迷走! 有働由美子の「news zero」
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「news zero」 有働由美子がメインキャスターに 村尾信尚氏は降板
2018年10月1日、日本テレビの夜のニュース番組、「news zero」(毎週月~木曜23:00~、金曜23:30~)は、元NHKアナウンサーの有働由美子をメインキャスターに迎えて、キャスター陣も一新して、番組をリニューアルをした。
これまで、メインキャスターを務めていた村尾信尚氏は降板し、ニュース番組では異色のキャスターを務めた女優、桐谷美玲や芥川賞作家の又吉直樹も降板した。
筆者は、日本テレビのメインニュースである「news zero」は、テレビ朝日の「報道ステーション」、TBSの「ニュース23」、NHKの「ニュース7」と並んで、毎日のように見ていた。
村尾信尚キャスターは、安保法制や森友加計問題、財務省セクハラ問題などの政治・社会問題で、批判精神を持ってコメントをしていたことを大いに評価したい。批判精神を持って現代社会と向き合う姿勢を失ったニュース番組は存在意義がない。
また、桐谷美玲や又吉直樹が取材に出てリポートする積極的な演出も興味深かった。
とりわけ桐谷美玲のリポートは、女優でありながら大健闘していると大いに評価していていたのに降板は残念である。
「news zero」 初週平均視聴率8.7%、前週比1.3ポイント上昇
10月1日放送の初回の視聴率は10.0%で2ケタ発進となったが、タモリと有働の対談を放送した翌日はそれを上回る10.4%を記録。以降も、7.9%、8.4%、6.6%と好調に推移。
村尾信尚キャスターが担当していた9月第4週(24~28日)は、9月28日が24時5分開始とレギュラーより時間が大幅に繰り下がっての放送となったこともあり、週平均は7.4%だった。
その結果、「news zero」の初週(10月1日~5日)の平均視聴率は8.7%となり、前週から1.3ポイント上昇した。
視聴率はさまざな条件を加味して比較する必要があるので、「1.3ポイント」の差は、「前週並み」か「微増」程度と考えたほうが良いだろう。とても「出足快調」とは言えない。
テレビ関係者の間からは、視聴者の好感度が高いNHKの人気女性アナウンサーをキャスターに起用したのだから、視聴率は「10%」の大台に乗ってもよかったのではという声も聞こえる。
しかしその後の視聴率も低迷している。
第二週に入り、10月8日(祭日)は8.4%、9日が8.2%、10日6.3%、11日5.9%、12日4.6%で、番組リニューアルから2週間の平均視聴率は7.66%、リニューアル前の最終週の視聴率7.44%をほぼ同じで、「10%」の大台に乗せるという目論見は失敗している。
有働由美子キャスター 「あさいち」の快進撃で大きな業績
有働由美子キャスターは、神戸女学院大学を卒業し、NHKにアナウンサーとして入局、初任地は大坂放送局、近畿ブロックのニュース・番組を担当した。
東京のNHK放送センターに移動し、最初に担当したニュースが『NHKニュースおはよう日本』の女性キャスター、若手女性アナウンサーの登竜門である。その後はスポーツキャスターとして活躍し、『サタデースポーツ』、『サンデースポーツ』のスポーツ・ニュースのキャスターや、オリンピックの中継を担当した。
2001年から2003年までは、『NHK紅白歌合戦』で紅組司会を担当し、アナウンサーとして幅の広さを示し、親しみ安いキャラクターで視聴者からの評価も高かった。2006年4月からは、『スタジオパークからこんにちは』の司会を務め、情報番組の司会の腕を磨いた。
2007年6月、アナウンサー職のままで、初めてアメリカ総局(ニューヨーク)へ特派員になって赴任。
NHK放送センターに戻って、『あさイチ』のキャスターとなり、2010年3月から2018年3月まで8年間の長期に渡って番組を支えた。2012年 - 2015年の『NHK紅白歌合戦』に再び登場し、総合司会を務めた。。
2018年3月31日、27年間在職したNHKを退職した。「一生、現場にいたい」という思いが強かったとされている。
有働由美子キャスターのNHK時代の最大の業績は「あさイチ」のキャスターとして、番組を支え、朝の時間帯で、これまで圧倒的に強かった民放の「ワードショー」を抑えてトップクラスに躍り出ることに成功したことである。
