個人事業はじめちゃいました!

悩める賃貸オーナーの呟きとちょっとだけ機械設計のブログ!

技術のお話し タイヤ編(8)

2021-02-07 16:07:42 | 暮らし
あけましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い致します。

気が付けば1月も終わり2月も半ばに入ろうとしています。
確定申告に必要な帳簿や領収書などを税理士さんに持参し、
令和2年分の申告手続きをお願いしましたが、
コロナ禍で退去者が多く、部屋の修繕と外壁工事などで大赤字の一年になりました。
地域差はあるものの少子化、世帯数減少など賃貸経営は難しくなっています。
退職金を原資に賃貸経営をお考えの方、絶対お止めになった方が良いと思います。

儲からないなら止めた方が良いよな!
俺はやらないよ!
・・・俺はやるよ!
・・・俺もやるよ!

じゃあ、俺がやるよ!
・・・「どうぞ、どうぞ!」
「チキショ~」
♬「儲からなくってゴメンね、賃貸経営」♬ ってならないために。

 注釈:ダチョウ倶楽部さんの鉄板ネタをパクりました。ごめんなさい!

落ちが付いたところで、
昨年投稿したタイヤ編(7)の補足です。
相変わらず文書を纏めるのが下手で申し訳ございません!

タイヤ編(7)の内容で、高速ユニフォーミティを測定するドラムの場合、
ドラムの釣合い良さを6.3G以下にする必要がありますと説明しましたが、
「釣合い良さ6.3Gとは何ぞや」と思った方、いらっしゃるかと思います。

まず「釣合い良さ」とは何かを考えてみます。
JISハンドブック 機械要素 : B 0905-1992を参考に説明すると、
二つの軸受で支持された状態で、目標とする任意の回転速度まで撓まないロータ(回転体+回転軸)を剛性ロータとします。
その剛性ロータの釣合い程度を示す量を「釣合い良さ」と言います。
別の言い方では、剛性ロータの質量分布がどれだけ均等であるかを表す量と言い、
計算式で表すと比不釣合いの大きさe(mm)と、ある指定された角速度ω(rad/s)との積と定義されます。

 釣合い良さ(mm/s) = eω・・・①

 角速度ω(rad/s)と回転速度n(min^-1)の関係は、ω = 2πn / 60 ですから、
 回転数を使い計算する場合は下記の式になります。

 釣合い良さ(mm/s) = en / 9.55・・・②

 注釈:角速度ωは1秒間当たり何度変化したかを表し、角度の単位はラジアン(rad)を使用します。
    180度 = π(rad)ですから360度 = 2π(rad)、回転数は1分間(min)に何回転したかを表します。
    よって回転数(min^-1)を用いて角速度ω(rad/s)を計算する場合、2π / 60を回転数nに掛け合わせます。   

   比不釣合いとは剛性ロータに於いて、静不釣合い : mrをロータの質量:Mで割った量で、
    ロータの質量中心の軸中心線からの偏りに等しい。

<参考図>


計算式で表すと、比不釣合い e(mm) = mr / M ・・・偏重心
                静不釣合い = mr(gmm又はkgmm) ・・・静アンバランス
                不釣合い質量 : m(g又はkg)
剛性ロータ質量 : M(g又はkg)
回転中心から不釣合い質量までの距離 : r(mm)

又、JISハンドブック 機械要素 : JIS B 0905では、「釣合い良さ等級」から「釣合い等級の上限値」を定め、
各種回転機械の釣合い良さの推奨値を提示しています。

誤記などございましたらお知らせください。

次回はこの続きから
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技術のお話し タイヤ編(7)

2020-12-19 17:46:37 | 暮らし
11月中旬は天気の良い日が続いたので庭の手入れをしたが、
何も考えず槙や楓の葉を枝ごとに分けて切っていたら、
UFOの様な丸みを帯びた形になってしまった。
二階のベランダで洗濯物を干しながら庭を見て嫁が笑っている。
ツボに嵌ってしまったらしい。
何時まで笑いが続くのか楽しみである!

今回はタイヤ編(7)、久しぶりのお話しです。

今回はドラムの形状に付いてです。
基本的な形状は、タイヤ接触面のドラム外周部と回転軸を支えるボスに分けられます。
そのボスを中心に、放射線状に縦リブ(肋材)を設けてドラム外周部と繋ぎます。
タイヤに荷重を加えた時にドラム外周部の変形を抑える為、
ドラム幅の中央にボス部へと繋ぐ横リブ(円環)を配置して、
放射線上に配置した縦リブとの間に軽量穴を設けます。

参考にイメージ図を作成してみました。
但し、詳細な強度計算はしていません。



生産用設備の場合、オイルミストやホコリ等が付着し易い為に、
ドラム両端にカバーを設けるとドラムのバランス修正後の管理が楽になります。
又、ドラム両端のカバーをボルトで固定すると、
定期メンテナンス時にドラム内部の状態を確認(亀裂等)する事ができますし、
高速時のユニフォーミティを測定する場合には、縦リブによる風発生の防止に繋がります。
低速時の場合には、カバーが無くても風の発生は軽微です。

ドラム外周部両端の裏側にバランス修正用のスペースを設けると、
貼付用バランスウェイト(最小質量:5g)を利用してバランス修正が容易に行えます。
高速ユニフォーミティを測定するドラムの場合は、
ドラムの釣合い良さを6.3G以下にする必要があります。
貼付用バランスウェイトの貼付箇所を減らしたい場合には、
ドラム外周部の両端面にM8程度のネジ穴を15度刻みで加工しておくと便利です。
六角穴付止めネジM8x8の質量は約2gなので、より精度良くバランス修正が行えます。
使用する場合は,緩み止め剤をネジに塗布すると良いと思います。

