突然だが、皆さんは『SOS団』の正式名称をご存知だろうか?
そう「世界を大いに盛り上げる涼宮ハルヒの団」であるが、表向きには『生徒社会を応援する世界作りの為の奉仕団体』と謳っている。
まぁ、誰がどう見たって前者の名称の方が有名だろうが、それはそれとして公には後者の名称を使用し学校及び生徒会に活動申請してるのである。 但し、申請して以来、正式に認可されてる訳では無い非公認団体なのは相変わらずなのだが。
尤も、団体のトップたる団長様は、その事に気付いて無いと思われるが。
文芸部の部室を乗っ取る形で始まった団活であるが、何だかんだ言って結成一周年を過ぎた。
ハルヒには知られない活動や、『非合法な団体』と因縁をつけて来た……いや、これは古泉の陰謀か――生徒会長によって文芸誌を作成した事もあった。
俺の周囲で沸き起こる非日常が増えれば増える程、それに比例して成績が下がって行ったのも、この際どうでも良い。 いや、良くは無いが。 今回の出来事とは関係ないだろう、多分。
そんな紆余曲折を経て、高校二年生の夏休みも終えて二学期。 そろそろ平穏な日々を送りたいと願ってた時に、また事件は起きた。
いや、本来なら俺に降りかかる事の無い筈の事象だと思っていたので油断していたのだ。
今回は奇天烈パワーとは関係無い、どちらかと言うと日常の学園生活の一コマと言うべきものなのだろう。 ハルヒが発生源なのは変わっちゃあいないが。
『生徒会活動』
学生の皆さん、及び、現在は社会人の皆さんにとって正直、それは身近な存在だったろうか? 確かに身近に感じる物では無かったかも知れない。
表立った活動が基本的に見えないせいだろう。 尤も、あまりにも生徒会活動が活発であると却って学生の本業……学業に身が入らなくなるかも知れない。
付かず離れず。 その位の距離感が丁度良いと思う。 そして生徒会活動の中で一番、一般生徒に関わって来る行事が『生徒会役員選挙』では無いだろうか。
昨年の選挙ではハルヒの退屈しのぎの一環で現会長が擁立され当選した訳だが、今回で一年・二期の会期を終え、引退する事となった。
そりゃあ今年、三年生であるから今期は立候補出来ない。 今までお疲れ様、と言っておくか。 これで堂々と仮面を外せるかどうかは別として、だけどね。
さて、前置きが長くなった。 今回は短い話なので軽い気持ちで読んで貰えると幸いだ。
「キョン、立候補しなさい!!」
何時もの団活中、これまた唐突に発せられるハルヒの一言。 連日の猛暑と残暑のせいで頭がやられたか?
「何言ってんのよ、生徒会選挙よ!」
「あぁ、もうそんな時期か」
「そうよ」
「それで何故、俺が立候補せねばならんのだ」
「あんたが会長になって、生徒会、ひいては北高を牛耳るのよ!」
やれやれ、一体どうコメントすれば良いのかね。
「言うなれば全生徒の雑用係となるのよ!」
勘弁してくれ、何の冗談なんだ。
「なぁ、ハルヒ」
「な、何よ」
「ハルヒが出たらどうだ?」
「あ、あたしは駄目よ」
「何故だ」
「神聖なるSOS団団長だからよっ!!」
そうかい。 しかしハルヒって『団長」と言う肩書きはあれど、権力欲って無いんだよな。 特に最近は団員を振り回したりせずに、割と周囲の意見を求める様になって来たし。 何だ、その、大人になったって奴か。
「あ。 わたしもキョン君が会長って良いとおもいますぅ」
朝比奈さんに、そう言われると満更でも……ハルヒ、何故ジト目で睨む。
「べ、別に」
しかし朝比奈さん。 貴女は卒業するからって、そんな無責任な事言って良いんですか。 それに、それって現在に対する干渉になりませんか? 未来的に。
「き、禁則事項ですぅ……」
「わたしも貴方が会長職に就くのが望ましいと考える」
ほう、長門が意見とは珍しい。 それも自律進化って奴か? で、理由はあるのか。
「……学食のカレーメニューの種類増加と図書室の蔵書の拡充を希望する」
だ~っ、単なる我が儘かいっ! それなら長門、情報操作で
「それは不自然」
ですよねー。
「良いじゃありませんか、会長職。 貴方の内申点にも好影響ですよ?」
えぇい、出たなボードゲームオタク。 顔が近い、耳元で囁くな。
「そう言うお前が出れば良いだろ、古泉」
全校の半分、とは言わんが……その似非スマイルで女性票が大量に獲得出来るだろうよ。
「とんでもない、僕では務まりません。 第一、涼宮さんの意思に反する事は出来ませんよ」
そうだったなイエスマン。 お前に期待するだけ無駄だったな。
「わたしも貴方が会長になったら良いと思うな」
何故、此処に居る朝倉。 クラス委員の仕事はどうした? そう言うお前こそ似合ってると思うぞ、会長職。
「うん、それ無理♪」
やれやれ、どいつもこいつも勝手な事ばかり言いやがって。
結局、俺は選挙に出馬しなかった。 当然だろ? これ以上、俺に重荷を背負わせないでくれ。
それを不満に思ったハルヒが朝比奈さんを連れてナースのコスプレで「キョンを宜しく!!」とか言って非合法な選挙活動を始めた事には眩暈がした。
ナイチンゲールも吃驚だろうよ。 「北高の生徒会の腐敗はキョンが治す!」って、それが治癒方法なら医者なんて要らないと思うぞ。
確かに現会長は、ある意味非合法で当選したからハルヒの言ってる事は、あながち不正解って訳では無い。 のかな?
そして選挙当日。 紆余曲折あった前日までの喧騒が嘘の様に粛々と行われた投票。 開票作業を終えた結果……
朝倉涼子 210票
古泉一樹 200票
よって朝倉が会長、次点の古泉が副会長になって、めでたしめでたし……って、あれ? 二人の票を足しても約400票を超えるのがやっとだぞ。 確か北高は
『約30人×9クラス×三学年』 故に約800人強
の生徒が居る筈であり、明らかに票が不足してると思うが?
「ちょ、ちょっとキョン!」
「ん、どうしたハルヒ」
「下、見て見て!!」
「どれどれ……」
掲示板に張り出された開票結果の用紙の更に下に視線を向けると
「な、何ですとぉぉぉぉぉ!?」
キョン 400票(無効票)
と書いてあった。 要するに次の通りらしい。
『得票数は文句なしだが、本名でなく渾名(ニックネーム)で書かれていた。 生徒会、及び教職員会議でも意見は分かれたが
「前例を作ってはならない、認めたら今後に影響する」との結論が出た。 よって本名以外の記入は認めない。 それ以外は無効票とする』
そりゃそうだろう、そして『有効票が過半数を超えた為、今回の選挙は有効とする』だそうだ。 しかし、何でこんなに俺が得票したのか解らないな。
「本気でそう思ってるの? キョン」 ん、何だ国木田
「『涼宮係』が務まるんだから」 だから何だ谷口
「生徒会長も立派に務まるのね」 阪中まで何を言ってるんだ。
しかし『キョン』で400票か。 俺の本名を知ってる人って全校生徒で何人居るのかね? やれやれ……
<Election> ~Fin~
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