命きらめいて☆馬、犬、猫など動物に関する理不尽な事件や心温まる出来事の記録

円山動物園マレーグマ虐待死亡事件/脱走シマウマ水死事件/動物虐殺事件/宮古馬放置死事件/上げ馬神事

世界一の動物園?無責任な繁殖

2016年06月26日 01時29分04秒 | 事件
バロンの事件の元凶は安易に繁殖し、いらなくなったら手放す天王寺動物園の無責任な繁殖方針であると思っていたので、バロンの繁殖理由についてどう回答するかが鍵だと思っていた。

一番時間をさくべき繁殖問題については以外にも、大阪市の愛護行政からも天王寺動物園からもたった数行の説明があっただけだった。一番答えづらく、つついてほしくない部分なのはわかるが、以下のように、あまりに誠意がなく、おかど違いな回答で驚いた。繰り返すことになるが、並べて比較してみることにする。

大阪市(動物愛護相談室)からの回答↓

「天王寺動物園では、5度の有識者会議を経て決定されたコレクションプランに基づいて、212種の飼育動物をカテゴリー分けして、繁殖すべき種を定め、みだりな繁殖を行わないこととしており、シマウマは繁殖推進種になっています。(大阪市ホームページ http://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000285423.html に会議の経過とコレクションプランが掲載されています)。本プランによると、シマウマの繁殖の目的は展示充実と書かれています。 」


大阪市天王寺動物園(園長)からの回答↓

「グラントシマウマについては計画的な繁殖を行っており、バロンの母親もブリーディングローン(繁殖のための貸し借り契約)に基づき登園で飼育されているものであり、増えるに任せての自然繁殖ではありません。」


どちらも申し合わせたように「シマウマの繁殖については~」と答えるのみに終わっている。愛護団体の抗議が無責任な繁殖に対する広い意味の内容だったとしても、バロンを繁殖したことが問題になることは両組織ともわかっていたはずだ。なのに、この肩透かし的回答はどういうつもりなのだろうか。苦情にはマニュアル通りで、常とう手段のお役所的対応といえばそんな感じなのかもしれない。残念ながら。

客寄せのために子供産ませよか
だけどな、雄だともらい手を探さんとあかんな
種ウマはおるさかいになあ
雌でありますように
残念、もらい手あらへん
探しまひょか?
移動動物園で使いたいんやて
ありがたいなあ
ほな元気でな
えらいこっちゃバロンが逃げたんやて
なんとか捕まえてくれへんとなあ
うちの名前が出んようにせんとあかんわ
ネットで炎上してん
ばれてしもうたわ
このままではすみそうにないなあ
立ち入り指導が入るんやて
心配いらへんわ
なんとかなるやろ

こんなことだろうと思うがとても外部に言えないから、あのようなとぼけた回答になったのだろう。

今回は「無責任な繁殖していませんか?」「していませんよ。」で説明義務を果たしたことにしているようだが、事件を受けての抗議書なので、バロンの繁殖と余剰動物になった経緯をはっきりと説明してほしいと思う。

円山動物園では「年間100万人の来場者」を、天王寺動物園では「世界一の都市型動物園」をそれぞれスローガンとして掲げ、その達成のために無理した結果、動物たちの悲惨な事件を招いているような気がする。それに対しての秘密裏に終わらせようとする姿勢や、このような冷たい対応、身内同士である行政の甘い管理と指導は、心優しき人々をますます動物園から遠ざけさせるには十分なのである。


■なんば・天王寺・あべのエリア 短期の取り組み「世界一の都市型動物園をめざす天王寺動物園」
http://www.pref.osaka.lg.jp/daitoshimachi/granddesign/nanbatennoujiabeno.html

■14年前の天王子動物園シマウマの担当飼育員による生き生きとしたエッセイ
サバンナの動物たち!グランドシマウマ~草原を駆ける情熱の縞模様~
http://www.jazga.or.jp/tennoji/nakigoe/2002/01/sabanna.html



生後1ヶ月のバロン サブグランドにて Photo by 天王寺動物園


飼育下では30年生きるというシマウマ。バロンにも生き続けてほしかった。

天王寺動物園の回答にも矛盾

2016年06月25日 11時13分31秒 | 事件
天王寺動物園は余剰動物を生み出すような繁殖への抗議に対して、

「グラントシマウマについては計画的な繁殖を行っており、バロンの母親もブリーディングローン(繁殖のための貸し借り契約)に基づき登園で飼育されているものであり、増えるに任せての自然繁殖ではありません。」

とその回答書の中でごく短く答えている。

ブリーディングローン契約というのは繁殖のための動物の貸し借りで、普通は生まれた仔たちをどちらが引き取るかということまで詳しく書いた契約書を交わすものだ。天王寺動物園のシマウマたちは繁殖させたい時だけ、雄と雌を一緒の囲いで飼うことにしていたので、園の主張の通り、契約による計画的な繁殖の結果バロンが生まれたはずである。

それにもかかわらず、バロンは天王寺動物園、東武動物公園ともに必要とされなくなって、他の動物との交換を条件に動物商に売られてしまった。それなのに、それでも計画的な繁殖だと主張するのならば、バロンが1-2歳になったら両園とも引き取らず、外部へ譲渡することも計画的だということなのか。一体どんなブリーディングローン契約だったのかその内容を説明するべきではなかったろうか。

「展示の充実」という目的があったというのは理解できる。サバンナゾーンにはシマウマが多くて賑やかな方が良いということだ。しかし、そのような目的を持って計画的に繁殖を試み成功したことと、二年も経たないうちに手放したことは矛盾する行為なのである。それとも、初めから集客効果の高い赤ちゃんの時期だけの限定された展示だったというのだろうか?そういう意味での計画的だということなのだろうか?疑問は尽きない。


サファリゾーンへデビューした生後二ヶ月のバロンPhoto by 天王寺動物園

結局は大阪市からの回答書と同じく、これもバロン以外のグラントシマウマの繁殖についての回答であり、バロンについて答えてはいないのである。ここでもはぐらされた感が否めない。

これから天王寺動物園は譲渡先の情報を集め、譲渡する動物たちの情報を提供することによって、再発を防止するそうだ。不思議なことに行政からの指導内容もそれだけだった。無責任な譲渡がなくなっていくのは喜ばしいことだが、一番大切なことは余剰動物を生み出さないことだと思うが、そこには考えが及ばないらしい。いや、それを認めれば、「みだらに繁殖させた」と法的な問題も生じてくるからなのかもしれない。

問題のバロンの繁殖については
●本当はどういう意図や計画のもとで「バロン」を繁殖させたのか
●ブリーディングローン契約までして繁殖が成功したというのに、どんな理由で手放すことになったのか
●ゆくゆく飼えなくなるとわかっていながら繁殖させることは「計画的な繁殖」と言えるのか
を明確に回答するべきだと思う。

それらを省いては回答の意味がないので、ブリーディングローンの契約書の公開のもとに自らの正当性を示してほしいと思う。

天王寺動物園からの回答書
http://animals-peace.net/zoo/tennojizoo-ans.html


もう一点、矛盾点が判明した。「捕獲に対する技術的アドバイスはできなかった」と回答していたが、難しいとされるシマウマの麻酔の量などのアドバイスをできる力があることがわかった。

5/9の~天王寺動物園発行情報誌~なきごえ
●グラントシマウマのナデシコの腹部にできた腫瘍の摘出手術を行いました。
http://www.jazga.or.jp/tennoji/nakigoe/2016/06/diary.html


バロンの脱走事件のとき、電話だけでも十分力になりえたはずである。



【バロンの母、ナデシコのブリーディングローン契約についての記載】
「2010年(平成22年)12月5日のどうぶつえん日誌より
8月に東武動物公園から繁殖のためブリーディングローンで借受けしたグラントシマウマのメスのナデシコと、当園のシマウマたちとの同居の練習を始めました。
http://www.jazga.or.jp/tennoji/nakigoe/2011/01/diary.html


【基本的なブリーディングローン契約書の例(多摩動物公園)】

「動物貸付(繁殖)契約書」
この契約は○○○○を甲とし、○○○○を乙として、 次のとおり締結する。
1.(目的)   
甲は動物の保護のため、東京都が所有し甲が管理する動物を乙に貸付け、乙は乙が所有する。又は乙がその管理の権限を有する同種の動物との間に繁殖を図ることとする。
2.(貸付動物)   
甲は、東京都が所有し甲の管理する下記動物を乙に無償で貸付けることとする。
記 
動物名・性別・数量・備考(繁殖年月日:国内血統登録番号:多摩動物園における呼称)
3.(貸付期間)   
貸付期間は契約締結の日から平成○年○月○日までとする。
4.(費用負担)  
 貸付動物を乙に移送する費用及び貸付期間中における飼育費等管理に係る経費については乙が負担し、甲の所有に帰属する動物を乙から甲に移送する費用は、甲が負担する。
5.(報告義務)   
乙は、この契約に基づく繁殖計画において、繁殖が確認されたとき、また、貸付動物が死亡したときには、速やかに甲に報告すること。
6.(繁殖個体の帰属)   
繁殖した個体のうち、第1子は甲に、第2子は乙に帰属するものとする。第3子以降については、甲乙協議のうえ、その帰属を決定する。
7.(損害賠償)   
貸付動物が乙の故意または過失により損害を受けた場合は、乙の責任で賠償しなければならない。また、移送中の事故については、その費用を負担した者の責とする。
8.(協議事項)  
乙以外の第3者が所有するオス個体と当該貸付動物との間で繁殖が行われる場合は、第2子はオス個体所有者の帰属とし、第3子は乙の帰属とする。第4子以降については、甲乙とオス個体所有者で協議のうえ、その帰属を決定する。その他、この契約に疑義を生じた場合、及びこの契約に定めない事項については甲・乙協議のうえ定めるものとする。

天王寺動物園は動物たちの「なきごえ」にもっと耳を傾けてください。

大阪市からの回答書の矛盾点

2016年06月24日 19時09分07秒 | 事件
回答書や天王寺動物園関連の資料を調べていくうちに大きな疑問点が見つかった。大阪市からの回答書には次のような説明がある。

「繁殖について
天王寺動物園では、5度の有識者会議を経て決定されたコレクションプランに基づいて、212種の飼育動物をカテゴリー分けして、繁殖すべき種を定め、みだりな繁殖を行わないこととしており、シマウマは繁殖推進種になっています。(大阪市ホームページ http://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000285423.html に会議の経過とコレクションプランが掲載されています)。本プランによると、シマウマの繁殖の目的は展示充実と書かれています。 」

バロンが生まれたのは平成26年6月19日であり、繁殖させたのはシマウマの妊娠期間である360日前の平成25年6月ごろで、その頃にはまだ天王寺動物園のはっきりとしたコレクションプラン構想はなかったはずである。このことから、上記の繁殖についての説明文はバロンを「計画的な繁殖を行って」生ませたという証明にはなってはいない。このように、行政からの回答書では「シマウマの繁殖」についての説明はしているが、「バロンの繁殖」については全く説明されていないのだ。


生まれたばかりのバロンとナデシコPhoto by 天王寺動物園

【コレクションプランとは】       (動物は物なのか?ネーミングに違和感有り)

日本動物園水族館協会(JAZA)の打ち出したもので、生物の保存、繁殖に取り組むために生物を選定、分類し、管理していく計画のことである。それに基づいて、会員の各園がそれぞれのコレクションプラン(コレクション計画)を策定することが推奨されている。