タイヤ・ホイールのオフセットの関係で、ドラム外周部の接触に於いては、
ドラム幅の中心位置に対してタイヤ幅の中心位置が偏心します。
LFVが大きいタイヤを高速回転させた場合には、
偏心によるモーメント荷重を縦リブで剛性確保しなければなりません。
又、一番強度が低いと思われる縦リブ間の中央では、
加圧荷重とRFVを受けるので軽量穴のR寸法は出来る限り大きくすると
剛性が確保し易くなります。



近年は荷重センサにタイヤを置いて荷重を加えると、
パソコン上で瞬時に荷重分布の状態が計測出来ます。
ひと昔前は、タイヤメーカー以外では感圧紙で計測していました。
アナログの世界です。

他の形状としては、タイヤ接触面のドラム外周部と回転軸を支えるボスを、
ドラムの両端と中央に設けた横リブ(円環)で繋ぎ、軽量穴を設けた物が有ります。



この形状のドラムは、神戸製鋼製タイヤユニフォーミティ装置「LIBLOTA」が採用しています。
低速ユニフォーミティ専用のドラムと思われます。
高速ユニフォーミティでは、ドラム外周部の軸方向(LFV)の変位が大きくなる様に思えます。
あくまで見た目の判断で解析した訳では有りません。
間違っている場合はご容赦下さい。

今回はここまでです。
12月も中旬を過ぎ確定申告の準備をしなくてはいけませんでした。
完全に忘れていました。
では皆さん良いお年をお迎えください。
Stay Homeで!!




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技術のお話し タイヤ編(6)

2020-10-16 19:47:20 | 暮らし
今回は久々に本題からお話しします。
補足を楽しみにしていた方、ごめんなさい ! ・・・ 

 「誰も気にしていないよ」と後ろから声がするが、気にせず進む事にします。

タイヤ編(4)で、ユニフォーミティ設備に付いて概要を説明していますので、
今回は、少し掘り下げてドラムに付いてのお話しです。

ドラムの外径寸法は、自動車用タイヤのユニフォーミティ試験方法(JIS D4233:2001)と、
高速時のタイヤ・ホイールのユニフォーミティ試験方法(JASO C618-03)とで記載されていますが、
それぞれ諸元が異なります。

自動車用タイヤのユニフォーミティ試験方法の諸元では、JASO C607-87を継承し、
二輪、乗用車、軽トラック用タイヤ、
         及びリム径の呼び14以下の小型トラックタイヤでは、φ854±2.5mm・・・タイプA
リム径の呼び15以上の小型トラック、トラック及びバス用タイヤでは、φ1600±2.5mm・・・タイプB
としています。

 *注釈
  他の外径寸法を使用する場合は、φ854±2.5mm、φ1600±2.5mmのドラムとの相関を確認する事が求められています。
 
  ISO 13326では、タイプA:φ854mmとタイプB:φ1600mmを基本して、
  タイプAに対してはφ 830~φ1000mmの範囲、
  タイプBに対してはφ1520~φ1710mmの範囲で、ドラムの外径寸法が許容されています。

高速時のタイヤ・ホイールのユニフォーミティ試験方法の諸元では、
タイヤサイズに関係なくφ1.5m以上が望ましいとなっています。

 *注釈
 φ854±2.5mmのドラムを用いる場合はφ1.5m以上のドラムとの相関を確認する事が求められています。 

  高速時のタイヤ・ホイールのユニフォーミティ試験方法は、ISO規格になっておらず、
  国内外のメーカーでドラム外径寸法がφ854~φ3000mmと異なるのが現状です。
  よってJASOではφ1.5m以上と規定しています。

ユニフォーミティ測定機を開発していた頃、ドラムに付いては色々と苦労した記憶が有ります。

 *私だけかも知れませんが ?

生産設備では、設置スペース、接地面強度や設備の小型・軽量化を考えるとドラムは小径寸法を選択したい。
又、駆動モータも出力を抑え省エネも考慮したい、タクト時間は間に合うのか等、悩みは尽きませんでした。

基本的に路面と同じ状態の平坦な面にタイヤを加圧すれば一番良いのですが、
ドラムの場合は円筒形状の為、ドラムの頂点付近では局部的にタイヤの応力が掛かり、
平坦な路面で測定したユニフォーミティの数値より若干高くなる傾向が有ります。
小径ドラム < 大径ドラム がより平坦な路面で測定したデータに近いと言う事になります。
よって、路面と同じ状態のタイヤ撓みで測定した数値に近づける為、
空気圧に対する負荷能力の割合が決められているのです。

 *注釈
  自動車用タイヤのユニフォーミティ試験方法での、タイヤの空気圧と荷重の関係に於いては、
  二輪、乗用車タイヤの場合、空気圧200kPaで、荷重は空気圧に対する負荷能力の85%です。
  その他のタイヤは下記の様に決められています。

  軽トラック用タイヤ、及びリム径の呼び14以下の小型トラックタイヤでは、
  タイヤ強度(プライレーティング)が4PRの場合、空気圧:200kPa、荷重:空気圧に対する単輪負荷能力の85%
  タイヤ強度が6~8PRの場合、空気圧:200kPa、300kPa(推奨)、荷重:空気圧に対する単輪負荷能力の85%
 
  リム径の呼び15以上の小型トラックでは、
  タイヤ強度が6~8PR、又は最大負荷能力対応空気圧が450kPa以下の場合、
                空気圧:300kPa(推奨)、350kPa、荷重:空気圧に対する単輪負荷能力の88%
  タイヤ強度が10~12PR、又は最大負荷能力対応空気圧が650kPa以下の場合、
                空気圧:350kPa、450kPa(推奨)、荷重:空気圧に対する単輪負荷能力の88%
  タイヤ強度が14PR、又は最大負荷能力対応空気圧が650kPa以下の場合、
                空気圧:450kPa、600kPa(推奨)、荷重:空気圧に対する単輪負荷能力の88%