これまで、NHKは「おはよう日本」から「朝の連続テレビ小説」までは、民放に常時圧勝してきたが、「連続テレビ小説」が終わると、民放の「ワードショー」に視聴者を奪われてきた。
「あさイチ」では、新しいキャスター、有働由美子を迎え、番組を一新し、40代女性から50台の女性にターゲットを据え、この世代の女性に関心のある料理や家事などの生活情報や、この世代の女性の悩みや不安、不満に答えるテーマを積極的に取り上げた。
これまでのNHKではあまり取り上げない「セックスレス」や「不妊」、「性暴力」などを特集した。
また出産後に夫婦仲が冷え込む「産後クライシス」や「発達障害特集」は大きな反響を呼び、『「あさイチ」に「有働あり」』という評価が高まった。
「あさイチ」は、午前8時15分からの第1部で、視聴率10%前後(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で同時間帯の民放を抑えて首位に立つ。
番組対する視聴者の評価を高めた牽引車は間違いなく、有働由美子キャスターの他には追随できない稀なキャラクターだ。
40代女性に寄り添った目線をしっかり打ち出してテーマを扱う姿勢が視聴者の共感を集めた。有働由美子キャスターのいやみのない飾らない率直な人柄も極めて重要だ。
そして有働由美子キャスターを支える共演者にも恵まれた。
「イノッチ」と呼ばれ人気の高い「V6」のメンバー、井ノ原快彦の存在は極めて大きい。有働由美子キャスターに増して、視聴者との共感力が高く、視聴者の思いをしっかり受け止めていた。
直前に放送している「連続テレビ小説」への感想を言い合う「朝ドラ受け」も、キャスター陣の発案で、視聴者の共感を得たという。
「あさイチ」のキャスターを8年間担当したことで、有働由美子キャスターも円熟味を増して、ますます大きく成長したのは間違いない。
キャスターが番組を育て、番組がキャスターを育てる、ポジティブなスライラルが展開した格好の例である。
有働由美子はニュースキャスターの顔にはなれない
情報番組の「あさイチ」のキャスターとして大成功したからといって、ニュース番組のキャスターとして成功するかどうかはまったく別次元である。
ニュース番組は、政治、経済、社会、国際、科学、文化、あらゆる分野のニュースを処理しなければならない。
とりわけ政治、経済、国際ニュースは、キャスターは見識と知見が問われる。
安保法制、北朝鮮問題、森友加計問題、普天間基地移転問題、トランプ政権、とにかく展開が早く、構図は複雑だ。ミスリードはあってはならない。
「news zero」のライバル、テレビ朝日の「報道ステーション」では、元共同通信編集局長の後藤憲謙次氏とテレビ朝日の富川悠太アナウンサーと徳永有美アナウンサーがキャスターを務め、TBSの「ニュース23」では、元朝日新聞の特別編集員の星 浩氏とフリーアナウンサーの雨宮塔子氏がキャスターを務める。
後藤憲謙次氏も星 浩氏もジャーナリストとしての見識と知見は申し分ない。
安倍政権に対して、「ものを言う」姿勢を堅持している。
筆者は、批判精神にないニュース番組は存在意義がないと信じている。単に情報を右から左に伝えるメッセンジャーではない。
「news zero」には、政治、経済、社会、国際問題の今に向き合う姿勢がまったく感じられない。
ジャーナリスト、取材者として経験が少ない有働由美子キャスターにそれを求めるのは酷であろう。
「news zero」」には、しっかりした見識と知見を示すことができる脇を固めるニュース・キャスターが不在だ。ニュース番組は、安保法制、北朝鮮問題、森友加計問題、普天間基地移転問題、トランプ政権にしっかり対峙して、初めてニュース番組となる。
生活情報や「セックスレス」や「不妊」、「性暴力」といったテーマを取り上げて視聴者の共感を得ればよい情報番組とは次元が違う。
もう一人のキャスター、櫻井翔がニュースキャスターの役割を担うのも不可能だろう。
「ワイドショー化」、「女性週刊誌化」した「news zero」はやがて視聴者から見放されるだろう。
もっとも民放のワイドショーは、以前は芸能情報が中心だったが、最近は小池都政問題や森友加計問題、大蔵省セクハラ問題、日大アメフト問題など政治・社会問題に積極的に取り組んでいて、「第二のニュース情報番組」に成長している。
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「news zero」 日本テレビ/Youtube
検証 第一週の「news zero」は?
