人の足を進めるのは希望ではなく意思。

――新入生の皆さん、こんばんは。

柔道部四年目の廣瀬と申します。



さて、皆さんが念願の北大入学を果たし、今日で約一週間。

しかし、全国から猛者が集まるこの大学で生き残る見込みはあるまいと、早くも不名誉な下馬評を受けている方もいらっしゃるかもしれません。



睡魔に勝てず、一限に出席することが不可能な為に留年の足音が聞こえ始めた貴方。

学食で一人でメシ食ってると、周りの笑い声が全て自分に対する嘲笑に聞こえる貴方。



力が欲しくはありませんか？

この大学という名の荒野を生き抜き、自在に駆け巡る力が。


単位を落としても動じない強靭な精神力、テスト期間の連徹に耐え得る頑強な肉体。

欲しいなら、差し上げる……そう言われたら、貴方はどうします？



この問いに対して首肯するのなら、今すぐ武道場二階・北大柔道部へお越し下さい。

歴戦の闘士達が、貴方に生き抜く為の手練手管を教え込まんと、手薬煉を引いて待ち構えております。



北大柔道部はスゴイですよ。

なにせ、自他共に認めるダメ人間でヒキコモリの俺が、四年間も北大生として生きて来られたのは、他ならぬ柔道部のお陰ですからね。


柔道部に入っていなければ、俺はどうなっていたか…。

多分、遅くとも二年目を迎える前には、実家の隅っこでカビ生やして死んでたと思います。