  トラック及びバス用タイヤでは、
             空気圧:450kPa、600kPa、700kPa(推奨)、荷重:空気圧に対する単輪負荷能力の88%
  となっています。

  又、タイヤ生産やホイール組付工場では、上記の内容で計算した数値に近い荷重が採用できるようになっていますが、
  実際はタイヤサイズ、グレード毎に出荷時の空気圧が決まっているので、測定荷重もそれぞれ異なります。 

  高速時のタイヤ・ホイールのユニフォーミティ試験方法では、タイヤの空気圧と荷重の関係に於いて、
  ドラム外径に応じて平板上と同じタイヤ撓みとなる様な荷重条件が望ましいとされ、
  規格では空気圧が200kPaで、荷重は空気圧に対応する負荷能力の85~90%としています。
 
上記に挙げた内容を改善し、実際の走行に近い状態で測定できる様に開発されたのがフラットベルト式測定機です。
但し、ドラム式に比べ設計・製作及びメンテナンスに係る費用に付いて負担が大きいと思います。

  *注釈
  ここでは個人的な設計・製作に付いての感想で、フラットベルト式を否定するものでは有りません。

フラットベルト式は、タイヤを押さえつける定盤が有り、その両側にローラを配置してステンレスベルトを取付ます。
動作例としては、タイヤに徐々に荷重を加えベルトを介して定盤に押し付けます。
ベルトを低速回転させて慣らし運転の後、目標の速度へ徐々に近づけてタイヤ内の空気圧や回転速度が安定した処で、
タイヤ・ホイールを取付けるスピンドル側に設置した荷重センサでユニフォーミティを測定します。
この方式では構造上、定盤との摩擦やそれに伴う摩擦熱でベルトが著しく摩耗し、摩耗が更に進行すると破断に至る事が有ります。
その対策として、定盤の上面に小さな穴(絞り穴)と吹き溜まり(リセス)を等ピッチに幾つも設け、
ベルトと定盤の間に水圧を利用した膜を作り、摩擦や摩擦熱を軽減させています。
但し、安全上ベルトの動作中にセンサ等でベルト表面や両端部で亀裂の確認をする必要が有ります。
又、定盤には水が飛び出さない様にスクレーパーが設けられていますが完全では有りません。

  *注釈
  上記の防水に付いての内容は、過去に各資料で調査した結果で有り、 現在では完全に防げているかも知れません。

最近は、空圧を利用したタイプも研究開発されています。
以前は、水圧より回転速度や荷重条件等で性能が劣ると言われましたが、
定盤の吹き出し穴(絞り)のサイズ、空気溜め(リセス)形状や配置数、必要な空気圧に付いて研究された結果、
ベルト下での均一な圧力維持が達成され、商品化された測定機も有ります。 

低速ユニフォーミティ測定機に限り、定盤の代わりに小径ローラを並べた設備も有りますが、
ローラを支える玉軸受やコロ軸受が小径タイプとなり焼き付き易くなります。
又、荷重によるローラ自体の撓みや、ローラとタイヤに挟まれたベルトのうねりが劣化に繋がります。

もう一つ重要な技術として、ベルトの蛇行制御が必要となります。
ベルトの蛇行制御は、二つのローラ近くに変位センサ等を配置して、
ベルトの厚みに焦点を合わせ軸方向の変位を測定します。
従動ローラの両軸端にサーボ制御が可能な電動ジャッキを配置して、
ローラ軸の一方をベルトのテンション方向に微調整させてベルトの蛇行を補正します。
別案として、ローラに0.1~0.2mm程のクラウニング加工を施し、
回転中にベルトがローラの中央に留まる様に調心機能を付ける方法も有りますが、
タイヤには車軸方向の力が作用するので、クラウニング程度の調心機能ではベルトの姿勢を保つのは難しいのです。

上記の事から、私はドラム式を選択しました。
一番の理由は、フラットベルト機構、蛇行制御を開発する時間と予算、導入後のメンテナンスと費用、
コンベヤからスピンドル軸へのタイヤ・ホイールの姿勢変換によるタクト時間等を考慮しました。

  *注釈
  正直に言えば、私の技術力が無かった事が一番の要因です。 はい !!

 一般的に1m以下のドラム式は生産用、1.5m以上の大型ドラムやフラットベルト式は試験・研究用に多く採用されています。
  又、上記に挙げた機構に付いては一例の検討案で有り、各メーカー毎で特色ある機構で開発されています。

ドラムの製作としては、直径1m以下ではアルミ合金鋳物、1.5m以上では鉄鋼製が多く見受けられます。
アルミ合金鋳物の材質としは、市場の流通性が高いAL-Si-Mg系でAC4A、AC4CやAC4CHが挙げられると思います。

特徴としては、
      AC4Aは鋳造性が良く、靭性が優れ、強度が要求される大型鋳物に用いられる
      AC4Cは鋳造性が優れ、耐圧性、耐食性も良い
AC4CHは鋳造性が優れ、不純物の含有が規制され機械的性質が優れ安全性が必要な部品に用いられる

機械的性質(室温)としては、
      AC4A-T6(砂型) 引張強さ : 265N/mm^2 0.2%耐力 : 225N/mm^2 伸び : 2% 硬さ : 約86HB
      AC4C-T6(砂型) 引張強さ : 230N/mm^2 0.2%耐力 : 190N/mm^2 伸び : 3% 硬さ : 約81HB
      AC4CH-T6(砂型) 引張強さ : 230N/mm^2 0.2%耐力 : 165N/mm^2 伸び : 5% 硬さ : 約80HB

