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東京オリンピック 江の島セーリング会場 シラス漁 セーリング ウインドサーフィン

2023年04月25日 23時03分57秒 | 東京オリンピック
東京オリンピック 江の島セーリング会場 シラス漁に影響
ヨットの移設や津波対策に懸念
「準備は1年遅れている」 警告を受けた2020東京大会組織委 



2020東京大会のテストイベント第1弾
セーリングのワールドカップ(W杯)開催 はやくも開催時間を巡ってトラブルに

 9月11日、2020東京五輪のテスト大会の第1弾となるセーリングのワールドカップ(W杯)江の島大会の競技が神奈川県の相模湾で始まった。江の島は2020東京五輪大会のセーリング会場となるため、このプレイベントの開催で問題点を洗い出していくのがその目的だ。
 今回のセーリングのW杯にあたって、大会組織委は延べ200人の職員を派遣。輸送や警備など36分野に分かれ、主催のワールドセーリング(WS)などから、運営のノウハウを直接学んでいる。
 今回の大会の開催にあたっては、相模湾名物のシラスの漁場に配慮して、地元漁業者への影響をどうやって最小限に抑えるかが最大の課題だ。
 その結果、レース当日もシラス漁ができるよう、通常午前10時に設定することが多い競技開始時間を午後1時から5時までに遅らせることで実行員会は地元漁業者と合意した。
 コースは定置網を避けた六つを設定。その上で、漁業者がアクセスしやすいよう、漁港から漁場への漁船の走行ルートも確保した。地元漁協の協力を得て、英語のナレーション付きでレース地点付近の漁場の様子を説明する動画もつくられた。
 大会組織委の内藤拓也・地方会場調整担当部長は「コース設定に関しては、(シラス漁などに)十分に配慮した形になっているのではないか」と話す。今大会がうまくいけば、今回のコースが五輪本番でも使われる可能性は高くなる。
 しかし、早くも競技時間開始を巡って、地元漁業者とトラブルが発生した。
 午後1時から同5時の間に行うという合意、9月11日の初日は、一部のレースが午前11時ごろ開始された。地元漁業者の抗議を受け、実行委は、翌12日からは正午以降の開始とした。
 実行委は、事前に漁業団体と合意した開始時間をレース開始時間を決める団体「ワールドセーリング」に十分に説明できていなかったという。実行委の末木創造委員長は「一部のスタッフに業務が集中してしまった。大変申し訳ない」と語った。
 また神奈川県しらす船曳網漁業連絡協議会の杉山武会長は「漁業補償もない中で、譲歩し合って定めたルールではなかったのか。こんなことでは先が思いやられる」と語った。
 五輪大会中は、一定期間、漁ができない期間が発生する可能性もある。漁業者への営業補償が発生した場合、東京都が負担することになっているが、補償額やどこまでを対象とするかは未だに決まっていない。(参考 朝日新聞 産経新聞 9月11日/14日)









出典 World Saling Japan 2018




「誠実に疑問に答えを」 コーツIOC副会長
 2018年4月24日、2020東京五輪大会の準備状況をチェックするIOC調査チームの(委員長 コーツ国際オリンピック委員会(IOC)副会長)は、2020年東京大会組織員会に対し、開催準備の進捗状況と計画について、より誠実に質問に答えるように要請した。
 4月15日から20日、タイのバンコクで開かれた国際スポーツ連盟機構(GAISF)のスポーツ・アコード(Sport Accord)会議などで、複数の国際競技連盟(International Sports Federations IFs)が、2020東京大会の準備状況に不満を抱き、公然と批判した。
 これを受けて、IOC調査チームが来日し、4月23日24日の2日間に渡って2020東京大会の準備状況のチェックを行った。

 コーツ副会長は、準備作業は、大部分は順調に進んでいるが、2020東京大会組織員会は進行状況を完全に説明することを躊躇していると懸念を示した。
 その理由について、 コーツ副会長は、直接的で明快な表現をするオーストラリア人と、多くのポイントを留保する曖昧な表現をする日本人の文化的相違があるのではと述べたが、婉曲表現で日本の姿勢を批判した。
 2018年2月に開催された平昌冬季五輪が成功を収め、スポットライトが東京に移る中、大会準備に関して答えを得られない五輪関係者のいら立ちはさらに増すだろうという警告である。

