いくやの斬鉄日記

オープンソースからハイスクールフリート、The Beatlesまで何でもありの自称エンターテインメント日記。

ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗 (講談社現代新書)

2013年06月25日 23時26分36秒 | 日記
ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗 (講談社現代新書)
クリエーター情報なし
講談社


この本の存在を知ってすぐに読みたくて仕方がなかったのですが、昨日入手して今日読んでしまいました。
著者は円谷英二氏の孫で、円谷ブロダクション5代目社長です。
祖父との思い出から、円谷ブロダクションの社長になってその座を追われ(そして同族経営が終了し)、中国ビジネスに進出するも無念の撤退、というところで終わっています。
円谷ブロダクションの不幸は初代社長の英二氏、2台目社長にして著者の父である一氏が早くに亡くなってしまったことですが、それを嘆いてもしょうがないので、著者の立場から円谷プロダクションをどうすべきだったか考えてみましたが、少なくとも私にはその答えはありません、というぐらい波瀾万丈というか、踏んだり蹴ったりの連続です。

私は特撮はさっぱりわかりませんけど、ガンダムの幸運なところは富野監督が初代、Z、ZZ、逆シャア、F91で12年間(でいいのかな)監督を務め、ビジョンやコンセプトが明解だったことです。確か最初の富野監督以外の手による「正史」は『0080』だったと記憶していますが、売れ行きは知りませんけど名作でした。その後も富野氏は『V』とか『ターンエー』とかで監督をしていますが、商業的にはいまいちだったように思います。でも、その分『W』や『SEED』などで(作品の質はともかく少なくとも商業的には)成功し、未だに人気が続いているシリーズになっていますが、ウルトラマンはさまざまな事情によりそれができなかったのです。

円谷ブロダクション退社後の中国ビジネスの話は、なんかいろんなところで同じような話を聞いたことがあって、とてもアレですね……。

いわゆる「中の人」の本なので、客観性に欠けるところは当然あるでしょうし、事実関係が間違っているところもあるようです。
それでも、中小企業と著作権ビジネスの恐ろしさが垣間見える、とてもいい本だと思いました。

最近よく思うのですが、確かに企業は継続するのが前提です。ただ、社会的に役割が終わった会社がなくなるのはまた当然だと思うのです。
円谷ブロダクションという会社は現在でも継続していますし、円谷の人はいなくなってしまいましたけど、それでも「ウルトラマン」という作品が成功し、輝き続けることができるのであればそれはそれでいいと思うのです。
ただ、残念ながら私は輝き続けているか判断することはできません。ほんと特撮とか見ないので……。

少なくとも言えるのは、ウルトラマンは生きていますが特撮は終わりかけています。庵野監督「どうか、助けて下さい」 特撮の歴史と現状をまとめた「日本特撮に関する調査報告書」
このあたり円谷プロダクションでどうにかしていれば、もっと違う未来を迎えることができたかも知れません(が、それは英二氏の段階で難しそうだったということが本書を読めばわかるのがもどかしいところです。でも、炭鉱とか技術の継承のために存続するところもあるのですよ)。
ちなみに本書には特撮の手法も少しだけ書かれていて、とても興味深かったです。溶ける戦車はチョコレートで作っていただと……。
コメント
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