      AC4A-T6(金型) 引張強さ : 300N/mm^2 0.2%耐力 : 250N/mm^2 伸び : 3% 硬さ : 約94HB
      AC4C-T6(金型) 引張強さ : 285N/mm^2 0.2%耐力 : 225N/mm^2 伸び : 7% 硬さ : 約95HB
      AC4CH-T6(金型) 引張強さ : 260N/mm^2 0.2%耐力 : 260N/mm^2 伸び : 16% 硬さ : 約80HB

      *注記
      T6:溶体化処理後、人工時効硬化処理したもの、
     溶体化処理後、積極的な冷間加工を行わず、人工時効硬化処理したもので、
      強度や硬さが増大する一方で、伸びや衝撃値は低下する傾向があります。
      簡単に言えばアルミの焼入れ・焼戻し処理

      *注記
      機械的性質のデータは、日本アルミニウム協会材料データベースより引用

ドラムをアルミ鋳物で製作する場合の注意点としては、
アルミ鋳物によるドラムやローラを得意とする鋳物メーカーを選ぶ事が重要となります。
特に、ガス抜き位置が不適切でブローホールや、溶融状態から凝固する際、体積変化(凝固収縮)を補完できずに空洞が発生する現象、
ひけ巣等の鋳物欠陥に対する知見が高い事が重要で、設計段階から製造担当者や鋳型担当者と綿密な打合せが必要となります。

鋳物の製造方法としては、年間の生産台数が有る程度見込める場合には、金型鋳造が望ましいと思います。
低圧鋳造も可能となり鋳肌面が綺麗で機械的性質の向上や、ピンホール発生の低減対策も立て易くなります。

生産台数が見込めない場合には、砂型鋳造となります。
鋳肌面の凹凸が目立ちますが、精度が必要な部分は機械加工を行うので、
ドラムの両端に蓋を設ければ、加工が不要なリブやボス本体は隠れるので気にならないと思います。
但し、機械加工で表面に鋳物欠陥が現れる場合が有るので、鋳造の試作段階での対策が重要となります。

寸法精度が高く鋳肌面が綺麗な石膏鋳造と言う方法も有りますが、
500mm以上のサイズでは実績の有る鋳造メーカーが少なく、
試作実験からスタートしたいと言われる場合が殆どです。

どの方法を選択しても、一度の製作で完了する事は無いと思います。
最低でも3~5本程度試作して、鋳物欠陥の調査、強度及び耐久性試験を経て完成となるかと思います。

  *注記
  上記に挙げた材料や鋳造方法は、ドラムを製作する上での一案に過ぎず、
  生産台数が見込めなくても、強度的、美観的に金型鋳造で作られているメーカーも有ります。
     
タイヤと接触するドラム表面は、タイヤ成分のカーボンブラックにより摩耗します。
対策としては、貼り換えが可能なセーフティウォーク(滑止めシート)が良く使われています。
セーフティウォークは、平行四辺形にカットしてドラムに貼り付けます。
何故、長方形にカットしないかと言うと、タイヤがカット位置を乗り継ぐ時の段差による測定値への影響を抑えるためです。
平行四辺形にカットした場合、タイヤ幅により端から徐々に乗り継ぐ為、段差による影響は少なくなります。
低速ユニフォーミティでは、測定値への影響は殆ど有りません。
高速ユニフォーミティでは、1次~4次成分で若干のバラツキが認められますが、
測定値への影響が小さい事から、ドラム式やフラットベルト式での使用が認められています。

  *注釈
  代表的なセーフティウォークは、3M社製の滑り止め用シートです。

その他には、タイヤが接触するドラム表面に炭化物材料を溶射する方法、硬質クロムめっき(硬度 : Hv900以上)や、
カニゼンメッキ(硬度 : Hv900以上)を施す方法が有ります。
溶射に付いては、大型ドラムを扱う事が出来るメーカーを選択すること、
又、アルミ合金鋳物に対するカニゼンメッキ処理では、脱脂、エッチング、脱スマット、ジンケート工程での作業は重要で、
特にエッチング工程を安易に行うと、鋳肌表面が有れて巣穴の拡大が発生し易くなります。
各工程での薬剤濃度が管理でき、アルミ合金鋳物を得意とする知見の高いメーカーの選択が必要です。

1.5m以上の鋼製ドラムの材質としては、安価材料としSS400(一般構造用圧延鋼材)、溶接性ではSM400A(溶接構造用圧延鋼材)です。
価格と溶接性はSS、SM材に比べ劣りますが、流通性が良く焼入れが可能なS45C(機械構造用炭素鋼)が挙げられます。

特徴としては、
     SS400は一般構造用圧延鋼材と言い低炭素鋼に分類され、板厚が25mm以下(開先有)で有れば溶接性に支障は無く、
         流通性も良く、大型機械部品に使用されます。
         但し、加工量が多い場合に内部応力の変化に伴い反りが発生する場合が有り、
         応力除去焼きなましを行って加工します。

SM400Aは溶接構造用圧延鋼材と言い造船用として開発された鋼材で、
         今では産業機械や工場プラントの建設資材としても使用されています。
         溶接性を考慮して炭素含有量を0.2~0.23%と低く抑えた鋼材です。
         又、SS材(リムド鋼)とは違いキルド鋼で、脱酸(溶鋼に含まれている酸素を抜く作業)を行う事で、
         低温下でも強度を保つ事が出来る様にした鋼材です。
         流通性も悪く有りません。

         *注釈
SS材=リムド鋼では無い?
          日本では連続鋳造が殆どで、鋳造過程で低酸素化(20~30ppm程度以下)にする必要が有り、
          結果的に全ての鋼材がキルド鋼ではないかと言われています。
         