柔道、セーリング、トライアスロンに批判
 国際オリンピック委員会(IOC)や国際競技連盟は、柔道とセーリング、トライアスロンの種目について、開催準備の遅れに懸念を表明している。国際柔道連盟は、2019年に開催される柔道競技のプレ大会の準備状況の遅れを指摘し、国際セーリング連盟は、江の島で開催されるセーリング競技について、地元漁業者との調整が進まず、コース決定が遅れていることに不満を示した。またトライアスロン競技連盟は東京湾の水質汚染問題について強い懸念が示された。


江の島ヨットハーバー センリング競技会場  出典 神奈川県


江の島ヨットハーバー 出典 2020東京大会組織委員会

シラス漁に影響 江の島セーリング
 セーリング競技については、バンコクで開かれた夏季五輪国際競技連盟連合(ASOIF)の総会で、、国際セーリング連盟は、「準備が1年遅れている」と指摘し、地元の漁業者との交渉が進まず、レース海面決定が遅れていることや津波対策や警備対策に懸念を持っているとした。
 コーツ副会長も、記者会見で、2020東京大会組織委員会に対し、地元の漁業者へ与える影響について懸念を表明したと付け加えた。

 2020東京大会で江の島で開催されるセーリング競技では、ディンギー5艇種(1人ないし2人乗りの小型艇)によるヨットとウインドサーフィンが行われる。海上に設置された3つのブイ(三角形のコース)を周回して、指示された周回方法や周回回数で走る競技で、得点とレースの終了順位で勝者を決まる。
 競技種目には、1人乗りのレーザー級、2人乗りの49er(フォーティーナイナー)級などがあり、1984年のロサンゼルス大会からは、ウインドサーフィン種目も採用された。
 2016リオデジャネイロと同様の10種目が行われることが決まっている。 

▼ 競技種目
 ・RS:X(男子/女子)
 ・レーザー級(男子)
 ・レーザーラジアル級(女子)
 ・フィン級(男子)
 ・470級(男子/女子)
 ・49er級(男子/女子)
 ・フォイリングナクラ17(混合)

 競技を開催する海面は、鎌倉市沖から葉山町沖の相模湾に、直径1852メートルと1574メートルの円形の5つのエリアの設定が計画されている。
 国際セーリング連盟は、レースの実施に当たってはブイを設置するので、水深が深いところではブイを固定しづらいため、水深 40 ㍍以下が望ましいとし、沖合に海面を設定すると選手の移動負担が大きいく、なるべく沿岸に近い浅瀬に設定することを求めている。
 一方この海域は、古くから湘南名物のシラス漁の好漁場として知られている。
 セーリング競技団体はレース海面をなるべく沿岸に近い海域を求めいるのに対し、漁業者はシラス漁への影響を懸念してなるべく沖合にしたいとして調整が継続されていて、未だにレース海面が決まっていない。
 シラス漁の操業海域は、5市1町の8漁業組合に独占的に認めている「共同漁業権」エリアが設定され、さらにその沖合にはどの漁協も操業できる海域が広がっている。
 シラス漁は、元旦から3月10日までは禁漁だが、五輪セーリング競技の公式練習や大会開催期間はシラス漁の漁期と重なり、漁業者への影響は必至である。
 さらに現状で計画されている競技エリア内には、定置網が2箇所設置されていて、定置網を撤去すると巨額の撤去費用や漁業補償が発生する。
 神奈川県ではこうした巨額の費用負担を避けるために、定置網の設置場所を競技エリアから外すことで調整をしたいとしてるが、未だに決着はしていない。
 漁業補償については、五輪期間中の漁業補償を支払う方針だが、ほぼ同じ海面で実施する見通しのテスト大会については、現段階では検討していない」しているが、未解決のままである。
 セーリング競技大会は、2020東京大会の前に、テストイベント(プレプレ大会、プレ大会)が、2018年9月と2019年と大会直前に合計3回の開催が予定されいる。テストイベントは本大会と同様程度の規模で開催される。
 レース海面の決定は漁業補償がからんで難航が予想され、セーリング開催準備は大きな難問を抱えている。