▼ 10月1日(月)
「news zero」の番組の冒頭で、番組タイトルはやめて、有働由美子キャスターのワンショットのコメントでいきなり始まる。「news zero」の番組の「顔」として有働由美子キャスターを視聴者に印象付けようとする演出である。
櫻井翔キャスターと日本テレビ解説委員で国際部デスクの小野高弘氏。小野高弘氏は「NEWS ZERO」のレギラー解説者だ。
メイン・ニュースは「ノーベル生理・医学賞を受賞した本庶佑氏」、次は「台風24号の影響で入場規制で交通に混乱」のニュース、続いてスポーツ・ニュース。そしてようやくニュースらしいニュースが登場、「内閣改造人事固まる」で国会記者会館から日本テレビ政治部の富田徹記者がリポートした。
しかし、焦点の沖縄県知事選については、一言も触れていない。ニュース・バリューの判断がまったく欠落している。初回から大失態だろう。
ちなみに、テレビ朝日「報道ステーション」では、「ノーべル賞本庶佑氏受賞」の他に、「“日本一周”を装い逃避行」、「与党総力戦に誤算 沖縄県知事選」、TBS「ニュース23」では、「玉城氏勝利 政権に動揺広がる」、「内閣改造予想」、「48日目 ついに逮捕 “逃走男”日本縦断中に記念撮影」、「貴乃花部屋消滅」などを取り上げている。
ニュース番組は現代社会としっかり向き合わなければならない。「news zero」にはそれが欠落している。
▼ 10月2日(火)
有働由美子キャスターは、冒頭の挨拶では、「そもそも内閣改造、興味ありますか」と視聴者に問いかける。まるで、TwitterなどのSNSの「のり」で、ニュースキャスターならもっと伝えるべきニュース情報があると思えるが?
この日のゲスト・コメンテーターは筑波大学准教授で若手の科学者の落合陽一氏と日本テレビ解説委員の小野高弘氏。
落合陽一氏は「草履履き」でスタジオに登場したが、筆者は、「草履」だろうが「サンダル」だろうが、「下駄」だろうが、靴を履いていたほうがマナーとして適切だとは思うが、余り本質的な問題ではない。要はニュース報道番組のコメンテーターとして内容のある納得できるコメントをしてもらえば良いと思っているが、それができたか、いささか疑問が残る。
メインニュースは、「静岡で続く大停電」、続いて「内閣改造」、国会記者会館から富田徹記者がリポートした。
ここで、有働由美子キャスターの的外れな発言が早くも飛び出す。
「そもそも内閣改造とはなんでするんですか?」、これにはさすがに富田徹記者もため息が漏れた。ニュースは短時間に情報をきちんと分析をして伝える必要がある。余計な時間を使いたくない。
肝心の「内閣改造」の分析はほとんどなく、スタジオのコメンテーターも情報性のあるコメントを言えない。
挙句の果ては、「大河を観ると武将人気が出るように、現役政治家のドラマを作るとか」という視聴者のお便りを紹介し、スタジオで「雑談」する。そんな時間があるなら「内閣改造」に関する本筋の情報を伝えるべきだろう。早くも、「news zero」の弱点をさらけ出した。
そして「内閣改造」は早々に切り上げて、「特別対談 名司会者の頭の中は? タモリ×有働由美子」というスペシャル企画を放送する。
この企画の冒頭で、有働由美子キャスターは、「3月からフリーとなって10月からZEROにお邪魔しているわけで、自分にとっては大変大きな人生の転機だったですが、この機会にどうしてもお話を聞いておきたかった人がいます」とした。
この日のニュースの重要なテーマは「内閣改造」、有働由美子キャスターの「人生の転機」はこの日のテーマではないと思うが、有働由美子キャスターはどう考えていますか?
「タモリ×有働由美子」のような企画は、ニュース担当者は「ヒマネタ」と呼んでいることを有働由美子キャスターも知っていると思うが如何ですか?