天王寺動物園のコレクションプラン策定の様子については以下のとおりである。

■大阪市天王寺動物園飼育動物維持計画検討有識者会議(設置日平成26年9月1日)
(平成26年10月19日から平成27年3月9日までに5回、育動物のコレクション計画策定並びに飼育動物の長期的な維持管理及び確保のために必要な学術情報に関する意見・助言を聴取するため 開かれた。)
(回答文中に既出URL)
http://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000285423.html

■天王寺動物園コレクション計画(平成26年9月1日)
http://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/cmsfiles/contents/0000285/285423/houkokusyosannkou1.pdf

■「天王寺動物園基本構想を策定しました…平成26年10月から平成27年3月にかけて、飼育動物のコレクションプランを検討する有識者会議を設けて、飼育動物の選択と集中について検討を進めてきました。」
http://spwww.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000321456.html

■天王寺動物園コレクション計画 案(平成27年3月9日)有識者会議で生物を次のようにランク(カテゴリー)分けする案が出来上がった。
「 ◎ 優先、導入 ○ 現状維持~推進、導入 △ 必要数のみ維持~現状維持 保留、未検討 に▼ 徐々に撤退、撤退検討 × 撤退が付加され選定された」
http://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/cmsfiles/contents/0000285/285423/5siryou2sannkou.pdf

【天王寺動物園が譲渡・交換を行った動物たち(平成26~27年度/2014~15年度)】
http://animals-peace.net/zoo/out-tennojizoo2014-15.html
動物愛護団体PEACEのサイトに掲載された資料↑を見ると、
二年間で、大型哺乳類の繁殖推進種のカリフォルニアアシカ3頭とグラントシマウマ(バロン)1頭が譲渡されていた。天王寺動物園は販売を業としていないので、要望があって繁殖をしたことは考えにくいし、増えすぎて手放すのだとしたらコレクションプラン策定以前の繁殖方針は、計画的とはとても言い難い。この表からでは詳しい状況がわからないので、出園の理由と譲渡時の年齢くらいは公表してほしいと思う。

【矛盾に満ちた回答】
調べたわかった事実を簡単に書いてみた。

●平成22年8月からブリーディングローンで借り受けているナデシコがバロンを受胎したのは平成25年6月ごろで出産したのは平成26年6月19日。

●前述のとおり、天王寺動物園のコレクションプランはバロンが生まれた後の平成26年9月1日から動き出し、この年の年末にJAZAのコレクションプランを参考にしながら、独自のコレクションプランを策定しようとしていた。
http://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/cmsfiles/contents/0000285/285423/siryou1.pdf

これらのことからバロンの繁殖はコレクションプランとは無関係で、数年前の繁殖はかなりいい加減であったのではないかと思われる。それには触れず、大阪市はあくまでもグラントシマウマの現行の繁殖方針について問題ないと回答したに過ぎない。つまり、バロンが余剰動物だという事実を踏まえての説明はされていないので、求められている十分な回答にはなっていないと言えよう。

一方で、ニュースの記事に掲載されたシマウマの「オスは大きくなると父親と争うようになる。でもずっと別々に育てていくスペースは確保できない」(T動物園担当課長代理)という言葉からは、オスだったから手放したのだということになり、いい加減な繁殖方針が裏打ちされているのだから理解に苦しむ。

雄が産まれたらゆくゆくは飼えないとわかっていながら、一か八かの賭け事のように繁殖させることが動愛法の「みだりに繁殖させた」に当たらないという判断理由は一体何だろうか。

天王寺動物園の繁殖はコレクションプランに基づいているから、みだりに繁殖させいるわけではないとの説明に説得力はない。もし、バロンの場合はコレクションプランゆえにいい加減な繁殖ではなかったと回答しているつもりならば、時系列上での明らかな間違いがあるということになる。


大阪市からの回答書
http://animals-peace.net/law/tennojizoo-osakacity.html

グラントシマウマの生態について
http://www.zoocan.jp/zukan/index.cgi?260


バロンはなぜ死ななければならなかったのか

2016年06月10日 16時54分45秒 | 事件
昨日のyahooニュースに朝日新聞掲載記事よりほんの少し長い記事が載ったので記しておきたい。
新しい内容についてはアンダーラインを引いた。なお、写真は取り込むことができなかった。


【逃走シマウマ「バロン」は、なぜ死ななければならなかったのか? 明治から続く「動物商」の実態】
withnews 6月9日(木)7時0分配信
(写真)
逃走の末、死んだシマウマ「バロン」を囲む警察官ら=3月23日、岐阜県土岐市

 今年3月、逃走する姿がテレビ各局で中継され、注目を集めた1頭のシマウマ。最後は、岐阜県内のゴルフ場でおぼれ死んでしまいました。まだ1歳だったシマウマの悲劇の背景を探ると、管理責任があいまいな動物取引の実態が見えてきます。(朝日新聞文化くらし報道部記者・太田匡彦)

天王寺動物園生まれの「バロン」

 「残念な結果だ。我々にも反省すべきところがある」

 ゴルフ場から約200キロ離れた大阪市天王寺動物園の職員は、そうシマウマの死を悔やんでいます。死んだのは、前日まで同園で飼育されていたオスのグラントシマウマだったからです。

 名前は「バロン」。同園で2014年6月19日に誕生し、親子で飼育されていました。でも1歳を超えたころから、「次の行き先」探しが行われるようになりました。

メガネフクロウなどと交換

 その事情を、高見一利・動物園担当課長代理はこう話します。

 「オスは大きくなると父親と争うようになる。でもずっと別々に育てていくスペースは確保できない」

 ほかの動物園に打診を続けたところ、半年かかっても行き先が見つからなかったそうです。

 最終的に、バロンの運命が決まったのは今年2月1日でした。名古屋市中川区の動物商、坪井源幸(げんこう)氏と同園が「動物交換契約書」を締結、バロンは、同園が新たな展示動物として必要としていたメガネフクロウなど複数の動物と交換されることになったのです。

 そして坪井氏は、シマウマを求めていた愛知県尾張旭市の移動動物園を経営する男性にバロンを転売しました。

動物園「信頼するしかなかった」

 なぜ死に至ったのでしょうか。

 3月22日午前中、バロンは天王寺動物園から搬出されました。人馴(な)れさせる訓練のため、その日のうちに瀬戸市の乗馬クラブへ連れて行かれました。

 でも、動物園の外に出たのも、見知らぬ人が近づいてくる経験も初めてのことでした。パニックに陥ったのでしょう、約3.5キロ離れた岐阜県土岐市のゴルフ場まで逃走。翌23日、麻酔薬入りの吹き矢を受けて池に倒れ、死んでしまいました。

 乗馬クラブの柵は大型哺乳類なら容易に逃げられるようなつくりだったそうです。

 天王寺動物園は「動物商に対して指導監督の権限がなく、管理してくれると信頼するしかなかった」と反省。一方の坪井氏も、「受け入れ先の施設が聞いていたものと全く違った。判断が甘かった」と悔しさをにじませました。

もちつもたれつの関係

 不幸な死を除けば、バロンの身の上は、日本の動物園で生まれる動物にとって珍しいことではありません。業界内では、次の行き先を探さなければいけない動物を「余剰動物」と呼びます。

 受け入れ先探しに悩みながら新たな動物も迎え入れたい動物園。国内では簡単には手に入らない動物を仕入れ、売買したい動物商。もちつもたれつの関係が続いているのです。

 高見課長代理はこう説明します。

 「定期的に繁殖を行って動物を維持し、新しい動物も導入しないといけない。購入予算は確保できないので、繁殖した動物について、ほかの動物園や動物商との等価交換は常時行っている」

「売り先を見つけるのには困らない」

 ただ、動物園同士の交換と異なり、動物商が介在する取引の場合、動物の行き先を把握できないことも少なくありません。

 実際、今年4月に鹿児島市平川動物公園が動物商に渡したコツメカワウソ2頭も、静岡市内のペット店で販売されているのが発見され、動物愛護団体が問題視するというケースがありました。

 坪井氏も「法律違反でなければ、犬猫以外はどんな生き物でも取り扱う。複数の動物園や水族館と毎年約20件、動物数で計100くらいの取引がある。
ペット店やブリーダーが買ってくれるので、売り先を見つけるのには困らない」と、取引の実態を明かします。

明治時代から存在、欧米では自粛

 日大生物資源科学部の村田浩一教授(動物園学)によると、動物商は日本には明治時代からおり、動物園の発展を担ってきた存在だそうです。

 でも欧米の動物園は40年以上前から、不明朗な取引や野生動物を捕獲することによる自然環境の破壊につながりかねないとして動物商の利用を自粛。動物園内での繁殖、動物園同士の交換によって種の保存、維持に努めています。

 日本は手狭な園が多く、特に大型動物の場合は、種の保存のために繁殖しても群れで飼育していくのは容易ではありません。余剰動物問題の解決には、動物商に頼らざるをえない側面があるのです。

 村田教授はこう指摘しています。

 「シマウマの事件は、特定の動物園の問題ではない。日本のすべての動物園・水族館が抱える構造的な問題の結果だ。動物園は、他園に渡すにしろ、仕方なく動物商に渡すにしろ、余剰動物の行き先に責任を持つべきだろう」

yahoo ニュース/withnews
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160608-00000001-withnews-bus_all&p=1



これで「飼えないけど繁殖させても動物商がいるから大丈夫♪」という構図が浮き彫りになった。これからは、動物園はぜひ軽々しく動物を増やすことを自粛してもらえたらと思う。

このように、日本の動物園には動物商を頼るという「構造上の問題」があるとしても、バロンの死には直結はしていない。ここでは動物取扱業者として四者がバロンとかかわっているわけだが、彼らがそれぞれの動愛法上の義務を果たしたかどうかが問題だと思う。

譲渡サイドとしては、シマウマの生態や飼い方について、それぞれの譲渡先に詳しく説明してしていないのであれば、天王寺動物園または動物商、もしくは両方にも責任があるだろう。「シマウマは馬のようにはいかないよ。もうすぐ二歳だしね。頑丈な部屋を用意しておいてよ。」などと言っておいたならば、「ちゃんと説明しておいたんだけどね。」と自己弁護するだろう。そんな言葉が聞けてない以上、説明義務を果たしているのかは怪しい。一方で、受け入れ側の飼い主と乗馬クラブには同じく動物取扱業者として、バロンというシマウマについてよく調べる義務があった。

その上でもし、飼い主が動物商から十分に説明されていながら、あのポニー用の飼育環境を選び、用意したのであればなおさら、適切な設備を準備しておかなかった乗馬クラブと同等、もしくはそれ以上の責任は免れないと思う。「バロンはおとなしくて人に慣れているから、よっぽど大丈夫だよ。」などともし言われていたのだとすればまた話は違ってくるので、表に出て真相を話せばいいと思う。が、出てこれないには理由があるのだろう。

この事件の原因を調べて行くうちに、いろいろと気持ちが揺れ動いたこともあったが、突き詰めるとこう言わざるを得ない。

飼い主と乗馬クラブの無理解と考えの甘さがバロンを逃がし彼の死を招いたと言えるが、動物園が終生飼えないのがわかっていながら繁殖させたことが、この事件の大元なのだと。

動愛法第七条5  
動物の所有者は、その所有する動物がみだりに繁殖して適正に飼養することが困難とならないよう、繁殖に関する適切な措置を講ずるよう努めなければならない。

