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上げ馬神事に2度目の改善勧告

2023年08月22日 16時08分40秒 | 事件
2023年8月17日、「上げ馬神事」が行われている三重県桑名市多度町にある多度大社に対して三重県の教育委員会から、2011年に続き2度目の改善勧告が出された。

45年前に県の無形民俗文化財となった多度の上げ馬神事とは毎年5月4、5日に少年や若者が華麗な伝統衣装を身に着けて馬に乗り、数10メートルの坂道とその終点に建てられた約2mの壁のような障害物を一気に駆け昇り、超えられた頭数で豊凶を占うという伝統行事である。二日間で、18組ほどの人馬が合計18回挑戦し、成功率は平均すると2~3割くらいしかない。

今年の神事で1頭の馬が転倒骨折し殺処分されたことに対して、動物虐待ではないかと2400件以上もの苦情が電話やメールなどで全国から寄せられていたこと、県の文化財保護審議会が調査を依頼したことなどを受けて、県の教育委員会が再び動くことになった。

動物愛護法違反の疑いがあるとして、ある愛護団体が6月に関係者約130人を県警に刑事告発したことや、15年くらい前から動物愛護団体などが地道な抗議活動を続けてきたことが、前回2011年と今回の改善勧告に繋がった。前回の刑事告発では11人が書類送検されたが、嫌疑不十分で不起訴となった。今回は起訴されるのだろうか。見守っていきたい。

前回の改善勧告からは、馬を興奮させ勢いをつけるための、待機場から出走するまでの間に馬の弱点である腹や下腹部を蹴る、棒で強く叩く、口の金具を強く引っ張り痛みを与える、酒を飲ますなどの暴行は減ったものの、大声を出して法被やロープを振り回したり、小石や砂を投げつけたりするなどの威嚇行動は減らず、多度大社の管理体制の不備によって、馬の過酷な状況や人馬の安全性などが十分に改善されていないということのようである。

今年は4年ぶりに開催されたが、動物愛護管理法の酷使の禁止や安全な保護義務と言う項目に違反する行為まだ続いており、あまり改善されないままだということと、SNSでの「馬がかわいそう」と言う抗議の拡散と炎上が起こって大きく騒がれたために、今回の指導が入ったのではないかと思う。競走馬を扱ったゲームの影響もあると思うが、このまま全国に馬の福祉への関心が高まって行ってくれればと思う。

教育委員会は●動物愛護管理法の遵守●馬を威嚇する行為の根絶●人馬に対する安全管理の徹底●責任ある運営とこれからのあり方と方針などを求めた改善策の報告書を多度大社から8月中に受け取ることになっているそうだ。

県によると死亡した馬は2010年に1頭、14年に2頭。今年1頭。14回の開催中4頭が死亡している。それぞれ脳挫傷や脚部、頸椎の骨折などの致命傷を受け、即死または安楽死させられた。3回開催するごとに1頭が命を失っていることになる。年に2日だけの行事でこれだけの頻度で馬を死なせているとは。自信を持って伝統文化と言えるのだろうか。

680年前の室町時代から続いているというこの伝統行事なのだが、大きな問題が隠れていることに気が付いている人はそう多くはない。それは馬の種類だ。ほとんどが競馬の引退馬つまり大型軽種で、細く長くもろい脚を持つサラブレッドである。昔に飼育されていた馬は小柄な在来馬である木曽馬や南部馬などの足が太くて短めの、山道に適応した丈夫な馬たちだ。武士を乗せて起伏のある野山を駈けまわれる馬なのだ。

現代になって在来馬は激減し、北海道の道産子以外絶滅の危機にある。中でも大きな南部馬、完全に純血の木曽馬などは明治時代の軍馬養成政策の影響とその後の軍馬徴収政策などで激減し、絶滅してから50年程経っていることから、上げ馬が大型のサラブレッドに変わったのはそう遠くはない話だと推測される。そのころに体高160㎝くらいのサラブレッドに合わせて壁の高さを変えているのではないかと思う。130㎝くらいの小さな在来馬では170㎝の障害物は到底越えられないからだ。

7年前に上げ馬神事を見学に行って驚いた。思ったよりすごい角度の坂道を全速力つまり襲歩で走らせるだけでも危険で、かなりの負担を負わせるのに、馬の体高より高く立ちはだかる崖のような壁を超えさせようとしているとは! それでは成功率が低くて、事故や怪我が多いのは当然の結果ではないだろうか。

今の時代にそぐわない占いを目的とした、馬にも人にも危険極まりない残酷な行事を開催することに何のメリットがあるのか。誰が潤うのか。この2日間で数万人もの人が神社に集まり、賽銭を払い、場所代を払って特等席で見学し、グッズを買って帰っていく。何というか、昔テレビで見たプロレスに雰囲気が似てる気がした。昔のプロレスの選手は椅子などで相手を傷付けよく流血させていた。観客はショーを見るように、興奮して歓声をあげていたものだ。

上げ馬の時も怖いもの見たさというか、そんな残酷な群集心理に軽く恐怖を覚えた。美しいサラブレッドと若者が目の前でドドドっと音を立てながら、危険を鑑みず駈け上がるスリルと迫力に興奮を覚え、惹かれるのかもしれない。だが、馬にしてみれば、能力以上を求められる命がけの怖くて危険な命令に過ぎない。虐待行為と取られても仕方がない無謀な行為と言えよう。それに、せっかく競馬の廃用馬から命拾いしたとしても幸せな余生とは言い難い。

はっきり言って、現在の上げ馬神事は「忠実に継承した伝統文化」ではなく、新たにプロデュースされ別物になってしまっているものだ。主催者側が背の低い在来馬では迫力がないし、集客力に劣ると考えているとすれば、まるで見世物のようなものしか後世に残すことはできないだろう。

来年の上げ馬神事までには、助走路を今の30度より緩やかにすること、2m(中央1.7m)の壁を1.2m以下にすること、馬の適正を考慮するなどの改善策を期待している。さて、どこまで改善していただけるだろうか。多度大社は「動物愛護に関する法律や人馬、参加者の安全を考えて、より一層改善を進めていく」というコメントを出している。楽しみに待つことにしよう。

7年前の上げ馬神事の時の写真↓


いい子で待機中(痩せてるこの馬は行事が終わったらどうなるのかな)


この日のスケジュール表(走行は通常初日は12回、二日目は6回で合計18回で占う)


神妙にお祓いを受けているけなげなお馬


助走用の坂道と切り立った崖のような障害物


壁のような障害物を乗り越える人馬


人に促されるままにこんな階段を登れるようになった馬の従順さと人への信頼の深さがわかる

人馬が一生懸命走るのを安心して見ることができるような厳かな神事になりますように。全馬が事故無く、御神馬錦山号のように穏やかに暮らせますように。

馬は飼い主によって運命が大きく変わる生きものだとつくづく思う。神事に使われる馬でさえもかわいがられて飼われる馬とそうでない馬がいる。事故はそれとは関係なく起き、馬の命が安易に消えていく。悲しい話です。馬をかわいがっている内側の人も勇気を出して、これを機会に声をあげてほしいです。馬を愛するのならば、人に対する彼らの信頼をどうか裏切らないであげてください。

※上げ馬神事の様子はyouTubeで検索するとたくさんの動画を見ることができる。


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