ちなみに「ニュース23」では「森友文書改ざん問題 自殺職員の父が語る無念」の特集、「報道ステーション」は「『日本縦断中』の逃走を支えたものは?」を放送した。
▼ 10月3日(水)
この日のゲストは、義足モデルとして世界で活躍してるGIMOKO氏、ニュース番組としては異色のゲスト起用で、大いに評価したい。
トップ・ニュースは、「また台風が列島に接近 “計画運休”平日実施も」、続いて「ドウなの? 計画運休どうすればよくなる」についてスタジオでGIMOKO氏、れギラー・コメンテーターの小野高弘氏と、視聴者の声も含めて議論した。しかし、議論にに深まりはなく、情報性の薄い内容となった。議論するなら、専門性と知見を持った出演者を起用して欲しい。GIMOKO氏に“計画運休”を議論させるのは酷なような気もするが? 視聴者の共感を掲げるのはいいが、なにやら庶民の「井戸端会議」の感が否めない。
続いて「貴ノ岩側 日馬富士に3000万円請求」や「新宿歌舞伎町 女性飛び降り巻き添え」、そして「zero culture ハロウィーン 今年は不気味グルメに注目」が登場する。ほとんど、「ワイドショー」で、とてもニュース番組とは筆者は思えない。
NHK 「ニュース7」は、「“計画運休”平日実施」に続いて、「“全員野球内閣”本格始動」や「インドネシア地震津波」、テレビ朝日「報道ステーション」は、「中国人気女優脱税」や「トランプ大統領脱税疑惑」、TBSは「インドネシア大津波の謎」を取り上げていた。
「「news zero」のニュースバリューに対する見識を疑う。
▼ 10月4日(木)
今日は、日本テレビ金曜ロードSHOWプロデューサーの谷生俊美氏、トランジェンダーを公表し、日本テレビには男性として入社し現在は女性として活躍している個性的なゲストを起用した。
谷生俊美氏は記者としてカイロ支局長も経験し、LGBT映画に向き合っているという。
トップ・ニュースは「台風15号 沖縄に接近中」、続いての特集は「自転車で逃走48日間 カメラに顔を隠す 大胆な要求も」である。
しかし、この「自転車で逃走48日間」のニュースは、「報道ステーション」でも「ニュース23」でも10月1日にすでに同様の内容を伝えている。二日遅れのニュースに鮮度はまったくない。
谷生俊美氏は「容疑者は性犯罪の容疑者であることは本当に“怖い”ことだ」と指摘したが、肝心の事件の問題点の掘り下げは一切なく、印象論で終わってしまった。
次は「元貴乃花親方 今後を語る」、「がんの免疫療法で注意 トラブル多発」、有働由美子キャスターは、癌で亡くなった母親の免疫療法についての体験を元に視聴者に注意を促した。この辺は、「あさイチ」で養った感性が発揮できたと感じた。
「がんの免疫療法」の企画は、この週で唯一の「news zero」の独自企画だ。こうしたファクトを足で取材する地道な努力が「news zero」に課せられる。
そして、ゲストコメンテーター用の「都がLGBT差別禁止条例案」のニュースを取り上げた。「この条例をきっかけにして市民のこの問題に対する意識が広まり、この問題を考えていくようになって欲しい」と発言した。
レギラー解説者の小野高弘キャスターは、「これは2年後の東京五輪・パラリンピックを見据えたもので、オリンピック憲章ではいかなる差別もあってはならないとされ、その中には性別、性的志向も含まれている」と指摘した。
これに対して、有働由美子キャスターもコメントしなければならないと思うが、「視聴者の皆さん、いろんなお考えがると思うのでお便りをお寄せください」とし、何もキャスターとしてコメントせずこの話題を終えてしまった。
有働由美子キャスターは、「ジャーナリスト」を標ぼうするなら、ニュース番組のキャスターとしての識見と知見を示すべきだろう。
「zero culture なぜ?タイ映画が異例のヒット!」、このコーナーは熱心に力を入れている。
これに対して、NHK 「ニュース7」は、「会計検査院 五輪関連経費8000億円支出 五輪開催経費総額は3兆円に」や「トヨタ。ソフトバンク提携」、TBS「ニュース23」は「加計学園理事長会見へ」を取り上げた。
「五輪開催経費3兆円」はこの日の最大のニュースだろう。
▼ 10月5日(金)
有働由美子キャスターは、「zeroは北海道を西日本豪雨から3か月の被災地を全力を上げて支えます」と冒頭で語った。
そしてこの日のゲストは、北海道出身の人気俳優、大泉洋氏を登場させた。
「私たちができること 地震1か月 北海道応援」というタイトルを掲げ、初めて有働由美子キャスターが、現地取材を行った。
リポートの冒頭は、札幌の繁華街、夜のネオンが輝くすすき野、「このネオンがないと これがすすきのだなぁ」というコメントで始まる。焼き鳥屋に入って地震の影響を店長から聞く。