     S45Cは機械構造用炭素鋼鋼材と言い、炭素含有量が0.42~0.48%と比較的高く中炭素鋼に分類され、
         熱処理を行う事で、表面から比較的浅い範囲での機械的性質の向上が期待出来ます。
         3x6、4x8、5x10尺サイズの鋼板の流通性も良く、強度が必要な機械部品に使用されます。
         但し、溶接する場合には、熱影響部が著しく硬化し低温割れが発生し易くなり注意が必要です。
         S45C鋼材の入手が難しい場合には、溶接に関しては同じ様に注意が必要ですが、S48CやS50Cも挙げられます。

機械的性質(室温)としては、
     SS400 ( 16 < t ≦ 40 ) 引張強さ : 400~510N/mm^2 降伏点又は耐力 : 235N/mm^2以上 伸び : 21%以上 硬さ :
     SS400A ( 16 < t ≦ 40 ) 引張強さ : 400~510N/mm^2 降伏点又は耐力 : 235N/mm^2以上 伸び : 22%以上 硬さ :
     S45C ( 焼ならし)  引張強さ : 570N/mm^2 降伏点又は耐力 : 345N/mm^2以上 伸び : 20%以上 硬さ : 167~229HB 
     S48C ( 焼ならし)  引張強さ : 610N/mm^2 降伏点又は耐力 : 365N/mm^2以上 伸び : 18%以上 硬さ : 179~235HB 
S50C ( 焼ならし)  引張強さ : 610N/mm^2 降伏点又は耐力 : 365N/mm^2以上 伸び : 18%以上 硬さ : 179~235HB

     *注記
      機械的性質のデータは、JISハンドブック「鉄鋼」より引用

タイヤが接触するドラム表面には、前記した表面処理の内容と同じですが、S-C材は熱処理を行う事が出来ます。
但し、S45C、S50Cは全体焼入れ(ズブ焼入れ)で、硬度はHRC30~36(ブリネル換算値 : 286~336HB)程度ですが、
焼入れ表面から4~5mmの硬化層が確保でき、前記の表面処理と合わせる事で耐摩耗性が向上します。

今回はここまでとします。

尚、話の内容は測定機開発当時の記憶を基に書いています。
間違い等ございましたら、申し訳ございませんがご教示をお願い致します。












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技術のお話し タイヤ編(5)

2020-09-04 17:06:04 | 暮らし
またまた、補足からのお話しになります。

内容が上手くまとめられていませんね!
どうもすみません・・・

新車を購入する場合、タイヤ・ホイールはリム部の振れ、空気圧、バランスやユニフォーミティと言った規格値に適合した物が装着されますが、
稀に、何故? と言う様な事が起こるそうです。

ディーラー整備士の方から伺った話しになりますが、
新車にも係わらずバランスが取れていないタイヤ・ホイールが装着されていると言うものです。

原因は色々有るかと思います。

 *下記に紹介する内容は、過去に品質管理を担当されていた方にお話しを伺った内容です。
  かなり前の話しなので、現在とは少し乖離しているかも知れません。

一つ目は、検査漏れによる誤出荷
     例えば、バランサー設備のトラブルで、設備停止前後のタイヤ・ホイールが検査漏れで出荷された場合。
     設備復旧中に手作業で組付けられたタイヤ・ホイールに、ウェイトの質量違いや取付位相違い等が有り、
     検査漏れで出荷された場合など。

二つ目は、ウェイトの脱落
     打込みウェイトの場合は、規格品外の取付による脱落と打込み不足による脱落です。
     メーカーでは、組付ラインは出荷先毎に専用化されている場合が多いのですが、
     或るメーカーの生産数が途中で増産となった場合、サイクルタイムの関係で増産は難し場合が有ります。
     この様な場合、稼働率が低い他社向ラインで生産可能で有れば、設備改修が整うまでの期間、一時的に生産を行ったりします。
     例えば、打込みウェイトを補給棚から作業棚に持ってくる際に、誤って違うメーカーのウェイトを作業棚に入れてしまった場合など。
     メーカーが違えばウェイトを固定するクリップの溝形状やリムの板厚も異なる為、嵌合いがルーズになると脱落し易くなります。

      *作業棚ではLED等で、どのウェイトを取付けるべきか作業者に指示が出るので、殆ど間違える事は有りません。
       最近は、ロボットによるウェイト取付の自動化が多くなってきました。

打込み不足での脱落は、リムのフランジ形状に合わせての作業となり、作業者の技量に依る処が大きいと思われますが、
     ホイールに傷を付けない様に、錘入りプラスチックハンマーを使い、作業マニュアルに記載される打込み力で打込みます。
     打込み力が小さいとクリップの嵌合が甘く脱落する場合が有ります。
     又、稀にクリップの溝寸法の不具合による脱落も有ります。

     貼付ウェイトの場合は、意匠面のデザイン性により、アルミホイールでは貼付ウェイトが主流になっています。
     貼付ウェイトは、予めウェイトに両面テープが貼られており、剥離紙を取って貼付けます。
     貼付場所は、意匠面側はドロップの裏側辺り、非意匠面側はフランジの立上りの裏側辺りです。

      *バランス修正としては、ハブ穴中心からウェイトの貼付け位置までの距離が短くなる為、
       打込みウェイトによるバランス修正よりもウェイト質量が若干重くなります。
       貼付質量が75g以下や100g以下と言う仕様も有りますが、ユーザーの方から異常品とクレームになる事も有ります。
      
      *新車に装着されるアルミホイールでは、貼付ウェイトが平行に貼付けられる様に、段差や溝が施された構造になっています。
       これにより手作業でもウェイトが平行に貼付ける事ができます。
       極稀に、新人作業員や設備トラブル対応時に斜めにウェイトを貼付てクレームになる事も有ります。

     一般的なアルミホイールは低・中圧鋳造で作られ機械加工後、塗装等の防錆処理を行いますが、
     ここで問題になるのがホイール表面の「濡れ性」です。
     一般の方は聞き馴れない言葉かもしれませんが ???

