(2014年9月2日サバンナゾーンにデビューした時のバロン)
バロンに係わってきたすべての人たちがその時々に、誰か一人でもいいから、動物愛護法を守り、その責任を果たしていれば、あの仔はまだまだ元気に生き続け、恐怖の中で死ぬことはなかった。
この問題について考える前に、まず、動物取扱業者としての義務と責任についての基本的な愛護法の条文を読んでみよう。
(動物の所有者又は占有者の責務等)
第七条 動物の所有者又は占有者は、命あるものである動物の所有者又は占有者として動物の愛護及び管理に関する責任を十分に自覚して、その動物をその種類、習性等に応じて適正に飼養し、又は保管することにより、動物の健康及び安全を保持するように努めるとともに、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない。
3 動物の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する動物の逸走を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
4 動物の所有者は、その所有する動物の飼養又は保管の目的等を達する上で支障を及ぼさない範囲で、できる限り、当該動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(以下「終生飼養」という。)に努めなければならない。
5 動物の所有者は、その所有する動物がみだりに繁殖して適正に飼養することが困難とならないよう、繁殖に関する適切な措置を講ずるよう努めなければならない。
(動物販売業者の責務)
第八条 動物の販売を業として行う者は、当該販売に係る動物の購入者に対し、当該動物の種類、習性、供用の目的等に応じて、その適正な飼養又は保管の方法について、必要な説明をしなければならない。
2 動物の販売を業として行う者は、購入者の購入しようとする動物の飼養及び保管に係る知識及び経験に照らして、当該購入者に理解されるために必要な方法及び程度により、前項の説明を行うよう努めなければならない。
動物園の動物は愛護動物に入るので、これらの条文が全て当てはまり、どの業者も明らかに法律違反を犯していることになる。無責任な繁殖、譲渡、飼育がこの悲劇の背景に歴然と存在していたと言える。
PEACEという動物愛護団体が天王寺動物園に対する抗議書を運営する大阪市に送付し、そのことをサイトで発表していたが、6月1日、4月に送られてきた回答書についての発表があった。
天王寺動物園からの回答と動物商の問題
http://animals-peace.net/zoo/tennojizoo-ans.html
団体からの
1. 動物の放出先の選定・確認を怠ったことについて
2. 余剰動物を生むような繁殖が行われていることについて
3. 逸走したシマウマの捕獲に助言等を行わなかったことについて
の抗議書
http://animals-peace.net/zoos_and_aquariums/tennojizoo-barron
に対する回答だった。
1の動物の放出先に関する回答について
この愛護団体は天王寺動物園と動物交換を行いバロンを移動動物園を運営する動物プロダクションGへ売却した動物商Tについても、登録する名古屋市に対し質問状を送付してくれていた。動物商へはすでに行政指導が入っていたという。ここで、わかったことはこの動物商Tが取り扱ってきた動物が爬虫類などの小動物がメインで、大型の動物を取り扱うことは極まれで、シマウマについては初めてであったという。
このことから、天王寺動物園が動物商Tにシマウマの飼育方法や環境について、詳しく説明する責任が法的に生じているのかどうかが重要だ。つまり、天王寺動物園が動物取扱業者として「販売」が登録されてはおらず、「動物の販売を業として行う者」ではない。そこで、「動物交換」が交わされたのだと思うが、愛護法第八条2を守らなければならない立場なのかどうかである。
販売業者でないにせよ、動物交換は代価を払う販売行為に他ならないことから、全くその責任を免れることができるとも言えないのではないだろうか。しかし、法的には拘束されない?としたら、それを見込んでの、これからは動物の行き先についての「情報を収集し、飼い方や生態についての説明をします」ではなく「情報は可能な限り収集します」ということなのかもしれない。そういうことならば、それは法の抜け道となり、動愛法のあいまいさがまた一つ露呈されたと言える。
2の余剰するような繁殖に関する回答について