そして被害の大きかった厚真町を取材し、収穫直前の稲の刈り取りもできず、未だに避難生活をしている住民を取材、「まずは厚真のコメを食べて欲しい」という農家の声に、遠く離れた場所で、「今、私たちができることは」として「① あつまの米を食べること」とした。あまりにもシンプルすぎて唖然である。わざわざ取材にいくなら、厚真町の災害復興の問題点をしっかり取材して検証して欲しい。
続いて、被災住宅の片づけを行っているボランティアを取材、「② 土日を利用してボランティアへ」とした。その発想に納得がいかない。
酪農農家の影響を取材し、停電で搾乳ができず、乳房炎にかかった牛がかなりの頭数になり、牛乳の出荷量は大幅に減っているという窮状を伝えた。
そして、「③ 乳製品を飲む・食べる」。これで視聴者の共感が得られると思っているのだろうか。
続いて、「さっぽろオータムフェスト2018」を取材し、北海道の食のフェスティバルを紹介した。会場には、北海道の海産物や厚真町のジンギスカンなど各地の名物グルメが集まる。
礼文町のうにの踊り焼きに舌鼓を打って、「これまた濃厚な…」、いつのまにかグルメ・リポート番組になっていた。
リポートのメッセージは「食べて応援」、余りにもお粗末はメッセージだ。地震の影響で落ち込んだ北海道の再興策にいかに取り組むか、国や北海道は何をすべきなのかを伝えようとするジャーナリストの視点が欠落している。
続いて、西日本豪雨から3か月の被災地、広島・水尻地区を取材した。被災者の一家を訪れ、未だに物置を改装した手作りの家に住んでいる状況を伝えた。「今、私たちができることは」として「① 被災地の現状を知る」とした。その後、訪れた広島・竹原市の藤井酒造では、浸水被害を受けた築250年の蔵で、ようやく仕込みが始まる。「今、私たちができることは」として「② 買い物・観光」とした。
いささか、「今更」という感が強い企画で、新鮮味はまったくないし、共感も最早ない。
ちなみにNHK「ニュース7」は、「大停電で171人救急搬送 死者も」というスクープし、「築地市場あす最後の営業 日本の台所 活気に満ちた83年」という企画を放送した。テレビ朝日「報道ステーション」では、「ノーベル平和賞決定」のニュースを速報した。受賞したのは戦時下の性暴力と戦っている二人で、この内、イラク人女性のナディア・ムラード氏、クルド人でヤジディ教徒、過去に過激派組織、イスラム国に拉致され性暴力を受けた経験を持ち、その経験を伝えながら人身売買の撲滅を訴えてきた。もう一人は、医師のデニ・ムクエベ氏は、コンゴ民主共和国で性暴力被害にあった女性を治療し続けている。
続いて、「五輪開催経費3兆円に」を取り上げ、さらに「麻生大臣の“強気”」、森友学園問題で自殺した近畿財務局職員の父親の告発に対し、麻生氏は「財務省に対応は間違っていなかった」としたニュースを伝えた。週末企画、「金曜特集」は、築地で引退か 寿司職人の苦悩」を伝えた。「ZERO」と違ってグルメ企画ではない、ニュース報道になっている。
TBSの「ニュース23」では、トップ・ニュースに「原因は海水? 京成線運休に」というタイトルで、東京と成田空港を結ぶ京成電鉄が朝から全線に渡ってストップ、複数の送電線から火が出たためで、出火の原因は台風によって吹き付けられた海水とみられているとした。台風による塩害の脅威を指摘した大きなニュースである。
「ノーベル平和賞決定」や「佐川氏は極めて有能」という麻生大臣発言などを放送した。
「都がLGBT差別禁止条例案」を取り上げて、谷生俊美氏をゲスト起用した「NEWS ZERO」が、なぜ「ノーベル平和賞」を無視するのか、ジャーナリストとしての感性を疑う。森友加計問題、五輪開催経費問題、築地市場移転はニュースではないのか。
▼ 10月8日(月) 振替休日 (二週目を一日だけ追加)
毎週月曜日は、櫻井翔キャスターと有働由美子キャスターが2人で番組を始める。
この日のメイン・ニュースは「築地市場移転」、「news zeroではいろんな方の視点で見ていきたい」とした。
まずは「三連休の天気 コロコロ変化 花火大会で事故 台風の影響か」のニュースを取り上げ、「ホワイトタイガーに襲われ40歳の男性飼育員が死亡」、「日本新 大迫傑 “半端ない”走りの原動力」と続く。
そして「築地市場 83年の歴史に幕 競りストップ4日間で影響は?」、今日のメイン企画である。「いろんな方の視点」というから、これまで取り上げられていない新たな視点での取材を期待した。結果はまったく期待外れ、何度も、他局のリポートで見たい内容の「焼き直し」で、鮮度はまったくない。