あの繁殖の仕方が「みだりに」なのか、そうではないのか、やはり「みだりに」が逃げ道になりそうだ。条文の曖昧な表現が動物たちの不幸な死を招いていることを、誰が否定できようか。法律は人を守るためにあるのではなくて、ずるがしこく逃げるためのものであるという言葉もあながち嘘ではないのでは?と残念ながら思ってしまうのだ。結果として大勢の人間がバロンを殺してしまったことを、決して忘れてはいけないと思う。

今、動物園は動愛法から切り離され、運営しやすいように独自の動物園法を作ろうとする動きがあると聞く。この事件がそれを阻止し、いい加減な繁殖や譲渡を抑制するきっかけになれば、バロンの死は無駄にはならない。


力なく対岸へ這い上がろうとするバロン
この後水中に崩れ落ちた
ロープを使いたいのならば今でしょ?
でも周りには誰もいない謎


Photo by 天王寺動物園



バーチャル動物園の提案

2016年06月09日 13時32分54秒 | 事件
円山動物園のマレーグマ虐待死事件のあまりの悲惨さに言葉を失い、動物園の商業主義に翻弄され搾取されていく動物たちが不憫でならなくなった。陰でどんな悲惨なことが起こっているかは円山動物園での数々の事件を調べるうちにわかってきた。

今回のバロンのことで自分の中ではもう迷いはなくなり、動物園というものの存在価値は全く無くなってしまった。円山動物園はウッチーの虐待死事件の後、改善策として施設の修復に重きを置き、天王寺動物園はこれから動物の行き先にも心を配ることにすると言う。

それは根本の原因はおいといて、余剰動物をこれからも出園させ続けるということを前提としている。それでは動物たちの不幸を避けることはできないままだ。

動物たちの命を軽々しく扱うことに良心が痛まない人たちが、公立の動物園にさえ大勢存在することは衝撃的な事実で、反省もせず考え方を変えないままの状態が続く限り、動物たちの悲劇はこれからも決して無くなることはないと思う。だから、動物園は廃止するべきだ。

急にとは言わない。10年くらいかけて動物を入園させず縮小していき、必要ならば統廃合をする。職員も新規の採用を止め、希望退職を募ったりして、徐々に規模を小さくしていく。そしていつかは娯楽施設としての動物園は完全に無くす。

小さな子供たちのための娯楽施設が無くなるのは困るのではないかという意見もあるが、現実として娯楽施設としての動物園は統計的に見て斜陽産業なのである。他の多様な娯楽施設に押され、集客できなくなってきているのだ。動物園は前近代的な施設となってしまい、あまり魅力的ではないと考えられているのかもしれない。現に、入園料がかなり高額にもかかわらず、大型娯楽施設は盛況だ。中でもバーチャルリアリティーのある体験型のものに人気があるようだ。

今は実体験をしなくてもバーチャルで空を飛べたりする時代になった。そこで、今の動物園に代わるものとして、まるでアマゾンのジャングルにでもいるかのような、または、サバンナをジープで駆け回っているかのような体験が可能になった仮想現実的な動物園を作るのが可能だと思う。保護活動家や保護施設の飼育員体験のようなコースがあってもおもしろい。

ストーリーとしては世界各地へ行って、そこのジャングルや山に入って野生の動物たちをまぢかで観ることができるなんて、素晴らしいと思う。例えば、日本だと温泉に浸かるニホンザル、ヤマネコたち、ニホンカモシカなどが外国人からも人気になるかもしれない。その体験がたとえ現実ではなくても、効果としては現実であり原物であるように、匂いなども作成できるバーチャルリアリティーの技術は10年後には完成されているはずだ。どうしても本物を見たくなったら、現地の保護施設にでも行って見ればいい。

また、生きている動物を見たり触れ合ったりして、動物園で子供たちが命の尊さについて学ぶことが大切だというのなら、動物にも犠牲を強いる商業主義的な大型の動物園ではなくて、無料の小動物園が市に一つくらい公園の片隅にあれば十分だと思う。と言うよりは、家庭で容易に飼える小鳥やハムスターなどの小動物や犬や猫の愛玩動物の方が、十分命については学べるはずである。

昔、象が見たいという理由だけで、異国から連れてこられたアジアゾウ(タイゾウ)のハナコはな子は、一頭だけで飼われ続けた結果心を病み、事故を起こした。群れで暮らすアジアゾウにとってそれがどんなに辛い事かは、その時にやっと思い知らされたのではないだろうか。

60年以上もの間、孤独に苦しんだであろうはな子の生涯が幸せだったとは、象の生態を知る人ならば誰も言えないと思う。人に対する拷問の一つに監獄の中で一人、暇な時間だけを与え、何も仕事をさせないという方法があるそうだ。そんな生活を長年続けて行くと、人は発狂するという。はな子にとっても仲間と会話もできないのは拷問だったろう。

熱帯の地域に住むアジアゾウを4頭も、北海道という亜寒帯地方で、これから60年も飼育しようとしている円山動物園はそんな時代に逆行していると言えよう。政治家や権力者たちの無知から来る無謀な企画に、どれだけの税金が投入されることだろうか。市民の福祉に当てられるはずの尊いお金が動物の犠牲を強いる娯楽のために使われていく。少子化でますます集客できなくなるというのにだ。「象が来ると楽しいよ~。」としか情報が与えられないまま、賛成し署名した市民たちはあとで深く後悔することになるのではないかと危惧している。

次に動物園の希少動物の保護という役割はどうなるのかという問題についてだが、保護活動は捕獲してくるのではなく、生息地において、自然な形で行った方が動物にも無理がない。動物たちは生息する場所で生態通り育てる方がストレスもなく、繁殖もスムーズにいくだろうし、気性も穏やかに育つものではないのかと思う。どうしても保護が必要な場合は保護施設として、集客数など関係なく飼養していけばいいと思うがどうだろうか。

一般的に動物園では大型動物たちを近くで観たくても、檻や、堀や、ガラスでさえぎられ、観察も思うようにならない。動物を自然な形で、ごく近くに動物を見ることができるバーチャル動物園の方が動物に興味を持つ人が多いのではないだろうか。そのうち、声も匂いも限りなく現実と近いものができるだろう。

このような方法であれば、これ以上、自由を奪われたり、余剰動物として間引きされたりなど、犠牲となる動物たちを増やすことはなくなる。狭い所に閉じ込められたストレスフルな動物を見るより、安全でおもしろく、より身近に動物といるかのように楽しめる近代的なバーチャルリアリティーの動物園の方が、子供だけではなく若者も年配の方たちもかなり、楽しめるのではないかと思う。

飽きさせないためには、物語のパターンをいくつも作ってリピーターを増やすことも可能だ。もう一つ重要な博物館としての役割も今の動物園よりはより楽しく、より多くの情報量をもたらしてくれる施設となるに違いない。そんな動物園ならぜひ行ってみたいと思う。誰をも苦しませることなく、楽しく学び過ごせる場所が、これからの時代にふさわしい進化した動物園ではないだろうか。

   
                                 (Photo by 富士サファリパーク)
バロン、ごめんね。安らかに。

なぜ動物愛護が大切か

2016年06月08日 19時53分40秒 | 事件
ネットではよく「動物より人間の方が大切なんじゃないの?動物ごときで何を必死になってるの?」とか言う人がいる。

なぜ動物愛護運動が大切かというと、動物たちの幸福度と人間の幸福度は正比例するからだ。つまり、動物たちの福祉向上を考える思いやりやゆとりのない国が、国民の福祉を向上させる力があるわけがないということである。これはまともな国では一般的な考え方なので、チェックしてみてほしい。

そこで、世界で最も動物に優しい国はどこかを調べてみたら、こんな地図があった。全部の国が調査されているわけではないようだが、人が住み良い国と動物に優しい国はほぼ一致していることが言えるではないだろうか。

参考までに
動物に優しい国はどこ?世界各国の動物への優しさ度を現した動物保護指数インデックスの動物に優しい国指数マップ(日本はABCDEFG中D/動物保護団体ワールド・アニマル・プロテクション作成)
http://karapaia.livedoor.biz/archives/52179894.html

自分たちの利益のためには、いらない動物を悲惨な目に合わせても問題ないと考える国は、国民の命さえも優劣を付けて、同じように利用することに抵抗がなくなるのではないか?ということを考えてみたらわかりやすいかもしれない。

実際に動物福祉のために予算が取れないようでは、財政に余裕がないと考えるのは不自然なことではないと思う。お金持ちそうな国でも実は国民の知らない所でいらぬところに大量に使われているということもあるかもしれない。個々がそのようなことに関心を持ち、他の存在の幸せのためにを少しだけでもいいから、やれることやるだけでも少しずつ変わってくると思うのだ。

おそらく、それは自分や周囲の幸せにもつながってくると思っている。と書きながら、動物たちが不憫でならないからアクションを起こしている、ということの方が実は大きい。


Photo by yahooニュース

ウッチーとバロンとあまりに悲しい事件が続き、嘆かわしい限りだ。心が折れそうになる時にこの歌を聴くと心が洗われ、勇気が湧いてくる。日本語の歌詞も素晴らしい。

世界一美しい声と言われるサラ・ブライトマンのスキャットとの2曲入り 
坂の上の雲 「Stand Alone」 Vocalise(第1部) + 森麻季(第2部)
https://www.youtube.com/watch?v=3yoROVD-3KQ
作曲:久石譲 作詞:小山薫堂 演奏:NHKオーケストラ

ちいさな光が 歩んだ道を照らす 希望のつぼみが 遠くを見つめていた 迷い悩むほど 人は強さを掴むから 夢をみる 凛として旅立つ 一朶の雲を目指し あなたと歩んだ あの日の道を探す ひとりの祈りが 心をつないでゆく 空に手を広げ ふりそそぐ光あつめて 友に届けと放てば 夢叶う はてなき想いを 明日の風に乗せて わたしは信じる 新たな時がめぐる 凛として旅立つ 一朶の雲を目指し


生後一ヶ月のバロン2014.7.24
Photo by 天王寺動物園スタッフブログ

今の時代はインターネットの恩恵を大きく受けている。バロンのことも一昔前まではどこのシマウマかも知られないまま、闇に葬られた事件だったろう。一方で、なぜか主力なマスメディアによる情報が疑われもせず、まことしやかに伝達される危険性のある時代だとも言えるのではないだろうか。

動物園の事件を調べて行くうちに、不都合な真実が流出しないように規制が引かれる仕組みが今だに、暗黙のうちに昔からずっと続いているのではないかと思うようになった。つまり、マスコミは一方通行で、私たちは疑いもなく情報が伝わる通り、流行に乗り、浮かれたり、泣いたり、笑ったりしているだけなのではないかと思う。

そして、ふと気が付くとこんな時代なのに、メディア・リテラシー(メディアからの情報を識別し活用する能力)教育を学校でとり入れる動きさえ伝わってこない状態なのである。本当のところは動物保護(愛護)分野においても、メディア教育の分野においても、大きく後れを取っている国なのだろう。そんな社会に住んでいるのであれば、間違った情報については各自が識別し、防衛することが大切だ。

それらのことに注意しながら、心ある人はペット産業や動物園の闇などを知ることによって、動物保護ついて意識を傾けてほしい。そして、愛護行政のレベルアップを目指して底辺から声を上げて行くことで、少しず社会を変えて行けるのではないかと思う。

政治家(国会議員、地方公共団体の長、地方議会の議員など)たちが贅沢をするために国民の税金を湯水のように使い、私腹を肥やすことに重きを置いて、とぼけたり法律に触れなければ良いのだなどと弁解する事件が相次ぐことからも、予算は無駄に使われていることがわかる。