「増えるに任せての自然繁殖ではありません」と、むやみに繁殖させているわけではないと言いながら、バロンが不要となったのはなぜだろうか。その説明がなされていない。ある特定の期間だけ、ヒデヨシとナデシコを一緒にしたから繁殖したのであって、計画があってのことだったはずだ。
欲しいのは雌馬だけだったのだとすれば、つじつまが合う。そうだとしても、雄にせよ、雌にせよ、終生飼えるという引き取り手が確保されている場合のみ繁殖させるべきなのではないのだろうか。明らかに第七条の4と5に違反してはいないだろうか。
3の捕獲作業への助言もしなかったことに関する回答について
捕獲の応援をするどころか助言までしなかった理由に怒りを覚える。「広いフィールド内での地理的状況も把握していない場所」なので、助言はできなかったというのだ。正当な言い訳として到底認められるわけがない。
捕獲チームが天王寺動物園に助言を仰がなかったとしたら、それも問題だが、大型動物に対して素人に近い獣医たちに対して、麻酔の量や回数の助言さえもできなかったと言うのだろうか。朝まで飼っていたシマウマではないか。それでは道義的にあまりに非情である。
この回答からは、あのシマウマが同園にいたバロンだったことが知られないように保身のために身を潜めて、当たらずさわらずテレビを見ていただけという様子しか浮かんでこない。「転売」「二時販売先」を繰り返す文面からも、「もう、うちは関係ないからね。」という姿勢が伺える。その気持ちもわからないではないが、そうだとしたらなおさらバロンが無事捕獲されるよう協力すべきだったのだ。
天王寺動物園はこれから交換譲渡先の情報を集めるというだけではあまり変化はないのではと思う。情報を集めるだけではなくて、余剰動物を出さないように無責任な繁殖をしないこと、いい加減な交換譲渡はしないようにすることを約束してほしい。
回答書からは残念なことに、やる気はあまり感じられなかった。それは法律はあっても、捜査して追及されるほどの効力はなく、グレーなまま済ませられるという業者にとってはありがたい法律のせいもあると思う。
この国の動物たちが、外国の愛護先進国のような地位と福祉を得られるようになるのは一体いつなのだろう。ほど遠く感じられてならない。動物に対する意識が野蛮なのだろうか。民族的な違いというのもあるのかもしれない。だからイエローモンキーと呼ばれる一つの理由なのだろうか。本当に、なんとかならないのだろうか。
バロンに係わってきたすべての人たちがその時々に、誰か一人でもいいから、動物愛護法を守り、その責任を果たしていれば、あの仔はまだまだ元気に生き続け、恐怖の中で死ぬことはなかった。
この問題について考える前に、まず、動物取扱業者としての義務と責任についての基本的な愛護法の条文を読んでみよう。
(動物の所有者又は占有者の責務等)
第七条 動物の所有者又は占有者は、命あるものである動物の所有者又は占有者として動物の愛護及び管理に関する責任を十分に自覚して、その動物をその種類、習性等に応じて適正に飼養し、又は保管することにより、動物の健康及び安全を保持するように努めるとともに、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない。
3 動物の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する動物の逸走を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
4 動物の所有者は、その所有する動物の飼養又は保管の目的等を達する上で支障を及ぼさない範囲で、できる限り、当該動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(以下「終生飼養」という。)に努めなければならない。
5 動物の所有者は、その所有する動物がみだりに繁殖して適正に飼養することが困難とならないよう、繁殖に関する適切な措置を講ずるよう努めなければならない。
(動物販売業者の責務)
第八条 動物の販売を業として行う者は、当該販売に係る動物の購入者に対し、当該動物の種類、習性、供用の目的等に応じて、その適正な飼養又は保管の方法について、必要な説明をしなければならない。
2 動物の販売を業として行う者は、購入者の購入しようとする動物の飼養及び保管に係る知識及び経験に照らして、当該購入者に理解されるために必要な方法及び程度により、前項の説明を行うよう努めなければならない。
動物園の動物は愛護動物に入るので、これらの条文が全て当てはまり、どの業者も明らかに法律違反を犯していることになる。無責任な繁殖、譲渡、飼育がこの悲劇の背景に歴然と存在していたと言える。