      *昔は駅前辺りの映画館で良く見かけた言葉です。懐かしい・・・
       新人の頃、アホな私目は「ぬれしょう?」と言って事務所のお姉様に「昼間っから何に考えてんの?」とか、
       課長からは「もっと勉強せい!」と御叱りを受けた覚えがあります。トホホ・・・
       漢字で書くと何か想像してしまうので、平仮名にします。

     ぬれ性 ( wettability ) とは,主として固体に対する液体の親和性(付着しやすさ)を表すもので、
ここでの固体とはアルミホイール(塗装面)で、液体とは両面テープの粘着成分を表します。

     ぬれ性が良い=接着に対する馴染みが良い(試薬のはじきが悪い)=接着性が良い
     ぬれ性が悪い=接着に対する馴染みが悪い(試薬のはじきが良い)=接着性が悪い
     と言う事になります。

     簡易的に判断するには、ホイールの貼付表面にぬれ性試薬を滴下し、*2秒後液膜が破れるか否かで判定する測定方法です。

      *2秒後とは、プラスチック-フィルム及びシート-ぬれ張力試験法(JIS K6768)に準拠した試薬の場合です。
       通常は試薬の仕様になります。

     手順はホイールの貼付表面に試薬を数滴滴下後、綿棒等で素早く塗り広げ液膜が破れるか否かで判定します。
     ぬれ試薬はぬれ張力が異なる物を用意して、ぬれ張力の低い物から高い物へ変えて繰り返し試験を行います。(逆パターンも有ります)
     ホイールの貼付表面を正確に2秒間でぬらす事ができる試薬を選ぶと、ぬれ張力が判定できると言う事です。

      *濡れ試薬の張力には、(18)・(20)・22.6・25.4・27.3・30・31・・・64・65・67・70・73mN/mが有ります。
       (18)・(20)はJIS K6768に非準拠     
     
     ぬれ性が良い=接着性が良い、とは、
     固体表面に対する「ぬれ」を考えると,液体の表面張力(表面自由エネルギー)が大きいほど、
     液体が広がるよりも凝集して丸まろうとする傾向が強く,固体表面に対して「ぬれ」難いと言う事になります。
     接着性で考えれば、液体が持つ表面張力(表面自由エネルギー)が小さい方が接着に有利になります。
     固体表面では、表面張力(表面自由エネルギー)が大きいほど「ぬれ」易く、ホコリや微粒子等が付着し易くなります。
     
      個体の表面張力(表面自由エネルギー) > 液体の表面張力(表面自由エネルギー)

*表面張力(mN/m)と表面自由エネルギー(J/m2)は,物理量として等価な次元をもつ量で有って、
同じ単位系で表わすと数値は等しくなり、水の場合では温度が20℃で72.8mN/m=72.8mJ/m2となります。
但し、力としての表面張力はベクトル量で有り、向きを考慮する必要がありますが、
      エネルギーとしての表面自由エネルギーはスカラー量で有り、向きという概念はありません。

次にアルミ表面、塗料、両面テープの粘着剤の表面張力を見てみましょう。    
     下記の数値は、大学や企業の研究論文等から抜粋したもので、
     実際のアルミホイール、塗料やテープの粘着剤に使用されている材料の数値では有りません。

<参考値>
     アルミ表面(酸化被膜面)=40~68(mN/m)  
メタリック塗料=25~30(mN/m)               
両面テープ粘着剤=10(mN/m)

アルミ表面(酸化被膜面) > 塗料 > 両面テープ粘着剤
     
上記の数値を見る限りでは、問題無く貼付けが出来る様に思えますが、
     何故、納車までの間に脱落する場合が有るのでしょか?

     一つの要因としては、ホイール表面に付着したホコリや油脂が表面張力を下げているからです。
     組付メーカーでは、アルコールや界面活性剤等で貼付け表面を拭く事で、
     一時的に表面張力を下げホコリや油脂を取り除き、ぬれ性を向上させてウェイトを貼付ています。     

     もう一つの要因として形状的な問題も有ります。
     貼付面はリム内径となる為、平板形状のウェイトを貼付けると両端が接着しウェイト中央部は隙間となります。
     どの程度の隙間になるのか小径ホイールで計算をしてみましょう!

     <15inサイズのアルミホイールの場合>
     リム基準寸法 D = 15 x 25.4mm = 381mm
     リムの肉厚 t = 5.5mm *仮定寸法
     リム内径 d = 370mm *ウェイト貼付面内径

     <貼付ウェイトサイズ>
     鉄製: 5gウェイト W:20mm x L:11.5mm x t:3.2mm
     鉄製:10gウェイト W:19mm x L:23mm x t:3.3mm

隙間寸法 : h
     ウェイト長 : L/2 = b ( 対辺 ) → 5g = 5.75mm 10g = 11.5mm
     リム半径  : d/2 = r ( 斜辺 ) → 185mm
     斜辺rに接する角度θからbの端点まで伸ばした線aを底辺とする直角三角形の図です。
          

     計算方法は色々有ると思いますが、ここでは中学3年で習った三平方の定理(ピタゴラスの定理)を
     使って計算してみます。

     式は、a^2 + b^2 = r^2 で、底辺aを求めます。
     a^2 = r^2 - b^2
     a = √ ( r^2 - b^2 )
     h = r - a となります。