同じようなことしたら、一サラリーマンは首になり、号泣県議は罰せられるとも、大物政治家は逃れられるとしたら、ますます無駄金は使われていく。そんなところで余らせている税金は今度こそ正義のメスを入れて、この国で生きている弱者たちのために回してほしいと思う。不必要なところで余っているのだからできないはずはない。

動物たちの待遇について、本当に真剣に考えないと、かわいそうな動物たちは未来の私たちの姿なのだ。


何回も池や川に逃れたバロン
(新たに写真を差し替えた)

誰がバロンを殺したのか

2016年06月08日 14時40分53秒 | 事件


ゴルフ場を走るバロン
https://www.youtube.com/watch?v=t2G3Keb2WOU

これまで、19時間の逃亡の末に、バロンがなぜ死ななければならなかったのかを考えてきた。自分なりの結論としては、やはり、ショック死しやすく麻酔が難しいシマウマは脱走させた時点で、限りなくアウトだと言えるのではないかということだ。

小柄なのにロバのようにジャンプ力もハンパないが、繊細でショックに弱いシマウマには頑丈な個室や飼育環境を用意しておくべきだった。それが全てなのかもしれないと思う。パニックになりやすく、人馬とも無傷で捕まえるのは非常に難しい動物だからだ。

馬というよりロバに近いという証拠に、鳴き声を聞いてみよう。
馬とは全く違うシマウマの鳴き声0:45から↓
https://www.youtube.com/watch?v=NOmc38WuhVA

これなどはロバによく似ている。0:05から↓
https://www.youtube.com/watch?v=8tG7lCLuiXo

ある記事で動物学者がこう言っている。

===ゴルフ場上空は、報道のヘリが飛び、ものものしい雰囲気。シマウマを捕まえるために多くの警察官や関係者らが出動し取り囲んだ。動物学者の本間敏弘氏は「シマウマは馬とは違い、人に慣れにくく、恐怖から突然、暴れだすことも考えられる。どのくらいの麻酔が必要かのデータも少なく、捕獲は非常に難しい」と話した。(スポニチ2016.3.24)===

とは言っても、バロンは何度も言わせてもらうが、映像でもわかるように常に人から逃げ回っているわけではなかった。最後の方では立ち止まることも多くなり、動きが鈍くなってきていた。最後の吹き矢を打たれなければすぐにでも眠りに落ち、助かった可能性もあったかもしれない。だが、最後の方では刺さりやすい首に打ち込んでいたことから、急激にかつ強力に薬が効いてしまった可能性もあって、7本目の麻酔で助かる道は完全に閉ざされてしまったと思っている。

亡くなるまでの一時間の間にどこで7発撃たれたのか
https://youtu.be/IWR_V-_cZKw?t=398

ということは、朝6時半から4時間以上は追い回していただけなのか?!途中から薬で眠らせる作戦に変更したのだとすると、ますます何を考えていたのか理解に苦しむ。麻酔ではなくトランキライザーという通常馬には使わない鎮静剤を使ったという情報もあるが、真相はわからない。心臓マッサージの途中でバロンの向きを池の向こうのカメラ方面に変えたり、ただの投げ輪状のロープでで捕まえようとしたり、とにかく謎の行動ばかりだ。



このように謎が多い捕獲作戦だが、吹き矢などの指示は年配の土岐市専従、H獣医がやっていたようだ。映像からはマッサージの打ち切りを指示したのは彼だった。結果的には放牧場から逃がした飼い主と乗馬クラブだけではなく、バロンにかかわったすべての人たちが驚くほどいい加減で、勉強不足で準備不足だったということがあの仔の死を招いたのだと言える。

とりわけ、「展示の充実」いわゆる客寄せのために産ませておいて、いらなくなったら簡単に手放す動物園、シマウマを甘く見てもろい柵の放牧場でいきなり飼おうとした飼い主と乗馬クラブ、薬の量も状況も考慮せず吹き矢で打ちまくった獣医師たちの責任はとりわけ重い。言い換えると、シマウマのバロンに対する多くの人間の無責任と無知と無関心が彼の命を奪ったのだ。


Photo by メ~テレ

逃がしてしまう前に誰かが「頑丈な囲いを用意しておいてよ。逃がしてしまったら捕まらないからね。」と新しい飼い主に一言言えたらと悔やまれる。それが言えるのは天王寺動物園と動物商Tだったはずだ。だからこそ、そこにも指導が入ったのだと思う。仮に生き延びたとしても、そんな無理解でいい加減な環境の中で、この先20年以上も事故無く生き続けられたのかは疑問が残る。そのような中で生きることが幸せだと言えるのかどうかも、自分にもわからない。

今言えるのは、人間が産ませて殺してしまったバロンに報いるために、このような事件が二度と起こらないように努めることだと思う。そのためにはまず、動物園の動物たちから恩恵を受けている全ての人たちが、動物園の余剰動物問題についてよく考えてみることが大切ではないだろうか。

池へ誘導した理由とは

2016年06月07日 13時01分39秒 | 事件
                    麻酔を打ち込まれて驚くバロン↑


これまで多くの疑問点を提示しながら、記事を書いてきたが、どうしてもわからないし、訳を知りたい捕獲チームの行動がある。

なぜ池のそばで、十分すぎると思える7本目を打ったのかについては、とにかく早く終わらせたい一心で、バロンの様子も観察せず、成り行きを想定もせず、打ち込んだのではないかと想像できた。

問題は最後の7本目の吹き矢を打ちこんだ後、よろよろとなりながらも、池に逃げようとするバロンをなぜ花道を作るように池に誘導したのかということだ。

それまでは何人かが池の前に立ちはだかって、入れさせないようにしていたのに、バロンがすぐ近くまで来たら止めようとするどころか、二列になって手を広げて通路を作り誘導しながら、池に入るのをただ見ていただけだった。↓

2:28から
https://www.youtube.com/watch?v=C2g4sYdxk1Q


7本目が刺さった後、池に落ちるように入り、ふらつきながら歩き回るバロン
Photo By 共同

進路を妨げないようにという指示だったのかもしれないが、その映像を見た時「バロンは自ら死を選んだんだ。」と思った。それは単なる感情移入だったことがすぐわかった。バロンが対岸までたどり着いたとき、今までと同じく必死に、岸に登ろうとしているのを見たからだった。

バロンは生きたがっていた。生きて母親や仲間のところに帰ろうとしていたのだと思う。今が全て、今を生きる、ただそれだけだ。だが、無情にも麻酔が回ってきた。↓


Photo by 産経フォト

バロンは痙攣しながら水の中に崩れ落ちて、溺れた。馬は口呼吸ができないと言う。多分、シマウマもそうだったろう。鼻から容赦なく水が入るが、手肢も首も動かない。もがいた時間は短いものだった。

あの様子からはたとえあの時、入水を妨げたとしてもバロンは助かることはなかっただろう。警察の第一報によると引き上げた時には心臓はもう止まっていたというし、直前の症状は見るからに過剰投薬が原因でのショック死だ。

溺れて呼吸停止してから、5-6分のうちに呼吸が確保できれば生き帰るというのは多分、人間もシマウマも同じではないかと思う。映像がカットされていなければの話だが、バロンは2-3分もがいただけで、動かなくなった。その後すぐに岸に上げてマッサージしていたにも関わらず、眼を開けたまま何の反応も示さなかった。↓


Photo by サンスポ

3人の獣医たちとマッサージを受けるバロン
https://twitter.com/ctr929/status/712520376304197634/video/1

H獣医師は「池に入ったことによる低体温になって麻酔が効き過ぎた。」とか「麻酔が効いてきたところが池だったからおぼれた。」と言い訳をしていたが、あれくらいの入水で低体温になるものだろうか。低体温になったせいで麻酔が急に効いてしまうことを知っているのなら、なぜ池に落ちるような場所で打ち、池に入るのを阻止しようとしなかったのかを説明するべきではないのか?

動いてる状態で数分、あんな浅い池に入ったくらいで低体温になるとは思えない。3月初旬のオーストラリアの海でこの馬は11キロ遠泳し、一時間半も海で泳いでいたけれど平気だった。↓
http://www.cnn.co.jp/fringe/35078997.html

事件直後は、池の前にいた飼い主や警官たちが手に上着でもいいから持って振り回し大声を出してくれたなら、バロンは池に入らず助かったかもしれないと思っていたが、今はそうは思わない。陸にいたとしても、池の中にいたとしてもバロンはショック死したと思う。

そうでなければ、それまでと同じように、逃げ切っていただろう。痙攣している時点でショック死の症状が見て取れたはずなのに、溺れたのが原因だという。その方が都合よかったのだろう。無念だね、バロン。

どこのテレビ局かはわからないが、「溺死ではなく、低体温と麻酔が原因の心臓麻痺により死亡した」と報道していたところがあったという。

これは「引き上げた時には死んでいた」と事実を報道してくれたサンスポの記事↓
http://www.sanspo.com/geino/news/20160323/sot16032318140002-n1.html


正確に言えば通常の2・5倍もの量の麻酔を打ち込まれたフラフラの体で池に入れば、溺れることくらい素人でもわかる。池ポチャさせる必要がどこにあったというのか。「シマウマははじめてで~」が赦される程度ではなく、土岐市のH獣医と多治見市のN獣医は獣医師免許をはく奪されるほどの医療ミスをしたと思う。この場合は県警との共同作業だったので、責任を追及されることはないだろうが、最低でもお粗末すぎて恥ずかしいくらいは思ってほしい。

懸命に生きようとしたバロン

2016年06月06日 11時17分46秒 | 事件
突っ込みを入れるところが最も少なく、事件に忠実に書かれた地元の大手新聞社の記事を見つけた。

中日新聞CHUNICHI Webの記事
ゴルフ場逃げ込み、麻酔打たれ池で

ゴルフ場内を逃げ回るシマウマ=23日午後0時30分、岐阜県土岐市で

 愛知県瀬戸市片草町の乗馬クラブ「三国ウエスト農場」から逃げたシマウマは23日朝、約3キロ離れた岐阜県土岐市妻木町のゴルフ場「名岐国際ゴルフ倶楽部(くらぶ)」に逃げ込んだ。岐阜県警多治見署員や所有者の男性(43)ら約20人から5時間半にわたって逃げ回ったが、獣医師に吹き矢で麻酔を打たれ、同日午後、池に倒れ込んで死んだことが確認された。
 署によると、シマウマは2歳の雄で体高1.2メートル、体重200キロ。22日夕に別の場所から乗馬クラブに移送されたばかりだった。クラブ内の金網で囲われたスペースに入れられた直後に興奮して暴れだし、木製の出入り口に体当たりして隙間から逃げ出した。
 所有者の男性とクラブ従業員らが追ったが、土岐市鶴里町のキャンプ場付近で見失い、署に通報した。
 23日朝になって、シマウマが同町の国道363号の路上にいるのを通行人が発見。署員が追ったところゴルフ場に逃げ込み、コースの芝生の上を走ったり池に入って泳いだりした。署員らは麻酔が効いておとなしくなるのを待ったが、シマウマが池に入って倒れたため引き上げた。獣医師によると、死因は溺死。
 所有者の男性は「慣れたら移動動物園で公開するつもりだった。本当に残念です。お騒がせして申し訳ない」と話した。乗馬クラブの役員の男性(37)は「シマウマを飼うのは初めてで、準備と勉強が足りなかった」と悔やんでいた。
(2016年3月24日)
http://opi-rina.chunichi.co.jp/topic/20160324-2.html