PEACEという動物愛護団体が天王寺動物園に対する抗議書を運営する大阪市に送付し、そのことをサイトで発表していたが、6月1日、4月に送られてきた回答書についての発表があった。
天王寺動物園からの回答と動物商の問題
http://animals-peace.net/zoo/tennojizoo-ans.html
団体からの
1. 動物の放出先の選定・確認を怠ったことについて
2. 余剰動物を生むような繁殖が行われていることについて
3. 逸走したシマウマの捕獲に助言等を行わなかったことについて
の抗議書
http://animals-peace.net/zoos_and_aquariums/tennojizoo-barron
に対する回答だった。
1の動物の放出先に関する回答について
この愛護団体は天王寺動物園と動物交換を行いバロンを移動動物園を運営する動物プロダクションGへ売却した動物商Tについても、登録する名古屋市に対し質問状を送付してくれていた。動物商へはすでに行政指導が入っていたという。ここで、わかったことはこの動物商Tが取り扱ってきた動物が爬虫類などの小動物がメインで、大型の動物を取り扱うことは極まれで、シマウマについては初めてであったという。
このことから、天王寺動物園が動物商Tにシマウマの飼育方法や環境について、詳しく説明する責任が法的に生じているのかどうかが重要だ。つまり、天王寺動物園が動物取扱業者として「販売」が登録されてはおらず、「動物の販売を業として行う者」ではない。そこで、「動物交換」が交わされたのだと思うが、愛護法第八条2を守らなければならない立場なのかどうかである。
販売業者でないにせよ、動物交換は代価を払う販売行為に他ならないことから、全くその責任を免れることができるとも言えないのではないだろうか。しかし、法的には拘束されない?としたら、それを見込んでの、これからは動物の行き先についての「情報を収集し、飼い方や生態についての説明をします」ではなく「情報は可能な限り収集します」ということなのかもしれない。そういうことならば、それは法の抜け道となり、動愛法のあいまいさがまた一つ露呈されたと言える。
2の余剰するような繁殖に関する回答について
「増えるに任せての自然繁殖ではありません」と、むやみに繁殖させているわけではないと言いながら、バロンが不要となったのはなぜだろうか。その説明がなされていない。ある特定の期間だけ、ヒデヨシとナデシコを一緒にしたから繁殖したのであって、計画があってのことだったはずだ。
欲しいのは雌馬だけだったのだとすれば、つじつまが合う。そうだとしても、雄にせよ、雌にせよ、終生飼えるという引き取り手が確保されている場合のみ繁殖させるべきなのではないのだろうか。明らかに第七条の4と5に違反してはいないだろうか。
3の捕獲作業への助言もしなかったことに関する回答について
捕獲の応援をするどころか助言までしなかった理由に怒りを覚える。「広いフィールド内での地理的状況も把握していない場所」なので、助言はできなかったというのだ。正当な言い訳として到底認められるわけがない。
捕獲チームが天王寺動物園に助言を仰がなかったとしたら、それも問題だが、大型動物に対して素人に近い獣医たちに対して、麻酔の量や回数の助言さえもできなかったと言うのだろうか。朝まで飼っていたシマウマではないか。それでは道義的にあまりに非情である。
この回答からは、あのシマウマが同園にいたバロンだったことが知られないように保身のために身を潜めて、当たらずさわらずテレビを見ていただけという様子しか浮かんでこない。「転売」「二時販売先」を繰り返す文面からも、「もう、うちは関係ないからね。」という姿勢が伺える。その気持ちもわからないではないが、そうだとしたらなおさらバロンが無事捕獲されるよう協力すべきだったのだ。
天王寺動物園はこれから交換譲渡先の情報を集めるというだけではあまり変化はないのではと思う。情報を集めるだけではなくて、余剰動物を出さないように無責任な繁殖をしないこと、いい加減な交換譲渡はしないようにすることを約束してほしい。
回答書からは残念なことに、やる気はあまり感じられなかった。それは法律はあっても、捜査して追及されるほどの効力はなく、グレーなまま済ませられるという業者にとってはありがたい法律のせいもあると思う。
この国の動物たちが、外国の愛護先進国のような地位と福祉を得られるようになるのは一体いつなのだろう。ほど遠く感じられてならない。動物に対する意識が野蛮なのだろうか。民族的な違いというのもあるのかもしれない。だからイエローモンキーと呼ばれる一つの理由なのだろうか。本当に、なんとかならないのだろうか。