セーリング競技開催予定海域   出典 神奈川県

緊急課題 津波対策
 江の島の東端の海に突き出したエリアに、約5000人収容の観客席が設けられる。約2000~3000人とされている大会関係者も含めると1万人近い大勢の人が集まるだろう。
 海辺のイベントで懸念される災害は、津波である。近くには津波避難施設も少なく、「避難しやすい対岸などに観客席を移すべきだ」との声も出ている。
 神奈川県藤沢市が作成したハザードマップによると、相模湾から房総半島に至る相模トラフで大地震が発生した場合、五輪セーリング会場の江の島ヨットハーバーには8分後に4・5メートルの津波が来ると想定している。さらに「想定外をなくす」方針のもと新たに追加された予測では最大クラスで高さ11・5メートルの津波が来る可能性も指摘している。
 2017年10月には台風21号の影響による激しい風雨に高潮が重なり、高さ約6メートルの堤防を高波が乗り越えた。セーリング会場となる一帯が冠水して、競技用の大型コンテナが流されて横倒しになるなどの被害が出ている
 江の島セーリング会場の緊急課題は、短時間避難可能な避難施設の確保など津波災害対策である。
 しかし現状では、津波や高波の際、すぐ逃げられる場所は江の島ヨットハウスの隣の屋外展望台(400人収容可能)だけといわれている。
 江の島には、標高約60メートルの小山や高台もあるが、避難ルートは、飲食店や土産物店が並ぶ狭い参道など住宅地を抜ける急な上り坂が指定されているが、1万人近い群衆が短時間で避難できるかどうか懸念が多い。
 観客席を対岸に移したり、セーリング会場内に新たな津波避難施設を建設したりする安全対策が求められるのは当然だろう。 
 国際セーリング連盟も津波対策について懸念を表明してる。

難題 江の島ヨットハーバー(湘南港)を利用している約1000艇の移動
 江の島ヨットハーバー(湘南港)を利用している約200艇のクルーザーや約800艇のディンギーは、 2020東京大会開催時だけでなく、テストイベント開催時には移動させなければならい。
 2012ロンドン大会では、参加国56カ国、競技艇273艇、参加選手380人だったが、2020東京大会では、参加国同数56カ国程度、競技艇300艇、参加選手400人を想定している。
 さらに、参加チームには、コーチやスタッフが2000人から3000人参加し、合わせて40フィートコンテナが約100個、運営艇が約300艇持ち込まれる。
 神奈川県では、競技艇300艇は現在のディンギー保管エリア、運営艇300艇は現在のクルーザー係留エリアを使用するとしている。またコンテナリアは駐車場エリアや民間事業者が保有する敷地を利用することで調整しているとしている。
 現在利用している約1000艇や機材置き場を、およそ2年間に渡って移動させることが必須となるが、これが難題だ。
 神奈川県ではクルーザー等は、県内のハーバーを移動候補地として検討し、ディンギーは、県が管理する港湾等の活用について、利便性やコストを精査しながら、検討するとしている。
 利用者にとっては、移動後の係留費用も重要だ。神奈川県では、艇を他の場所に保管する際にどの様な費用が発生するか調査して今後検討していくとしている。
 また、ヨットのメンテナンスなどヨットハーバー関連の仕事に従事している人たちへの影響も深刻だ。 2年近く船が無くなると関連企業は閉鎖しなけばないない事態も起きる懸念がある。
 観光地江の島全体に与える影響もある。大会準備の工事やヨットの移動の影響で江の島自体が“閑散”となる懸念も生まれる。ヨットハーバーを訪れる人は減少し、周辺の飲食店や土産物店への影響も懸念される。
 テストイベントが開催される期間は大会関係者で賑わうだろうが、それは2カ月あまり、残りの2年間余りはは“閑散”とすると思われる。こうした状態が続いたら、なんのために江の島でセーリング競技を開催するのか批判が生れる可能性もある。
 2018年9月6日から16日には、本大会さながらのテストイベント(プレプレ大会)が始まる。
 江の島ヨットハーバーでセーリング競技を開催する準備に残された時間はわずかである。