アンダーラインを引いたところがイケている。警察の「捕獲時に心臓が止まっていた」も入れてくれたら最高だ。

軽トラに載せられたバロンはあの後どこに連れていかれたのか。酷なことをあえて書くと、薬が大量に入っているので肉としては使われず、家畜専門の焼却場で解体された後、焼却されたのだろうと思う。今回は公立の動物園でさえ、人知れずどこかに売られていく動物は少なくはないのだと、知ることができた事件だった。

ライオンやトラなどを見て人間が楽しむために、猛獣たちの餌が必要になる。そのために殺されなければならない命たちは数え切れないほどになる。バロンはそれらの餌として処分されるという運命ではなかったのが幸運だったのだとは一概には言えないと思う。1918時間にもわたる孤独と恐怖を味わわなければならなかったからだ。

妄想が入るがこんな感じだったかもしれない。誰の言葉かは想像に任せたい。

「雄のバロンはそろそろ一緒に飼えなくなるね。どこかないですかね。」

「○山さんは遠すぎて、また何かあるといけないから無理らしいです。」

「妹のヒデミは1歳で貰い手が決まったけど、やっぱり、雄のバロンはなかなかみつからないなあ。」

「小さな移動動物園だけど、シマウマ欲しがっている人がいますよ。今度、聞いてみますね。」

「ほしいけど、すぐ飼えるような場所が用意できないんですよ。でも、知り合いの乗馬クラブが預かってくれるかもしれないな。聞いてみるから、ちょっと待っててくれます?」

「けっこう人に慣れてるシマウマらしいんだけど、飼うとしたら、移動動物園で使えるようになるまで、預かってもらえないかな?」

「大きさはどれくらい?120センチだったら小さいね。大丈夫と思うよ。やってみるわ。」

「助かります。一度見てきますね。」

「調教兼ねて預けられる場所はみつかりました。一度そのシマウマ見せてもらえます?」

「この人がシマウマほしいって言ってるGのSさん。近くで見せてもらっていいです?」

「おとなしそうですね。調教すれば私にも飼えそうですね。」

「まだ子供だから、慣れやすいからね。予算はいくらぐらいですか?じゃあ○○円でどうでしょう?」

「そうですね、○○円なら。」

「わかった。では、成立ということで。動物園の方にはさっそく連絡しておきますわ。」

「引き取ってもらえるの?ああ、よかった。ただじゃまずいんで、かわりにほかの動物を連れてきてよ。」

「じゃあ、これとこれと交換ということで、契約書作りましょう。」

「シマウマが来ることが決まったんだ。期間はどれくらいかかるかわからないけど、しばらくそちらで頼みますね。」

「お宅の輸送車に慣れさせなきゃいけないので、何回か動物園で訓練しましょう」

「わかりました。お手数お掛けします。よろしくお願いします。」

「調子はどうですか?」

「順調に訓練が進んでます。もう、大丈夫みたいですので、予定通り、22日に引き渡しお願いします。」

3月22日天王寺動物園を出発したバロンは高速に乗って、愛知県瀬戸市のM乗馬クラブへ到着した。そして、悲劇の逃亡劇が幕を開けるのだった…ということなのかもしれない。



バロンの名誉のために書いておきたいことがある。

バロンは天王寺動物園が言うように、ある程度人慣れしていた。人は餌をくれて、危害を加えない存在だと信頼していたようだ。それを伺える様子が映像のいたるところに映っていたと思う。バロンたちは飼育員にもかなり近寄ることができていたことがわかる。決して人に攻撃を仕掛けてくるような危険な猛獣ではなかった。

http://blogs.yahoo.co.jp/nakajima_neko/35099510.html?__ysp=44K344Oe44Km44OeIOODkOODreODsw%3D%3D

数々のニュース映像を見ると、バロンは自分からは決して人を襲ったりしていなかった。上着でたたかれた時やロープがかけられようとした時、人が後ろに近づいて何かをしようとした時に蹴っただけだ。それなのに、バロンが蹴ったり咬んだりする危険な動物だというような扱いで、恐る恐る接していたので、作業がなかなか進展しなかったのではないだろうか。シマウマは獰猛で逃げたら大変だから、とりあえずゴルフ場内で隔離しながら、お散歩していようみたいな絵図だった。

人間にはお散歩のようなものでも、バロンにとっては地獄でしかなかったと思う。母親も仲間もいない状態は群れで暮らしていた草食動物にとっては、いくら似たような場所にいても、ただただ地獄でしかなかっただろう。



「シマウマさん、最後にサバンナを駆け回るように思いっきり走れて良かったね...」というのは人間サイドのエゴイスティックな思い込みなのだ。バロンは自由を求めていたわけではない。生きるために仲間が必要だったのだ。差し出されたおいしいそうな餌さえも無視したバロン。

総勢50人もいたであろう、得体のしれない器具や、見知らぬ矢を刺して来る怖い人間たちから逃げ惑いながら、母親や担当飼育員を探していたのかもしれない。まずはバロンというシマウマの情報を集めて、彼の心の内を理解しようとすることから、はじめてほしかった。

真っ暗な森で独りぼっちで、どんなに心細かったことだろう。いくら探しても仲間はいない。池は人間が近づいてこないから、苦手だけど何度も飛び込んで逃げた。長い紐と長い棒で何度も怖い思いや、痛い思いをして逃げまわったけど、ついに体が痺れ、力が入らなくなってしまったバロン。

明らかに弱々しくなって溺れていたのに、誰も助けようとしないのはなぜ?。心臓マッサージを受けるまだ1歳だったバロンの体格を獣医たちと比べてみてほしい。何の罪もないのに見殺しにされてしまったのはなぜ?

ひとりぼっちでも、最後まで生きようと頑張ったバロンを褒めてあげてほしい。


行政指導が入った天王寺動物園

2016年06月05日 16時03分51秒 | 事件
この愛護団体のさらなる活躍として、天王寺動物園からの回答書とほぼ同時に大阪市の動物愛護担当部署からも回答書を手に入れたことがあげられる。

<シマウマの死>大阪市の動物愛護行政から天王寺動物園に指導
http://animals-peace.net/law/tennojizoo-osakacity.html


動物愛護行政からの回答書には譲渡先についての団体からの抗議に対して、

「A(動物商T)がどの程度シマウマの飼育方法について未知であったかは、Aのみが知ることであり、天王寺動物園側にはわからないことですので…。」

「今回の問題点の一つに、購入者が十分にシマウマの生態、とくに跳躍力や見知らぬ人間からの逃避傾向などの逸走に関する知識を有していなかったことが挙げられるかもしれません。ただし、実際の取引現場にあっては、Aがどの程度シマウマの飼育方法について未知であったかは、Aのみが知ることであり、天王寺動物園側にはわからないことですので、実際はAの側からシマウマの飼育で不明な点について天王寺動物園に尋ねるか、あるいは、初めから流通先としてBへの引渡しが決まっていたのであれば、Bが直接天王寺動物園に説明を求めるよう、AがBに提案する方法も考えられます。ただし、説明は対面が原則ですので、Bが天王寺動物園へ来られない場合は、Aが仲立ちをすることが必要です。」

と責任転嫁のような訳の分からないことを回答として書いている。どんな場合でも条件抜きで、対面で詳しくその動物に関する説明をしなければならないはずだ。わかりにくい文面はこういった文書のお約束らしいが、結局、天王寺動物園は動物商Tにも、転売先のGにも、シマウマのバロンについて説明していなかったのではないかと自分的には解釈している。

最終的には

第八条  動物の販売を業として行う者は、当該販売に係る動物の購入者に対し、当該動物の種類、習性、供用の目的等に応じて、その適正な飼養又は保管の方法について、必要な説明をしなければならない。
2  動物の販売を業として行う者は、購入者の購入しようとする動物の飼養及び保管に係る知識及び経験に照らして、当該購入者に理解されるために必要な方法及び程度により、前項の説明を行うよう努めなければならない。

という動愛法を広くとらえて、たとえ交換譲渡した動物商が転売した先であろうと新しい飼い主に対しては動物商か、動物園が対面して説明するべきだったと考えられているようだ。

ここではっきりさせたいが、天王寺動物園はバロンを交換譲渡した動物商Tにシマウマのバロンについて、しっかり説明する義務があることは間違いない。そして、それをしていたら、おそらく行政指導までは無かったのではないかと思われる。

「説明を行うこと」ではなくて「説明を行うよう努めなければならない」という表記ではやはり、強制力が弱くて断罪が難しいのかもしれないとも思う。また、飼育される施設を確認することまで、法的に求められていないことは予想した通りだった。

今回の場合は天王寺動物園において、移動動物園の輸送車への収容訓練が行われ、ここから直接、新しい飼い主がバロンを輸送して行ったことから、動物園にも説明責任があると判断されたのかもしれない。

続いて、シマウマの繁殖については「天王寺動物園のコレクションプラン」によると「シマウマは繁殖推進種であり…繁殖の目的は展示充実」であると書かれていた。計画を立てて、繁殖していると言いながら、ここでもやはり、なぜバロンがいらなくなったのかを説明はされてはいなかった。バロンの出生とともに、十分な説明責任を果たしたと言えない内容である。

また、捕獲時の援助については応援や助言の義務はないとの見解が示された。「動物の逸走防止対策を行う義務は飼養者にあるとの規定です。であっても、現実には、所有者がその動物の身体能力その他逃走を防止するのに十分な知識を有さないことが考えられますので、前述の飼養管理に必要な情報提供が行われる仕組みとなっています。」ゆえに、逃げないように飼養するための説明が譲渡する前に必要だったということだろう。しかし、義務はなくても説明不足を悔やんだのならば、普通は助言くらいはするものではないかと思う。

指導内容のまとめを抜粋してみた。

【平成28年4月11日に大阪市動物愛護相談室が天王寺動物園に立入した際に指導した内容】

① 動愛法施行規則第八条第五項のイからソの情報を十分に提供すること。
② 特に、シマウマといった一般に飼養機会の少ない動物を払出しするにあたっては、仮に相手先が類似種のウマの飼養に精通しているといった場合であったとしても、相手先に対して、野生動物と家畜の違いなど、同項ソのその他当該動物の適正な飼養又は保管に必要な事項を説明すること。特に、飼養及び保管が技術的に困難な販売動物に関しては、情報の提供は詳細に行うこと。
「天王寺動物園側も、指導に従い、今後は適正飼養に必要な情報提供をより十分に実施し、再発防止に努めるとのことです。」
【動愛法施行規則第八条第五項のイからソ】
五  販売業者にあっては、第一種動物取扱業者を相手方として動物を販売しようとする場合には、当該販売をしようとする動物について、その生理、生態、習性等に合致した適正な飼養又は保管が行われるように、契約に当たって、あらかじめ、次に掲げる当該動物の特性及び状態に関する情報を当該第一種動物取扱業者に対して文書(電磁的記録を含む。)を交付して説明するとともに、当該文書を受領したことについて当該第一種動物取扱業者に署名等による確認を行わせること。ただし、ロからヌまでに掲げる情報については、必要に応じて説明すれば足りるものとする。
イ 品種等の名称
ロ 性成熟時の標準体重、標準体長その他の体の大きさに係る情報
ハ 平均寿命その他の飼養期間に係る情報
ニ 飼養又は保管に適した飼養施設の構造及び規模
ホ 適切な給餌及び給水の方法
ヘ 適切な運動及び休養の方法
ト 主な人と動物の共通感染症その他の当該動物がかかるおそれの高い疾病の種類及びその予防方法
チ 不妊又は去勢の措置の方法及びその費用(哺乳類に属する動物に限る。)
リ チに掲げるもののほかみだりな繁殖を制限するための措置(不妊又は去勢の措置を不可逆的な方法により実施している場合を除く。)
ヌ 遺棄の禁止その他当該動物に係る関係法令の規定による規制の内容
ル 性別の判定結果
ヲ 生年月日(輸入等をされた動物であって、生年月日が明らかでない場合にあっては、推定される生年月日及び輸入年月日等)
ワ 不妊又は去勢の措置の実施状況(哺乳類に属する動物に限る。)
カ 繁殖を行った者の氏名又は名称及び登録番号又は所在地(輸入された動物であって、繁殖を行った者が明らかでない場合にあっては当該動物を輸出した者の氏名又は名称及び所在地、譲渡された動物であって、繁殖を行った者が明らかでない場合にあっては譲渡した者の氏名又は名称及び所在地)
ヨ 所有者の氏名(自己の所有しない動物を販売しようとする場合に限る。)
タ 当該動物の病歴、ワクチンの接種状況等
レ 当該動物の親及び同腹子に係る遺伝性疾患の発生状況(哺乳類に属する動物に限り、かつ、関係者からの聴取り等によっても知ることが困難であるものを除く。)
ソ イからレまでに掲げるもののほか、当該動物の適正な飼養又は保管に必要な事項