最初に10月7日、夜明け前の環状二号線を通って築地市場から豊洲市場に向かうターレの列、すでに何度も放送された光景だ。続いて築地市場の歴史、これも何回もすでに見せられた。
築地市場の移転とともに店をたたむ決断をした女性を取材、これも何度も見せられた。
次は、移転に伴い4日間の空白の間に、築地市場から鮮魚を仕入れていた鮮魚店を取材、産地直送の航空便に頼っているとした。
場外市場を訪れ、観光客や「場外市場は移転しない」とPRしている様子を取材したが全く鮮度はない。
続いて豊洲市場の紹介にうつり、豊洲市場は築地市場とは違って、「閉鎖型」で空調で10.5度に保たれていることなどを伝えた。マグロの競りも衛生面に配慮して見学客はデッキの上からに見ることになるとした。同じ内容はすでに取り上げられている。
豊洲市場の屋上緑化を取材したが、この話題は、リポートの中で唯一、新しい情報だった。しかし、余り本論とは関係ない。
築地市場の跡地利用や再開発についても説明したが、新しい情報はない。
結果、新しい情報は、屋上緑化だけだった。「いろんな方の視点で見ていきたい」という狙いはなんだったのだろうか。新しさは何もないリポートで残念としかいいようがない。
この次に、「落札直後“裁断”は作者のメッセージ」、ニュースそのものが極めて面白い。
「zero culture」は、「22歳の“日本人監督”が快挙」、映画の話題だ。
これに対し、「報道ステーション」は、「加計学園理事長会見」、安倍総理と加計学園理事長が会ったのかどうかどのように説明するか注目の会見だった。「記録を調べてもらったが事務局の方にもないといっている」としたが、疑念は晴れない。国際的に注目されている「ICPO総裁行方不明事件」も取り上げた。そして「ポンペオ国務長官と金正恩委員長会談」、北朝鮮は核実験場に査察団を招くことを明らかにし、二回目の米朝首脳会談は早期に開く見通しになった。しかし、日程、場所の合意には至らなったとされる。さらに日朝首脳会談の可能性も開かれているとした。
「ニュース23」でも、「ポンペオ国務長官と金正恩委員長会談」の内容や、「加計学園理事長会見」、「ICPO総裁行方不明事件」を取り上げている。
「news zero」はまったく素通りをしているが、祭日にも関わらず重要なニュースがあったのである。これでは、「news zero」と見ても、世の中の重要な動きはまったくわからない。さらに加計学園関連のニュースはすべて無視していて、これでは安倍政権への「忖度」ニュース番組だ。
それでもニュースの看板を掲げるのだろうか?
「news zero」はいつまで続くのか?
「news zero」は、「あさイチ」のような生活情報番組ではない。ニュース報道番組である。ニュース報道番組であるなら、ジャーナリズムとして見識と知見を示すべきだ。
批判精神を現代社会と向き合い姿勢を失ったニュース報道番組は存在意義はない。
鮮度のない情報を並べて、視聴者への共感だけを掲げる姿勢は納得できない。
ニュースは「事実」を徹底して追求し、「事実」に基づいてメッセージを発信しなければならない。
一方で、これまでのニュース番組では登場してこなかった個性的で多様なゲストが起用されているのは評価ができる。多様な意見を吸収する努力もニュース報道番組には求められるからだ。
「news zero」がこうした戦略をとった背景には、既存のニュース報道番組とは差別化して、若者や女性など新たな視聴者層を掘り起こしたいという狙いが見える。
とにかく、新聞を読まないしテレビニュースも見ない若者が激増しているのである。
確かに難解な政治、経済、国際ニュースを視聴者に分かりやすく、共感を持って視聴できるようにするいう発想はニュース報道番組にとって重要な課題の一つだろう。
「news zero」は「zeroは皆さんと一緒に考えるニュース番組です」というコンセプトを掲げている。
しかし、実態は、難解な政治、経済、国際ニュースは避けて通って、分かりやすニュースばかり取り上げるという安直な姿勢が目につく。現代社会に正面から向き合いのがニュース報道番組だろう。
有働由美子キャスターの「news zero」は果たして視聴者に支持されるのか、一体いつまで続くのか、ジャーナリズムとは何かという視点で、大いに注目したい。
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2018年10月12日
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廣谷 徹
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