セーリング会場整備計画   出典 神奈川県


全体の想定スケジュール   出典 神奈川県

コーツ副会長から警告された組織員会 
 「あなたたには、率直に質問に答えなければならい」、記者会見でコーツ副会長は述べたが、隣に座った元首相の森喜朗委員長と武藤敏郎事務総長はまったく無表情だった。
「すべてがあなたたちに原因があるとは思わないが、疑念はますます増えるだろう」とコーツ副会長は付け加えた。
 森組織委会長は、コート副会長から個人的に受けたドバイスについて質問された。
 「沢山の案件があった」とし、「いくつかの具体的なアドバイスがあり、1つや2つのポイントだけ取り上げることはできない。 多くのポイントがあった」と内容を明らかにすることを避けた。
 これまでに開催されたいくつかの五輪大会とは異なり、東京大会は、はるかに効率的にスケジュール通りに開催準備を行われることが期待されていた。  
 しかし、東京大会の主催者は、いくつかのスポーツ連盟やオリンピック委員会が満足できる大会準備状況について、なぜか説明することを躊躇しているとIOC調査チームから警告されたのである。

 先週、世界のセーリング、柔道、トライアスロンの国際競技連盟から東京大会の準備状況に懸念を示す声が相次いだ。
 世界セーリング連盟のアンディ・ハント(Andy Hunt)会長からは、1年後に迫った大会を控え、セーリング会場となる海域での漁船の問題を指摘した。
 IOCのクリストファー・ダビ氏は「東京大会の開催準備は進んでいるとは思うが、最終決定するまでは公表しない。 それが問題だ」と述べた。

 コーツ副会長は、今年11月に、東京で開催される世界206のオリンピック国内委員会が集まる会合で、東京大会の主催者が質問攻めにあう可能性があると警告した。
 「どんな質問にも答える明快に準備ができていなければならない。彼らは答えが欲しいと思っている。それができなければ信頼を失う危険がある」と述べた。
 そして、「彼らは選手にとって最良の競技ができる環境を知りたがっている」と語った。 「今、私たちはすべての細かな競技環境がどうなるのかに関心がある。こうした細かな競技環境を高めることが重要なのである」
 東京大会まで2年余り、五輪関係者の関心は、競技場や宿泊施設、輸送、競技や選手に影響を及ぼすあらゆる分野で、極めて現実的で緊急に解決しなければならない段階に突入するのである。

混迷必至、北朝鮮五輪参加問題 
 北朝鮮の2020東京五輪参加問題も取り上げられた。
森組織委会長は、最終的に東京オリンピックで北朝鮮代表団を迎えることになることを懸念していると述べた。 日本は、北朝鮮による拉致問題を抱えていて、未だに解決されてと問題を提起した。
 日本は北朝鮮に「裏切られた」とし、「拉致事件は平和な時代に起こった。そして日本人が拉致された」と述べた。
さらに「日本は朝鮮半島に近く、北朝鮮は隣国である。 そして我々は核兵器の脅威にさらされている。我々はこうした厳しい状況の下で生きていかなければならない」と語った。
 コーツ副会長は、日本は東京オリンピックで北朝鮮の五輪選手団を受け入れることがオリンピック憲章の下で義務づけられていると基本的な姿勢を明らかにした。
 しかし、「五輪開催国の政府が、五輪選手団以外の政治指導者や関係者の受け入れを制限する権利がないと言っているわけではない」とも述べた。
 2020東京大会は、北朝鮮の五輪参加という極めて難解な問題を突き付けられている。





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相次いだ撤退 迷走!2024年夏季五輪開催都市

有働由美子 news zero批判 ニュースになっていないnews zero ニュースキャスター失格 あさイチの成功




国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)





2018年2月11日
Copyright (C) 2018 IMSSR




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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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東京オリンピック ライフサイクルコスト 維持管理費 老朽化対策 新国立競技場 海の森水上競技場 

2023年04月25日 21時21分21秒 | 東京オリンピック


東京オリンピック 巨額の負担が次世代に 日本は耐えきれるか?