「天王寺動物園側も、指導に従い、今後は適正飼養に必要な情報提供をより十分に実施し、再発防止に努めるとのことです。」

と結ばれていた。

自ら回答書で答えた通り、今回の指導の通り、天王寺動物園はこれから「譲渡先の情報収集をし、動物に関する情報提供を十分行うこと」をしっかりと守ってくれることを期待したい。

これで、バロンを繁殖し手放した天王寺動物園、譲渡された動物商T、転売先の動物プロダクションG、預託先の乗馬クラブMに動物愛護行政の立入指導が入ったことになる。短く簡単な回答書しか無いようだが、そこには人間に運命を振り回され、ついには命さえも強制終了されなければならなかった、いたいけなバロンと、動物を物のように扱う人間たちの姿が浮き彫りになっている。あとは麻酔を過剰投与した獣医師たちへの行政指導だけだが、獣医師としての社会的な悪評を受けるという制裁?で相殺されたせいで、おしまいだったのかもしれない。



天王寺動物園のサファリゾーン(Photo by TapTrip/MASAKAZU)


サファリゾーンの向こうのサブグランドにデビューしたときの小さなバロンと母ナデシコ(天王寺動物園スタッフブログより)


天王寺動物園についての当時の橋下市長のつぶやき
https://twitter.com/t_ishin/status/285225487171723264



「世界一の都市型動物園」を目指している天王寺動物園(Photo by TapTrip/MASAKAZU)

【大阪府のまちづくり】
http://www.pref.osaka.lg.jp/daitoshimachi/granddesign/nanbatennoujiabeno.html
なんば・天王寺・あべのエリア
更新日:平成27年1月20日
世界(関空)と直結、大阪らしい食の文化とにぎわいを活かす

ポテンシャル
地形が感じられる坂道、みどり、寺町等大阪らしい風景
都心のど真ん中にある動物園
新世界のにぎわい、木津市場等食関連施設
電気街、ポップカルチャー関連店舗の集積
食・アミューズメント・ショッピング等が集積した、多様なにぎわいのミナミ など

短期の取組み
日本一の近鉄ビル・あべのハルカス
周辺施設と一体となったにぎわいの創出
世界一の都市型動物園をめざす天王寺動物園
生態的展示、緑陰都市を先導する魅力ある動植物公園

短・中期の取組み
難波駅前のみどり化
南海会館の建替えと併せた難波駅前のみどり化
「なんば」から「あべの」の一体化
緑陰の道を通るLRT(次世代型路面電車)でまちをつなぐ
動植物公園を核として、エリア全体の魅力を高めるエリアマネジメント


動物園の人間たちが大きな野望を持つと、犠牲になる動物が増える気がするのは気のせいだろうか。

行政指導が入ってもこの事件はまだ終われない。プラン通り生まれてきたはずのバロンが、なぜ出園対象になったのかという肝心な質問に対して、ごまかさないではっきりと答えてほしいと思う。

天王寺動物園からの回答書

2016年06月05日 12時24分07秒 | 事件
(2014年9月2日サバンナゾーンにデビューした時のバロン)

バロンに係わってきたすべての人たちがその時々に、誰か一人でもいいから、動物愛護法を守り、その責任を果たしていれば、あの仔はまだまだ元気に生き続け、恐怖の中で死ぬことはなかった。

この問題について考える前に、まず、動物取扱業者としての義務と責任についての基本的な愛護法の条文を読んでみよう。

(動物の所有者又は占有者の責務等)
第七条  動物の所有者又は占有者は、命あるものである動物の所有者又は占有者として動物の愛護及び管理に関する責任を十分に自覚して、その動物をその種類、習性等に応じて適正に飼養し、又は保管することにより、動物の健康及び安全を保持するように努めるとともに、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない。

3  動物の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する動物の逸走を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
4  動物の所有者は、その所有する動物の飼養又は保管の目的等を達する上で支障を及ぼさない範囲で、できる限り、当該動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(以下「終生飼養」という。)に努めなければならない。
5  動物の所有者は、その所有する動物がみだりに繁殖して適正に飼養することが困難とならないよう、繁殖に関する適切な措置を講ずるよう努めなければならない。


(動物販売業者の責務)
第八条  動物の販売を業として行う者は、当該販売に係る動物の購入者に対し、当該動物の種類、習性、供用の目的等に応じて、その適正な飼養又は保管の方法について、必要な説明をしなければならない。
2  動物の販売を業として行う者は、購入者の購入しようとする動物の飼養及び保管に係る知識及び経験に照らして、当該購入者に理解されるために必要な方法及び程度により、前項の説明を行うよう努めなければならない。



動物園の動物は愛護動物に入るので、これらの条文が全て当てはまり、どの業者も明らかに法律違反を犯していることになる。無責任な繁殖、譲渡、飼育がこの悲劇の背景に歴然と存在していたと言える。

PEACEという動物愛護団体が天王寺動物園に対する抗議書を運営する大阪市に送付し、そのことをサイトで発表していたが、6月1日、4月に送られてきた回答書についての発表があった。

天王寺動物園からの回答と動物商の問題
http://animals-peace.net/zoo/tennojizoo-ans.html






団体からの
1. 動物の放出先の選定・確認を怠ったことについて
2. 余剰動物を生むような繁殖が行われていることについて
3. 逸走したシマウマの捕獲に助言等を行わなかったことについて
の抗議書
http://animals-peace.net/zoos_and_aquariums/tennojizoo-barron
に対する回答だった。

1の動物の放出先に関する回答について
この愛護団体は天王寺動物園と動物交換を行いバロンを移動動物園を運営する動物プロダクションGへ売却した動物商Tについても、登録する名古屋市に対し質問状を送付してくれていた。動物商へはすでに行政指導が入っていたという。ここで、わかったことはこの動物商Tが取り扱ってきた動物が爬虫類などの小動物がメインで、大型の動物を取り扱うことは極まれで、シマウマについては初めてであったという。

このことから、天王寺動物園が動物商Tにシマウマの飼育方法や環境について、詳しく説明する責任が法的に生じているのかどうかが重要だ。つまり、天王寺動物園が動物取扱業者として「販売」が登録されてはおらず、「動物の販売を業として行う者」ではない。そこで、「動物交換」が交わされたのだと思うが、愛護法第八条2を守らなければならない立場なのかどうかである。

販売業者でないにせよ、動物交換は代価を払う販売行為に他ならないことから、全くその責任を免れることができるとも言えないのではないだろうか。しかし、法的には拘束されない?としたら、それを見込んでの、これからは動物の行き先についての「情報を収集し、飼い方や生態についての説明をします」ではなく「情報は可能な限り収集します」ということなのかもしれない。そういうことならば、それは法の抜け道となり、動愛法のあいまいさがまた一つ露呈されたと言える。

2の余剰するような繁殖に関する回答について
「増えるに任せての自然繁殖ではありません」と、むやみに繁殖させているわけではないと言いながら、バロンが不要となったのはなぜだろうか。その説明がなされていない。ある特定の期間だけ、ヒデヨシとナデシコを一緒にしたから繁殖したのであって、計画があってのことだったはずだ。

欲しいのは雌馬だけだったのだとすれば、つじつまが合う。そうだとしても、雄にせよ、雌にせよ、終生飼えるという引き取り手が確保されている場合のみ繁殖させるべきなのではないのだろうか。明らかに第七条の4と5に違反してはいないだろうか。

3の捕獲作業への助言もしなかったことに関する回答について
捕獲の応援をするどころか助言までしなかった理由に怒りを覚える。「広いフィールド内での地理的状況も把握していない場所」なので、助言はできなかったというのだ。正当な言い訳として到底認められるわけがない。

捕獲チームが天王寺動物園に助言を仰がなかったとしたら、それも問題だが、大型動物に対して素人に近い獣医たちに対して、麻酔の量や回数の助言さえもできなかったと言うのだろうか。朝まで飼っていたシマウマではないか。それでは道義的にあまりに非情である。



この回答からは、あのシマウマが同園にいたバロンだったことが知られないように保身のために身を潜めて、当たらずさわらずテレビを見ていただけという様子しか浮かんでこない。「転売」「二時販売先」を繰り返す文面からも、「もう、うちは関係ないからね。」という姿勢が伺える。その気持ちもわからないではないが、そうだとしたらなおさらバロンが無事捕獲されるよう協力すべきだったのだ。

天王寺動物園はこれから交換譲渡先の情報を集めるというだけではあまり変化はないのではと思う。情報を集めるだけではなくて、余剰動物を出さないように無責任な繁殖をしないこと、いい加減な交換譲渡はしないようにすることを約束してほしい。

回答書からは残念なことに、やる気はあまり感じられなかった。それは法律はあっても、捜査して追及されるほどの効力はなく、グレーなまま済ませられるという業者にとってはありがたい法律のせいもあると思う。

この国の動物たちが、外国の愛護先進国のような地位と福祉を得られるようになるのは一体いつなのだろう。ほど遠く感じられてならない。動物に対する意識が野蛮なのだろうか。民族的な違いというのもあるのかもしれない。だからイエローモンキーと呼ばれる一つの理由なのだろうか。本当に、なんとかならないのだろうか。

動物商へ売られたバロン

2016年06月04日 23時23分11秒 | 事件
メディアの中でもこの事件に関して熱心に取材してバロンの出自を明かし、その後も真相を負って、天王寺動物園と動物商との取引をスッパ抜いた新聞社が朝日新聞だ。何かと色眼鏡で見られがちな新聞社だが、皆が見て見ぬふりを決め込んだバロンの真実をしっかり追求し、記事にしてくれたことが頼もしい。

2016年6月1日朝日新聞紙面掲載記事
責任あいまいな動物取引、シマウマに悲劇
死んだシマウマ、どこから来たの?