     <5gウェイトの隙間の場合>
     h = 185 -√ ( 185^2 - 5.75^2 ) = 0.089 ≒ 0.09 mm

     <10gウェイトの隙間の場合>
     h = 185 -√ ( 185^2 - 11.5^2 ) = 0.358 ≒ 0.36 mm

     上記の計算結果を見ると、ウェイト長さが短い5gの方が隙間が狭く貼付けには有利だと判ります。
     貼付ウェイトの隙間は結局、粘着テープの厚みによる弾性に頼るしか有りません。

     例えば、サンゴバン製V2800シリーズでは、1.6mmの粘着テープ厚が有りますから充分対応出来ると思います。
     又、以前は指で押したり、錘入りプラスチックハンマーで叩いたりしていましたが、
     最近は、エアシリンダや電動式の圧着治具で、加圧力を管理していますから脱落も殆ど有りません。

     自分はユニフォーミティ測定機のセンサ感度を試験していた時に、
     何も考えずにウェイトを貼付ていた為に、100km/hを超えた辺りでウェイトが剥がれ、
     目の前を飛んで行ったりしていました。
     急遽、廃材置き場から安全柵を持って来て、薄板を溶接し試験機の周りを囲んだりしていました。
     何事も良く調べて行う事が安全第一だと知らされました。

今回は補足が長くなりましたので、本題はお休みとさせて戴きます。

あー!  懐かしや駅前映画館、風祭ゆき、畑中葉子、前から後ろから・・・
何の話や ・・・

*お話しの内容で間違い等ございましたらご教授願います。

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技術のお話し タイヤ編(4)

2020-08-01 03:59:02 | 暮らし
jms安城様
コメント頂き有難うございます。
愛知県安城市は車の城下町、乗り心地に関心の高いユーザー様が多いかと思います。
私如きの内容で恐縮しきりですが、少しでもお役に立つ内容であれば嬉しく思います。
昼食を取りながらでも一読してやって下さい。
多分、昼食が格段に美味しくなる?
いや、ならないよなー! ・・・

嬉しい話しの次は、残念なお話し?
先日、世界No1タイヤメーカーの研究所長などを歴任した方が、
かの国のNタイヤに副社長ポストを与えられ迎え入れられたそうな!
技術発展のために、日本人の頭脳が社会に貢献できるならば喜ばしいと思いますが、
その頭脳を日本の大学・大学院や研究所で発揮して、
日本人の次世代研究者・技術者を育てて欲しかったと思います。
人それぞれの事情もあるのは承知していますが、
日本の研究環境は右肩下がりで魅力が無かったのかもしれませんね!・・・
残念です。

自己の回想でもお話ししましたが、日本の企業は景気が悪化すると研究開発費まで縮小するが、
かの国の企業は、これと決めた物に的を絞り人材とお金をつぎ込むのが早いと思います。
日本の企業は計画から承認まで時間を要し、見切り発車するとジェット機開発の様に失敗する。
技術調査に外部人材と予算をつぎ込まない憑けが出てしまった様に思えます。
ボーイングの忠告を聞き入れていれば状況は変わっていたかも知れません。
但し、飛んでいたとしても今回の新型コロナで減産に追い込まれたと思いますが、
どちらが良かったのでしょうか?

政府主導の次世代通信開発会議、その後どうしたのでしょう?
何の音沙汰も無い様に思えますが?
Samsungは既に次世代通信技術の骨格をつい最近発表したと思うのですが?
やはり決断するスピードが速い、かの国の方が魅了なのかな・・・
残念です。

元ポンコツ技術者の勝手な思いの呟きでした。
ごめんなさい!

今回は、ユニフォーミティ測定機の機構部に付いてお話ししたいと思いますが、
その前に、タイヤ編(3)でステアリング振動に付いて少しお話ししましたが、
もう少し説明させて頂きます。

タイヤ・ホイールが起因しステアリング系に影響を及ぼす振動周波数は5~30Hz程で、
40Hz以上はタイヤノイズによるパネル等に影響する振動が多かったと記憶しています。
 *設備設計が主でしたので、設備開発のため文献等を調査した数値です。

振動周波数の単位はHz(ヘルツ)で、1秒間当たりの振動回数を表します。
 *高校の物理で習った記憶がありますね!  あれ?

例えは振動周波数が30Hzの場合、速度に換算すると何km/hになるか考えてみましょう。
タイヤ編(3)でお話しした①の式を思い出して下さい。

V (m/min) = π x D (mm) x N (r/min) / 1000 ・・・①

但し、速度 = V (m/min)
円周率 = π 円の周長 / 円直径 = 3.14159
円直径 = D (mm)
回転数 = N (r/min)
分母の1000は円直径(mm)の単位をメートル(m)に換算する

ここで、大風呂敷を敷いた説明をしちゃいます。
タイヤ・ホイールが1回転する度に加振力が1回作用し振動したと考えれば、
振動周波数 f (Hz) = 回転周波数 fo (Hz)と考える事ができます。

ならば、タイヤ・ホイールが1回転した時に回転周波数を1Hzとして、
回転周波数30Hzを回転速度N (r/min)に換算してみましょう。

fo (Hz) = N (r/min) / 60 より
 *1/60は分を秒に換算

N (r/min) = 60 x fo (Hz)
= 60 x 30 (Hz) =1800・・・②

タイヤ編(2)で使用したタイヤサイズ215/45R17の動的負荷半径304(mm)を使用します。

②を①に代入します。
V (m/min) = 2π x 304 (mm) x 1800 (r/min) /1000
= 3438.159 (m/min)

単位を(m/min)から(km/h)に換算します。
V (km/h) = 3438.159 (m/min) x 60/1000
    = 206.289 (km/h)
となります。

