森林政策学研究室の日々

北海道大学農学部森林政策学研究室で行われる活動や研究を紹介します。

『「あたりまえ」を疑う社会学』を読みました

2008-04-21 10:30:40 | 本の紹介
『「あたりまえ」を疑う社会学』(好井裕明、2006、光文社新書)を読みました。生協の社会学コーナーで、いろんな単行本の間に新書がぽつんと混じっていたのを手にとって購入したもので、特に誰かに勧められてというものではありませんでした。

ですが、読んでよかったです。

今まで、佐藤郁哉氏の「フィールドワークの技法」や「実践フィールドワーク入門」などを読んでフィールドワークのやり方について勉強し、自分でもそれを実践してみて、フィールドワークを使った研究をそれなりに進めていたつもりでしたが、なんだか腑に落ちないものを感じていました。

そんな時にこの本を見つけて、副題の「質的調査のセンス」という言葉に惹かれました。中身を読んでみて、社会学的フィールドワークを実践する人々が感じる様々な葛藤に共感し、研究を進める姿勢や「根っこ」について学んだ気がしました。

例えて言うなら、佐藤郁哉氏が「知将」なら好井裕明氏は「闘将」という感じでしょうか。とはいっても、佐藤郁哉氏がそういう情熱的な部分を軽視しているということは、彼の本を数冊読む限り、ないと思います。彼は、研究者はそういった情熱や姿勢を持っているという前提のもとに、それをどのように実践していくかということを伝えようとしているのに対し、好井裕明氏はその前提自体を疑い、その根っこの部分をしっかりさせたいという思いでこの本を書いたように感じました。

この本は「社会学」と銘打っていますが、社会学に限らず、わが林政を含めて、社会をフィールドに研究を行っている全ての人々に有効なエッセンスが詰まっているように思います。

それにしても、山田真哉氏の最近の著書で「数のセンス」について語られたものが話題になり、好井裕明氏のこの本では「質的調査のセンス」について語られるなど、「センス」という、ある意味「テクニック」と対比的なことに注目が集まりだしているような気がします。テクニックを駆使するだけではだめで、どのようにそれらを駆使すればいいのか、その姿勢や根っこをしっかりさせたいという要求が高まっているのかもしれません。

カルロ

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