 3月、愛知県瀬戸市の乗馬クラブを脱走したシマウマが近くのゴルフ場でおぼれ死んだ。まだ1歳。悲劇の背景を探ると、管理責任があいまいな動物取引の実態が見えてきた。
 「残念な結果だ。我々にも反省すべきところがある」
 約200キロ離れた大阪市天王寺動物園の職員はそう話す。死んだのは、前日まで同園で飼育されていたオスのグラントシマウマだった。名前は「バロン」。親子で飼育されてきたが、1歳を超え、「次の行き先」を探していた。
 「オスは大きくなると父親と争うようになる。でもずっと別々に育てていくスペースは確保できない」と高見一利・動物園担当課長代理は話す。半年かかっても行き先が見つからなかったという。
 ■交換、さらに転売
 最終的に運命が決まったのは今年2月1日。名古屋市の動物商、坪井源幸(げんこう)氏と同園が「動物交換契約書」を締結、バロンはメガネフクロウなどと交換されることになった。坪井氏は、シマウマを求めていた愛知県尾張旭市の移動動物園にバロンを転売した。
 なぜ死に至ったのか。
 3月22日、バロンは天王寺動物園から搬出された。人馴(な)れさせる訓練のため、その日のうちに瀬戸市の乗馬クラブへ。動物園の外に出たのも、見知らぬ人が近づいてくる経験も初めてだった。パニックに陥ったのか、岐阜県に逃走。翌23日、麻酔薬入りの吹き矢を受けて池に倒れて死んだ。
 乗馬クラブの柵は大型哺乳類なら容易に逃げられるようなつくりだったという。天王寺動物園は「信頼するしかなかった」。坪井氏は「受け入れ先の施設が聞いていたものと全く違った」と悔やむ。
 ■「余剰動物」問題
 不幸な死を除けば、バロンの身の上は、日本の動物園で生まれる動物にとって珍しいことではない。業界内では、次の行き先を探さなければいけない動物を「余剰動物」と言う。受け入れ先探しに悩みながら新たな動物も迎え入れたい動物園。国内では簡単には手に入らない動物を仕入れ、売買したい動物商。もちつもたれつの関係が続いている。高見課長代理は「定期的に繁殖を行って動物を維持し、新しい動物も導入しないといけない。ほかの動物園や動物商との交換は常時行っている」。
 ただ、動物園同士の交換と異なり、動物商が介在する取引の場合は、動物の行き先を把握できないことも多い。今年4月に鹿児島市平川動物公園が動物商に渡したコツメカワウソ2頭も、静岡市内のペット店で販売されていた。坪井氏も「ペット店やブリーダーが買ってくれるので、売り先を見つけるのには困らない」と明かす。
 ■「行き先、責任を」
 日大生物資源科学部の村田浩一教授(動物園学)によると、動物商は日本には明治時代からおり、動物園の発展を担ってきた存在という。だが欧米の動物園は40年以上前から動物商の利用を自粛。動物園同士の交換によって種の保存、維持に努めている。
 日本は手狭な園が多く、特に大型動物の場合は、種の保存のために繁殖しても群れで飼育していくのは容易ではない。余剰動物問題の解決には動物商に頼らざるをえない側面がある。村田教授は言う。「シマウマの事件は、特定の動物園の問題ではない。他園に渡すにしろ、仕方なく動物商に渡すにしろ、余剰動物の行き先に責任を持つべきだろう」
 (太田匡彦)
 
http://www.asahi.com/articles/DA3S12386496.html

(刺さった吹き矢は向こう側の棒状のものではなくて、左側の首の小さく赤く見える部分なのだが、些細な間違いにも詫びを入れる姿勢に好感が持てた。)

朝日新聞デジタルにも同じような記事が掲載された

溺死のシマウマ、悲劇の背景は…動物取引の管理責任は
http://www.asahi.com/articles/ASJ5W5GC2J5WUTFL00D.html?iref=comtop_8_01

動物交換契約書の拡大写真↓
http://www.asahi.com/articles/photo/AS20160531004059.html

この記事でバロンは天王寺動物園→動物商T→動物プロダクションG(移動動物園長S)と所有者が移ってきたことがわかった。動物商Tがシマウマの性質や飼育環境についてしっかり説明を行ったかどうかが問われるが、「受け入れ先の施設が聞いていたものと全く違った。判断が甘かった」と悔やんでいると言う。

これが真実で、新しい飼い主が「知り合いの乗馬クラブに預けるから設備的には大丈夫だ」と言っていたのならば、動物プロダクションGの考えの甘さが招いた悲劇だと言えよう。

Gが表に出てこないので真相はわからないが、譲渡時、動物商Tが動物取扱業者として動物愛護法通りしっかりと責任を持って飼育方法や注意点について説明していれば、事故は妨げられたと思う。突き詰めれば、天王寺動物園が動物商Tにしっかり説明していたのかという問題にも触れなければならなくなるだろう。


マスコミの功罪

2016年06月04日 09時40分32秒 | 事件
いろいろなニュース記事を調べて行くうちに
○新しい飼い主は移動動物園での展示を目指していたこと
○国道での目撃情報からバロンを見つけ出した警察がバロンを人家から遠ざけるために、ゴルフ場へと追い込んだらしいことが新たに分かった。

こういう場事件というのは人命第一が大前提だ。動物が二の次だと言うことも理解できる。人里に現れた熊や猪なら銃で仕留めるという作戦になるはずだ。しかし、捕獲チームは所有者の意向もあったのだろう、シマウマにしては比較的おとなしいバロンの生け捕り作戦を展開することにしたようだ。

一見手っ取り速そうな「一気に網をかぶせて生け捕る」という方法は避けられた。衝撃やストレスに弱いシマウマなのでショック死の可能性もある。人馬ともに負傷するかもしれないというような危険性も高いので避けられたのだろうか。それらの理由から、「ゴルフ場という安全地帯から逃げないように取り囲んだりして誘導しながら、吹き矢の麻酔で眠らせて捕獲する」という作戦を選択したということならば最善の作戦だったと思う。

しかし、映像を見て驚いた。乗馬クラブ関係者、飼い主、獣医、警官たちが誘導だけではなく、上着、吹き矢、ロープ、小枝などで何度もむやみにさわったり、叩いているではないか。余計に興奮させていたのはどういう意味があったのだろうか。疲れさせて早く麻酔が効くようにとでも思ったのだろうが、反対に興奮して危ないし、そのために麻酔が効きにくくなるというのに…。

麻酔で眠らせる作戦ならば、麻酔が効きやすいようにじっと見守る方向で取り組んでほしかった。誘導するには上野動物園のシマウマ捕獲訓練のように声を出しながら人でバリヤを張れば、そちらの方向には行かず、空いている方向に行くはずである。盾があれば安全に誘導できたのにと思う。なければバスタオルなどを広げて阻止するでも良かったのではないだろうか。何もないよりもましだ。

しかし、彼らは一般的な1-3回ではなく7回も麻酔を打ち込んでより恐怖とパニックを誘発し、なぜかロープでも捕まえようとしていた。網よりも高いその危険性については前にも書いた通りである。

とにかく、あの現場の状況は本当に理解に苦しむことばかりだった。

報道するマスコミも民間が起こした事件だからなのかもしれないが、カメラマンがわんさか取り囲み、新聞社とテレビ局総動員でお祭り状態だったのだ。恐怖のあまり奇声をあげるレポーターもいたし、大勢の人間たちと上空のヘリの音でさらにバロンを興奮させたことは否めない。

それらが無ければ興奮して逃げ回ることもなく、もっと早くに麻酔が効いてきて、7本目を打たれることは無かったのかもしれないことを関係者は考えてみてほしい。とは言っても、お陰で詳細がわかるし証拠動画もたくさん残ったのだが、陸から空からと、多くの人間や機材に追い回されるバロンが本当に気の毒だった。



そのように多くのメディアが現地にいたにもかかわらず、報道の内容は統一されてはいず、以下ような間違いや偏りが見られる報道となっていた。

●動物園からバロンを乗せてきた輸送車から、預け先の放牧場に入れられたとたんの脱走なのに、「農場に飼われていたシマウマ」と報道するところが多かった。

●バロンが生まれた場所も確かめず、「アフリカから来た」と思わせるようなコメントなどをして、みんなに天王寺動物園でかわいがられていたバロンだという報道するメディアは一切なかった。

●池から引き揚げられたとき、目を見開いたままの心肺停止状態で事実上死亡していて、警察もそう発表しているのに「捕獲されたがその後に死亡した」と報道していた。(捕獲とは生きた状態での言葉)

●飼い主については第一報では企業名はなく本名で、乗馬クラブについては企業名で報道された。その後はずっと「所有者の男性」のような表現で書かれ、一方、「瀬戸市の乗馬クラブ」ではなく、乗馬クラブの企業名はさらされ続けていた。

●ある番組ははしゃぎ過ぎて、運動能力の高いタレント武井壮にシマウマ捕獲オファーをしたらしい。

「陸上選手でタレントの武井壮(42)が、死んだ脱走シマウマを捕獲する企画のオファーが来ていたことを明かした。」
http://konomi.me/I0002708
さまざまな動物の倒し方をシミュレーションするネタで知られ「百獣の王」の異名を持つ武井は、23日にツイッターで、「番組からシマウマ捕まえに行ってくれってオファーが来てた」と明かす。どうやらオファーは断ったようだが、「こんなことになるなら行って優しく捕獲できてたら良かった」とシマウマが死んだことを嘆いた。
(出典:百獣の王・武井壮、脱走シマウマ捕獲オファーあった (日刊スポーツ) - Yahoo!ニュースより)

円山動物園のマレーグマ虐待死事件からマスコミの報道は鵜呑みにできないと知り、さらに今回のことで、ジャーナリズムに真実の追及精神やその誇りを感じられなくなってしまった。

というのは、尾張旭市のイベントなどに活躍していたバロンの所有者はその社名が報道されることはなく、FBを閉じてしまえば、隠れてしまうことができた。強い後ろ盾があったのだろうか?かたや、預かった乗馬クラブは日本中に名前をさらされて、不名誉という大きな損失を被ることになった。この理不尽はいったん何なのだろう。責任の重さに違いがあったとしても、あまりに大きな差である。

コネや後ろ盾の問題で真実を報道したりしなかったりするのだろうか?マスコミは売り上げが伸びたり、視聴率が上がればいいのだろうか?すべてが終わってしまった今、捕獲チームサイドを詳しく取材して、発表するくらい骨のあるジャーナリストはいないのだろうか?