 2016年10月5日、日本スポーツ振興センター(JSC)は、新国立競技場の完成後50年間の維持管理費が年間約24億円、総額約1200億円との試算を明らかにした。新国立競技場の建設費は約1645億円、50年間の維持管理費はその額に並ぶほどの巨額に達するのである。
 新国立競技場の工事を請け負っている大成建設などの共同企業体(JV)が現時点で大まかな数字を算出した。警備、清掃、水道光熱費など日常的なかかる費用と、定期的に行う大規模改修費を加えて算出した。
 JSCによると、昨年白紙撤回されたザハ・ハディド氏デザインの旧計画では日常的な維持管理費は年間約40億円で、これ以外に50年間の大規模改修費が約1046億円との試算をしていた。取り壊された旧国立競技場の年間約7億~8億円だった。
 新国立競技場など競技場施設を建設すると、初期費用の建設費だけでなく、完成後50年~60以上に渡って維持管理費が発生する。さらに5年、10年ごとに施設のリニューアルや大規模修繕を行わないと施設の環境は維持できないのは常識である。
 最近は、国や地方自治体では、道路や橋、建物などの社会資本のインフラ投資を行う際は、初期投資経費、完成後の維持管理費、修繕費、更新費、大規模改修費、そして廃棄処理費なども加えたライフサイクルコストという概念を導入して、インフラ投資の妥当性を検証する材料にしている。
 小池都知事も海の森水上競技場競技場を見直すにあたって、「恒久施設」案では328億円の建設費まで削減可能としたが、建設後の修繕費が65年間で計約294億円が必要となると試算した。修繕費に年間の維持管理費3億2500万円とされる維持管理費の65年分、計約210億円を加えると、65年間のライフサイクルコストは約500億円と大幅に建設費を超えるだろう。その結果、小池都知事は「仮設レベル」で298億円で建設する案を選択した。 、「恒久施設」案の328億円と「仮設レベル」の298億円を比較すると、約40億円程度と差はわずかだが、ライフサイクルコストで比較すると巨額の差が生まれるのである。
 競技場など“箱もの”は、建設費だけ調達すればよいというわけにはいかない。巨額の後年度負担を次世代に確実に残すことになることを忘れてはならない。
 キーワードは「持続可能な開発」(Sustainable Development)である。



小池都知事と上山特別顧問 4者協議トップ級会合 11月29日 




脚光を浴びているライフサイクルマネジメント(LCM)
 2012年12月2日、中央自動車道上り線笹子トンネルの山梨県大月市側出口から約2キロメートルの地点の天井板が突然崩落し、通行車が次々と下敷きになり、9名が犠牲になるという大惨事が起きた。
天井板は約110mに渡ってV字型に崩落し、重さ約1.2tの天井板が通行車に直撃した。
この事故で、老朽化した社会資本の維持管理に係る問題点が浮き彫りとなった。
道路、橋、港湾、上下水道、公営住宅、病院、学校などの社会資本は、建設後50年で“耐用年数”を迎えるとされている。 高度成長期以降に整備、建設された膨大な量の社会資本が2020年までに、一斉に「50年」を迎える。

[建設後50年以上経過する施設の割合の例]
道路橋:  H24年3月 約16%   10年後 約40%   20年後 約65%
河川施設: H24年3月 約18%   10年後 約30%   20年後 約45%
トンネル: H24年3月 約24%   10年後 約40%   20年後 約62%
港湾岸壁: H24年3月 約7%   10年後 約29%   20年後 約56%


(国土交通省 「社会資本の維持管理・更新に関し当面講ずべき措置」)

 国土交通省では、所管する社会資本を対象に2020年までの維持管理・更新費の推計を行った。
 それによると、2011年度から2020年度までの50年間に必要な更新費は約「190兆円」で、社会資本への投資水準を横ばいと過程すると2037年の時点で維持管理・更新費すら賄えなくなる可能性があるとしている。
(国土交通省 平成23年国土交通省白書)

 一方、財務省では、財政の視点で、社会資本の維持管理問題に取り組んでいる。
 これからの社会資本整備のあり方について、「厳しさを増す財政事情の下、社会資本の整備水準の向上や今後の急速な人口減少を踏まえれば、今後の社会資本整備に際しては、一層の重点化を図るとともに、計画的かつ効率的に進める必要がある」とし、「費用の増加が見込まれる社会資本の維持管理・更新に当たっては、それぞれの管理主体が人口減少やコンパクトシティ化等を見据え、インフラ長寿命化計画(行動計画)等を策定し、これに基づき効率的に対応していかなければならない」とした。
さらに新規投資については、「我が国にとって必要とされる国際競争力強化や防災対策であっても、費用対効果を厳しく見極め、厳選する必要がある」としている。



