呈する意見」...「認識論的権威」が
報道する公式の物語と相反する意見である。...
国家やその「公式」代表者、あるいはレガシー・メディアによって語られたことに疑問を
持つなら、あなたは「陰謀論者」であり、したがって「科学」によれば、精神に異常を
きたしていることになる。
明らかに、この定義は政治的なものであり、科学的なものではない。... 国家とその組織を
支持する学者の政治的偏見に由来する仮定である。科学的妥当性はまったくない。」
# 本当の意味での科学では、定義や前提の妥当性も、検証の対象に含まれる。

「権力に対する疑問と権威へのあからさまな挑戦は、おそらく最も重要な民主主義の原則を
体現するものであり、代表民主主義の根幹をなすものである。代表民主主義が「陰謀論」
なしに存在することはあり得ないと主張することは、不合理なことではない。...
「陰謀論」が民主主義制度を脅かすという主張には何のメリットもない。」

「いわゆる「陰謀論者」と呼ばれる人たちは、幅広い問題にまたがる正当な意見を持つ普通の
人たちが圧倒的に多い。彼らの意見が過激なイデオロギーを採用したり、暴力行為に走ったり
することはない。広く流布しているこの主張を裏付ける証拠はまったくない。」

「また、「陰謀論者」とされる人々は、心理的な問題を抱えた不満分子の特異な集団でもない。
これらの人々が持つ唯一の特徴は、権力に疑問を呈する権利を行使するということである。
この見解は、陰謀論者が常に正しいということを意味するものではない。陰謀論は偏見に
満ちていることもある。荒唐無稽であることもある。裏付けに欠けることもある。不快感を
与えることもある。そして、時には明らかに間違っていることもある。つまり、他の意見と
同じなのだ。しかし、同様に、「陰謀論」とレッテルを貼られた意見には、本質的に不正確な
ものや危険なものは何もない。」

「陰謀説が妥当かどうかを確かめる方法はただ一つ、証拠を調べることだ。残念なことに、
陰謀論というレッテルは、人々が証拠を見るのを阻止するために特別に作られた。」

「「陰謀論」というレッテルを貼る人は誰でも、証拠や事実や弁証法を重視するからでは
なく、自分たちの世界観に対する挑戦や、自分たちの主張する権威に対する異論を許さない
からそうするのだ。
(「陰謀論」というレッテル貼りは)権威主義的なプロパガンダであり、事実に基づいた
正当な意見を検閲するために意図的に作られたものだ。」

#↓「陰謀論」を攻撃する際に多用される「レトリック(ここでは「詭弁」の意味)」の例。
「ストローマン論法」: 自分が反対している人々の「とんでもない信念(実際は、彼らが
したこともない議論)」を簡単に(=安直に)捏造して「論破」するために利用 。
「構図の誤謬」: 陰謀論者というレッテルを貼った一人の人物の意見が、陰謀論者という
レッテルを貼った全員の意見を代表していると主張する。

4. モッキンバード作戦^

本記事の主題は、背景として「モッキンバード作戦」があることを押さえておくと、
見通しが良くなるように思われる。
例えば、英語版 Wikipedia の和訳 (幻想の近現代) や櫻井ジャーナルでの用例を参照。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202404290000/
「CIAやその前身のOSSはイギリスの情報機関のアドバイスで創設された金融資本の情報機関」
「第2次世界大戦の後、OSSは破壊活動の部門を除いてCIAへ組織替えになったが、破壊活動は
OPCとして存続、1950年10月にCIAへ吸収され、52年8月にCIAの破壊工作部門「計画局」の
中核になった。世界各国でクーデターを仕掛け、要人を暗殺してきたのはアレン・ダレスが
指揮していたこの部署にほかならない」
「アメリカの私的権力は大戦後、情報をコントロールするための仕組み「モッキンバード」を
作りあげた。その中核が
- アレン・ダレス、
- ダレスの側近で戦後に極秘の破壊工作機関OPCを率いていたフランク・ウィズナー、
- やはりダレスの側近で後にCIA長官に就任するリチャード・ヘルムズ、
- そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハム。
この陣容からも明らかなように、CIAのプロジェクト」
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202402250000/
「デボラ・デイビスの『キャサリン・ザ・グレート』:
「1948年頃に「モッキンバード」と呼ばれる情報操作プロジェクトがスタート」」
「ダレスとウィズナーはウォール街の弁護士、
ヘルムズの母方の祖父…ゲイツ・ホワイト・マクガラーはBIS(国際決済銀行)初代頭取、
フィリップ・グラハムの義理の父にあたるユージン・メイヤーは世界銀行の初代総裁」

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