お祭り状態で報道合戦をした結果、バロンは興奮し逃げ回り、麻酔がよく効かなかった可能性は高く、それがなかったらうまく行ったかもしれないのに、と思う人は少なくないと思うのだ。

獣医たちの責任

2016年06月03日 11時34分06秒 | 事件

メ~テレ提供写真(乾草を与えようとする乗馬クラブ関係者と取り巻く警官たち)

多くの人たちが涙を流した事件だった。バロンのニュースを見た人たちは口をそろえて、かわいそうだったと言う。現場の近くに住む友人はそれに加えて「恥ずかしかった。」と言った。自分もあの映像が世界に流れたのだとしたら、日本人として恥ずかしいと思った。あまりにいい加減で、オマヌケな捕物劇だったからだ。ネット上にも「泣いた。」などと悲しみの声があがり、チームの無能ぶりを嘆くコメントが続々と寄せられた。一方、二人の獣医はそれぞれ「初めてなのでわからなかった。」と言い訳し、悪びれもなくそうコメントする獣医たち…。医療従事者としてはずかしくないのだろうかと思った。

確かに、シマウマを捕まえることにおいては詳しくなくて当然だし、時間がかかったり手間取ることはしかたがないことだ。そんなことを責めたりする人たちよりも、真剣にやっていたかということに腹を立てる人が多かったように思う。

さらに詳しく調べて行くと、信じられないことに体重の二倍の量の薬をバロンに打ち込んだことがわかった。


NHK NEWS WEB
2016.3.23
麻酔の吹き矢は11本。獣医師が吹き矢3本を使って麻酔薬およそ300ミリグラムを打ち込みました。しかし、麻酔は十分に効かず、シマウマは逃げ回りました。このため、別の獣医師も加わって、午後0時半までにさらに8本の吹き矢を打ちました。この結果、麻酔薬合わせておよそ1300ミリグラム、通常は体重520キロの馬に効く分量が体内に入ったということです。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160323/k10010453671000.html(リンク切れ)

NHK NEWS WEB (詳細記事)
愛知県瀬戸市の乗馬クラブから逃げ出し、隣接する岐阜県土岐市のゴルフ場で23日朝からおよそ5時間にわたって逃げ回っていたシマウマは、23日昼すぎ、池の中で動けなくなったところを捕獲されましたが、まもなく死にました。獣医師によりますと、溺れて死んだとみられるということです。
このシマウマは、22日夕方、愛知県瀬戸市の乗馬クラブ「三国ウエスト農場」から逃げ出した2歳のオスのシマウマです。



一夜明けた23日午前6時半ごろ、瀬戸市の隣の岐阜県土岐市の国道で見つかり、その後、土岐市妻木町のゴルフ場「名岐国際ゴルフ倶楽部」に逃げ込みました。シマウマは、コース内を走ったり、池を泳いだりして、5時間余りにわたってゴルフ場内を逃げ回りました。
そして、麻酔の吹き矢によって動きが鈍くなったまま池に入り、23日午後0時40分ごろ、警察官らに引き上げられましたが、まもなく死にました。
捕獲に当たった獣医師によりますと、溺れて死んだとみられるということです。

麻酔の吹き矢は11本

捕獲にあたった獣医師などによりますと、シマウマは、吹き矢で麻酔薬を打ち込み、動けなくなったところをトラックに載せて運ぶ予定だったということです。

まず、獣医師が吹き矢3本を使って麻酔薬およそ300ミリグラムを打ち込みました。しかし、麻酔は十分に効かず、シマウマは逃げ回りました。このため、別の獣医師も加わって、午後0時半までにさらに8本の吹き矢を打ちました。この結果、麻酔薬合わせておよそ1300ミリグラム、通常は体重520キロの馬に効く分量が体内に入ったということです。

捕獲にあたった岐阜県土岐市の嘱託獣医師、服部明さんは「野生のシマウマを見たのは初めてで、どんなふうにやっていいのか分からず、なかなかうまく薬が注入できなかった。麻酔が一番効いた状態でシマウマが池に入ってしまい、泳ぐことができず最悪の結果になった。何とも言いようがありません」と話していました。


メ~テレ提供写真(吹き矢を打つN獣医師と乗馬クラブ関係者)


バロンの体重は約200キロだと発表されている。つまり、合計でポニーの大きさの馬に倍以上のサラブレッドほどの馬に効く薬の量が打ち込まれたというのだ。この記事を読んで本当に驚いた。いくらシマウマが麻酔の効きにくい動物だとしても、倍の量は恐ろしすぎる。溺れる前はじっとして動かないでいることが多くなっていたにもかかわらず、7本目の吹き矢を打ちこんだのだ。それも、池のそばで池の方を向いてじっとしている時に!

これで、薬の過剰投与によるショック死という線が打ち消すことができなくなった。麻酔をかけて眠らせて捕獲するという作戦だったと言うが、これではもう、死んでもいいから捕まってくれ!とでも言うような処置ではないだろうか。

麻酔による捕獲作戦のキーマンは紛れもなく、麻酔を任されている獣医たちだったろうと思う。まだ昼過ぎで、時間はまだ十分残されていたのだ。それに、夜通し逃亡していたシマウマは薬のせいもあって動きが弱まってくる様子がニュース映像からは素人目にも見て取れていたのに…。もう少し気長に待てば薬が効いて倒れるところではなかったのか?なぜ、そんなに急いで打ちまくったのか?

他のニュースの中でも、主となった二人の獣医の実名は報道されている。後半吹き矢を担当したN獣医師は多治見市の犬猫病院の院長だ。「シマウマは初めてなので動転してしまった。」と取材で答えていたのは土岐市の属託職員のH獣医師で陶史の森公園の小さな動物園でウサギや羊たちを診ている獣医だ。背後からバロンの身体に何のためか触ろうとして、膝を蹴られていた様子が映っていたのを見て、ああ、ダメだと思った。明らかに馬を知らない行動だ。もう一人、途中から獣医師らしき若い男性が加わり、最後の場面で心臓マッサージをしていたが、麻酔が何本も打たれるのを見ていただけだった。

警察の加わる捕獲チームがシマウマや馬などに詳しい獣医師をなぜ用意しなかったか、できなかったかわからないが、あまりに人材不足で情けなく思う。麻酔が難しいと言われるシマウマなのは承知で書かせてもらう。やみくもに打つのではなくて、麻酔の量や効き具合について注意を払ってくれて、いつ、どこで、どのくらいの薬を打てば安全に眠らせることができるのかを想定し、計画できる獣医師が用意できていればと思うと残念でならない。

捕獲作戦のリーダー

2016年06月01日 14時50分16秒 | 事件
新しい飼い主と預託先の乗馬クラブ運営者がシマウマと馬のポニーとを同一視し、シマウマという野生のロバに近い馬を甘く見ていた結果の逃亡劇は、現地の取材記者やテレビのアナウンサーたちを通して、はじめはどこかほほえましくお茶の間に伝えられていた。

なぜだか、警官隊、飼い主、乗馬クラブ関係者、獣医師たちで構成される捕獲チームに緊張感はあまり感じられず、逃がしてしまった重大責任者にいたっては何をしたかったのかわからないが、笑いながら無意味にバロンのお尻を上着で何度もはたいていた。さらに信じられないことに、20人の軍団からなる捕獲チームが用意したものはテレビで見る限りでは、数本のロープと麻酔用吹き矢だけだった。

いたずらに時間だけが過ぎて行き、時々至近距離で吹き矢を打たれながらも、スルリとかわして逃げて行くバロンとぞろぞろと後を追うだけの映像を見て、一体誰が指揮をとっているのだろう?指揮官は専門家を集めようとしたのだろうか?捕獲のための情報やノウハウを調べながらやっていたのだろうか?など悲しみと怒りとともに大きな疑問が湧いてきた。

前夜の7時に通報を受けた岐阜県警は捕獲に出動する翌朝までに、天王寺動物園をはじめとする動物園の飼育経験者や獣医たちに連絡をして、情報を集めたり、捕獲作戦を練ったり、応援を頼むなど時間は十分あったはずだし、馬の専門家として見られていたかもしれない乗馬クラブ関係者たちも飼い主と寝る間も惜しんで、計画したはずだ。一緒に計画を練り、打ち合わせをする時間は十分あったと思う。

結果的には天王寺動物園は応援に来ることはなかったし、あのような軟弱な設備でシマウマを飼育しようとした飼い主たちに加えて、二人の獣医師たちも大型の動物に不慣れで、専門性を期待できそうにもなかった。ましてや馬やロバなど見たこともない警官たちが何人いようと、たいした戦力になるわけがない。

そんな状態で始まったとはいえ、いくらシマウマに接するのが初めての素人軍団と言えども、うまく行きそうでないと思ったら、今はいつでもどこからでも情報を集めることができるし、動物園の専門家たちに電話することもできたと思う。それに、1時間もあれば、競馬場や東山動物園から専門家たちに駆けつけてもらうこともできた場所だったのだ。

それなのに、どうしてああだったのだろうか。本当に、「どうしようもなかった。」ことだとは思えないのである。夜のうちにあらゆる状況を想定し合い、ベストなベターなもしくはやむを得ない作戦をいくつか打ち合わせをしたはずなのに、あのように無秩序で効果がないまま継続し、想像もできなかったような最悪な結果を避けられなかったと言うのだろうか。

ロープで捕獲する作戦と麻酔で眠らせて捕獲すると言う作戦とを同時で進行させていたようだが、元気なシマウマにロープとは余りに危険で信じられなかった。ましてや、あのロープワークで捕まえられるとは思えない。仮に首にかかったとしてそのあとどうするつもりだったのだろうか。暴れたり引きずられて人間がケガするか、シマウマがショック死するなど双方に危険な状態をもたらす可能性が極めて高い。

生きたまま捕食される草食動物である彼らは少しのショックでその心臓を止めることが少なくない。昨年、円山動物園のグラントシマウマの飛馬がわずか400メートルの園内移動中に手間取った結果、輸送箱の中でショック死してしまったことも記憶に新しい。
(飛馬のストレスによるショック死についての報道↓)
http://b.hatena.ne.jp/entry/www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20150825/4376361.html

なので、首輪もしたことがない半野生のバロンにロープをかけた途端ショック死ということも十分ありえる。長いロープは天敵の毒蛇に見えないとも限らないのだ。

昔、アメリカの原住民やカウボーイが野生の馬を捕まえる時にはロープを使っていたが、捕獲後比較的早くおとなしくなり、人に慣れようとするのも馬系統の馬だからと言えよう。

ここに、ムスタングと呼ばれるアメリカの野生馬を捕獲する様子がわかる映画の場面がある。奇しくも二人にとって、遺作となってしまった映画だ。馬はポニー(小型馬)ではないのですごい迫力だが、シマウマも同じくらいの破壊力があるのではないかと思う。↓

マリリンモンローとクラークゲーブル主演の「荒馬と女」(現題 The Misfits)より
https://www.youtube.com/watch?v=38Xel0xsTyg

このように、ロープで野生の馬を捕獲するには息の合った経験のあるカウボーイが2-3人必要で、逃げようとする馬を捕まえるには専用のロープワーク(結び方)による投げ縄の技術が必要だ。

もうひとつの動画だが、狭い柵内だからこそひきずられたりすることもないし、きゅっと締まって縄が抜けない様子がこれからもわかる。↓

柵の中で仔馬を捕まえるロープワークの様子
https://www.youtube.com/watch?v=KBg2F6CrnyM

一番ベストな麻酔でおとなしくさせる、もしくは眠らせてから捕獲する方法はシマウマにとっては困難な作戦でもあるらしい。麻酔が効きにくく、薬の量が難しいと言われているが、実際、起伏の激しいゴルフ場では現実的だし、お互いに無傷で生存できる可能性が高い。この作戦に集中し専念していれば、バロンの変化にも気を付けることができたはずだ。

上野動物園のシマウマ(の着ぐるみ)捕獲訓練の様子
https://www.youtube.com/watch?v=p5E8CULgr3s

これはこれで笑ってしまうけど、シマウマの逃げた場所がこのように動物園の近くで、追い詰められるような場所であればこれもありかなと思う。それにしても、麻酔が一発で済むと言う薬の量や種類のノウハウを上野動物園から聞き出してくれたのだろうか。ここでのリーダー(本部長)は自衛隊でも警察でもなく動物園の園長だったので、やはりこういうことが起こった場合、専門家の立場に任すということなのだろう。だとしたら今回、素人の警察を責めることはできなくなる。

バロンには長時間にわたってなんと11回も吹き矢を打ったという。6本が命中し明らかに薬が効いてきているのがわかるのに、さらに7本目を打つことにするなど、とても指揮系統が確立されていたとは思えない。だらだらとまとまりがなく、各自が目的意識もなくバラバラに動いているような印象をどうしてもぬぐうことができないままだ。

結局、捕獲作戦の指揮を誰がとったのかわからないが、シマウマに対しては自分を含め全員が素人ばかりだと理解していて、その上でしっかりとした準備と指示ができていたならば、バロンの命は助かったのかもしれないとどうしても思わざるを得ない。