でもちょっと変ですね!
高速道路でも200km/h超えなんて一般車では容易に出せません 。

 *俺は出すよと言う方、死に急ぐ必要はありません。
  ご自身が神から与えられた寿命を全うして下さい。

  私自身もお客様との打ち合わせの帰りに、営業マンと二人で高速道路の本線を社有車で走行中、
  1台の商用車が本線に合流しようとする様子を30~40m後方から見ていました。
  合流ポイントに差し掛かる手前で、商用車のドライバーが携帯電話を操作し始めた瞬間、
  商用車は本線側に大きく曲がり始め、登り口の側壁に衝突し運転席側前部が大破、
  タイヤ・ホイールがバウンドしながら社有車へ向かって来ました。
  この状況だと助手席前部からドア付近に衝突すると思い、
  営業マンに大声で「ブレーキ」と叫ぶと同時に、右手で営業マンの左腕付近を叩きました。
  状況が判らない営業マンは驚き軽くブレーキを踏んでくれました。
  そのおかげで社有車の1m手前をバウンドしながら通過して本線の側壁に衝突しました。
  幸い社有車との接触もなく通過することができ安堵した経験があります。
  安全運転が如何に大切か身を以って知る事ができました。
  ほんの数秒の出来事でしたが、タイヤ・ホイールが向かって来た時の動きはスローモーション映像の様に見えました。
  怖かったー!
 すみません!  話しが横道に逸れてしまいました。 
 
では何故一般ユーザーから、タイヤ・ホイールが原因でステアリング系の振動が問題となるのでしょうか?
上記の計算により、回転周波数30Hzを速度に換算すると約206km/hと言う結果になりました。
タイヤ編(2)で説明した回転1次成分が振動原因とすると、一般ユーザーが出す速度にしては難しい様に思えます。

ならば、タイヤ・ホイールが1回転した時に2回振動したらどうでしょうか?
速度は半分の約103km/hと考える事ができます。
つまり、速度103km/h(回転周波数は15Hz)で30Hzの振動が発生したと言う事になります。
この速度なら、一般ユーザーでもステアリング系の振動が身近に発生すると考えられます。

では、この2回振動する原因は何でしょうか?
このタイヤ・ホイールは、タイヤ編(2)で説明したユニフォーミティによる回転2次成分が影響していると考えられます。
 *タイヤから見た回転2次成分の主な要因は、タイヤの骨格であるカーカス層を固定するベルトなどの繋ぎ合せ部分を、
  バランスの関係で2か所で重ね合わせた場合などが挙げられます。

また、車速によりアンバランス(回転1次数成分)と、ユニフォーミティの回転1次成分による振動とが合致すると、
更にステアリング振動が増加します。
アンバランスは質量的要素でありウェイト(錘)で修正出来ますが、ユニフォーミティは剛性による加振力で、
例えばRFV1次成分を抑えるためウェイトによる修正を行うと、位相にも寄りますがTFV1次成分やアンバランス質量が悪くなり、
基本的にウェイトによる修正は出来ません。
一般のユーザーの方が、質量アンバランスによる振動以外にも、ユニフォーミティによる加振に伴う振動の存在を知って頂ければ、
このブログも少しは社会に貢献できたかなと思います・・・???

今回は、ユニフォーミティ測定機の機構部に付いてです。
まず、ユニフォーミティ測定機を製造しているメーカーは意外に多く、国内大手では神戸製鋼所、国際計測器、
三菱重工機械システム、大和製衡、A&D等、他に計測システムのみを製造する企業も多く見受けられます。
また、米国MTS Systems Corporation がフラットベルト式タイヤ試験機として有名なところです。
機能としてはユニフォーミティ測定以外に、モーメント測定等の機能を有したタイヤ試験機として製造・販売されています。
これらは主に小径ドラムを持つ設備はインライン用、大径ドラムやフラットベルト式設備は研究開発用に多く使用されています。
カーショップでは、米国ハンター社製のバランサーにロードフォースが測定できる機能を有した小型設備を導入しています。
この設備は、タイヤ・ホイール組付メーカーでもインライン設備のトラブル時の代用機として導入されています。

基本的な構造は、タイヤ・ホイールを取り付けるスピンドル(回転軸)と、タイヤを加圧するドラムを有します。
力を測定するセンサーは剛性に優れたハードタイプが主流で、スピンドル側、又はドラム側に取り付けます。
ドラムはタイヤを加圧する為に、駆動にはサーボモータとボールねじによるスライド機能を有します。
これにより精度の高い加圧制御を行います。

タイヤ・ホイールの回転は、スピンドル側、又はドラム側に駆動モータを配置しますが、
センサーは出来る限り駆動モータからのノイズ対策の為に、非駆動側に取り付けます。
駆動モータは、三相モータにインバーターを組み合わせた制御が主流です。

タイヤ・ホイールをスピンドルに固定する為に、インライン設備ではクランプ機構をスピンドルに設けます。
クランプ機構は三つ爪式やコレット式が主流です。
又、ドラムで加圧した時にタイヤ・ホイールが浮き上がらない様に、ホイールのハブ穴付近を上部からクランプします。
この場合、スピンドルと上部クランプ軸との芯出しは重要になります。
タイヤ加圧により芯が狂うと測定値に誤差が生じます。
特に高速ユニフォーミティの場合は、上部クランプヘッドをスピンドル側に引き込み、
上部クランプ軸から切り離す機構を設けます。
ホイールハブ穴の面取りを利用して、スピンドルにクランプヘッドを引き込むクランプ機構もあります。
試験用設備では、ホイールの取付穴を利用して専用ナットで締め付けるタイプが主流です。

今回のお話はここまでとします。
次回は又、補足からのお話しの様な気がします。




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