(社会資本整備を巡る現状と課題 財務省主計局 平成26年10月20日)

 老朽化が加速する膨大な量の社会資本をどうやって維持管理するのか、更新工事の体制はどうするのか、厳しさを増す財政や加速する少子・高齢化社会を抱える中で、その悩みは深刻だ。社会資本の整備には、後年度負担も念頭に置いた戦略的なマネージメントが必須になっている。
 その中で生まれた概念がライフサイクルマネイジメント(LCM)である。


ライフサイクルマネジメント【LCM:Life Cycle Management】
 ファシリティの企画段階から、設計・建設・運営そして解体までのファシリティの生涯に着目して計画、管理を行なう考え方。ファシリティに依存する効用の最大化、ライフサイクルコスト(LCC)の最適化、資源やエネルギー消費・環境負荷の最小化、障害や災害のリスクの最小化を目標とする。例えば、施設を建替えずに改修しながら使用し続ければ、建替え時の解体費用と新設費用が節約できることに加え、それらに係る二酸化炭素排出量も大きく削減可能で、地球温暖化に大きく貢献することになる。
このような観点からも、施設の生涯にわたる効用・損失を最大化するためには、施設の長寿命化は不可欠であり、大幅な用途の変更が必要になる場合もある。

(参照 日本ファシリティマネジメント推進協会:FMガイドブック)

官公庁の施設の“ライフサイクルコスト”(LCC)試算
 官公庁の施設マネジメントを行う一般財団法人建築保全センターは、大規模な建築物などの五十年間の長期修繕費について、「すべき修繕、望ましい修繕、事後保全」は建設費の百五十四パーセント、「すべき修繕、望ましい修繕」同九十六パーセント、「すべき修繕」同五十一パーセントとしている。
 「事後保全」とは、建造物や設備にトラブルが発生したら、その都度、修理、修復、設備更新を行う修繕作業である。
 新国立競技場の場合、可動式屋根や可動式観客席、芝生養生システムや空調設備などの最新鋭設備、他の官公庁の施設に比べて、保守修繕費がかさむのは明らかであろう。
 この目論見で、新国立競技場の今後50年間の長期修繕費を試算してみると、「すべき修繕、望ましい修繕」のケースでは、建設費とほぼ同額の「2419億円」、「すべき修繕、望ましい修繕」のケースでは、「3880億円」が見込まれているのである。


(参考 国土交通省大臣官房官庁営繕部監修,財団法人建築保全センター編集・発行,財団法人経済調査会発行『建築物のライフサイクルコスト』[平成17年])

ライフサイクル・マネージメント
 建築保全センターは「建物のロングライフ化」のために、定期的に保全工事を的確に行う必要性を強調している。時間の経過と共に、建物の様々な性能・機能が劣化し、その維持のために保守工事や大規模修理が必要となるほか、時代と共に変わる要求水準を満たすために大規模更新工事が求められている。
 

(出典 一般財団法人 建築保全センター 建築等のライフサイクル・マネージメント)

 また建築保全センターでは、標準的な建物の「ライフサイクルコスト」のシミュレーションも公表している。
 「鉄筋コンクリート造 地下1階地上5階建」のビルで、耐用年数を「60年」と想定した。
 「企画設計コスト」を0.6億円、「建設コスト」を14.2億円、合わせて14.8億円を初期費用とし、「点検・保守等のコスト」、「修繕・改善コスト」、「光熱水等のコスト」、「他運用管理コスト」、「廃棄処分コスト」を試算した。
 その結果、「ライフサイクルコスト」は、初期費用も含めて86.9億円になるとした。初期費用の5.87倍に上る経費である。

 

(出典 一般財団法人 建築保全センター 建築等のライフサイクル・マネージメント)

鹿島建設の“ライフサイクルコスト”試算
 また鹿島建設では、建築物は竣工後から解体廃棄されるまでの期間に建設費のおよそ3~4倍の経費が必要で、竣工時に長期修繕計画を作成し、計画的に修繕更新を行うが重要としている。 この試算では、「2520億円」の施設を建設すると「7560億円」から「1兆80億円」の後年度負担が、今後50年間に発生することになる。
 JSCでは、約「1046億円」でさえ、早くも、ギブアップして国に財源確保を要請している。
 競技場など“箱もの”は、建設費だけ調達すればよいというわけにはいかない。巨額の後年度負担が次世代に着実に残ることになる。



(運営管理とLCC 鹿島建設)

<">新国立競技場の「ライフ・サイクル・コスト」(LCC) 「1兆円超」 建築家試算
 建築エコノミストの森山高至氏が新国立競技場について「ライフ・サイクル・コスト」(LCC)を試算したところ、1兆円を超えることして、「財政的に恐ろしい未来が待ち受けている」と警告している。
森山氏の試算によると、新国立の整備費を2520億円とすると、建設から解体まで1兆80億~1兆2600億円としている。五輪後に設置するとされる開閉式屋根の費用約300億円、資材施工費の高騰分を20%とすると、さらに増えて「天文学的な数字」となるという。解体までの50年間の物価上昇等を見込むと、「後世の国民を苦しめることになるだろう」と森山氏は指摘した。

(出典 2015年7月10日 スポーツ報知)

大規模改修費「1046億円」では維持できない?
  社会資本としえ整備される建築物は、条件によって差はあるが、概ね初期建設費用の最低でも同額から1.5倍の長期修繕費が必要とされ、更新費や修繕費に加えて、維持管理費も含めるた“ライフサイクルコスト”は、4倍以上とされている。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックで整備する競技場施設は、新国立競技場の1645億円だけはなく、各競技場の施設の建設や整備で2241億円を拠出する計画だ。今後50年間の負担は、約3000億円以上、“ライフサイクルコスト”で見ると、約1兆5000億円程度という巨額の負担になる。
 一方で、道路、橋、港湾、上下水道、公営住宅、病院、学校などの高度成長期以降に整備、建設された膨大な量の社会資本が2020年までに、一斉に更新時期の「50年」を迎え、2020年までの維持管理・更新費は約「190兆円」とされている。すでに巨額の負担が国の財政にのしかかっている。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催期間は、オリンピックで17日(サッカーの予選は除く)、パラリンピックで13日、その後、50年以上使い続ける“レガシー”(未来への遺産)にしなければ意味がない。
 一過性でなく、確実に後年度負担が生まれる社会資本の新規投資には、それなりの“覚悟”が必要である。
 「持続可能な開発」(Sustainable Development)を忘れてはならない。
 次世代の人たちに“胸を張って”「これが東京五輪の“レガシー”(未来への遺産)だ」と自信を持って言える計画にしたいと思うのは筆者だけであろうか?




「準備は1年遅れ」「誠実に答えない」 警告を受けた大会組織委
マラソン水泳・トライアスロン 水質汚染深刻 お台場海浜公園
北朝鮮五輪参加で2020東京オリンピックは“混迷”必至
東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念 “世界一コンパクト”
東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 競技会場の全貌
“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」 小池都知事の“五輪行革に暗雲
四者協議 世界に“恥”をかいた東京五輪“ガバナンス”の欠如 開催経費1兆8000億円で合意
主導権争い激化 2020年東京オリンピック・パラリンピック 小池都知事 森組織委会長 バッハIOC会長
“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか
“選手村は一つ”、“選手村はオリンピックの魂” の矛盾 どこへ行った五輪改革
相次いだ撤退 迷走!2024年夏季五輪開催都市



新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(1) “迷走”と“混迷”を重ねる新国立競技場 “国際公約”ザハ・ハディド案 縮小見直し「2520億円」
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(2) 白紙撤回ザハ・ハディド案 仕切り直し「1550億円」 破綻した“多機能スタジアム”
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(3) 新デザイン「木と緑のスタジアム」決定 大成建設・梓設計・建築家の隈研吾氏のチーム “赤字”への懸念 巨額の負担を次世代に残すのか? 
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(4) 検証新デザイン 維持管理費・長期修繕費 ライフサイクルコストはどうなる?
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(5) 新国立競技場“迷走” 文科省とJSCに責任 検証委
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(6) 陸上競技の“聖地”は無残にも消えた 新国立競技場はサッカーやラグビーの球技専用スタジアムに






国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)




2015年7月29日
Copyright (C) 2015 IMSSR




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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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コメント (6)
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